「低蛋白血症」を医師が解説!身体のむくみや倦怠感はありませんか?
低蛋白血症とは、血液中の蛋白質、特にその代表であるアルブミンなどが、何らかの原因によって少なくなってしまう病気です。
この病気の原因としては食事の栄養不足だけではなく、内臓疾患によって引き起こされることもある病気です。
蛋白質は身体の髪・皮膚・筋肉を作ったり、免疫機能を作る大事な栄養素であり、これが不足すると血管や骨がもろくなったり免疫力が低下します。
また保水機能のあるアルブミンが少なくなるので、身体のむくみや腹水が溜まるなどの症状が身体に現れます。
今回は低蛋白血症の原因や症状について解説しましょう。
また血液検査における診断基準や治療方法、普段の生活において気を付けることも合わせて紹介していきますので、ぜひチェックしてみてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
低蛋白血症の原因や症状
低蛋白血症とはどのような病気ですか?
そして血液に流れている蛋白質のうち、およそ60%がアルブミンです。低蛋白血症の代表的なものとしては低アルブミン血症が挙げられます。
またこの低アルブミン血症を擁する病気の代表的なものとして、ネフローゼ症候群が有名です。ネフローゼ症候群は、腎臓の働きが悪くなり、蛋白質が尿として排泄されてしまうために起こる病気です。ただしこれは1つの病気ではなく、IgA腎症や膜性腎症など、様々な腎臓の病気がネフローゼ症候群に当てはまる症状を引き起こしていることを指します。
低蛋白血症の原因は?
- 日常生活における蛋白質の摂取不足
- 肝硬変によるアルブミン生成量の低下
- 急性膵炎によるアルブミンの血液外への流出
- ネフローゼ症候群による蛋白質の体外への流出
蛋白質の摂取不足は高齢者に多く、蛋白質の摂取量がそもそも足りていない、いわゆる低栄養状態が低蛋白血症の原因となります。また蛋白質の摂取量が足りていても、内臓の病気によって蛋白質が体内で作られなかったり、尿として必要以上の量が排出されてしまったりするケースもあります。
内臓の病気でも特にネフローゼ症候群は、低アルブミン血症が特徴の病気として知られており、日本人では10万人に5人が発症するといわれている病気です。この病気は大人だけでなく、子どもにも発症します。
低蛋白血症の症状は?
また高齢者が蛋白質不足になると、免疫力が低下して感染症や癌にかかりやすい・血管がもろくなって出血性疾患にかかりやすい・骨がもろくなって骨折しやすいなどの症状に繋がりかねません。高齢者の蛋白質不足は身体の免疫力を下げ、ある調査ではアルブミン値が低い人ほど、脳・心血管の障害や肺炎などの感染症で亡くなる方が多いとの結果が出ています。
低蛋白血症になりやすいのはどんな人ですか?
ネフローゼ症候群は原因が多岐に渡り、原因不明なこともありますが、糖尿病や膠原病が発症原因になることがあります。
低蛋白血症の検査や治療方法
どのような検査が行われますか?
低蛋白血症の診断基準は?
低蛋白血症の治療方法を教えてください。
ネフローゼ症候群の場合は蛋白質摂取不足のケースとは逆で、蛋白質を抑えることが有効とされ、標準体重の人に対し蛋白質を1日0.8~1.1gに抑えることが推奨されているのです。またステロイド薬と免疫抑制剤を用いた治療も行います。ネフローゼ症候群の治療は10~14日ぐらい掛かり、3日連続して蛋白尿が陰性であった場合を完全寛解と呼んでいます。
低蛋白血症の予後と注意点
日常生活での注意点を教えてください。
ネフローゼ症候群にはいくつかタイプがありますが、特発性ネフローゼ症候群は寛解に至った後80%は再発をおこし、さらにそのうちの半数が1年に4回以上再発するといわれています。また寛解後も糖尿病や感染症などの合併症・心血管病・血栓症・急性腎障害に注意を払う必要があります。
ネフローゼ症候群の予後はあまりよくないので、しっかりと医師と治療計画を経て、寛解後も定期的に通院することがおすすめです。
食生活ではどのような点に注意すればよいですか?
魚介類は10~20%、大豆製品は10~30%の蛋白質は、食べても消化されずに体外へ排出されます。一方卵の蛋白質未消化率は3%、肉類は5~10%と比較的効率よく蛋白質を摂取できるので、これらを積極的に食べるとよいでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
一方、肝臓・腎臓・膵臓の病気で血中の蛋白質が作られなかったり、大量に血液外へ排出されたりすることもこの病気の原因にもなります。低蛋白血症の症状があるネフローゼ症候群は、寛解後も予後や合併症に注意する必要がある病気です。
身体のむくみや倦怠感を覚えたら放っておかず、病院で検査を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
低蛋白血症は、蛋白質不足が原因で生じる病気です。
一方、内臓の障害によって身体の中でうまく蛋白質が作られなかったり、血液中に運ばれなかったりすることもこの病気の原因となります。
栄養不足の場合は蛋白質を積極的に取り入れることが大切となりますが、一方でネフローゼ症候群など内臓機能が原因となっている場合は、蛋白質を制限するケースもあります。
まずはこの病気の原因をしっかりと診断・特定して、治療方針を決めることが大事ですので、もし気になる症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。