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「心房粗動」とは?治療・原因・心房細動との違いも解説!医師が監修!

 更新日:2023/08/17
「心房粗動」とは?治療・原因・心房細動との違いも解説!医師が監修!

心臓が痙攣を起こしたようになる心房粗動は、ときに命の危機を引き起こします。

心房粗動は特に心臓にトラブルを抱えてない方でも起こりうるので、くれぐれも注意してください。

すでに心疾患があるという方は、心房粗動のリスクを下げるためにも、医療機関で適切な治療を受けることが大切です。

では、どのような症状が出た場合に心房粗動を疑えばよいのでしょうか。本記事では、心房粗動の症状・原因について詳しく解説します。

あわせて心房粗動の診断方法や治療法にも触れています。ぜひ最後までご覧ください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

心房粗動の特徴

胸に手を当てる女性

心房粗動はどのような状態なのか教えてください。

  • 心房粗動は不整脈の一種で、心臓が規則的なリズムで1分間に240回以上収縮する状態です。心拍のリズムに乱れはないものの、拍動スピードが異常に速くなるため、心臓が痙攣を起こしたような状態になります。
  • 心房とは心臓の上部左右にある部屋です。ちなみに心臓の下部左右にある部屋を心室と呼びます。心臓が脈を打つのは、「動け」という電気信号が心房から心室に伝わるためです。
  • 心房粗動は、なんらかの原因でこの「動け」という電気信号が通常よりも多く心房に伝えられることで起こります。通常であれば、電気信号は心房から心室にそのまま伝わります。
  • しかし心房粗動では信号の数・スピードがあまりに大きいため、すべての信号が心室に伝わるとは限りません。よって心房粗動が起こっても、心室には大きな悪影響が出ないこともあります。

心房粗動の代表的な症状が知りたいです。

  • 心房粗動の代表的な症状は次の通りです。
  • 動悸
  • 胸痛・胸の違和感
  • 倦怠感
  • 息切れ
  • 意識消失
  • もっとも目立つのは動悸です。心房粗動では心拍が異常に早くなるため、胸がドキドキする感覚があります。ドキドキを胸の痛みや違和感として感じる方もおられます。
  • あるいは、倦怠感・息切れを感じるケースも珍しくありません。理由は、心機能低下によって全身が酸欠になるためです。心房粗動とは、簡単にいえば心臓が痙攣を起こした状態です。すると心臓は十分な血液を全身に送りだせなくなるため、倦怠感などを感じやすくなります。
  • 心不全
  • 脳梗塞
  • 心不全とは心臓の機能が低下することです。心臓が痙攣して血液を送り出せなくなる心房粗動は、まさに心不全の初期段階です。心不全は放置すると命を落とす可能性もあるため、注意が必要です。
  • もう1つ注意したいのが心房粗動による脳梗塞です。心房粗動によって心拍のリズムが異常になると、血液の循環が滞りやすくなります。すると血液が淀み、成分が沈殿して「血栓」という血の塊を作ります。心臓でできた血栓が血流に乗って脳に運ばれると、血管を詰まらせて脳梗塞を引き起こすというわけです。
  • 心臓でできた血栓が引き起こす脳梗塞は「心原性脳梗塞」と呼ばれます。心原性脳梗塞は脳梗塞の中でも短時間で重症化・死亡する確率が高いため、「ノックアウト型脳梗塞」とも呼ばれます。理由は、心臓でできる血栓はその他の部位で生成されるものよりサイズが大きく、そのぶん脳の広い範囲にダメージを与えるためです。
  • 心房粗動は動悸・息切れといった自覚症状の他に、こういった重篤な心疾患に発展するおそれがあるため、特に注意しなければなりません。
  • しかし、心房粗動は自覚症状があらわれないケースも多くみられます。特に心房粗動が起こっていても、心室の拍動が120回以下の場合は、自覚症状らしい症状はほとんどありません。

自覚症状がない場合もあるのですね・・・。

  • 心房粗動は、不整脈の中でも自覚症状が少ないタイプです。気づかないうちに発症し、心不全や脳梗塞を起こしてはじめて判明するというケースは少なくありません。
  • 心房粗動による心不全・脳梗塞は、何の前触れもなくある日突然起こり、短時間で一気に重症化しやすいという特徴があります。突然死を防ぐためにも、日頃から定期的に検診を受けて、自分の心臓の状態を把握しておくことが大切です。

主な原因を教えてください。

  • 心房粗動の基本的な原因は、心房内に異常な電気信号回路が作られることです。簡単にいえば、心房内で電気信号がぐるぐる回り続ける状態になるため、心房の動きに異常が出ます。
  • 心房内に異常な回路が作られる原因としては、次のようなものが代表的です。
  • 不整脈の治療薬
  • 心臓の手術時の傷
  • 基礎疾患(心筋梗塞・甲状腺機能亢進症・肺疾患など)
  • 加齢

心房細動との違いが知りたいです。

  • 心房細動と心房粗動の違いは、心拍の規則性です。どちらも心臓の収縮が速まりますが、心房粗動は心拍のリズムが規則的であるのに対し、心房細動では不規則になります。
  • なぜリズムに違いが出るのかというと、心房内の電気信号回路の数に違いがあるためです。
  • 心房粗動は基本的に、心房内の異常な回路は1つしか見当たりません。電気信号は唯一の異常回路をぐるぐる周り続けるため、心拍のリズムは一定になります。
  • 対して心房細動では、小さな異常回路が6~8個ほど心房内に形成されます。電気信号は複数の回路を旋回するため、心拍のリズムが乱れやすくなるというわけです。
  • 。心房細動は心房粗度に比べると電気信号の旋回速度が速いという点も、両者の相違点の1つです。そのほかの症状・原因については、両者に大きな違いはほとんどありません。

心房粗動の検査と治療方法

心療内科の医師

心房粗動に前兆はありますか?

  • 心房粗動に前兆らしい前兆はありません。動悸や息切れがして気づくというケースが一般的です。
  • むしろ心房粗動自体が重大な病気の前兆といえます。代表的なのは心不全・脳梗塞などです。
  • あるいは、失神などの意識障害の前兆となることもあります。心房粗動によって脳への血流が一時的にでもストップすると、脳が酸欠を起こすためです。

心房粗動の検査方法を教えてください。

  • 心房粗動の代表的な検査は次の通りです。
  • 心電図
  • 24時間ホルター心電図
  • 胸部レントゲン
  • 心エコー
  • 血液検査
  • 一般的には、心臓のリズムを確認する心電図検査や心エコーが行われます。血栓の有無を調べるために、血液検査が行われることもあります。

治療方法が知りたいです。

  • 心房粗動の治療法は、大きく分けて薬物療法と手術の2種類があります。薬物療法で用いられる医薬品は次の2タイプです。
  • 脈を遅くする薬:β遮断薬・Ca拮抗薬など
  • 血栓を防ぐ薬:抗凝固薬(ワーファリンなど)
  • 手術による治療として代表的なのは「高周波カテーテルアブレーション」です。具体的には、太ももの付け根から細い管(カテーテル)を心臓に通し、異常な電気回路を高周波で焼き切ります。
  • 心房粗動でどのような治療法が選択されるかは、個人の状態や医師の判断によって異なります。

心房粗動の注意点

手のひらにハート

完治までどのくらい時間がかかりますか?

  • 心房粗動が完治するまでの期間は個人差があるため、一概にはいえません
  • たとえば薬物療法の場合は、一生薬を飲み続ける場合もあります。短期間での完治が見込めるのは高周波カテーテルアブレーションで、入院期間は平均2日~7日です。

心房粗動の予防方法はありますか?

  • 心房粗動は多くの場合、心疾患や生活習慣病に起因します。基礎疾患がある方は、まずそちらの治療を行うことで心房粗動のリスクを下げられます。
  • ちなみに心疾患や生活習慣病は生活習慣の乱れが原因で起こることが一般的です。つまり心房粗動を予防するには、まず生活習慣を見直すことが大切です。
  • 栄養バランスのよい食事
  • 塩分・脂質を控える
  • 禁酒・禁煙
  • 十分な睡眠
  • 適度な運動

家族のサポート方法が知りたいです。

  • まだ本人が医療機関を受診していないのなら、家族から受診を勧めましょう。1人での病院は心細いと思いますので、ご家族が付き添うことも大切です。
  • 日常生活においては、体調管理の面からサポートするのがおすすめです。たとえば、次のようなポイントに気を配りましょう。
  • 飲酒・喫煙・塩分を控えさせる
  • 排尿・排泄の回数や状態をチェック
  • 体重の増減
  • (心臓への負担を減らすため)室温や入浴時の温度調整
  • 一緒に適度な運動に取り組む
  • もし急激な体調不良などが起こった場合は、ためらわずにすぐに救急車を呼んでください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 原則として、心房粗動は一度起こると自然に治まることはありません。
  • 一方で自覚症状があらわれにくい病気であることから、気づかないうちに重症化するケースが多くみられます。早期発見につなげるためにも、もし動悸・息切れなどの不安な症状があらわれた場合は念のため医療機関を受診してください。
  • たとえ自覚症状がない場合でも、年に1回は医療機関で検診を受けることが大切です。

編集部まとめ

聴診器とハートマーク
心房粗動は、ときに心不全や脳梗塞に発展することもある病気です。突然死を防ぐためにも、心臓に異常を感じたら、すぐに医療機関で検査を受けてください。心房粗動は心疾患や生活習慣病が原因で起こることが多いため、日ごろから規則正しい生活を意識することが予防につながります。

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