「季節性感情障害(SAD)」といううつ病はご存じですか?医師が監修!
冬や雨の日になると気分が落ち込んでしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。
季節の変動によって、気持ちが変化することは誰にでも起こりうることです。
ですが、冬の時期になると気分の落ち込みが激しく、その状態が何週間も続く場合は季節性感情障害(SAD)かもしれません。
季節変動に伴って気分が浮き沈みすることは誰にでも起こりうるからこそ、病気にかかっていることに気づかず、診断と治療を受けずに深刻化する方が増えています。
海外では多くの患者が報告されているにもかかわらず、日本ではまだまだ季節性感情障害(SAD)を認知している方が少ないのが現状です。
本記事では季節性感情障害(SAD)とはどういった病気なのか・発症する原因・症状・治療方法・予防対策について紹介していきます。
もし少しでも気分が上がらない状態が続いているのであれば、一読して理解を深めていきましょう。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
季節性感情障害(SAD)の原因や症状
季節性感情障害(SAD)とはどのような病気ですか?
そのため、春や夏になるとうつ症状が治まるのです。そのような症状の中で最も女性の発症率が多いとされる冬型SADを発症すると、まるで動物が冬眠準備をする際と同じ行動を引き起こします。季節に伴ってうつ症状が治まるため、診断に至っていない患者が多いと推定されている病気です。
原因を教えてください。
日本でも北海道や秋田県の高緯度地域から日本海側の福井県、北海道と真逆に位置する鹿児島県で調査を行っています。その結果、冬の日照時間が他の地域に比べて減少する気候特性を持っている北海道・秋田県・日本海側の福井県では比較的一般人でも気分の波や睡眠時間と体重に変化が大きく出ました。鹿児島県では梅雨の時期になると、気分の波が多くみられる研究結果となっています。また、うつ病を発症する原因の一つである脳内神経伝達系であるセロトニンは日光浴で活性化する物質です。
日光浴でセロトニンの分泌が行われますが、日照時間が減少するとセロトニンの活性化や分泌が促されず減少してしまいます。これらの結果から、うつ病を含む病気の発症原因は冬の日照時間の減少が大きく影響しているといえるでしょう。
どのような症状が出るのでしょうか?
いくつもの症状が当てはまる方は、すでに発症している可能性があります。
- 気力の低下
- 寝ても寝ても眠たい(過眠症)
- 食べ過ぎてしまう(過食症)
- 体重増加
- 引きこもり
冬になると急に食欲と睡眠欲が増加し、気分が落ち込んで外に出られない、まるで冬眠するような状態になってしまうなら病院へ受診しましょう。
季節性感情障害(SAD)になりやすい人の特徴は?
さらに、全く外出しない方も注意が必要です。セロトニンが日光浴によって分泌されないため、発症しやすくなるといえるでしょう。
季節性感情障害(SAD)になりやすい季節はいつですか?
さらに、低温や多湿の日が多くなる梅雨の時期も日照時間が減少するため発症しやすいといえるでしょう。
季節性感情障害(SAD)の診断や治療法
受診の目安を教えてください。
そのため、受診する目安がわからないという方も多いでしょう。うつ病によくみられる症状は以下の通りです。
- 気分の低下が何週間も続く
- 食欲不振
- 睡眠不振
- 集中力が続かない
- 好きだったものに興味が出ない
- 疲れやすい
- 落ち着きがなくなる
- 動きや思考が鈍くなる
- 自分自身を卑下してしまう
- 死や自殺について考えてしまう
季節性感情障害(SAD)はうつ病の一種であるため、複数ある症状の内5つ以上当てはまるのであれば病院へ受診しましょう。
気分が急激に落ち込んで、生きることが辛いと少しでも感じるのであれば、すぐに受診してください。
季節性感情障害(SAD)はどのように診断されますか?
いかに自分の状態を医師に相談できるかが重要になります。カウンセリングの内容に沿って治療方法が決まるため、辛いと感じていることを素直に医師へ伝えましょう。
どのような治療が行われますか?
- 薬物療法(通常抗うつ剤)
- 心理療法
- 認知行動療法
- 光治療
- 補完療法(サプリメントや漢方など)
これらの治療法の中でも、光治療が有効とされています。光治療とは、秋冬の季節の減少した太陽の光の代わりに照明器具の光を毎日浴びる治療方法です。
症状のレベルによって治療方法は異なりますので、医師と相談しましょう。
季節性感情障害(SAD)の早期発見や予防
季節性感情障害(SAD)を早期発見する方法はありますか?
もし、セルフ診断でうつ病の可能性が高いのであれば、精神科を受診しましょう。心の病は目に見えるものではないため、専門医に見てもらうことで早期発見に繋がります。近年は日本でも約15人に1人の確率でうつ病を発症している身近な病気です。「怠けている」や「私がダメなだけなんだ」と抱え込まず、辛い気持ちを改善させるために病院へ受診してください。
予防する方法を教えてください。
- 健康的でビタミンなどの栄養価が高い食事を心がける
- 気分やエネルギーのレベルをセルフチェックする
- 最低でも6時間以上の十分な睡眠を取る
- ストレス発散方法を確立する
- アルコールの過剰な摂取を避ける
- 孤独にならないように人とのつながりを大切にする
- 季節性情動障害(SAD)の種類に応じて、涼しい場所や暖かい場所へ旅行する
- 朝起きたら日光浴をする習慣をつける
- 体力温存できるよう工夫する
生活習慣を少し意識するだけで、予防効果があります。また、ストレスはさまざまな病気の原因となるため、ご自身でストレス発散方法を確立しましょう。
一人で抱え込まず、周りの人に心の感情を伝えられる状況に整えていくことも重要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
季節性感情障害(SAD)を含むうつ病は、日本人の約15人に1人が発症している非常に高い発症率の病気です。恥ずかしいとは思わず、専門医に相談しましょう。
編集部まとめ
今回は、冬や梅雨の時期にみられるうつ病の一種とされている、季節性感情障害(SAD)について詳しく解説していきました。
季節性感情障害(SAD)を含むうつ病の発症リスクは、約15人に1人の割合です。
さらに、日照時間が減少する高緯度地域にお住まいの方なら誰にでも起こりうる症状だと判明しています。
気分や心の変化に少しでも違和感がある方は、すみやかに精神科へ受診しましょう。