「腹水」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
腹水とはお腹に水が溜まる状態のことを指します。少量であれば自覚症状がないものですが、腹水の量が多くなってくると目に見えてお腹が膨らんできます。
お腹が膨らむだけでなく食欲不信や吐き気を感じるようにもなるでしょう。また腹水の影響で体の各箇所に支障が出てくることにもなります。
腹水によってさまざまな症状が出てくるだけではなく、腹水そのものが他の病気による症状であるケースもみられます。
腹水の詳細を知っておくことは隠れた病気の早期発見につながるでしょう。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
腹水の症状と原因
腹水はどのような症状・初期症状か教えてください。
しかし腹水が多量に溜まってくると、お腹の膨らみに伴ってへそが飛び出ることもあるでしょう。さらに胃が圧迫されることで食事が取れない・吐き気がするという症状も現れます。
また肺との境界である横隔膜を押し上げられることによる息切れや、心臓へ血液が戻りにくくなるために足がむくむといった症状が現れることもあります。
腹水を引き起こす病気は何がありますか?
また肝硬変のないアルコール肝炎・慢性肝炎・肝静脈閉塞などが腹水を引き起こす肝臓病として知られています。肝臓病以外でも腹水を起こしてしまう病気があり、がん・心不全・腎不全・膵炎・結核性の腹膜炎などが該当する病気です。
一般的に内臓で障害が起きる病気などで腹水を伴う症状が現れるといえるでしょう。
腹水の原因・合併症を教えてください。
アルブミンは血液中の水分を一定に保つ役割を持つタンパク質です。アルブミンの合成機能の低下により、アルブミンが不足すると腹水成分を血管内で吸収することができなくなってしまいます。
血管内で吸収できなかった腹水成分としての水分は血管外に漏出し、腹水として貯留されることになってしまうのです。また肝硬変によって肝臓内の静脈血管「門脈」の血管内圧が高くなります。これによって腹水が溜まることもあるでしょう。
がんになると腹水が溜まりやすいと聞いたのですが…。
腹水はがんの種類を問わず、がんが進行して終末期になると溜まることが多くなる症状といえるでしょう。この腹水という症状はがんの患者さんにとって苦しい症状です。
がんによる腹水は「がん性腹水」と呼ばれ、特に腹腔臓器のがんの進行によるものが多く確認されています。なお、がんの種類によっては腹水が溜まった後で様相が変わることもあるといわれています。
腹水の診断と治療
どのような検査で診断されるのでしょうか?
検査するのは、pH・グルコース・ビリルビン・LD・アミラーゼ・TG・T-CHO・ADA・CEAといった各項目です。これらを検査することにより、それぞれの項目から出された検査結果の数値を見て、腹水を起こした病気を考察していくことになるでしょう。
治療方法を教えてください。
また、がんによる腹水への治療としては、がん性腹水に困っている患者さんに対し、腹水ろ過濃縮再静注法を積極的に行うことになるでしょう。
がんによる腹水は滲出性のものであり、利尿剤の投与は効果が出にくいだけでなく、がんの治療にも支障が出るためです。がん性腹水には体に必要な栄養分や免疫を高める成分が多量に含まれています。
腹水ろ過濃縮再静注法によって体内に腹水から有用な成分を戻し、がんの治療を継続することができるようになるでしょう。
どのような薬が使われますか?
一方がん性腹水の場合、利尿剤の効果があまり出ないために利尿剤を用いることはないでしょう。また、がん性腹水の苦痛は医療用麻薬などの医療薬による緩和が難しいといわれています。
腹水ろ過濃縮再静注法によって、がん治療の継続を行うことになるでしょう。
腹水の穿刺について教えてください。
また原因が特定できない腹水の診断や、抗がん剤の注入にも利用されている方法です。ただし腹水の穿刺による安易な腹水の抜き取りは、かえって腹水の貯留を加速させてしまう可能性があります。また腹水の穿刺に必要な製品は現在のところほとんど開発されていないのが現状です。
腹水の予後と予防
腹水の症状が現れた場合、余命はどのくらいでしょうか?
腹水が溜まらないための利尿剤や症状の緩和のための医療用麻薬を用いても、がん性腹水のために効果が現れない状況です。しかし前述のように腹水ろ過濃縮再静注法という方法を用いて1度腹水を抜き、腹水内の有用な成分を体内に戻すことによってがんの治療を施すことが可能となります。これで余命が伸びる可能性もあります。
腹水のセルフチェック法はありますか?
特に皮下脂肪ではなく隠れ肥満といわれる内臓脂肪による肥満であれば、肥満していること自体もわかりにくいでしょう。しかし少なくとも皮下脂肪による肥満であれば腹水をセルフチェックすることは不可能なことではありません。
それはどのような方法かというと、打診によって見分けるというものです。脂肪と違って水は動くものなので、自分で動かす(お腹を軽く叩く)ことで判別が可能です。
お腹の横を叩き、そのとき叩いた方と反対側に手を置いておきます。叩いた側と反対の手に衝撃が波動として伝わる場合、腹水があるということになります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
腹水という症状の治療は、緩和による処置である程度の苦しさの軽減はできますが、腹水を引き起こす元の病気に対する治療を施さない限り治るものではないでしょう。
元の病気も含めて、腹水という症状への患者さんに寄り添った治療法の確立を目指します。
編集部まとめ
腹水を引き起こす病気は肝硬変であったり、がんであったりと深刻なものが多いことが実情です。そしてこれが腹水を引き起こす病気のすべてであるというわけではありません。
しかし腹水で苦しむ患者さんは、腹水だけではなくその原因となる病気に対しても立ち向かっているのです。その患者さんたちに対して医療は助けになるよう努力しています。
なお、腹水の原因となる病気は深刻な状態になっている可能性があります。もしも文中におけるような症状などに思い当たる場合はなるべく早めに医療機関に行って受診しましょう。
参考文献