「不正出血」を発症しやすい人の特徴・原因はご存知ですか?医師が監修!
ホルモン異常やストレスなどの影響によって、生理の時以外に性器から出血することを不正出血といいます。
不正出血は、若い人から高齢者まで幅広い年代で発症します。ホルモンバランスの乱れで発症するだけでなく、子宮や卵巣に何かしらの病気が潜んでいる可能性もあるでしょう。
本記事では不正出血に関して病態・疾患・治療法などについて解説します。不正出血をよく自覚する人は、特に参考にしてください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
不正出血とは?
最近よく耳にしますが不正出血はどのような病気ですか?
婦人科に受診される人の中でも多く聞かれる悩みの1つになります。出血の量も大量なものからおりものに混じる程度の少量まで、症状は様々です。また生理中でも普段より極端に出血量が少ない・生理期間が短期間・長期間・不定期といったことも不正出血と考えられます。
不正出血は経過を見るだけで問題ないものもありますが、中には危険な病気が潜んでいる可能性もあるので、放置せずに医療機関へ受診し、原因を突き止めることが大切です。
不正出血にも種類があるそうですが、どのような違いがありますか?
まず1つが器質性出血です。器質性出血は、細菌感染・子宮体がん・子宮内膜ポリープ・子宮筋腫・子宮内膜炎など膣・子宮の病気が原因となって起こる不正出血です。これらの病気だけでなく、異所性妊娠や流産もこの器質性出血に分類されます。出血の原因が病気の影響なので、なるべく早く病気を突き止め治療することが重要です。
もう1つの不正出血は機能性出血です。この不正出血は疲労・ストレスなどの影響でホルモンバランスが乱れることが原因となります。またホルモン異常だけでなく月経異常・卵巣機能不全・排卵期出血なども機能性出血の原因となります。
不正出血の約30%は機能性出血です。この機能性出血はホルモンバランスが乱れやすい思春期や更年期に発症することが多いです。また生理と生理の間に出血する中間出血というものもありますが、これは卵胞ホルモンの分泌が一時的に減少することで出血するもので病気ではありません。
排卵日近くに出血するのであれば中間出血なので心配はいりませんが、毎回中間出血がある場合はピルで子宮内膜を薄くすることで、症状の改善が期待できます。
不正出血の原因を教えて下さい。
炎症はクラミジア・淋菌・トリコモナスなどの性感染症や大腸菌といった雑菌によって不正出血が起こることもあります。乳酸菌の持つ自浄作用が性交やストレスなどによって破壊されると、膣内や子宮の入り口に菌が繁殖することが炎症の原因です。
腫瘍は子宮頸がん・子宮体がん・子宮筋腫などの病気が原因で出血しているため、早めの治療が必要です。ほかにも性交時に起こる裂傷や着床出血・流産による出血も不正出血の原因となります。
どんな人が発症しやすい病気ですか?
例えば、不正出血の原因の1つとなる子宮頸がんは、20〜30代の若い女性でも発症する確率が乳がんよりも高く、罹患している人は不正出血しやすいでしょう。また疲労の蓄積・ストレス・加齢などによって排卵障害が起きると、卵胞が黄体に変化せずプロゲステロンが分泌されないまま卵胞は小さくなっていきます。
それと同時にエストロゲンの分泌量も徐々に低下し、不正出血を起こします。これは無排卵性出血の原因と考えられており、ホルモンバランスが原因となる出血の中では頻度の高いものです。また40歳後半になると無排卵性の生理になり、個人差はありますが生理期間が短くなり、不正出血が頻回になることもあります。
更年期あたりになると、卵巣がん・子宮体がんなど悪性腫瘍を発症する確率が高くなるので、不正出血を生理と思わず、少しでも気になることがあったら医療機関へ受診してください。
不正出血のリスクや疾患
不正出血はストレスや生活習慣が原因にもなると聞いたのですが…
卵巣機能不全とは、過度な運動・ダイエット・加齢・精神的なストレスなどが原因で卵巣が正常に働かなくなり、無月経や月経周期の乱れなど様々な障害を起こす状態です。
思春期前の若い年代から閉経前まで、幅広い年代の人に発症しやすいです。この卵巣機能不全は、不正出血も引き起こします。
卵巣機能不全は、妊娠できる年齢の時に発症すると不妊症や不育症になる可能性があるため、日頃からストレスを溜めないようにすることが大切です。
不正出血を放置してしまうとどんなリスクがありますか?
また閉経後に不正出血がある人の3人に1人が子宮体がんが原因であるとされています。また不正出血の原因が卵巣機能不全だった場合、放置すると不妊症や不育症になる可能性があります。
不正出血がある際は「ストレスが原因かも」と放置するのではなく、必ず婦人科で問題がないかどうか診断してもらいましょう。
不正出血による疾患を教えて下さい。
炎症によるものは細菌が原因による感染や萎縮性膣炎・子宮内膜炎などが挙げられます。ホルモン異常は卵巣機能不全・月経異常、良性腫瘍は子宮筋腫・子宮内膜ポリープ、悪性腫瘍は子宮頸がん・子宮体がんなど様々な婦人科疾患は不正出血を引き起こします。
どの病気も治療が必要なことが多いので、不正出血があった場合には自己解決せず、医療機関への受診を忘れないようにしましょう。
不正出血がどのくらい続いたら病院へ受診するべきでしょうか?
もし不正出血を自覚した時に、「あまり量は出ていないから大丈夫」と放置すると危険です。もし1度診断を受けて問題がなかったとしても、2週間出血が持続した場合は病気の可能性があり、止血処置が必要なこともあるので早めに医療機関への受診をおすすめします。
不正出血の検査方法や治療方法・予防方法
不正出血の治療方法はありますか?
炎症を起こしている場合は、原因菌に合わせた抗生剤の投与を行い、腫瘍は良性でも悪性でも手術を行って完治させることが多いです。
裂傷や妊娠によるものは放置すれば問題ないことが多いですが、出血量が増えたり出血期間が長い場合には違う病気が隠れている可能性があるため、再度婦人科で診てもらう必要があるでしょう。
不正出血を予防する方法があれば教えて下さい。
ストレスを溜め込むとホルモンバランスが乱れ、不正出血を起こしやすくなります。ストレスの原因を自身で理解している場合は、ストレスを上手く回避するかほかの方法で上手にストレスを発散しましょう。1人で悩んでいるのが辛い場合は友達や家族に相談し、医療機関も上手く活用してください。
またストレスだけでなく、不規則な生活を習慣的に送っていることも不正出血の原因となります。そのため睡眠時間を確保する・栄養バランスの取れた食事を摂る・運動する習慣をつけるなど、規則正しい生活を送ることで自律神経が整い、ホルモンバランスの乱れによる不正出血を予防できます。
ストレスや不規則な生活は、不正出血だけでなくほかの病気の原因にもなりますので、早めに対処することがとても大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
自分自身では問題ないかどうかの区別はつけられないので、1度でも不正出血があった場合には医療機関への受診をおすすめします。また出血量が少なく、不正出血かどうかも分からないという場合でも医師へ相談しましょう。
腫瘍の病気は見逃すと治療が遅れ、最悪の場合命に関わることもあります。不正出血の予防にはストレスの緩和や規則正しい生活を送ることが効果的なので、日頃から意識すると良いでしょう。
編集部まとめ
不正出血は女性に多い悩みの1つでありながら軽視して放置してしまう人も多いですが、中には危険な病気も隠れていることがあるので注意が必要です。
不正出血の原因は様々なので、原因を突き止めた上でしっかり対処することが大切です。また、日頃からストレスを溜め込みすぎず規則正しい生活を送ることである程度予防できます。
もし不正出血を自覚したら早めに婦人科へ受診し、問題ないかどうか診断してもらいましょう。