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「副腎皮質機能低下症」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/04/30
「副腎皮質機能低下症」を疑う初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

副腎皮質機能低下症とは、副腎皮質という器官の働きが低くなり、人間が生きていく上で必須のホルモンの分泌量が低くなってしまう病気です。

この器官は身体の調節に必要なホルモンを分泌しており、この病気になると疲れやすい・体重が減る・肌の色素沈着が起こるなど様々な症状が現れます。

急性に起こる副腎皮質機能低下症は副腎クリーゼと呼ばれ、生命に関わる病気です。また副腎皮質機能低下症は一生涯薬の服用が必要な病気となります。

今回はこの病気について、症状・原因・診断基準・治療方法を紹介します。

治療に取り組むうえでの注意点にも触れますので、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

副腎皮質機能低下症とは?

悩む男

慢性副腎皮質機能低下症はどのような病気でしょうか?

副腎皮質機能低下症は、副腎皮質が適切に機能しなくなり、身体に必要な特定のホルモンを十分に生成しなくなる疾患です。病気発見者であるThomas Addisonの名前を取り、アジソン(Addison)病と呼ばれていることも多いです。副腎は左右の腎臓の上に位置する器官で、皮質はその外側部分にあたります。
副腎皮質が適切に機能しなくなると、免疫システムやエネルギー代謝、筋肉・皮膚の状態などに異常が起こります。この病気は、自己免疫性の疾患・感染・腫瘍などが原因となることが多いですが、原因がわからない場合も多いです。診断には血液検査や副腎皮質の機能検査が用いられ、治療には副腎皮質ホルモンの補充療法が一般的となっています。 平成27年の厚生労働省調査によると、日本における患者数は約1,000人と比較的まれな病気です。

症状を教えてください。

副腎皮質機能低下症の症状には、疲れやすい・低体力・低血圧・皮膚の色素沈着・体重減少・食欲不振・消化障害などがあります。また腹痛・吐き気など腹部の症状が現れることもあります。
皮膚の症状に関しては色素沈着のほか、皮膚に白斑・発疹・乾燥を伴うことが多いです。 ただし、これらの症状は他の疾患で現れることもあるため、正確な診断は内分泌科専門医による精査が必要です。

発症する原因を教えてください。

この病気は、自己免疫性の疾患・感染・腫瘍などといった症状が主に考えられる原因です。自己免疫性の疾患による病因では、免疫システムが誤って自分自身の身体組織を攻撃し、副腎皮質を破壊することによって病気が発症する可能性があります。 感染では、細菌やウイルスによって副腎皮質が破壊されることで発症する場合があります。
それ以外にも、副腎皮質腫瘍によって発症するケースも少なくありません。 ほかに慢性的な副腎皮質炎・副腎腫瘍などが原因となることもありますが、 原因不明の場合もあります。 この病気の診断には血液検査や副腎皮質の機能検査が用いられ、治療には副腎皮質ホルモンの補充療法が必要です。また手術や発熱など身体的なストレスがかかった時に病気が悪化する可能性があるので、注意が必要です。

ストレスが関係しているのですね…。

この病気は、副腎皮質の機能低下によって引き起こされる疾患で、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールおよびアルドステロンなどの生産量が不足することが原因となります。そのうちコルチゾールは、ストレスから身体を守るために作用する大切なホルモンです。
この病気によって発熱や激しい運動など身体にストレスがかかった時にコルチゾールの分泌が不足すると、腎不全などの重篤な病気に発展する場合があり、治療時には薬の量に気を付ける必要があります。とはいえ、ストレスがこの病気の直接的な原因となることはほとんどありえません。

初期症状はどのようなものがありますか?

この病気の初期症状は患者によって様々です。一般的な症状としては、疲れやすくなる・体重減少・食欲不振・嘔吐・下痢・皮膚の色素沈着・筋肉痛などがあります。
また、倦怠感・筋力低下・血圧の低下・心拍数の増加なども見られます。副腎皮質の機能が低下することで、ストレスや感染などに対して適切に対応できなくなるため、免疫機能が下がり感染症にかかりやすくなることも少なくありません。

副腎皮質機能低下症の診断と治療

薬

何科を受診すれば良いでしょうか?

副腎皮質機能低下症の適切な診断・治療のために内分泌科を受診しましょう。副腎皮質は内分泌器官であり、 内分泌科専門医あるいは内分泌疾患の診療経験のある内科医の受診をすすめます。

どのような検査を行いますか?

副腎皮質機能低下症の検査には、以下のようなものがあります。

  • 血液検査:副腎皮質ホルモンのレベルを測定するため、ベッドに30分程度安静臥床後に血液検査を実施。特に、コルチゾー ル・アルドステロン・DHEA-Sなどを測定する。
  • 副腎画像検査:CTやMRIを使用して副腎腫瘍や異常な結節を検出するために副腎を撮影

また症状に応じて、以下の検査も行うことがあります。

  • 高血圧症の精査(血圧に関するホルモン異常がないか) 
  • 甲状腺機能検査:甲状腺ホルモン値を測定

診断基準を教えてください。

この病気の診断基準には、以下のようなものがあります。

  • 副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)の測定
  • 迅速ACTH負荷試験: ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与した後に副腎皮質ホルモン(コルチゾール)のレベ ルを測定し、副腎皮質の機能を評価
  • CRH負荷試験:副腎ではなく脳に異常がある場合、視床下部と下垂体どちらに異常があるのか調べるための負荷試験
  • 画像検査: CTやMRIスキャンを行うことで、副腎腫瘍や副腎腫瘍性疾患などの原因を確認

なお、診断には上記の試験はもちろん、患者の症状や病歴も調べて、総合的に診断を下す必要があります。

治療方法を教えてください。

この病気の治療方法としては、副腎皮質ホルモンの不足を補うため、ステロイド剤であるグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの投与が一般的です。また高血圧が症状のひとつである場合、血圧を下げるために薬を投与します。
ほか、甲状腺機能低下が疑われる場合、甲状腺ホルモンを補充するための薬も処方しますが、まずは副腎皮質機能低下症を治療することを優先します。副腎腫瘍など腫瘍が原因の場合は手術を行うことが多いです。治療方法は個々人の状態によって異なるため、医師と相談しながら適切な方法を選ぶことが重要です。

副腎皮質機能低下症の注意点

皿

副腎皮質機能低下症は完治するのでしょうか?

この病気は、生きる上で必須の副腎皮質の機能が低下しますので、一度発症すると生涯治療が必要な疾患です。副腎皮質の機能が低下しますので、一生涯副腎皮質ホルモンの補充療法が必要となります。補充療法によって副腎皮質ホルモンの欠乏を補うことで、症状を改善し生活の質を向上できます。
しかしながら、副腎皮質の機能を完全に回復することはできないため、生涯に渡り治療が必要なのです。またこの病気は、病変部位によって自己免疫性・腫瘍性など様々な原因があり、 副腎腫瘍が原因の場合は手術が必要になることもあります。

副腎皮質機能低下症と診断された場合に注意することはありますか?

この病気は生涯に渡りステロイド剤の投与が必要になる病気です。また、ストレスがかかる生活の場面において、服用量の調整が必要です。
勝手に服用をやめたり、必要な時に必要な量を服用しなかったりすると副腎クリーゼなど重篤な状態になりショックを起こし、生命を落とす危険があります。薬は常に携帯し、病院で定期的に検診を受けることが大切になります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

副腎皮質機能低下症は根本的な治療法がない病気ではありますが、適切なステロイド剤投与によって、日常生活を過ごせます。病気の発覚後は常に薬の携帯と服用を忘れない、自己管理が重要です。また腫瘍などが原因の場合は手術が必要となります。
副腎皮質機能低下症の症状は他の病気とオーバーラップすることが多く、自分ではこの病気の特定が難しいかもしれませんが、身体の不調を感じたら早めに病院にかかるようにしましょう。

編集部まとめ

お薬手帳
副腎皮質機能低下症は、副腎皮質ホルモンの分泌不足によって身体に不調をきたす病気です。

病気が起こる原因は自己免疫疾患や感染など様々ですが、基本的に完治が難しく、生涯に渡りステロイド剤の投与が不可欠となります。

薬の服用には、生活シーンによって内服量の詳細な調整が必要など自己管理を適切に行うことが重要です。医師の指導のもと、薬の携帯と服用を忘れないことが大切です。

この記事の監修医師