「巨赤芽球性貧血」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
貧血の中でも巨赤芽球性貧血は自覚症状が少なく、重症化するまで気づかないこともあります。
重症化すると認知機能の低下・味覚障害・感覚障害が起こることもあり、さらには回復までに時間がかかるとされています。
巨赤芽球性貧血の主な原因は胃腸などの疾患ですが、極端な食生活・妊娠・飲酒によって起こることもあるため、誰にとっても身近な病気といえるでしょう。
今回は巨赤芽球性貧血の症状・原因についてご紹介していきます。治療方法や予防方法にも触れていますので、ぜひ最後まで本記事をご覧ください。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
目次 -INDEX-
巨赤芽球性貧血の症状と原因
巨赤芽球性貧血とはどのような病気ですか?
しかし何らかの原因で成長・脱核が妨げられると、赤芽球は赤血球になれずに骨髄中で死滅していきます。赤血球は血液を構成する重要な成分です。赤血球になる前に赤芽球が死滅すると正常な血球が作られなくなるため、貧血に陥ります。
巨赤芽球性貧血にはどのような症状がありますか?
- 動悸
- 息切れ
- 疲労感・疲れやすい
- めまい
- 顔面蒼白
また、次のような消化器系異常や神経障害が現れることもあります。
- 味覚障害
- 舌炎
- 萎縮性胃炎
- 手足のしびれ
- 感覚の鈍麻
- 認知機能・思考力の低下
- 意識障害
神経障害の原因は、ビタミンB12か葉酸の欠乏であることが一般的です。なお、巨赤芽球性貧血はある程度重症化するまで自覚症状があらわれないこともあります。
巨赤芽球性貧血の主な原因は何でしょうか?
- ビタミンB12欠乏症
- 葉酸欠乏症
ビタミンB12と葉酸は赤血球の核(DNA)を作るうえで欠かせない栄養素です。どちらか一方でも不足すると赤血球の生成に支障をきたすため、巨赤芽球が発生しやすくなります。巨赤芽球性貧血の大多数はビタミンB12欠乏症です。
ビタミンB12が欠乏する原因は主に2つ挙げられます。1つは単純な摂取不足です。ビタミンB12は動物性食品を中心に幅広い食品に含まれますが、厳格な菜食主義者や極端に偏った食生活の方などは不足するおそれがあります。
しかし単純にビタミンB12の摂取量が不足した場合でも、すぐに欠乏症をきたすことは稀です。ビタミンB12などは体内に余分が貯蔵されており、摂取量が不足した場合はそこから少しずつ消費されていくためです。貯蔵分を使い終わるまでには数年かかるとされています。
2つ目のビタミンB12欠乏症の原因は萎縮性胃炎・胃切除などの消化器系のトラブルです。ビタミンB12は胃壁や胃壁細胞で作られる内因子によって体内に吸収されます。
萎縮性胃炎の方は自己免疫機能の異常により、内因子の十分な産生が難しくなります。胃の切除・摘出を行った方も同様です。いずれが原因にしろ内因子が不足すると摂取したビタミンB12を十分に吸収できなくなるため、欠乏症から巨赤芽球性貧血に発展しやすくなります。
特に内因子分泌不足による巨赤芽球性貧血は「悪性貧血」と呼ばれています。
巨赤芽球性貧血は予防できますか?
葉酸は特に野菜・果物に豊富なため、日頃野菜不足の方は少し意識して摂取してみてください。中でも妊娠中の方・飲酒習慣のある方は体内で大量の葉酸が消費されるため、通常よりも多めに摂取することが大切です。食事からの十分な栄養摂取が難しければ、サプリメントなどを併用してもよいでしょう。
萎縮性胃炎や胃切除をした方は、いくら栄養を摂取しても体内に吸収されにくい傾向があります。
巨赤芽球性貧血は早期発見できますか?
一般的には巨赤芽球性貧血になると血液検査で異常な数値が出ますので、定期的な検査を受けることが早期発見につながります。たとえば年に1回は健康診断を受けるようにしましょう。
巨赤芽球性貧血の治療方法
巨赤芽球性貧血はどのような検査で診断しますか?
- 問診
- 血液検査
- 内視鏡検査
- 骨髄検査(骨髄穿刺)
問診では普段の食生活の様子や胃腸障害の有無などを問われます。血液検査は血液中のビタミンB12・葉酸の量などを調べるのに有効です。内視鏡検査の対象は主に胃腸で、萎縮性胃炎の有無などが確かめられます。
骨髄穿刺は骨髄の成分を取り出して調べる検査です。骨髄検査で骨髄中に巨赤芽球が認められる場合は、巨赤芽球性貧血の可能性が高まります。その他にも、貧血をきたす他の病気と区別するために様々な検査が行われることがあります。
巨赤芽球性貧血には手術・入院は必要ですか?
ビタミンB12は静脈注射・筋肉注射、葉酸は内服薬が選択されることが一般的です。葉酸の経口薬投与はビタミンB12不足による神経症状を悪化させるおそれがあるため、服用量などに注意しましょう。
普段の食生活に問題があってビタミンB12・葉酸が不足している場合は、生活指導が行われることもあります。巨赤芽球性貧血は他のタイプの貧血に比べると回復までに時間がかかりやすいのが特徴で、特に神経症状が出ている場合は早期回復はあまり望めません。
巨赤芽球性貧血はどのような人が発症していますか?
- 偏った食生活の方(菜食主義・極端なダイエット)
- 胃腸の手術を受けた方
- 胃腸の疾患がある方
- 大量飲酒の習慣がある方
- 妊娠中・授乳中の方
代表的なのは胃腸の手術歴・持病がある方です。栄養の吸収率が低下しやすくなるため、食事に気をつけていてもビタミンB12・葉酸不足になることがあります。
また、偏った食生活をしている方もビタミンB12や葉酸の欠乏症になりやすいため、巨赤芽球性貧血のリスクは高めです。その他にリスクが高いのは、大量飲酒・妊娠中・授乳中の方です。
葉酸が体内で大量に消費されるため、通常の食事では補給が追い付かずに欠乏症を起こすおそれがあります。巨赤芽球性貧血は悪性腫瘍や甲状腺機能亢進症などの持病が原因となることもあるため、それらの発症者もリスクは高いといえるでしょう。
巨赤芽球性貧血の治療後の注意点
再発する可能性はありますか?
また、発見が遅れて神経症状がかなり進行していた場合も完全に回復することは難しいため、継続して治療する必要があります。早期発見・早期治療した場合は、回復にはやや時間がかかるものの予後は良好であることが一般的です。
治療後はどのくらい安静にしますか?
当日は、長時間の入浴・激しい運動・飲酒などは避けるのが無難です。自動車の運転もできれば控えましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
胃腸の疾患・手術歴がある方は、定期的に健康診断を受けて早期発見につなげることが大切です。巨赤芽球性貧血で神経症状が出ると回復までに時間がかかりやすいため、健康管理を怠らないようにしましょう。
編集部まとめ
巨赤芽球性貧血は未熟な赤血球が増えることで起こる貧血です。
胃腸疾患のある方や、ダイエット中の方・妊娠中の方・お酒が好きな方はリスクが高いため、注意してください。
一般的な貧血症状に加え、味覚障害・舌炎・知覚障害などがあらわれた場合は、巨赤芽球性貧血を疑って早めに医療機関を受診してください。