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「腹水」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「腹水」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

腹水とはお腹に水が溜まる状態のことを指します。少量であれば自覚症状がないものですが、腹水の量が多くなってくると目に見えてお腹が膨らんできます。

お腹が膨らむだけでなく食欲不信や吐き気を感じるようにもなるでしょう。また腹水の影響で体の各箇所に支障が出てくることにもなります。

腹水によってさまざまな症状が出てくるだけではなく、腹水そのものが他の病気による症状であるケースもみられます。

腹水の詳細を知っておくことは隠れた病気の早期発見につながるでしょう。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

腹水の症状と原因

お腹を押さえる男性

腹水はどのような症状・初期症状か教えてください。

腹水の症状は、お腹に水が溜まることによって、いわゆる蛙腹になるという見た目の変化があります。初期など腹水があまり多くない場合では、自覚症状がないことがあります。
しかし腹水が多量に溜まってくると、お腹の膨らみに伴ってへそが飛び出ることもあるでしょう。さらに胃が圧迫されることで食事が取れない・吐き気がするという症状も現れます。
また肺との境界である横隔膜を押し上げられることによる息切れや、心臓へ血液が戻りにくくなるために足がむくむといった症状が現れることもあります。

腹水を引き起こす病気は何がありますか?

腹水を引き起こす原因となる病気の代表例として、肝臓の病気が挙げられるでしょう。その中でも肝硬変が最も多いとされています。
また肝硬変のないアルコール肝炎・慢性肝炎・肝静脈閉塞などが腹水を引き起こす肝臓病として知られています。肝臓病以外でも腹水を起こしてしまう病気があり、がん・心不全・腎不全・膵炎・結核性の腹膜炎などが該当する病気です。
一般的に内臓で障害が起きる病気などで腹水を伴う症状が現れるといえるでしょう。

腹水の原因・合併症を教えてください。

腹水の原因として代表的な肝硬変によるものを例に挙げます。肝硬変によって血液中のタンパク質であるアルブミンを合成する機能が低下します。
アルブミンは血液中の水分を一定に保つ役割を持つタンパク質です。アルブミンの合成機能の低下により、アルブミンが不足すると腹水成分を血管内で吸収することができなくなってしまいます。
血管内で吸収できなかった腹水成分としての水分は血管外に漏出し、腹水として貯留されることになってしまうのです。また肝硬変によって肝臓内の静脈血管「門脈」の血管内圧が高くなります。これによって腹水が溜まることもあるでしょう。

がんになると腹水が溜まりやすいと聞いたのですが…。

腹水の原因は肝硬変などの肝臓病だけではなく、がんによっても腹水が溜まることは確かにあります。
腹水はがんの種類を問わず、がんが進行して終末期になると溜まることが多くなる症状といえるでしょう。この腹水という症状はがんの患者さんにとって苦しい症状です。
がんによる腹水は「がん性腹水」と呼ばれ、特に腹腔臓器のがんの進行によるものが多く確認されています。なお、がんの種類によっては腹水が溜まった後で様相が変わることもあるといわれています。

腹水の診断と治療

診察する男性医師

どのような検査で診断されるのでしょうか?

腹水は通常でも20〜50mlほどの量が存在し、腹腔臓器内の運動の摩擦を軽減する働きを持っています。各種の病気によって腹水が溜まってきた場合、以下の項目について検査を行います。
検査するのは、pH・グルコース・ビリルビン・LD・アミラーゼ・TG・T-CHO・ADA・CEAといった各項目です。これらを検査することにより、それぞれの項目から出された検査結果の数値を見て、腹水を起こした病気を考察していくことになるでしょう。

治療方法を教えてください。

肝硬変による腹水では、利尿剤の投与・アルブミン製剤投与・腹水穿刺吸引・腹水ろ過濃縮再静注法(CART/カート:Cell-free anoncentrated Ascites Reinfusion Therapy)といった方法で治療を行います。
また、がんによる腹水への治療としては、がん性腹水に困っている患者さんに対し、腹水ろ過濃縮再静注法を積極的に行うことになるでしょう。
がんによる腹水は滲出性のものであり、利尿剤の投与は効果が出にくいだけでなく、がんの治療にも支障が出るためです。がん性腹水には体に必要な栄養分や免疫を高める成分が多量に含まれています。
腹水ろ過濃縮再静注法によって体内に腹水から有用な成分を戻し、がんの治療を継続することができるようになるでしょう。

どのような薬が使われますか?

肝硬変による腹水では、第一に水分を対外に排出することが求められます。そこで用いられる薬が利尿剤です。なお利尿剤の種類や利用量を調整しても腹水が減らない場合でアルブミンの値が低い患者さんには、アルブミン製剤の点滴を用いることになるでしょう。
一方がん性腹水の場合、利尿剤の効果があまり出ないために利尿剤を用いることはないでしょう。また、がん性腹水の苦痛は医療用麻薬などの医療薬による緩和が難しいといわれています。
腹水ろ過濃縮再静注法によって、がん治療の継続を行うことになるでしょう。

腹水の穿刺について教えてください。

腹水の穿刺とは、腹腔内に針を刺して腹水を抜くことを指しています。腹水の穿刺は主に難治性腹水の患者さんに対して行われ、短期間で腹部膨満感を軽減させることが可能な方法です。
また原因が特定できない腹水の診断や、抗がん剤の注入にも利用されている方法です。ただし腹水の穿刺による安易な腹水の抜き取りは、かえって腹水の貯留を加速させてしまう可能性があります。また腹水の穿刺に必要な製品は現在のところほとんど開発されていないのが現状です。

腹水の予後と予防

醤油と塩

腹水の症状が現れた場合、余命はどのくらいでしょうか?

がんが進行し、終末期が近くなる頃に腹水という症状が現れることが多いのですが、この頃になると余命はどのくらいなのか、患者さんはもとより家族の方々も気になることでしょう。正直なところ余命はそう長くはなく、年単位で残っていないケースもあります。場合によってはあと数日ということがあるかもしれません。
腹水が溜まらないための利尿剤や症状の緩和のための医療用麻薬を用いても、がん性腹水のために効果が現れない状況です。しかし前述のように腹水ろ過濃縮再静注法という方法を用いて1度腹水を抜き、腹水内の有用な成分を体内に戻すことによってがんの治療を施すことが可能となります。これで余命が伸びる可能性もあります。

腹水のセルフチェック法はありますか?

腹水の特徴であるお腹の膨らみは、肥満している人に関しては見た目で判別することは難しいことかもしれません。
特に皮下脂肪ではなく隠れ肥満といわれる内臓脂肪による肥満であれば、肥満していること自体もわかりにくいでしょう。しかし少なくとも皮下脂肪による肥満であれば腹水をセルフチェックすることは不可能なことではありません。
それはどのような方法かというと、打診によって見分けるというものです。脂肪と違って水は動くものなので、自分で動かす(お腹を軽く叩く)ことで判別が可能です。
お腹の横を叩き、そのとき叩いた方と反対側に手を置いておきます。叩いた側と反対の手に衝撃が波動として伝わる場合、腹水があるということになります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

腹水という症状は単純にお腹の中に水が溜まってしまうというだけのものではありません。重大な病気による合併症です。特にがん性腹水の場合であれば、患者さんにとって辛く苦しい症状となっていることでしょう。
腹水という症状の治療は、緩和による処置である程度の苦しさの軽減はできますが、腹水を引き起こす元の病気に対する治療を施さない限り治るものではないでしょう。
元の病気も含めて、腹水という症状への患者さんに寄り添った治療法の確立を目指します。

編集部まとめ

診察をする女性医師
腹水を引き起こす病気は肝硬変であったり、がんであったりと深刻なものが多いことが実情です。そしてこれが腹水を引き起こす病気のすべてであるというわけではありません。

しかし腹水で苦しむ患者さんは、腹水だけではなくその原因となる病気に対しても立ち向かっているのです。その患者さんたちに対して医療は助けになるよう努力しています。

なお、腹水の原因となる病気は深刻な状態になっている可能性があります。もしも文中におけるような症状などに思い当たる場合はなるべく早めに医療機関に行って受診しましょう。

この記事の監修医師