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「頸肩腕症候群」を解説!慢性的な痛みやこりはありませんか?デスクワークの方必見!

 公開日:2023/09/19
「頸肩腕症候群」を解説!慢性的痛みやこりはありませんか?デスクワークの方必見!

普段の生活の中で、手・腕・肩・首などの疲れを感じたり、少しだるかったりする経験は誰もが持っていることでしょう。これは、筋肉の疲労による症状と考えられています。

そのままの状態を続けると、次第にこりや痛みがでてきます。短い時間でこの疲労の状態がすめばいいのですが、普段の生活では、少しづつ疲労が溜まるのです。

慢性的なこりや痛みは、なかなか取れません。このような症状はなぜ起こるのでしょうか。また、原因や治療法はあるのでしょうか。ここでは、普段の生活にみじかな痛みである頸肩腕症候群について説明します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

頸肩腕症候群とは

女性の後ろ姿 

頸肩腕症候群ってなんですか?

頸肩腕症候群は、長時間のデスクワークや姿勢の悪さなどが原因で、首とその周辺・肩・背中・腕・手・手首など頸部から肩、上肢にかけて痛み・違和感・こわばりなどの何らかの症状があらわれることです。
神経や血管への圧迫や筋肉への継続的な負荷によって、痛み・こり・しびれが生じ、これを放っておくと腕が重く感じたり脱力感から腕が動かせなくなったりと症状の悪化が見られます。また病状によっては、精神的なダメージにも繋がり、イライラ感・不眠感・抗うつ感を生じることもあります。

頸肩腕症候群はどこが痛くなりますか?

頸肩腕症候群では、主に首とその周辺・肩・背中・腕・手・手首などの部位が痛くなることが多いです。具体的な症状としては、首の付け根から背中に続くあたり・首の後ろ・首の左右の側面・肩の上部・肩から背中中央に向かう部位・腕の付け根から上腕部にかけての部位などが痛むことがあります。
また痛みだけでなく、こわばりやしびれのような感覚があったり、筋肉の疲労などを感じたりすることもあります。症状の範囲や強さは、その原因となる動作や姿勢がどれくらい続いていたか・慢性的か単発的かといったことで個人差がでるでしょう。

どのような人がなりやすいですか?

頸肩腕症候群になりやすい人の特徴はいくつかあります。その代表的な1つが、デスクワークや長時間のコンピュータ作業を行う人です。長時間同じ姿勢を保っていたりモニターを見続けたりすることで、症状が引き起こされる可能性があります。
また、姿勢の悪い人にも多いです。本来細い首や肩には、頭という大きな重みがのしかかってきます。正しい姿勢を保たないことで、首や肩の筋肉に負担をかけ、症状を引き起こす可能性があります。筋肉の緊張を引き起こす原因としてストレスの多い人も頸肩腕症候群になりやすく、緊張が継続した後に症状が悪化するのです。
慢性的な運動不足の人も可能性が高いです。運動不足は筋肉の衰えを招き、症状を悪化させます。仕事柄でいえば、重い荷物を持ち運ぶ仕事では、通常の生活よりも肩や腕に負担をかけるので、可能性が高くなります。

頸肩腕症候群はどうやって診断しますか?

頸肩腕症候群は、健診では、身体的負担を身体計測・視力検査・血圧検査・上肢の動きや疲労感・症状の有無で確認します。精神的負担の判断は問診の回答です。例えば、握力は簡単で安全に測定ができるため、上肢の筋力測定の指標となります。
ピンチ力検査では、上肢の機能評価を行います。上肢の運動機能や圧痛点等の有無の検査では、指・手・腕等の運動機能の異常や運動痛等の有無の確認です。このような検査と医師による問診の結果で、上肢障害などが疑われるとさらに詳しく調べることになります。

頸肩腕症候群の原因・症状

パソコン作業

頸肩腕症候群の原因はなんですか?

頸肩腕症候群の原因の大部分は、仕事による過労です。例えば、指先を酷使するデータ入力作業のような細かい作業を続けていると、指や手の筋肉が疲労してきます。疲労感を覚えたまま放っておくと、次第に手や指に痛みやこりが発生し、悪化すると腫れ・手指の曲げのばしができない・けいれんなどの症状がでます。
運動不足もまた、原因のひとつです。筋肉は適当な運動を行なうことで血流をよくするのですが、それが阻害されるのです。その結果、血流が悪くなり筋肉が萎縮し、血流が減ってしまいます。そのことで、酸素や栄養素の不足がおき、疲労物質がたまるので、頸肩腕症候群の原因となるのです。
決められた姿勢を維持するために、不自然な姿勢・のびすぎ・ちぢみすぎた姿勢を繰り返した場合も頸・肩・背・腰に大きな負担をかけます。他にも、運動不足・精神や神経の疲れでも原因になりえます。

頸肩腕症候群の症状を教えてください。

症状は、原因となる仕事や動きによって様々ですが、一般的に手の指・手関節・上肢・肩こり・だるさといった症状がでます。最初は何となくだるかったり疲れやすかったりしていたものが、次第に痛みへと変化します。痛む箇所・痛むタイミング・痛みの度合いは人によって異なります。
頸・肩・腕・手にでた痛みやこりは、徐々に背中や腰といった広範囲に広がり、下肢がだるく感じたり足先がしびれたりする症状にもなるのです。症状がさらに悪化すると、頭が重かったり痛かったり耳鳴りがしたりすることもあります。

頸肩腕症候群の治療

あぐらをかく女性

頸肩腕症候群の治療はどのようなものですか?

最初に行われる治療法は、原因となっている部位への負担を減らすことです。それによってある程度は回復しますが、痛みやはれが強い場合は、薬や注射を用います。これによって、引き起こされる可能性のある不眠などの症状を抑えることが可能です。
部位の筋肉をほぐすことも重要です。理学療法・物理療法によってほぐしていきます。これには、ホットパック・超音波赤外線などの電気治療・入浴・気泡浴・マッサージなどがあります。
その他にも、頸椎けん引と呼ばれる治療法は頸や肩への痛みを軽減し筋肉の緊張をやわらげるのに有効です。場合によっては、手術により患部の状態を良くする可能性もあります。

頸肩腕症候群は予防できますか?

頸肩腕症候群は原因がある程度予測できるので予防することもできます。まず、長時間のデスクワークやコンピュータ作業を行う場合、正しい姿勢を保つことが重要です。デスクや椅子の高さを調整し、画面と目の高さを合わせるなどの工夫をしましょう。
作業の合間には定期的な休憩とストレッチを行います。長時間同じ姿勢を続けず定期的に休憩を取り首や肩の筋肉をストレッチすることで、筋肉の緊張を和らげることができます。適度な運動やストレングス・トレーニングも有効です。筋力を維持し、姿勢のサポートを強化するのに役立ちます。
筋力だけでなく精神的なフォローも重要です。ストレスは筋肉の緊張を引き起こす要因となりますので、リラクゼーション法や瞑想などのストレス管理方法を取り入れてみましょう。このような対策を継続的に実践することで、頸肩腕症候群のリスクを軽減できる可能性があります。

日常生活で気を付けることはありますか?

頸肩腕症候群は、慢性的なものであることが多いので、日常生活を改善することで症状が緩和する可能性があります。まず適切で充分な休養が基本になります。同時に、規則正しい生活を意識しましょう。療養生活中であってもダラダラと過ごすのではなく、メリハリのある生活を意識します。
病気といえば安静と思ってしまいがちですが、適当に体を動かしたり、運動・体操・スポーツも行った方が良い場合もあるのです。痛みがあるとどうしても運動不足になりがちです。適度な運動を意識しましょう。
また、食生活も大切です。太りすぎると筋肉の血液の流れが悪くなり、筋肉の力も衰えます。これにより、心臓や肺に余分の負担をかけることも考えられるのです。糖質のとりすぎに気をつけて、筋肉の状態を良くするために蛋白質を多く食べることを心がけ、バランスの良い食事を摂りましょう。
普段の生活でさらに睡眠を意識することにより、充分な快い眠りが疲労の回復を助けます。寝具に気を配るのも良い方法です。あまり厚くてふかふかな布団は、背骨の形をゆがめたり負担をかけたりしてよくありません。まくらの硬さや高さなども自分の体にあった気持ちよく眠れるものにします。
洋服や靴などをなるべくゆったりとして体が自由な動きになるようなものにしたり、バッグの持ち方を片方だけに偏らせないようにしたりといったことも大きな効果を出します。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

頸肩腕症候群 はさまざまな原因で起こりうる症候群です。そのため、これらの原因となる疾患を的確に把握して、早めに診断を確定することが重要になります。症状によっては、鎮痛治療だけでなく、適度の運動療法も必要ですし、精神的なフォローも必要かもしれません。
これらでどのように対処するかは、医師による診察と正しい判断によるでしょう。 重要なことは、早めに原因を確定し治療を始めるということです。

編集部まとめ

両手を広げる女性
普段から肩が凝ったなと感じることは少なくありません。

それがどれくらいの度合いかによって頸肩腕症候群として意識しなければならないかが決まってきます。

普段感じている痛みだからこそ我慢をせずに、まずはかかりつけ医に相談してみることが大切です。

この記事の監修医師