「エナメル上皮腫」の原因・放置するとどうなるかご存知ですか?医師が監修!
エナメル上皮腫とは、歯を形成するエナメル器という組織に発生する腫瘍のことを指します。ほとんどが良性腫瘍であるため、症状を感じるケースは多くありません。
そのため、検査で発見されたときには状態が進行している場合が多く、周囲組織への増殖がみられたり、まれに悪性腫瘍となる可能性があったりするため、早期に治療を行うべきでしょう。
今回は、エナメル上皮腫とはどのような特徴を持つ病気であるのか、解説をします。また、病気の原因・発症率・初期症状の特徴・治療方法・再発の可能性・予後の特徴・病気を放置するリスクについて解説をします。
この病気の可能性を感じた場合は、早めに専門医に相談をして対応をしましょう。
監修歯科医師:
酒向 誠(酒向歯科口腔外科クリニック)
目次 -INDEX-
エナメル上皮腫の特徴
エナメル上皮腫の特徴を教えてください。
顎骨(がっこつ)に発生するのが特徴で、体幹など他の部位には発生しません。腫瘍が嚢胞(のうほう)のようになることもあります。
顎骨の中でも、特にあごの後方部に発生するケースが多く、大きくなると顎骨が膨隆して顔の見た目が変化する場合もあります。
どのような症状がみられますか?
口腔内では、歯の位置の変化・萌出(ほうしゅつ)障害・歯列不正・歯の不安定さなどが発生することがあります。下あごの箇所では、下唇の知覚能力が低下したり麻痺及びしびれを感じたりするケースがあるでしょう。
発症の原因を教えてください。
しかし、エナメル器に腫瘍が発生するメカニズムが明確になっていないため、根本的な原因は不明であると考えられています。
現状では若年層に発症がみられやすい点や、男性の方が若干多いものの、男女の性別における発症率の差が大きくない点などが報告されています。
発症率は高いのでしょうか?
上あごでの発症率が10%程度であるのに対し、下あごでの発症率はおよそ90%です。
また、下あご側では、大臼歯部での発症が最も多く、次いで下顎枝部・前歯部・小臼歯部の順に多いという研究結果があります。上あご側では、大臼歯部・前歯部・後臼歯部・小臼歯部の順に多いです。
エナメル上皮腫になりやすい方の特徴はありますか?
また、女性が40%程度であるのに対し、男性が60%程度であり、若干男性の方が多いという報告もあります。腫瘍の発生要因が明確になっていないため、どのような性質の方が罹患しやすいのか、明確になっていないのが現状です。
そのため、予防の方法も明確になっておらず、あらかじめ対策を取ったり予防をしたりすることが難しい病気ともいえるでしょう。
エナメル上皮腫の治療方法
受診を検討するべき初期症状はありますか?
ある程度病状が進み、顔の左右が非対称になってきた場合に気付くことも多いでしょう。口腔内において、歯の位置の移動・歯列不正・歯の不安定さなどがみられた場合には、早めに専門医を訪ねて受診することをおすすめします。
どのような検査で診断されるのでしょうか?
X線で撮影した場合の透過性をチェックしたり、隔壁構造がみられないかを確認したりして、病状の進行具合を認識します。エナメル上皮腫は進行が遅く、痛みを伴わないケースが多いため、問診や触診での検査が難しいです。
歯の矯正治療中など、歯科治療の過程で発見される例が多いため、定期的な歯科健診を受けるのも早期発見につながるでしょう。
エナメル上皮腫の治療方法を教えてください。
- 顎骨切除法
- 顎骨保存外科療法
顎骨切除法は、周囲のあごの骨とともに腫瘍を切除する方法になります。あごの骨を大きく切除した場合は、他の部位から骨を移植する再建手術が必要になるケースが多いです。
顎骨保存外科療法は、周囲の骨をできるだけ残して、あご本来の形状や働きを維持することを主眼に置いた方法です。あごへのダメージが少ない方法ですが、腫瘍の再発事例が多いという欠点もあります。
エナメル上皮腫の治療期間を教えてください。
手術の内容によって違いはありますが、少なくとも10年間は経過観察の目的で健診を受けるのが一般的です。
長期的な治療期間が必要になりますが、場合によっては悪性腫瘍となって危険な病状を発現する可能性もあるため、慎重に対応しましょう。
エナメル上皮腫の予後と放置するリスク
エナメル上皮腫は再発するのでしょうか?
エナメル上皮腫は良性腫瘍で、症状を伴わないケースが多いです。そのため進行に気付きにくく、場合によっては悪性腫瘍に変化する事例も報告されているため、注意が必要です。
手術後2年以内に再発した事例は、5割を超えているという報告もあります。手術を終えたからといって安心するのではなく、必ず定期的な健診を受けて再発に備えましょう。
エナメル上皮腫は死亡率が高いのでしょうか?
腸骨再建などの手術を要する場合も起こるリスクのある病気です。エナメル上皮種の可能性がある場合は、早めに治療を進めることをおすすめします。
エナメル上皮腫を放置するリスクを教えてください。
まれに悪性腫瘍になるリスクがあるため放置するのはおすすめできません。また、顔の変形・バランスの悪さが進行するリスクがあります。
さらに、歯列不正や歯の不安定さにより食生活への悪影響が及ぶケースも懸念されます。軽視することなく、専門医と相談しながら適切な治療を受けましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、悪性腫瘍に変化する可能性もあるため、ぜひ治療を検討してください。定期的な歯科健診を受けて、早期発見につなげるのもおすすめです。
編集部まとめ
エナメル上皮腫は痛みを伴うケースが少なく、症状の進行も遅いため、気付かない方も多いでしょう。良性腫瘍であるケースが多いため、治療するまでもないと判断する方も多いかもしれません。
しかし、病状の進行により顔の見た目が変わったり、歯並びに悪影響が及んだりします。悪性腫瘍となって命に関わる重大な病気になるケースもまれになります。
この病気が見つかった場合は、決して放置することなく、治療を受けることを検討しましょう。また、治療後は再発に備えて定期的な健診を受けることをおすすめします。