

吉田先生
小林さんが網膜剥離に気付いたきっかけについて教えていただけますか?
小林さん
最初に気付いたきっかけは飛蚊症でした。周囲にも飛蚊症の人が多く、年齢的にも仕方ないと思っていました。
吉田先生
その後の経過について教えてください。
小林さん
ある日、飛蚊症とは違う小さな黒い点が見えるようになり、徐々にその数が増えて大きくなりました。そこで眼科に行き、網膜剥離の診断を受けました。
吉田先生
網膜剥離と聞き、どのような心境でしたか?
小林さん
診断と同時に手術の話をされて驚きました。「手術は2日後の生放送が終わってからでも良いですか?」と先生に聞いたところ、失明するかもしれないと言われ鳥肌が立つほど怖くなったことを覚えています。
吉田先生
すぐに手術は決意できましたか?
小林さん
その日は決意できずに帰宅しましたが、先生から「朝日が昇るか夕陽の沈むような見え方になったら来てください」と言われていました。翌日、実際に朝日が昇るような見え方になり、すぐに病院へ行き手術を受けました。
吉田先生
それで手術を決心されたのですね。
小林さん
失明ほど怖いことはありませんからね。
吉田先生
小林さんは定期的に目の検査はされていましたか?
小林さん
もともと検査フェチで、MRIやCT、血液検査、予防接種は頻繁に受けていましたが、目の検査はしていませんでした。人間ドックや健康診断は半年〜1年に1回受けるものの、目の検査は全く盲点でした。
吉田先生
症状がなければ、なかなか眼科を受診する機会もありませんよね。飛蚊症はいつ頃から自覚されていたのですか?
小林さん
網膜剥離と診断される半年くらい前からです。周囲にも同じような症状がある人も多く安心していましたが、そのままにしてはいけませんね。飛蚊症の原因は何ですか?
吉田先生
飛蚊症とは、目の中にある濁り成分が見えている状態です。目の中は透明なゼリー状の物質(硝子体)で満たされており、加齢に伴って液体成分とゲル状成分に分かれていきます。ゲル状成分を構成するコラーゲンが凝集することで濁りとなり、黒い点が見えるようになります。これが飛蚊症の原因です。
小林さん
一般的に飛蚊症を自覚する年齢は何歳くらいからですか?
吉田先生
飛蚊症を自覚する年齢は50〜60代が最も多いとされています。
小林さん
飛蚊症と網膜剥離にはどのような関係があるのでしょうか?
吉田先生
加齢に伴って硝子体が目の奥の網膜から分離することを後部硝子体剥離と呼びます。後部硝子体剥離が生じると自覚症状として飛蚊症が悪化することが多いですが、これ自体は加齢による自然な現象で多くの場合問題ありません。しかし、網膜に弱い部分がある場合、後部硝子体剥離に伴って網膜が引っ張られ網膜に穴が開きます。
小林さん
網膜に穴が開いてしまうのですね。
吉田先生
はい。最終的には硝子体中の液体成分が穴から入り込み、網膜が眼球後壁からはがれていきます。それが網膜剥離です。
小林さん
網膜には、どのような働きがあるのですか?
吉田先生
光は角膜と水晶体を通り網膜に届きます。入ってきた光は網膜で電気信号に変換され視神経を通じて脳に伝わり、画像として処理されます。目の構造はフィルムカメラに似ており、レンズの働きをしているのが角膜と水晶体、フィルムの働きをしているのが網膜です。
小林さん
つまり網膜剥離になると、光などの情報を映し出せなくなってしまうのですね。網膜剥離の初期症状について教えてください。
吉田先生
網膜剥離の初期症状には飛蚊症と光視症があります。飛蚊症とは目の中に小さいゴミのようなものが漂って見える症状で、光視症は視界に光がピカピカと見える現象です。網膜剥離が進行すると、視野欠損や急激な視力低下が生じることもあります。
小林さん
ある日、突然起きるのが一番怖いですよね。
吉田先生
日常では両目でものを見ているため、片目に視野欠損や視力低下が生じても気づきにくく、痛みも伴わないので発見が遅れる場合があります。
小林さん
痛みがないと後回しにしてもいいような気持ちになりますよね。今考えると、異常を感じて受診してよかったと思いました。
吉田先生
そうですね。
小林さん
どういった人が網膜剥離を発症しやすいのでしょうか?
吉田先生
網膜剥離の危険因子として遺伝、加齢、近視、白内障の術後、アトピー、外傷があげられます。
小林さん
当てはまる人は多そうですね。
吉田先生
しかし、網膜剥離は目を外側から見ただけでは診断できません。人間ドックや健康診断で眼底写真を撮ることがあると思いますが、よほど進行していない限り眼底写真での診断も難しいのが現状です。
小林さん
そうなのですか?
吉田先生
網膜剥離の診断には、まず目薬で瞳孔を開き網膜を隅々まで診察する眼底検査が必要です。
小林さん
一般的な検査ではおこないませんよね?
吉田先生
そうですね。そのため飛蚊症を自覚したら早めに眼科を受診することが重要です。
小林さん
飛蚊症は、周囲にも同じような人がいるというだけで侮ってはいけませんね。