『軟部肉腫』ができると現れる症状・原因はご存知ですか?【医師監修】
自分や身近な人が軟部肉腫と診断されて、初めてこの名前を聞く方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では軟部肉腫について以下の点を中心にご紹介します。
・軟部肉腫の症状や主な原因
・軟部肉腫の診断方法
・軟部肉腫の治療法
軟部肉腫について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
軟部肉腫とは
軟部肉腫とは何ですか?
軟部肉腫はどこで発症しやすいですか?
軟部肉腫は痛みを伴わないことが多く、しこりや違和感があるときに注意が必要です。特に神経の近くに発生すると麻痺などの症状を伴うことがあります。また、深部にできた場合は大きくならないと気付けず、発見が遅れてしまうケースも報告されています。
腫瘍は大きくなると血液の流れにのって転移していきます。肺に転移することが多いので、定期的に胸部CTが行われます。進行すると遠隔転移することもあり、なかでも転移する可能性が高いのが肺です。
30種類以上ある軟部肉腫の中でも発生頻度が高いのが悪性繊維性組織球種で、多くが大腿部にでき、高齢者によく見られます。次に発生頻度が高いのが40~50歳代に多い脂肪肉腫です。これら2種類が軟部肉腫の約半数を占めています。
以上の情報から、軟部肉腫は体の軟部組織、四肢、特に下肢に発生しやすいと言えます。また、痛みを伴わないことが多いため、しこりや違和感があるときには注意が必要です。
軟部肉腫の主な症状は何ですか?
軟部肉腫の原因は何ですか?
軟部肉腫の診断方法
軟部肉腫の診断方法は何ですか?
画像検査としては、単純レントゲン写真やCT、MRI、PET-CTなどがありますが、軟部肉腫の大きさや部位を診断するにはMRI検査が最も有用です。良性と悪性の判断が困難な場合にPET-CT検査が行われる場合もあります。特に手術計画を立てる上でMRI検査が重要です。また、軟部肉腫では、肺への遠隔転移を起こすことがあるため、病期の決定には胸部CTの施行が必要です。
確定診断を得るためには、腫瘍の一部を採取して病理組織診断を行う必要があります。一部の軟部肉腫には遺伝子の異常が報告されているため、遺伝子検査を合わせて行うことで、より正確な診断を得られます。
軟部肉腫はまれな疾患であるため、良性や悪性の鑑別が難しいケースも多く、診断が遅れたり、再発を繰り返して初めて悪性と診断されたりする場合もあります。正しく治療に取り組むためには、専門施設での正確な診断が重要です。また不適切な生検・手術が行われた場合には、より大きな手術が必要になることや、腫瘍周囲の正常な部分まで病気で侵されてしまうこともあるため、専門施設で生検を行うことが望ましいです。
軟部肉腫は子供も発症しますか?
子供の軟部肉腫は、大人とは異なる特性を持つことがあります。そのため、子供に特化した治療法や療養方法が必要となることがあります。治療は手術、薬物療法、放射線治療などがありますが、具体的な治療法は患者の状態や腫瘍の種類によります。
子供が軟部肉腫を発症した場合、その治療は子供自身だけでなく、家族全体に影響を及ぼします。子供の入院生活は、検査や治療に向き合うだけでなく、発達を促すための遊びや学びの場でもあります。そのため、家族や医療チームは、子供が治療を受けながらも可能な限り通常の生活を続けられるようにサポートすることが重要です。
軟部肉腫の治療法
軟部肉腫の放射線療法はどのようなものですか?
放射線治療は、高エネルギーの放射線を用いて腫瘍細胞を破壊し、その成長を抑制する治療法です。手術前に放射線治療を行うことで、腫瘍の大きさを縮小し、手術の範囲を小さくすることが可能となります。また、手術後に放射線を照射することで、残存する可能性のある腫瘍細胞を排除し、再発のリスクを低減することが期待できます。
しかし、放射線治療には副作用も存在します。皮膚の赤みや痛み、疲労感、食欲不振などが一般的です。また、放射線が健康な組織に影響を及ぼす可能性もあります。そのため、治療の適応と副作用の管理には専門的な知識と経験が必要となります。
以上のように、放射線療法は軟部肉腫の治療において重要な役割を果たしますが、その適用は患者の状態や腫瘍の位置、大きさなどにより異なります。したがって、治療方針は医師との詳細な話し合いを経て決定されます。
軟部肉腫の治療にはどのような薬が使用されますか?
特定の組織型の肉腫では、上記以外の特定の治療方法を用いる場合もあります。例えば、血管肉腫に対してはパクリタキセルなどのタキサン系薬剤が役立つことが示されています。また、胞巣状軟部肉腫に対しては、スニチニブやセディラニブ、チバンニチブなどが用いられることが報告されています。
一方、炎症性筋繊維芽細胞性腫瘍では、ALK遺伝子再構成のある場合には、クリゾチニブが役立つ可能性が示されています。隆起性皮膚線維肉腫に対しては、イマチニブによる改善の可能性が報告されています。
また、孤立性線維性腫瘍に対しては、スニチニブやソラフェニブ、トーリセルやアバスチンによる症状の改善が報告されており、JAK阻害薬という新薬の研究も進んでいます。
これらの情報は一部の軟部肉腫に対する治療法を示していますが、全ての軟部肉腫に対して同じ治療法が適用できるわけではありません。患者の状態や肉腫の種類により、治療法は異なります。したがって、具体的な治療法については医師との相談が必要です。
軟部肉腫の治療にはどのような手術がありますか?
手術は、腫瘍のまわりの健常な組織を含めて広範に切除することが必要で、そのためには術前にMRIなどの画像検査による十分な評価が行われます。腫瘍が重要な血管や神経に接しており、十分な切除範囲が担保できない場合には、手術前に化学療法や放射線治療を行い、切除範囲を小さくしてから手術に移る場合もあります。また、局所再発のリスクが高いと判断した場合には、術後に放射線照射を追加して行うこともあります。
手術による皮膚や筋肉の欠損が大きい場合は、形成外科による再建術を行うこともあります。また、腫瘍が骨や関節に接していれば、骨や関節を切除し、骨の再建や人工関節による関節再建を行うこともあります。
治療終了後に腫瘍の再発や転移を生じる可能性もあるため、治療後も定期的に通院し、検査を行うことが必要です。初診時あるいは治療経過中に遠隔転移を生じた場合、化学療法による全身治療を行う可能性があります。
軟部肉腫は再発する可能性がありますか?
また、軟部肉腫の治療は、腫瘍の種類や悪性度合いにより異なりますが、一般的には腫瘍を完全に切除する手術が主となります。しかし、腫瘍が肺など他の臓器に転移してしまった場合、その治療はより複雑となります。転移した箇所が多く、切除手術が困難な場合には、化学療法によって転移箇所を減らしてから手術を行うこともあります。
軟部肉腫の予後は、腫瘍の転移の可能性や治療の進行具合によりますが、転移の可能性が低い場合、手術によって90%が寛解を期待できます。また、転移しやすい軟部腫瘍でも60%が寛解を期待できるとされています。
以上の情報から、軟部肉腫は再発する可能性があると言えます。しかし、早期の発見と適切な治療により、そのリスクは大幅に減少することが可能です。そのため、体の異常を感じた場合は、すぐに医療機関に相談することが重要です。
軟部肉腫の予後を教えてください
以上の情報を基に、軟部肉腫は早期発見と適切な治療が重要であると言えます。また、再発や転移の予防には、医療だけでなく、自己管理や代替医療も重要な役割を果たすと理解できます。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
ここまで軟部肉腫についてお伝えしてきました。軟部肉腫の要点をまとめると以下の通りです。
・軟部肉腫は軟部組織に発生するがんの一種で原因は明らかになっておらず、症状は初期段階では症状が現れないことも多いが、痛みや腫れ、体重減少、疲労感などがある。
・軟部肉腫の診断は主に画像診断、生体組織検査、病理学的検査により行われる。
・軟部肉腫の治療法は肉腫を取り除く手術、手術前後の放射線療法、腫瘍の大きさを縮小したり再発を防いだりするための化学療法がある。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。