「アイゼンメンジャー症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?
アイゼンメンジャー症候群(肺血管閉塞性病変)は、肺動脈にある血管が狭くなることで、肺動脈高血圧症を引き起こす疾患です。この病気は、通常は若い女性に見られますが、男性にも発症することがあります。病気の原因ははっきりしておらず、遺伝的な要因や環境的な要因などが関与していると考えられています。
今回は、アイゼンメンジャー症候群に関する症状や治療法について、Medical DOC編集部に伺いました。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
アイゼンメンジャー症候群とは
アイゼンメンジャー症候群とはどんな病気ですか?
肺血管の抵抗がだんだんと増えていくことで、最終的には重篤な肺高血圧が引き起こされ、右から左への短絡が進行性に増大して、両方向の短絡が生じることになります。
これにより、チアノーゼや低酸素症が起こり、後に述べる複数の合併症が避けられなくなります。
身体の所見は、基本的な異常や病態生理学的な異常の程度によって変わります。
診断は心エコー検査や先端技術の画像検査、心臓カテーテル検査をもとに行われます。
アイゼンメンジャー症候群を発症すると、肺血管抵抗の増大と肺高血圧は逆戻りできなくなり、もともとの異常を根本的に改善することが難しくなります。
そのため、治療は通常、支持療法が中心となりますが、症状が重篤な場合には、心肺同時移植が一つの選択肢となることがあります。
心内膜炎の予防がお勧めされます。
アイゼンメンジャー症候群の原因はなんですか?
通常、血液の循環は、左心系(体全体に血液を送る体循環)と右心系(肺に血液を送る肺循環)が直列につながっています。
これは、左心系と右心系の間に血液の迂回ルートが存在しない状態が正常であるということです。
ただし、心室中隔欠損症や動脈管開存症などの先天性心疾患がある場合、左心系と右心系の間にバイパスルートができてしまいます。
それにより、高圧の左心系から右心系へと異常な血流がバイパスルートを通じて流れ込むことになります。
右心系への高い圧力や過剰な血流は、肺血管に継続的なダメージを与えます。
そして、この状態が放置されると、治療が困難な肺血管の狭窄(狭くなること)が引き起こされ、肺の血圧が異常に高くなります。
肺高血圧がある程度進行すると、右心系の圧力が左心系の圧力を上回る異常な状態になり、バイパスルートを通じた血流が右から左へと逆流することになります。
このような血液の流れの状態を、アイゼンメンジャー症候群と言います。
アイゼンメンジャー症候群の症状はどんなものがありますか?
さらに、低酸素状態が長期間続くと、指がバチのようになります。
階段の昇り降りなどの軽い運動でも呼吸が苦しくなり、症状が悪化すると安静時でも息切れを感じるようになります。
加えて、動悸や胸痛、失神、喀血(あるいは気管支からの出血)、ふらつき、末梢の感覚異常、頭痛、浮腫(むくみ)などの症状が現れます。
不整脈や血栓(血のかたまり)による脳卒中、突然死などの合併症も起こることがあります。
特に、アイゼンメンジャー症候群を持つ方が妊娠されると、妊婦さんや赤ちゃんに大きな影響が及びます。
死に至るリスクも高くなるため、避妊や妊娠初期の中絶が勧められることがあります。
妊娠を続けたい場合には、主治医と相談し、慎重なケアが必要とされます。
アイゼンメンジャー症候群は遺伝しますか?
遺伝的な原因としては、両親から受け継いだ免疫系の異常が考えられます。
アイゼンメンジャー症候群の遺伝パターンは、常染色体劣性遺伝です。
つまり、親から1つの異常遺伝子を受け継いだ場合に発症することがあります。
ただし、遺伝的な要因が関与する症例は比較的少数で、多くは自然発生的に発症します。
アイゼンメンジャー症候群の診断方法はなんですか?
心臓カテーテル検査は、肺動脈圧や肺血管抵抗、肺血管拡張薬に対する反応を測定する目的で行われることが多いです。
血液検査では、ヘマトクリット値が55%以上の赤血球増加が見られます。
赤血球の代謝が亢進していることは、鉄欠乏(例えば、小赤血球症)、高尿酸血症、高ビリルビン血症を示すことがあります。
鉄欠乏症は、トランスフェリン飽和度とフェリチン値を測定することで特定できます。
胸部X線では、通常、肺動脈の中心部が拡張し、末梢肺血管の陰影が消失し、右心が拡大しているのが分かります。
心電図では、右室肥大や右軸偏位の他、時々右房拡大も確認できます。
アイゼンメンジャー症候群の治療法
アイゼンメンジャー症候群の治療法にはどのようなものがありますか?
従って、早期段階で基本的な疾患への治療を実施することが重要です。
アイゼンメンジャー症候群が発症した際には、血管拡張薬と心不全治療薬を併用して治療を進めます。
心不全の症状に応じて使用する治療薬は異なりますが、肺血管の拡張効果を目指してボセンタンやエポプロステノールなどの薬物が用いられます。
アイゼンメンジャー症候群が非常に重度な状況の場合、心肺移植が検討されることもあります。
アイゼンメンジャー症候群の症例にはどのようなものがありますか?
しかし、このような患者のほとんどは、形態異常の治療が実施されない場合、乳児期の早い段階で亡くなります。
アメリカでは、原因となる奇形の早期発見と根本治療によって、発症率が大幅に減少しています。
アイゼンメンジャー症候群の対策と禁忌
アイゼンメンジャー症候群は予防できますか?
この症候群が発症してしまうと、心肺同時移植を除く特定の治療法はありませんが、肺血管抵抗を低減する薬剤(例えば、プロスタサイクリン誘導体、エンドセリン拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬)が効果的であることが知られています。
アイゼンメンジャー症候群の禁忌はなんですか?
在宅酸素療法や肺高血圧に対する経口薬、静脈内投与薬が効果的であるという報告が存在します。
使用を検討する際には、医師と相談し、適切な薬を選択してください。
肺塞栓症の予防のためのアスピリンやワルファリンといった薬剤は、通常は用いません。
ただし、別の目的での使用がある場合があるため、医師と相談してください。
風邪症状がないのに熱が持続したり、頭痛が強い場合には、心内膜炎や脳膿瘍の可能性がありますので、担当の専門医にご相談ください。
アイゼンメンジャー症候群の場合、妊娠や出産は避けるべきです。
アイゼンメンジャー症候群の患者さんが気をつけるべきことは何ですか?
命に関わる危険があるため、アイゼンメンジャー症候群の患者は、避妊や妊娠初期の中絶を検討することが推奨されます。
状況によっては、担当医との相談を通じて注意深くケアを行うことが重要です。
また、アイゼンメンジャー症候群が発症すると、根本的な治療となる先天性心疾患への手術が困難になります。
このため、病気の進行を早期に抑える対策が必要です。
編集部まとめ
アイゼンメンジャー症候群の治療には、プロスタサイクリンなどの肺動脈拡張薬や右心不全に対する治療、塩分制限や利尿薬などの対症療法、在宅酸素療法が一般的に用いられます。
ただし、原疾患の手術は禁忌であり、妊娠や出産も禁止されます。
予防のためには、基礎にある心奇形に対する修復手術を適切な年齢で施行し、医師の指示に従い、治療を受けることが必要です。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。