「網膜症」の症状や原因はご存知ですか?「糖尿病」の3大合併症で失明の可能性も!
「網膜症」という病名は聞いたことがあるけれど、どのような病気なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
網膜症は、日本の成人が失明する原因の中で最も多い病気です。さらに5人に1人が発症し、糖尿病の予備群も含めると約1,370万人だと推計されて疑問視されている糖尿病の3大合併症の内の1つとしても知られています。
さらに網膜症は病名ではなく、総称です。どのような病気なのかや症状について詳しくみていきましょう。
また、治療方法や予防についても解説していきますので、ぜひ一読ください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
網膜症の症状と原因
網膜症はどのような病気ですか?
また網膜症とはいっても、さまざまな病気を含めた総称のため、網膜疾患とも呼ばれています。網膜症といわれる代表的な8つの病気は、以下の通りです。
- 糖尿病性網膜症
- 未熟児網膜症
- 黄斑円孔
- 黄斑前膜
- 黄斑浮腫
- 網膜静脈分岐閉塞症
- 裂孔原性網膜剝離
- 中心性漿液性脈絡網膜症
網膜症を発症する病気は数多くありますが、その中でも糖尿病の発症に伴って糖尿病性網膜症が起こる可能性が高いとされています。
どのような症状がみられますか?
しかし、網膜症にはさまざまな症状がみられています。視野が狭くなったり視力が低下したりする以外の症状は、以下の通りです。
- 物体が小さく見えたり大きく見えたりする
- 視界が歪んで見える
- 距離感を掴めなくなる
- 視界が暗くなる
- 視界に糸くずや斑点のようなものが見える
- 物体を認識しにくくなる
網膜症の症状を自覚した時には、すでに網膜症が重症化していることがほとんどなケースが多いことを心に留めておいてください。その上で網膜症の治療を行う際は、どのような症状が出ているのかを検査します。
しかし、見え方においては患者にしかわからない部分も多いためカウンセリングはしっかり受けましょう。
発症の原因を教えてください。
まず網膜症とは、眼の一番奥底にある毛細血管が集まる場所を覆っている神経の膜である網膜に、何らかの障害が起きる病気です。
糖尿病性網膜症の場合は、血糖値が高い状態で続くことにより毛細血管への負荷が非常に大きくなります。負荷がかかった毛細血管はもろくなり、血管の透過性が高いまま進むことで血管を詰まらせてしまうのです。
血管が詰まると、網膜に酸素や栄養素が十分に届かなくなり壊れてしまうことが、網膜症を発症する原因になります。
網膜症が原因で失明することはありますか?
また日本の成人が失明する原因では、網膜症が最も多いとされています。発症の原因でも先述していますが、網膜に酸素や栄養素が十分に届かなくなり壊れていくと発症するのが網膜症です。
このままの状態が続くと、眼のレンズとしての役割をもつ硝子体で出血が起こり失明に至る場合があります。
網膜症の検査と治療
受診するべき網膜症の初期症状を教えてください。
糖尿病を発症すると、網膜症を発症するリスクが高くなるためです。網膜症は糖尿病の3大合併症なので、内科医と眼科医が連携を取るために紹介を受けることもあります。かかりつけ医と相談したうえで、網膜症の健診を受けることがおすすめです。
どのような検査で診断されますか?
- 網膜の毛細血管に異常がないかを確認する蛍光眼底撮影
- 瞳孔を広げて眼底の様子を確認する精密眼底検査
- 網膜の浮腫などを確認する光干渉断層計(OUT)
これらの検査によって、網膜の毛細血管に発症するごくわずかな出血や黄斑浮腫まで見つけることが可能です。
また、診断を受けるまでに数回の検査を受診する必要があります。眼科の受診を中断しないようにしてください。
網膜症の治療方法を教えてください。
糖尿病を改善するインスリン療法だけでなく、網膜症を改善するための手術を行うことが多いです。治療方法の種類は以下の3つになります。
- 網膜レーザー光凝固術
- 硝子体手術
- ステロイド薬眼局所投与
網膜症がどの段階かによって治療内容は異なるため、カウンセリングを受けた上で治療方法は医師と相談しましょう。
手術した場合の入院期間を教えてください。
また、手術を受ける前には血液検査をはじめとするレントゲン検査や心電図検査を行ったうえで、手術が可能か判断されます。余裕をもったスケジュールを組んでおくことがおすすめです。
網膜症の予後と予防
網膜症は治りますか?
近年の網膜症治療では、硝子体手術後に0.5以上と良好な視力を維持できた症例が6割を超えてきています。血糖コントロールと定期的な健診を受けることで、網膜症の改善を維持できるでしょう。
確実に完治するとはいえませんが、網膜症の治療方法は技術と共に進化しており、比較的安全で有効な手段といえます。
網膜症の悪化を予防する方法を教えてください。
また網膜症の治療方法でも先述していますが、網膜症の発症リスクを高める糖尿病を改善するための血糖コントロールは必ず行う必要があります。
まずは糖尿病にならない食事や運動などの生活改善を徹底しましょう。生活の改善が難しい場合はカウンセリングを受けることが可能です。
また、糖尿病や眼に違和感がある場合はすみやかに眼科を受診してください。早期発見ができるかどうかでも、悪化の予防方法は変化します。不安を感じる方は、眼科へ定期健診に行くのもおすすめです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
血糖コントロールをしっかり行うことももちろん大切です。早期発見や早期治療を求めているならば、内科や眼科の定期健診を受けましょう。
定期健診を受けることは、病気から自分を守る最大の予防方法といえます。
編集部まとめ
今回は、日本の成人が失明する原因の中で最も多い病気とされている、網膜症について詳しく解説していきました。
網膜症を発症するリスクは、5人に1人の割合で発症し、予備群も含めると約1,370万人だと推計されて問題となっています。網膜症は糖尿病の3大合併症の内の1つとしても知られています。
網膜症を予防するためには、糖尿病にならないための生活習慣を心がけましょう。また、早期発見と早期治療のためには、内科と眼科の定期健診がおすすめです。
少しでも眼に違和感がある方は、すみやかに眼科へ受診しましょう。