「副腎皮質機能低下症」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
副腎皮質機能低下症とは、副腎皮質という器官の働きが低くなり、人間が生きていく上で必須のホルモンの分泌量が低くなってしまう病気です。
この器官は身体の調節に必要なホルモンを分泌しており、この病気になると疲れやすい・体重が減る・肌の色素沈着が起こるなど様々な症状が現れます。
急性に起こる副腎皮質機能低下症は副腎クリーゼと呼ばれ、生命に関わる病気です。また副腎皮質機能低下症は一生涯薬の服用が必要な病気となります。
今回はこの病気について、症状・原因・診断基準・治療方法を紹介します。
治療に取り組むうえでの注意点にも触れますので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
副腎皮質機能低下症とは?
慢性副腎皮質機能低下症はどのような病気でしょうか?
副腎皮質が適切に機能しなくなると、免疫システムやエネルギー代謝、筋肉・皮膚の状態などに異常が起こります。この病気は、自己免疫性の疾患・感染・腫瘍などが原因となることが多いですが、原因がわからない場合も多いです。診断には血液検査や副腎皮質の機能検査が用いられ、治療には副腎皮質ホルモンの補充療法が一般的となっています。 平成27年の厚生労働省調査によると、日本における患者数は約1,000人と比較的まれな病気です。
症状を教えてください。
皮膚の症状に関しては色素沈着のほか、皮膚に白斑・発疹・乾燥を伴うことが多いです。 ただし、これらの症状は他の疾患で現れることもあるため、正確な診断は内分泌科専門医による精査が必要です。
発症する原因を教えてください。
それ以外にも、副腎皮質腫瘍によって発症するケースも少なくありません。 ほかに慢性的な副腎皮質炎・副腎腫瘍などが原因となることもありますが、 原因不明の場合もあります。 この病気の診断には血液検査や副腎皮質の機能検査が用いられ、治療には副腎皮質ホルモンの補充療法が必要です。また手術や発熱など身体的なストレスがかかった時に病気が悪化する可能性があるので、注意が必要です。
ストレスが関係しているのですね…。
この病気によって発熱や激しい運動など身体にストレスがかかった時にコルチゾールの分泌が不足すると、腎不全などの重篤な病気に発展する場合があり、治療時には薬の量に気を付ける必要があります。とはいえ、ストレスがこの病気の直接的な原因となることはほとんどありえません。
初期症状はどのようなものがありますか?
また、倦怠感・筋力低下・血圧の低下・心拍数の増加なども見られます。副腎皮質の機能が低下することで、ストレスや感染などに対して適切に対応できなくなるため、免疫機能が下がり感染症にかかりやすくなることも少なくありません。
副腎皮質機能低下症の診断と治療
何科を受診すれば良いでしょうか?
どのような検査を行いますか?
- 血液検査:副腎皮質ホルモンのレベルを測定するため、ベッドに30分程度安静臥床後に血液検査を実施。特に、コルチゾー ル・アルドステロン・DHEA-Sなどを測定する。
- 副腎画像検査:CTやMRIを使用して副腎腫瘍や異常な結節を検出するために副腎を撮影
また症状に応じて、以下の検査も行うことがあります。
- 高血圧症の精査(血圧に関するホルモン異常がないか)
- 甲状腺機能検査:甲状腺ホルモン値を測定
診断基準を教えてください。
- 副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)の測定
- 迅速ACTH負荷試験: ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与した後に副腎皮質ホルモン(コルチゾール)のレベ ルを測定し、副腎皮質の機能を評価
- CRH負荷試験:副腎ではなく脳に異常がある場合、視床下部と下垂体どちらに異常があるのか調べるための負荷試験
- 画像検査: CTやMRIスキャンを行うことで、副腎腫瘍や副腎腫瘍性疾患などの原因を確認
なお、診断には上記の試験はもちろん、患者の症状や病歴も調べて、総合的に診断を下す必要があります。
治療方法を教えてください。
ほか、甲状腺機能低下が疑われる場合、甲状腺ホルモンを補充するための薬も処方しますが、まずは副腎皮質機能低下症を治療することを優先します。副腎腫瘍など腫瘍が原因の場合は手術を行うことが多いです。治療方法は個々人の状態によって異なるため、医師と相談しながら適切な方法を選ぶことが重要です。
副腎皮質機能低下症の注意点
副腎皮質機能低下症は完治するのでしょうか?
しかしながら、副腎皮質の機能を完全に回復することはできないため、生涯に渡り治療が必要なのです。またこの病気は、病変部位によって自己免疫性・腫瘍性など様々な原因があり、 副腎腫瘍が原因の場合は手術が必要になることもあります。
副腎皮質機能低下症と診断された場合に注意することはありますか?
勝手に服用をやめたり、必要な時に必要な量を服用しなかったりすると副腎クリーゼなど重篤な状態になりショックを起こし、生命を落とす危険があります。薬は常に携帯し、病院で定期的に検診を受けることが大切になります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
副腎皮質機能低下症の症状は他の病気とオーバーラップすることが多く、自分ではこの病気の特定が難しいかもしれませんが、身体の不調を感じたら早めに病院にかかるようにしましょう。
編集部まとめ
副腎皮質機能低下症は、副腎皮質ホルモンの分泌不足によって身体に不調をきたす病気です。
病気が起こる原因は自己免疫疾患や感染など様々ですが、基本的に完治が難しく、生涯に渡りステロイド剤の投与が不可欠となります。
薬の服用には、生活シーンによって内服量の詳細な調整が必要など自己管理を適切に行うことが重要です。医師の指導のもと、薬の携帯と服用を忘れないことが大切です。
参考文献