「むずむず脚症候群」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
「ベッドに横になったら急に脚がムズムズしだす」「じっとしていられない」
このような夜間の異常な感覚に見舞われた経験に、身に覚えのある方は決して少なくないでしょう。
実際、数値的にも100人に2人から5人はこのような症状に悩まされていると考えられています。
しかし、ほとんどの方は病院を受診することなく過ごし、翌日に不眠になっていても仕方のないことだと流してしまっています。
これらの症状はむずむず脚症候群と呼ばれ、れっきとした病気です。
専門機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。
今回はむずむず脚症候群について解説しますので、お悩みの方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
むずむず脚症候群の症状と原因
むずむず脚症候群はどのような病気でしょうか?
安静時に発症することが多く、じっとしていたくてもしていられない非常に不快な病気です。むずむず脚症候群の方の多くは、周期性四肢運動障害と呼ばれる病気を併発しています。周期性四肢運動障害とは、睡眠中に20秒〜40秒ごとに無意識に脚や腕がピクピクしたり、素早く飛び跳ねたりする病気です。
本人が四肢の動きに気づいていなくても睡眠の質が低下しているため、日中に眠気を訴える方が多くいらっしゃいます。
どのような症状が現れますか?
- ムズムズする
- 脚の中を虫が這うような感覚がする
- 熱く火照った感覚がある
- ピリピリとする
- 痛みがある
- 冷えを感じる
最も多いのはムズムズしたり、脚の中を虫が這うような感覚がしたりする症状です。症状の訴え方は患者さんによって様々ですが、それは通常では経験することのないような異常な感覚のためです。これらの異常感覚は常に下肢を動かしていれば一時的に緩和される傾向にあります。
そのため、眠ろうとしている時でも足をバタバタ動かしたりマッサージをしたり、歩き回ったりせざるを得ない状況に陥ります。不幸にもむずむず脚症候群は夜間に発症することが多いため、多くの患者さんが不眠に悩まされているのが現状です。
重症になると日中にも症状が現れることがありますが、やはり安静時や夜間にピークに達する部分が指摘できます。
発症する原因を教えてください。
ドパミン神経系というとパーキンソン病を疑う方がいらっしゃいますが、むずむず脚症候群とパーキンソン病は異なる病態のため安心してください。二次性のむずむず脚症候群は他の病気が原因となって起こるもので、鉄欠乏・腎不全・妊娠などにより引き起こされます。
なりやすい人の特徴を教えてください。
むずむず脚症候群を発症するもう1つの原因に、ドパミン神経系の異常があると先述しました。このドパミン神経系は、鉄部が不足していると神経伝達物質の受け渡しが上手にできなくなってしまいます。そうして刺激に対して異常に敏感になることで、むずむず脚症候群を発症すると想定できます。
むずむず脚症候群の検査と治療
何科を受診すれば良いでしょうか?
むずむず脚症候群を発症して辛い思いをしていても、何もせず放置してしまう方が多いのが現状です。我慢せず、適切な処置を行うことを強くおすすめします。
どのような検査を行いますか?
- 問診
問診では、以下の4つの項目を満たすかを判断するためにいくつか質問が行われます。
- 脚を動かしたいという強い欲求が存在し,また通常その欲求が,不快な下肢の異常感覚に伴って生じる
- 静かに横になったり座ったりしている状態で出現,増悪する
- 歩いたり下肢を伸ばしたりするなどの運動によって改善する
- 日中より夕方・夜間に増強する
これらの4項目を満たすことが確認できると、むずむず脚症候群であると診断することが可能です。
- 血液検査
二次性のむずむず脚症候群では、血中鉄濃度の低下が確認できることが多いため、補助的な検査として血液検査を実施することがあります。
血液検査で血清フェリチン値が一定数以下だと認められると、むずむず脚症候群が疑われることが多いです。
- 睡眠ポリグラフィ
睡眠ポリグラフィとは、脳波・眼球の運動・心電図・呼吸曲線・いびき・筋電図など、寝ている時の状態を一晩かけて測定する検査です。むずむず脚症候群は睡眠障害に分類されるため、睡眠ポリグラフィの検査はよく行われます。
治療方法を教えてください。
特にアルコールやカフェインは、むずむず脚症候群を悪化させる原因となるため、飲みすぎに注意しなければなりません。鉄分が不足していることが指摘できる場合には、鉄分を多く含む食事の推奨や鉄剤の処方が行われます。二次性のむずむず脚症候群の場合は、原因となっている病気に合わせて治療が行われます。
むずむず脚症候群の治療薬について教えてください。
- クロナゼパム
むずむず脚症候群の軽症から中等症の患者さんには、クロナゼパムが処方されることが多い治療薬です。クロナゼパムはむずむず脚症候群と周期性四肢運動障害を併発している場合に、睡眠の質を改善するために処方されます。
周期性四肢運動障害は減少させやすいですが、むずむず脚症候群への直接的な効果は少ないことに注意が必要です。重度のむずむず脚症候群の場合は別の治療薬が処方されます。
- パーキンソン病の治療薬
むずむず脚症候群では、プラミペキソール・ロピニロール・ロチゴチンといった、パーキンソン病の治療薬を使用することがあります。これらの治療薬にはドパミン神経のような働きがあるため、ドパミン神経の異常によりむずむず脚症候群が引き起こされている場合に有効です。
吐き気・起立性低血圧・不眠症といった副作用を引き起こすことがあるため、服用には十分注意しましょう。
- 抗てんかん薬
ガバペンチンやプレガバリンなどの抗てんかん薬も治療薬として処方されることがあります。不快な感覚を抑制させる働きがあるため、むずむず脚症候群の症状の中でも痛みを強く訴える患者さんに有用です。
ガバペンチンには睡眠を深くする働きがあるため、むずむず脚症候群による睡眠の質低下や睡眠不足が辛い場合にも作用します。
- オピオイド
オピオイドには痛覚を遮断する作用があるため、一時的な効果が非常に高い治療薬です。ただ、オピオイドは重篤な副作用や依存症を引き起こす場合があり、医師による慎重な判断が行われます。
むずむず脚症候群の予防
むずむず脚症候群は治りますか?
むずむず脚症候群の疑いがある場合は、我慢することなく受診しましょう。
予防する方法を教えてください。
一緒にビタミンCを摂取して体に吸収されやすいようにしましょう。適度に運動することも忘れないでください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
むずむず脚症候群に限った話ではありませんが、体の異常を感じたら躊躇することなく専門機関を受診してください。
編集部まとめ
むずむず脚症候群は、安静時に異常な感覚でじっとしていられなくなるという非常に不快な病気です。
生活習慣を改めることで改善されることもありますが、薬物療法によってより効果的に症状を改善できる場合もあります。
お一人で悩まず、気軽に医療機関を受診するようにしましょう。
もしもパートナーや周りの方がむずむず脚症候群に悩まされているようであれば、病院に行くことをおすすめしてください。
適切な治療を受けて改善しましょう。