「子宮体がん」の初期症状や出血の特徴はご存知ですか?ステージについても解説!
女性特有の子宮がんは、他のがんとの罹患数を比べても常に上位に位置しています。2019年の部位別がん罹患数では、8位でした。
子宮がんは子宮頸がん・子宮体がんに分かれますが、子宮体がんの方の罹患数が多く年々増加傾向にあります。
この記事では、「子宮体がんかもしれない」「子宮体がんと診断されたがこれからどうなっていくのだろう」と不安を抱えている方に、子宮体がんの症状・ステージ・検査などを詳しくご紹介いたします。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
子宮体がんはどのような病気?
子宮体がんはどのような病気でしょうか?
その子宮体部の内側は子宮内膜という粘膜で覆われており、その子宮内膜から発生するがんが子宮体がん(子宮内膜がん)です。
子宮体がんは、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)ががんの発生に関わっている依存性のⅠ型と、エストロゲンに関係なく発生する非依存性のⅡ型に分けられます。子宮内膜は、月経がくるたびに剝がれ落ちて代謝される組織です。
月経がある年代の人の羅患は比較的少なく、40歳代後半から徐々に増加し、閉経後の50〜60歳代が最も多いですに最も多くなります。
しかし、最近は若い女性の罹患も少なくありません。また、子宮体がんは妊娠・出産回数が少ない場合に発症率が高くなると言うデータがあります。
初期症状を教えてください。
この不正出血は、褐色・ピンク色のおりもので気付くケースが多くみられます。
月経期以外での出血・閉経後の出血がみられた場合には、子宮体がんの疑いも考えてすぐに受診しましょう。
子宮体がんの出血の特徴を教えてください。
出血の起こり方の特徴としては、3つあります。
1つ目は月経期以外の不正出血です。月経には月経期(月経が起こる時期)があり、通常はその月経期に月経が起こりますが、がんがある場合は月経期以外の時期にも出血がみられることがあります。
2つ目は月経の周期の乱れ・月経量の増加です。月経周期が不規則になり、月経日数も長く続くときもあれば短く終わってしまう時もあります。月経量もその時々で多かったり少なかったりと変化がみられます。
3つ目は閉経後の出血です。閉経すると月経は止まりますが、がんがある場合は閉経後も出血がみられることがあります。
進行した場合はどのような症状がありますか?
がんが子宮近くの直腸・膀胱に達した場合の症状は、頻尿・便秘・血尿・血便に加え、尿・便が子宮に流れ込むことで膣からの悪臭などです。さらに進行すると、他の臓器へがんが転移(遠隔転移)します。
腎臓に転移した場合の症状は排尿時痛・排尿困難・尿閉で、腰の近くの骨に転移した場合の症状は腰痛です。そして、肺に転移した場合は呼吸苦、脳に転移した場合は頭痛・吐き気がみられます。
このように、浸潤・転移する臓器によって症状に違いがみられます。
子宮体がんの検査とステージ
受診を検討するべき自覚症状を教えてください。
特に40〜60歳代の出血は、閉経前後のホルモンバランスの乱れが影響しているだろうと自己判断してしまい、がんが見逃されてしまうケースもあります。
また、月経周期の乱れ・月経量の増加がみられた場合も、受診を検討しましょう。ホルモンバランスの変化で起こっている症状なのか、がんなどの何か疾患が原因で起こっている症状なのかを調べることが重要です。
子宮体がんはどのような検査で診断されますか?
これらの検査で異常がみられ、子宮体がんが疑われる場合に行われるのが病理検査です。病理検査には細胞診・組織診があり、がん細胞の有無・組織分類・悪性度を調べます。また、がんの位置・形を確認するために行う子宮鏡があり、これは組織診・細胞診と合わせて行うことが多い検査です。
その他には画像検査として、CT・MRI・PETがあります。CT・MRIは、がんの浸潤度・卵巣への病変の有無・遠隔転移の有無・リンパ節転移の有無・周辺臓器へのがんの浸潤具合などを調べることができます。
PETはCTと併用し、リンパ節転移・遠隔転移の有無の診断に重要な役割を持つ検査です。
このように、多くの検査項目がありますが、各検査の結果を総合的に判断し、子宮体がんの確定診断を行います。
子宮体がんのステージについて教えてください。
日本産婦人科学会の「子宮体癌取扱い規約 病理編 第4版(2017年)」によると、子宮体がんのステージはⅠ期〜Ⅳ期に分かれます。Ⅰ期はさらにAとBに分かれており、がんが子宮の筋肉の層の1/2未満である場合がⅠA期、がんが子宮の筋肉の層の1/2以上である場合がⅠB期です。
がんが子宮体部を越えて子宮頸部にまで広がっているものの、子宮の外には広がっていない場合はⅡ期となります。Ⅲ期はA〜C期に分かれ、C期はさらに1期・2期で分けられています。
がんが子宮の外の膜・骨盤の腹膜・卵巣・卵管に広がっている場合がⅢA期、がんが膣・骨盤周囲組織に広がっている場合がⅢB期、骨盤内リンパ節・大動脈周囲のリンパ節転移がある場合がⅢC期です。ⅢC期はさらに骨盤のリンパ節に転移がある場合のⅢC1期・骨盤のリンパ節への転移の有無に関わらず、大動脈周囲のリンパ節に転移がある場合ⅢC2期に分かれます。Ⅳ期もAとBに分かれています。
がんが骨盤を越えて腸の粘膜・膀胱までがんが広がっている場合がⅣA期、離れた臓器への遠隔転移がある場合がⅣB期という判断基準です。
また、子宮体がんは、他のがんと同様に限局・領域・遠隔という3つに分類する場合もあります。限局とはがんが原発臓器に限局しているもの、領域とは所属リンパ節転移(原発臓器の所属リンパ節への転移を伴ってはいるが、隣接した臓器への浸潤がない)・隣接臓器浸潤(隣接する臓器に直接浸潤しているが、遠隔転移はない)を合わせたもの、遠隔とは遠隔臓器・遠隔リンパ節などに転移や浸潤があるものとなります。
子宮体がんの進行スピードについて教えてください。
一方、非依存性Ⅱ型は非類内膜がん(漿液性がん・粘液性がん・明細胞がんなど)です。非類内膜がんの方ががんの浸潤が深い・多いなどの特徴があり、また転移も多く、悪性度が高くなります。
したがって、依存性Ⅰ型より非依存型のⅡ型の方が進行スピードが早いということになります。
子宮体がんの予後
子宮体がんは完治するのでしょうか?
地域がん登録による5年生存率(1993年〜2011年診断例)では、限局95.7%・領域73.2%・遠隔20.1%となっており、がんの進行度が低いほど生存率が上がっているのがわかります。したがって、子宮体がんの完治を目指すには早期発見・早期治療が重要です。
また、子宮体がんの約80%を占めるⅠ型は、Ⅱ型に比べると比較的予後が良いとされています。
早期発見のためにできることを教えてください。
子宮頸がん検診の際に不正出血など症状がみられた方に精密検査を受けてもらうことが、子宮体がんの早期発見に繋がります。子宮体がん単体での定期健診は不要ですが、不正出血・おりものの異常・下腹部痛などの症状がみられた場合は、すぐに婦人科を受診しましょう。
子宮体がんを早期発見するためにできることは、まず自分の体の変化に気付くことです。いつもと違う出血・いつもと違う痛みなどを放置しないようにしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
他のがんと違い、定期健診を行うことがないがんだからこそ、自覚症状が重要になります。
特に月経期以外の出血・閉経後の出血・月経異常・褐色のおりものなどがみられた場合は婦人科をすぐに受診して、早期発見に努めましょう。
編集部まとめ
子宮体がんの症状・ステージ・予後についてご紹介いたしました。閉経後の女性に多い病気ではありますが、閉経前の女性・若い女性も増加傾向にあります。
子宮体がんは定期健診がありません。しかし、他のがんと同様に、早期発見が遅れると完治の可能性も低くなります。
初期症状に気付いた場合は、「ただの生理不順かな」「閉経が近いのかな」などと自己判断して放置せずに、早めに病院を受診しましょう。