「末端神経障害」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
末梢神経障害という病名を耳にしたことはあっても、実際どのような症状なのかよく知らない方もいらっしゃるでしょう。
末梢神経障害は脳や脊髄などの中枢神経から全身に広がっている末梢神経に、何らかのダメージを受けて引き起こされる障害です。
体に違和感を覚えた時にその症状が末梢神経障害に当てはまるのかどうかがわかれば、過剰な不安に陥ることなく冷静に対処できます。
この記事では末梢神経障害について、発症の原因から治療方法まで詳しく解説していきます。早期発見のポイントについても紹介しますので、参考にしてみてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
末梢神経障害の原因
末梢神経障害はどのような病気ですか?
この末梢神経が圧迫や刺激を受けてダメージを被ると働きが悪くなり、様々な不調や障害を引き起こすのが末梢神経障害です。つまり末梢神経障害といっても、体の特定の部位のみで発症する病気ではなく、様々な部分で起こりえる病気なのです。更に末梢神経障害は次のような障害に分類されます。全身の末梢神経に多発的に発症する「多発性末梢神経障害」と一つの末梢神経に発症する「単末梢神経障害」です。
末梢神経障害の発症にはさまざまな原因があると聞きましたが…。
- 切り傷等による外傷
- 靱帯・腱・骨・ギプス等による圧迫
- ウイルス等の感染
- 抗がん剤・抗生物質等の薬物
- がん治療等で使用される放射線
単末梢神経障害は一つの末梢神経が外傷や圧迫が原因で発症し、腕の神経障害である「橈骨神経麻痺」や足の神経障害である「腓骨神経麻痺」がこの単末梢神経障害に含まれます。多発性末梢神経障害は糖尿病等の代謝性疾患・薬物・ウイルス等が原因として挙げられ、中には遺伝や原因不明の突発的な症状として現れる場合もあります。
また末梢神経の髄鞘を攻撃してしまう自己免疫異常による疾患があり、難病に指定されている「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」や「多巣性運動ニューロパチー」です。残念ながらこれらの症状は、発症の原因が解明されていません。特に病気や薬物治療が原因の末梢神経障害の多くは発症を避けられないとされています。
どのような症状がみられるのか教えてください。
いずれも些細な症状として見過ごされがちですが、末梢神経障害の症状にも当てはまります。高齢者にこれらの症状が発生した場合は少し注意が必要となります。末梢神経機能は加齢に伴い、多少なりとも衰えてくるものです。筋力の低下や手に力が入らない等が加齢によるものか、末梢神経障害で引き起こされているものかは病院で見極めることをおすすめします。
末梢神経障害の検査と治療方法
受診を検討すべき初期症状はありますか?
また末梢神経の障害によって引き起こされるギラン・バレー症候群のように風邪・下痢・感染症にかかった後、手足の痺れや麻痺が出てきた場合はすぐに医療機関を受診してください。末梢神経障害の中には一旦回復しても症状が繰り返されたり、初期症状を見逃してしまったりすると重症化してしまう場合があるので、不調や違和感を覚えたら早めに医師に相談するとよいでしょう。
どのような検査で診断されますか?
また、症状が発生している部位によっては、脳や脊髄のMRIを撮影することもあります。なお、遺伝による原因が疑われるケースでは、患者さんの同意を得たうえで遺伝子検査を行います。このように末梢神経障害であるかどうかを診断する方法は一つだけでなく、症状によって異なってくるものです。
末梢神経障害の治療方法を教えてください。
一方、糖尿病・膠原病・がん治療などで発症するケースもありますが、こちらは元々の病気の治療を進めることで解消に繋がるでしょう。発症した症状に適した治療方法があるので、医師への相談がおすすめです。
治療にはどのような薬が使われるのでしょうか?
- メコバラミン錠
- ミロガバリンベシル酸塩
- プレガバリン
- 利尿剤
- ビタミン剤
なお、がん治療に伴い発症した場合はデュロキセチン・ビタミンB12・プレがバリン・非ステロイド性消炎鎮痛薬・オピオイドなどが、治療内容と照らし合わせたうえで投薬の有無や薬の分量が判断されます。
いずれにしても薬の使用については医師の診察が必要です。
末梢神経障害についてよくある質問
末梢神経障害は治る病気ですか?
しかし、いずれの症状も上記のような治療を行って様子を見ても改善がみられない場合は、手術が行われる場合があります。一方がん治療などで引き起こされる末梢神経障害はがんの投薬治療とも関連があるので、一概にはお答えできにくく回復にはかなりの時間がかかるでしょう。
末梢神経障害は何科を受診すればいいですか?
その他の原因の場合は、末梢神経を扱う科へ受診することをおすすめします。医療機関によって異なりますが、脳神経内科・神経内科で診てもらえることが多いです。判断に迷われる場合は内科医に一度相談してみてもよいかもしれません。
予防方法があれば教えてください。
特に腓骨神経麻痺のように膝の外側の神経が圧迫されることによって起こる症状は、高齢者で寝たきりの方に起きやすくなります。例えば膝の外側に柔らかいクッションや枕のようなものを添えると予防になるので、ご家族や周囲の方によるケアも末梢神経障害の予防の一つになります。この病気の重症化を防ぐには、初期の段階で違和感を覚えたらすぐに医療機関へ診察することが重要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
手術だけでなく薬や筋肉訓練などで改善することが多いので、初期症状が発生したり不調を感じられた場合は自己判断せずに、まずは医師へのご相談をおすすめします。
編集部まとめ
痺れ・痛み・立ちくらみといった一見すると、少しのきっかけで日常的に起こりえる症状が含まれているのが末端神経障害です。
些細な症状であると思われがちで末端神経障害に当てはまるのか判断がつきにくいでしょう。不調や痛みを抱えての生活は更なるストレスの原因にもなりかねません。
違和感が生じた時点で、医療機関への相談が症状の長期化防止にも繋がるでしょう。早い段階での医師の診察と治療を受けることをおすすめします。