「血管炎」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
血管炎とよばれる病気をご存じでしょうか。血管は血液を送る循環路として全身に張り巡らされています。そのため、どこかの血管で炎症などの問題が生じた場合、血管炎として全身に症状が広がってしまう恐れがあるのです。そこで本記事では、以下の3点について詳しく解説しています。
- 血管炎の代表的な症状と原因
- 診断と治療方法
- 治療後の入院期間と後遺症の有無
血管炎は比較的珍しい病気です。本記事を通して血管炎に関する知識を深めていただき、予防対策の参考にしてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
血管炎の症状と原因
血管炎はどのような病気ですか?
動脈がもっとも太く、毛細血管がもっとも細いです。また、炎症が起きた血管の太さによって病名が異なります。太さごとの病名は以下の3種類です。
- 大型血管炎
- 中型血管炎
- 小型血管炎
上記の血管炎をまとめて血管炎症候群とよびます。また、体の臓器や全身に渡って広範囲に悪影響を及ぼす血管炎を全身性血管炎とよぶため覚えておきましょう。
血管炎でみられる代表的な症状を教えてください。
- 発熱
- 頭痛
- 食欲不振
- 倦怠感
- 関節痛(筋肉痛)
また、影響を受けた臓器によっては以下の症状も表れます。
- 腎不全
- 高血圧
- 肺炎
- 消化管潰瘍
- 神経炎
さらに血管の太さごとの症状についてもみていきましょう。
- 大型血管炎(動脈)
大動脈に炎症が起きた場合、高安動脈炎や巨細胞動脈炎などを引き起こす可能性があります。高安動脈炎の症状は、発熱や関節痛、全身の倦怠感などです。巨細胞動脈炎の症状は、側頭部の頭痛や視力低下、首や方などの痛みがみられます。 - 中型血管炎(静脈)
中動脈に炎症が起きた場合、結節性多発動脈炎や川崎病などの症状にかかる恐れがあります。結節性多発動脈炎は、40~60歳の中年層に多くみられる血管炎です。全身の症状として、38℃以上の高熱・体重減少・高血圧がみられます。川崎病は4歳以下の乳幼児に好発する病気です。高熱・両目の充血・手足の腫れが症状としてみられます。 - 小型血管炎(毛細血管)
毛細血管で炎症が起きた場合、顕微鏡的多発血管炎(MPA)やヘノッホ・シェーンライン紫斑症(IgA血管炎)といった血流障害や皮膚疾患が起こります。顕微鏡的多発血管炎とは、臓器の血管壁に炎症が生じることで、臓器組織に血流障害や壊死の症状が表れる病気です。肺機能の障害により、血たんや息切れなどが生じるでしょう。ヘノッホ・シェーンライン紫斑症とは、皮膚の細い血管に障害がでることで、紫斑・血疱・びらんなどが生じる病気です。皮膚障害の他に、関節症状や腎症状も併せて発症する可能性があります。
発症する原因を教えてください。
その結果、血管内で炎症が起きてしまい、臓器や皮膚障害につながるとされています。こうして引き起こされる病気をANCA関連血管炎とよばれ、以下の3つの血管炎が該当します。
- 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
- 多発血管炎性肉芽腫症(GAP)
- 好酸球性多発血管炎肉芽腫症(EGPA)
血管炎は難病に指定されていると聞いたのですが…。
国内の年間発症者は100万人中18人と珍しい疾患であり、60~70代の高齢者に多く発症するようです。発症すると、発熱・食欲全身の倦怠感・体重の減少といった全身症状がみられます。
さらに腎臓や肺の機能障害により、血尿や肺胞出血などの症状を伴う可能性がある病気のため注意が必要です。
血管炎の診断と治療
血管炎を疑う場合、何科を受診すれば良いでしょう
- 耳鼻咽喉科:鼻・耳・のどの症状
- 呼吸器内科:肺の症状
- 腎臓内科:腎臓の症状
- 膠原病リウマチ内科、神経内科:神経の症状
- 皮膚科:皮膚の症状
血管炎症候群の疑いがある場合は、膠原病リウマチ内科または神経内科で受診すると良いでしょう。
どのような検査で血管炎と診断されるのでしょうか?
- 腎生検:腎糸球体や尿細管の診断
- 皮膚生検:皮下組織の血管の状態や紫斑などの皮膚障害の診断
- 神経生検:神経や筋肉の血管の状態を診断
生検以外にも血管炎を診断する検査方法を紹介します。
- 尿検査:尿の状態から血尿やタンパク尿の診断
- 血液検査:血液の状態から貧血・血清クレアチニン上昇・ANCAの陽性を診断
- 画像検査:超音波検査・X線検査・CT検査・MRI検査などによって各臓器の状態を診断
問診と検査結果から血管炎に該当するかどうか診断されます。診断結果をもとに適切な治療方法を選択しましょう。
血管炎の治療方法を教えてください。
寛解維持治療では患者の症状に合わせて治療の強度が調節されますが、ステロイドとシクロホスファミドが併用されるため、治療前に問題がないか確認しておきましょう。治療後は血管炎の改善具合をみながら、ステロイドの量を徐々に減らしていきます。寛解維持治療が行えない場合は、リンパ球の表面にあるCD20(たんぱく質)に対して抗CD20抗体(リツキシマブ)をステロイドと併用する寛解治療が適用されます。
他にも、メトトレキサート・ミコフェノール酸モフェチルを使用する例もありますが、共に保険適用外のため注意が必要です。また治療後は感染症のリスクが高まるため、感染症の予防・早期発見からの早期治療が大切です。
入院期間の目安を教えてください。
正確な入院期間は、症状や治療の経過によって異なるため、かかりつけの医師に確認すると良いでしょう。
血管炎の後遺症
血管炎はどのくらいで治るのでしょうか?
また、腎臓は寛解後に異常がみられるケースがあるため、回復後も6ヶ月間は血液検査と尿検査が行われます。ANCA関連血管炎の場合、残念ながら現在の医学では完全に治すことは難しいとされています。治療後も再発の可能性があるため、少量のステロイドと免疫抑制剤の投与が必要です。
血管炎に後遺症はありますか?
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし、治療が遅れてしまったり治療後の経過が良くなかったりした場合、臓器に機能障害が残るケースがあります。この病気自体で亡くなる方は少ないですが、治療後の敗血症や肺感染症などの合併症が原因で亡くなる方は少なくありません。
血管炎の予防対策として早期発見・早期治療は大切です。しかし、治療をして終わりではありません。治療後の感染症予防も重要だということは覚えておいてください。
編集部まとめ
本記事では、比較的珍しい病気である血管炎に関するさまざま情報について解説してきました。
血管炎は体内の血管内で炎症が起こることで全身や臓器に障害が起こる病気です。
血管炎の初期症状として、発熱・倦怠感・体重減少などが挙げられます。臓器に影響がある場合、腎不全・高血圧・肺炎などが引き起こされます。
血管炎を発症する原因として、抗好中球細胞質抗体(ANCA)とよばれる自己免疫抗体が関係しているとされていますが、正確な原因は未だ解明されていません。
血管炎は、症状が進行して長期化することで人体にさまざまな悪影響を及ぼす危険な病気です。血管炎の疑いがある場合には、膠原病内科または神経内科を受診しましょう。
病気は早期発見・早期治療するに越したことはありません。そのため、定期的に診察を受けて自身の体の状態を常に把握しておくことが大切です。
本記事が、血管炎で悩む方の参考になれば幸いです。