「肉離れの症状」や発症した際の痛みの特徴はご存知ですか?【医師監修】
肉離れは、筋肉が急激に引き伸ばされ部分的に断裂する怪我の一種です。
本記事では肉離れの症状について以下の点を中心にご紹介します。
・肉離れ
・肉離れの症状
・肉離れの検査・治療と予防
肉離れの症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
肉離れについて
肉離れはどのようなけがですか?
また、急なダッシュやジャンプなど、筋肉が瞬間的に強く収縮する際に起こりやすく、成長期のお子さんでは剥離骨折を伴うケースも見られます。
肉離れは放置するとその筋肉が硬くなり、全身のバランスが悪くなる可能性があるため、早期の診断と適切な治療が求められます。
肉離れが起きる原因を教えてください
急激な筋収縮による負荷
ジャンプやダッシュ、急な切り返しなどの動作で、筋肉が一気に収縮することで筋繊維に大きな負荷がかかり、断裂が生じます。スポーツ活動中に多く見られる原因です。
筋肉の柔軟性不足
準備運動を怠り、筋肉がほぐれていない状態で運動すると、筋繊維がスムーズに伸び縮みできず、損傷しやすくなります。日常の軽い動作でも柔軟性が不足していると肉離れが起こることがあります。
水分不足や脱水
水分補給が不十分だったり、飲酒後に筋肉が脱水状態になると、筋肉の柔軟性が低下し、肉離れのリスクが高まります。
冷えや寒さ
冬場に身体が冷えて筋肉が硬直すると、負荷がかかりやすくなります。なかでも、冷えが原因で足がつり、そこから肉離れを引き起こすケースもあります。
このように、肉離れは筋肉への急激な負荷や準備不足によって引き起こされます。
肉離れと似ている疾患はありますか?
1. こむら返り(足がつる)
こむら返りは、疲労や電解質の不足によってふくらはぎの筋肉がけいれんする現象で、突然の激しい痛みを伴います。筋肉が過剰に収縮し、一時的に力が抜けない状態が続くのが特徴です。
一方、肉離れでは筋繊維が断裂するため、痛む部分が限られ、力が入らなくなります。筋肉がけいれんしている場合はこむら返りの可能性が高いでしょう。
2. 筋膜炎(筋肉の膜の炎症)
筋肉の使いすぎで筋膜が硬直し、炎症を引き起こす疾患です。背中や腰、足裏に痛みが生じ、足底筋膜炎はランナーに多く見られます。
肉離れと似た痛みが現れるため、MRIなどの画像検査で区別することが重要です。
3. 筋挫傷(打撲による筋損傷)
筋膜炎は、筋肉を覆う膜(筋膜)が炎症を起こして痛む疾患です。運動のしすぎや繰り返しの負荷が原因で発症し、背中や足の裏などに強い痛みを生じます。
筋挫傷は内出血が伴いやすく、損傷部分が触れると痛むため、肉離れとの違いが見分けやすくなっています。
これらの疾患は症状が似ているため、自己判断せず、早めに医師の診断を受けることが重要です。
肉離れの症状
肉離れが起きやすい部位を教えてください
・ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)
短距離走やダッシュの際に強く収縮し、肉離れが発生しやすい部位です。急な加速や方向転換で負荷がかかるため、サッカーや陸上競技でよく見られます。
・大腿四頭筋(太ももの前面の筋肉)
サッカーやバスケットボールなどでのシュートやジャンプ動作時に負担がかかります。なかでも、大腿四頭筋の一部である大腿直筋が傷つきやすいとされています。
・腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)
テニスやバドミントンなどでジャンプ後に着地する際、ふくらはぎの筋肉が急に伸縮されることで肉離れが起こりやすい部位です。
これらの筋肉はスポーツや日常生活で頻繁に使用されるため、ウォームアップ不足や筋肉疲労があるときに肉離れが発生しやすくなります。
肉離れを起こしたときの症状と痛みはどのようなものですか?
・ストレッチ痛
患部を伸ばすと強い痛みがあり、損傷の重症度を反映します。重度の肉離れではストレッチが困難になります。
・圧痛
患部を押した際に鋭い痛みを感じます。触れると筋肉にしこりやへこみを感じることもあります。
・自発痛
安静にしていてもズキズキと痛む場合があり、歩行や動作が制限されることがあります。
肉離れが起こった部位には腫れやへこみが見られたり、内出血により時間が経過するにつれて皮膚が青紫に変色することもあります。
肉離れの重症度について教えてください
・Ⅰ度(軽度)
筋繊維の微細な損傷が起きている状態です。筋肉や筋膜の断裂はなく、主に筋肉が伸ばされた程度の損傷です。患部を押すと痛みを感じますが、自力での歩行が可能です。治療期間の目安は1〜2週間程度です。
・Ⅱ度(中等度)
筋肉や筋膜の一部が断裂している状態で、皮下出血が見られます。患部を押すと強い痛みがあり、歩行は困難になりますが、歩行はまだできます。治療期間は4週間〜2ヶ月程度です。
・Ⅲ度(重度)
筋繊維や筋膜がすべて断裂しており、患部がへこんで見えることがあります。痛みはとても強く、自力での歩行はほぼ不可能です。場合によっては手術が必要となり、治療期間は3ヶ月〜6ヶ月程度です。
肉離れの検査・治療と予防
肉離れの検査はどのように行いますか?
また、エコーはリアルタイムで筋肉の状態を映し出せるため、治療方針を決める際にも役立ちます。CTやレントゲン検査は主に骨折の有無を調べるために使用され、肉離れと似た症状である剥離骨折との鑑別に役立ちます。
さらに、ストレッチ痛(筋肉を伸ばしたときの痛み)、圧痛(押したときの痛み)、抵抗時痛(力を入れたときの痛み)といった身体的チェックも重要です。
肉離れの治療について教えてください
その後、炎症が落ち着いた段階で、リハビリテーションが行われます。これには物理療法機器の使用や、柔軟性・筋力を回復させるトレーニングが含まれ、再発予防を目指します。
また、重症度が高い場合や回復を助けるために、体外衝撃波治療やPRP療法(自身の血液から抽出した成分で治癒を助ける方法)などが用いられることもあります。筋肉の断裂が見られる場合は、手術療法が必要になることもありますが、医師の判断により行われます。
肉離れは予防できますか?
1. 水分補給を怠らない
水分不足は血流を悪化させるため、こまめな水分補給を心がけるようにしてください。運動時には意識的に水分を摂りましょう。
2. 冷えの対策
肉離れを予防するために、湯船に浸かって身体を温めたり、冷房の効いた部屋では薄手の上着や長ズボンを着用するなど、身体を冷やさない工夫をしましょう。
3. 念入りな準備運動とストレッチ
運動前にはウォームアップを行い、筋肉を温めておくことが大切で、ふくらはぎのアキレス腱伸ばしなどのストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、運動中の負荷に備える効果が期待できます。また、運動後のクールダウンやストレッチも再発予防につながります。
編集部まとめ
ここまで肉離れの症状ついてお伝えしてきました。肉離れの症状の要点をまとめると以下のとおりです。
・肉離れとは、筋肉の一部が急激に引き伸ばされて断裂するけがを指す
・肉離れの痛みには、ストレッチ痛、圧痛、自発痛の3種類ある
・肉離れは、画像検査や触診で診断され、治療はPRICE療法やリハビリで進められる
肉離れは、早期の治療が回復の鍵となるため、肉離れが発症した際には安静にし、早めに医師の診断を受けましょう。
これらの情報が少しでも肉離れの症状について知りたい方のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。