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低用量ピル服用で排卵はどうなる?排卵が止まるメリットや服用による副作用について紹介します

 更新日:2024/07/11
低用量ピル服用で排卵はどうなる?排卵が止まるメリットや服用による副作用について紹介します

欧米において、低用量ピルは女性が自らの意思で自由に避妊できる薬として広く知られています。日本にも導入されており、現時点で一番信用できる避妊方法だといえるでしょう。

しかし日本では低用量ピルに対して悪いイメージが先行し、避妊薬として普及が進んでいないのが現状です。まずは低用量ピルについて正しく知ることが大切なのかもしれません。

今回は、低用量ピルを服用することで起こる排卵の変化やメリットなどについて、詳しく解説いたします。

低用量ピルの服用を検討している方や低用量ピルについて不安がある方は、是非ご参考になさってください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

低用量ピル服用で排卵はどうなる?

体温計とカレンダー
低用量ピルは、主に排卵のタイミングをコントロールし妊娠を防ぐために服用する薬です。
では、具体的にどのような仕組みで排卵をコントロールするのでしょうか。
低用量ピルには、エストロゲンプロゲステロンという生理や排卵に関係する2種類の女性ホルモンが少量ずつ含まれています。排卵は性腺刺激ホルモンが多く分泌されることで起こりますが、低用量ピルに含まれるエストロゲンとプロゲステロンは、脳に働きかけ性腺刺激ホルモンの分泌を抑制できます。
すなわち、性腺刺激ホルモンを抑制することで卵胞の成熟を抑え、排卵させないという仕組みです。服用を開始してから数週間後には排卵を抑制でき、毎日忘れずに服用し続ける限り効果が持続します。
そのため、低用量ピルを正しく服用すれば非常に高い確率で避妊できるといえるでしょう。
また、排卵を抑制することで生理予定日をずらせるメリットもありますが、一方で避妊薬としては保険適応外になるなどの注意点もあります。
低用量ピルの服用を検討する際には、医師からしっかりと説明を受け、納得したうえで処方してもらいましょう。

低用量ピル服用で排卵が止まることのメリット

薬とカレンダー
低用量ピルで人為的に排卵を止めることへの不安や副作用の心配など、悪いイメージをお持ちの方も少なくありませんが、副効用によるさまざまなメリットもあります。
その副効用から、低用量ピルは避妊薬としてだけでなく、生理の悩みに対する治療薬や予防薬としても用いられているのです。
低用量ピルは服用することで避妊効果があるだけでなく、生理不順の改善プロゲステロンの減少各種疾患の予防など、さまざまな効果が期待できます。避妊をはじめとした低用量ピルのメリットについて、詳しく解説します。

避妊効果

低用量ピルのメリットとしてまず挙げられるのは避妊効果です。毎日服用し続けることで排卵を止められるため、ほぼ100%避妊できます。薬を服用するだけであるため、低用量ピルを用いた避妊方法は、女性が望まない妊娠から自身を守るためには非常におすすめの方法だといえるでしょう。
ただし、必ず避妊できるわけではないため、妊娠を望まない場合には他の避妊方法とも併用することをおすすめします。

生理不順の改善

低用量ピルは避妊薬としてだけでなく治療薬としても用いられており、ホルモン療法で生理不順の改善を目指す場合にも処方されることがあります。
生理はエストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンバランスが大きく変動することで起こるため、ホルモンバランスが崩れると生理周期も乱れてしまいます。
低用量ピルには女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが含まれており、服用するとホルモンバランスが整い生理不順の改善が期待できるのです。

プロゲステロンの減少

プロゲステロンの分泌を減らせることも、低用量ピルのメリットの一つです。プロゲステロンは排卵後から生理前にかけて多く分泌され、子宮内膜を妊娠しやすい状態に変化させます。生理周期の安定や妊娠には欠かせないホルモンです。
しかしプロゲステロンが多く分泌されることで、生理前の不快症状が強くあらわれるPMSや、日常生活に支障を来すほど生理が重くなる月経困難症に悩む方も少なくありません。
低用量ピルで排卵を抑制すると、ホルモンの変動がなくなりプロゲステロンの分泌も抑えられます。その結果、子宮内膜の増幅も防げるため生理を軽くできるのです。
最近ではこの副効用を目的に、PMSや月経困難症に悩む方たちが治療薬として低用量ピルを服用するケースが増えています。

各種疾患の予防

そのほかのメリットとして、低用量ピル服用による副効用から子宮体がん卵巣がんなど、さまざまな疾患を予防できることが挙げられます。
子宮体がんや卵巣がんを発症するリスクが高い疾患の一つに、子宮内膜症というものがあります。子宮内膜症は、子宮内膜が異常に増幅する疾患です。子宮内膜が異常な増幅を繰り返すことで、子宮に正常でない細胞が発生したり卵巣に血が溜まったりして、がんの発症リスクを高めてしまいます。低用量ピルを服用すると子宮内膜の増幅を抑制できるため、子宮がんの発症リスクを減らせるのです。また子宮内膜の増幅を抑えることで、月経過多卵胞嚢胞などの子宮や卵巣の疾患を予防できます。
加えて生理を軽くすることで出血量が減り、貧血予防にもなるのです。そのほかホルモンバランスを整えることでニキビの軽減に繋がったり、大腸がんや骨粗鬆症を予防したりなど、低用量ピルの副効用によるさまざまな疾患予防が期待できるのです。

低用量ピル服用を止めると排卵は再開する?

座って悩む女性
低用量ピルには避妊をはじめとするさまざまなメリットがあることが分かりました。しかし薬で強制的に排卵を止めることで、その後の排卵への影響を不安に思う方もいらっしゃるかと思います。
先述したとおり、低用量ピルにはエストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンが含まれており、ホルモンを摂取することにより排卵を抑制しています。そのため、服用を中止してホルモンの摂取がなくなると、身体は次第に元のホルモンバランスに戻り排卵も再開されるでしょう。
ただし、服用を中止するとすぐに排卵が再開されるわけではありません。薬の服用期間にもよりますが、排卵の再開までには数週間~数か月ほどかかることがあります。
服用期間が長いほど排卵再開までに時間がかかる可能性があるため、家族計画を立てる場合には、計画に合わせて服用期間を調整することも大切です。低用量ピルの服用で排卵を止めたり再開させたりするには、時間がかかるということは把握しておきましょう。

低用量ピル服用による副作用

吐き気を催す女性
ピルの服用が避けられる原因の一つとして、副作用の心配が挙げられます。
しかし、副作用が起こりやすいのは内服をはじめてから3か月程度であり、それ以降は治まっていくことがほとんどです。健康な方であれば大抵の場合は問題なく服用できます。また、低用量ピルを服用すると太るという情報もありますが、医学的根拠はなく間違った情報だといえるでしょう。
それでは、低用量ピルの副作用にはどのようなものがあるのでしょうか。起こりやすい副作用について、詳しく解説いたします。

吐き気・眠気

低用量ピルの主な副作用として、吐き気眠気があります。
低用量ピルを服用することでエストロゲンやプロゲステロンのホルモンバランスが変化し、生理前の不快症状である吐き気・眠気があらわれるケースがあるのです。
また、吐き気に関しては、低用量ピルの服用によって胃腸が刺激されることも原因だといえるでしょう。

不正出血

また、低用量ピルの副作用として不正出血が起こるケースもあります。
低用量ピルの服用から起こる不正出血は、子宮内膜の発育を抑えることで生理周期がずれることが原因です。
服用をはじめて日が浅いうちは頻繁に起こりやすく、出血量も多くなる場合があるでしょう。しかし、継続して服用することで頻度や出血量も次第に落ち着きます。

胸の張り・むくみ

胸の張り・むくみも低用量ピルの副作用としてよくみられます。
これらの症状も低用量ピルに含まれるプロゲステロンの影響によるものだと考えられます。しかし、胸の張り・むくみといった副作用も、服用を続けることで次第に落ち着くでしょう。
服用をはじめたばかりの段階では、プロゲステロンによるさまざまな不快症状があらわれることもあるのです。

低用量ピル服用についての不安は医師に相談しよう

安心する女性
先述したとおり、低用量ピルは副作用や人為的に排卵を止めることへの不安から、日本ではまだまだ普及が進んでいません。しかし、副作用は服用を続けることで次第に治まり、服用を中止すれば排卵を再開することも可能です。
人によっては副作用が長引くこともありますが、その場合は婦人科などで医師に相談することで解決へと繋がるでしょう。
また非常に稀ですが、血栓症をおこす可能性などピルには命にかかわる重篤な副作用が起こる可能性があり、以下の症状などがある方はピルの服用が禁止されています。

  • 血栓症の既往歴がある
  • 35歳以上の方で一日に15本以上煙草を吸う
  • 心臓・肝臓・腎臓に疾患がある
  • 乳がん・子宮がんを患っているまたはその疑いがある
  • 血圧・コレステロール値・中性脂肪値が高い
  • 糖尿病など耐糖能異常がある
  • 手術をしたばかりまたは手術の予定がある
  • 妊娠中・授乳中

上記のようにピルの服用が禁止されているケースもあるため、気になる症状がある方はピルの服用を始める前に医師に相談したうえで処方してもらうことをおすすめします。
低用量ピルは、健康状態やライフスタイルに合わせて適切に使用することで、避妊効果や生理の悩みの解決などが期待できるのです。生活に上手く取り入れることで、女性のQOL(生活の質)の向上にも繋がります。
低用量ピルについて不安に思うことや分からないことは、必ず医師に相談しましょう。

編集部まとめ

薬を見る女性
今回は低用量ピルについて詳しく解説いたしました。

副作用があらわれることもありますが、副効用により生理に関するさまざまな不快症状の治療薬としても用いられるため、生理にお悩みの方には注目度の高い薬だといえるでしょう。

旅行・出張・受験などのライフイベントに合わせて生理を調節できることも、大きな魅力の一つです。

また、望まない妊娠は女性を身体的や精神的に深く傷つけます。低用量ピルを服用することで、望まない妊娠から自身を守るだけでなく、新しい命が犠牲になることも防げるのです。

低用量ピルについて正しい知識を身につけ、上手に生活の中へ取り入れて女性のQOL向上を目指しましょう。

この記事の監修医師