「ロコモティブシンドローム」の自覚症状・原因・予防法はご存知ですか?
ロコモティブシンドロームとはロコモとも呼ばれ、近年注目されている疾患の1つです。
立ったり、歩いたりする運動機能が低下している状態を指し、移動に助けが必要なため介護が必要になる場合もあります。
介護と聞くと高齢者のイメージがあると思われますが、実は若いうちから予防行動を取ることが大切といわれています。
腰や膝が痛い、階段よりエスカレーター・エレベーターを選ぶなどに心当たりがある方はロコモ予備軍かもしれません。
この記事では、ロコモの症状・原因・受診・予防法について解説していきます。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
ロコモティブシンドロームの症状と原因
ロコモティブシンドロームとはどのような病気でしょうか?
運動機能が低下すると、立つ・座る・歩くといった移動動作に助けが必要となり、自立した生活が難しくなります。高齢化が進む日本において介護は深刻な問題となっていますが、介護が必要になった原因の1位は高齢による衰弱・骨折や転倒・関節疾患といった運動器の障害です。
つまりロコモは、介護が必要になる危険性が高い状態ともいえます。実際の寿命とは別に、介護を必要とせず自分の力で日常生活を送れる期間を健康寿命といいます。この健康寿命を伸ばすためにロコモの予防が重要です。
どのような症状がみられますか?
テストは立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の3つです。立ち上がりテストは高さ40cmの台に腰かけて反動をつけずに立ち上がれるかどうかを測定します。出来るだけ大股で2歩歩いてその距離を測るのが2ステップテストです。
最後のロコモ25は25の質問に回答して身体や生活の状態を調べるものです。ロコモ度1・2・3のどの段階にも該当しない場合はロコモではありません。心配な方はテストを受けてみてください。
ロコモティブシンドロームは何歳から注意が必要ですか?
疾患によるロコモは何歳でもあり得るため、異常を感じたら出来るだけ早い段階で受診をすることが重要です。加齢によるロコモは40代から注意が必要といわれています。
人間の筋力や骨密度は30歳前後でピークを迎え、その後ゆっくりと低下していくのですが、50歳を過ぎると急激な低下に加えて、怪我・病気が重なるためロコモのリスクが一気にあがります。そのため、40代を迎えたらロコモに注意が必要です。
ロコモティブシンドロームの原因を教えてください。
その他には、怪我・障害も原因の1つです。特に骨粗鬆症・変形性関節症・変形性脊椎症などの運動器疾患はロコモのリスクが高くなるため要注意です。
ロコモティブシンドロームの受診の目安と受診する科
ロコモティブシンドロームに自覚症状はありますか?
ロコモ度テストは項目が多いため自分自身で確認することが難しい場合は、日本整形外科学会が紹介しているロコモチェックがおすすめです。7つの質問に回答するだけで誰でも簡単にロコモかどうか診断できるので気になる方はチェックしてください。
受診を検討する目安を教えてください。
1度ロコモ度テストを実施してみて、ロコモ度2以上の場合は専門医の受診をおすすめします。ロコモ度1でも、痛みを伴っている場合は受診を検討してください。
ロコモティブシンドロームを疑う場合は何科を受診しますか?
運動器の病気があれば病気の治療を行い、疾患や障害が原因であれば他科の受診が必要です。まずは、整形外科を受診して原因を特定することが大切です。
治療方法を教えてください。
これらの保存療法を行っても痛みが継続する場合やすでに日常生活に著しい支障がある場合は手術が適用されることもあります。例えば、変形性膝関節症では半月板や軟骨が損傷されて歩行困難に陥る痛みに達した場合は手術が必要です。
その他腰部脊柱管狭窄症が進行すると下肢の痛み・しびれに加えて下肢筋力低下・知覚鈍麻・膀胱直腸障害が生じるため、手術適用になります。痛みがない場合は、ロコトレと呼ばれる運動療法が有効です。
ロコトレは片足立ちとスクワットの2種類のトレーニングであり、自分のレベルに合わせて安全に行えます。また、筋肉や骨を丈夫にするために食事療法も大切な治療の1つです。
ロコモティブシンドロームの予防と放置するリスク
ロコモティブシンドロームは治りますか?
原因は何かを見極めて、状態に合った対処方法が大切です。そのため治療は、薬物療法・運動療法・食事療法を組み合わせて行われることがほとんどです。
運動療法・食事療法は自身の生活習慣が鍵となるため、ロコモを治すためには生活習慣の見直しが大切といえます。
予防する方法を教えてください。
エレベーターではなく階段を使用する・散歩に出かける・スクワットを3回だけやるなどの小さなことで構いません。日常生活の些細な動作を増やすだけで1日の運動量はあがります。3日坊主にならず毎日続けることが重要であるため、自分に合った運動を行うと良いです。
また、健康は食べ物で決まるといっても過言ではありません。太り過ぎ・痩せ過ぎを防ぐためにもバランスの良い食事をとって、内面からの健康を意識しましょう。
ロコモティブシンドロームを放置するとどうなりますか?
結果として、歩く・動くことが大変になればロコモに該当し、移動の機会が減ることで更に筋力の低下を招きます。悪化すると、動くことに対して転倒するのではないか・痛みが増すのではないかという思いから、精神的な症状も出現するかもしれません。
心身の機能が低下すれば、寝たきりのリスクは上昇します。要介護の1歩手前の段階で速やかに受診・治療を行いましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
健康寿命を伸ばすために、若いうちから意識的に動く機会を作り出すことが大切です。簡単なロコトレから始めてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
ロコモティブシンドロームの症状・受診・予防法について解説しました。下半身に痛みを感じたり、動きにくいと思ったりしたら1度ロコモ度テストを行ってみてください。
ロコモ度1に該当した場合は整形外科の受診を検討しましょう。ロコモの予防は、健康寿命を伸ばして、自立した生活を送るためにも、大切なことです。
年をとってから予防するのではなく、若いうちから動く習慣を身につけて、ロコモを予防しましょう。
自分の足で色々な場所に出かける楽しみを続けられるような身体作りを目指してください。