~実録・闘病体験記~ 私の生理不順や不正出血は「子宮体がん」によるものでした
闘病者の山中さん(仮名)は、出血のしかたや間隔などから総合的、かつ直観的に「何かいつもと違う」という違和感を覚え、婦人科を受診し、「子宮体がん」が判明しました。この病気は50代~60代女性に多い傾向にあり、閉経前だと判断がつきづらいと言います。だからこそ「本当にラッキーだった」と当時を振り返ります。似た名前の「子宮頸がん」の知名度に隠れがちな子宮体がん。果たして、どんな闘いが山中さんに待ち受けていたのか? 話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年7月取材。
体験者プロフィール:
山中さん(仮称)
神奈川県在住、1967年生まれ。子ども2人は成人し既に独立。夫とは離婚し、現在は一人暮らし。自営業。2020年に子宮体がんステージⅡと診断される。手術中にリンパ節への転移も認められたということで、術後の確定診断はステージⅢ。手術の後遺症で水腎症を起こし再度入院。その後抗がん剤での治療を約半年間通院にておこなう。現在は経過観察。落ちてしまった筋力・体力を取り戻しながら、自分に無理のない新しい生き方を模索していきたいと考えているところ。
記事監修医師:
楯 直晃(宮本内科小児科医院 副院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「いつもと違う」ことに気づいて受診
編集部
子宮体がんが判明した経緯について教えてください。
山中さん
きっかけは出血とはいえないくらいの薄いピンク色の出血です。もともと生理不順があったのですが、期間が今までになく長かったということと、いわゆるおりものの状態もいつもと違っていました。とにかく「何か違う」という感覚があって、久しぶりに婦人科クリニックを受診しました。
編集部
婦人科ではどのような検査をしたのですか?
山中さん
内診やエコー検査をするなり、ドクターから「これはあまり良くないね」と。すぐに大きい病院に行くようにと言われ、紹介状を持たされて「そのまま入院になるかもしれませんよ」とまで言われました。
編集部
その後にがんが判明するのでしょうか?
山中さん
はい。婦人科クリニックのドクターの話し方から、私は「きっとがんなのだろうな」と察して、覚悟はできていました。クリニックでもがんの検査を受けましたが、紹介された大きい病院でも再度検査を受け、子宮体がんであることが判明しました。
編集部
閉経前だと気がつきにくいそうですが、山中さんの場合もそうでしたか?
山中さん
数年前から、生理の間隔が数か月空いてしまうこともあれば、2〜3か月ちゃんと続いたり、出血量も普通だったり、少なかったり、といった状態でした。更年期の年齢に入ったところだったので、これが閉経に向かっての自然な流れなのだと思って過ごしていたんです。その後、生理の間隔は半年や1年くらいになってきて「これはそろそろ本当に終わるんだな」と。
編集部
薄ピンク色の出血もいつもとは違ったということでしょうか?
山中さん
そうですね。そのときにごく少量の、出血とも言えないくらいの薄らとした薄ピンク色の出血が1週間以上続きました。今までの自分なら「終わりかけの生理」としてやり過ごしていたと思うのですが、そのときは何か「いつもと違う」感覚があったんです。
淡々と受け止められた宣告、そして治療へ
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
山中さん
開腹による広汎(こうはん)子宮全摘術をするとのことでした。子宮・卵巣・卵管・大網の摘出をします。また、手術でがんだけでなく、がんの周辺のリンパ節を取り除きました。私の場合、G3という比較的「顔つきの悪い」性質のがんだということで、術後には「おそらく抗がん剤治療をすることになるでしょう」ということでした。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
山中さん
「まさか自分が……」とは思いましたが、医療系の仕事をしていることもあって意外と淡々と受け入れていました。
編集部
がんのステージの話はありましたか?
山中さん
子宮体がんステージIIと診断されていたのですが、手術を受けた際に、リンパ節への転移も認められたということで、術後の確定診断はステージIIIでした。ただ、手術で転移していたリンパ節は、全て取り除いたとのことです。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
山中さん
入院が予定外に長引いたり、肉体的なトラブルがあったりして、思いのほか気力や体力が落ちてしまいました。一旦すべてリセットしたい気持ちになって、仕事を当面休みにしています。
編集部
肉体的なトラブルとは?
山中さん
退院後すぐに抗がん剤治療を始める予定でしたが、手術の後遺症で腎臓と膀胱の間の尿管が狭窄(きょうさく)していて水腎症を発症し、再度入院しました。尿管にステントを入れる処置を受けたんです。このステントは、今後も半年に1回交換する生活が一生続くと言われています。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
山中さん
ようやく術後の抗がん剤治療が終わって、経過観察になったところです。まだ少し抗がん剤の副作用で手足のしびれや食欲不振が残っています。筋力や体力も落ちてしまっているので、それらを取り戻しながら、新しい生活について考えていきたいと思っています。
普段から自分の状態を意識することの大切さ
編集部
治療中は何を心の支えにしていましたか?
山中さん
病気になる少し前に生まれた孫の存在です。子どもたちには苦労を沢山かけてきましたが、これからは子どもたちや孫のサポートをしたり、楽しく過ごす時間が持てたりするかなと思った矢先の病気発覚。ドクターからの説明では、がんの状態はそれほど軽いものではありませんでした。でもそのときに私の中で湧いてきたのは、不思議と病状に対するショックよりも、「何としてでも生きて、孫が成人するのを見届けたい」という強い気持ちでした。この希望があったから、私の心は折れることなく前を向くことができたのだと思います。
編集部
まわりのご友人の反応はどうでしたか?
山中さん
更年期世代の女性にとって、不正出血と、閉経に伴う生理不順は見分けがつきません。私の場合も迷いに迷いましたが、「何かいつもと違う」感覚が、受診への背中を押してくれました。本当にラッキーだったと思います。後日、同年代の友人たちにこのことを話すと、皆一様に「違いがわからない。よく病院に行ったね」と言っていたほどです。このように、更年期世代は不正出血に気付きにくいわけですが、子宮体がんの好発年齢はまさにこの更年期世代に始まり60代までがピークと言われているそうです。
編集部
子宮体がんを意識していない人に一言お願いします。
山中さん
「子宮頸がん」の検診はメジャーですが、子宮体がんの検診はそうではありません。私自身もこれまで子宮頸がんの検診しか受けたことがありませんでした。子宮体がんの検診は人によってはだいぶ痛みを伴うこともあるそうなので、そのせいもあるのか、あまり普及していないのかもしれませんね。なので誰でもやみくもに受けたほうが良いとは言えないのですが、何か「いつもの自分と違う」と感じることがあったら、勇気を出して受けてみてほしいと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
山中さん
今のところドクター達とは、あまり関係性を築けていないのが本当のところです。先生方は皆さんいつもとてもお忙しそうで、聞きたいことや話したいことがあってもためらってしまうこともしばしばありました。手術など直接自分の体を預けることになるドクターと、もう少しゆったりとした信頼できる関係性が持てるような診療体制があるとうれしいと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
山中さん
決して自分の命に対する「決断」を、自分以外の誰かに委ねることのないようにしてください。病気を治療するには、さまざまな病院、ドクター、治療法、薬があって選択肢が次々と出てきます。自分ではとても決められないと思うようなこともあって、家族や友人に相談したり、本やネットの情報を集めたりすることもあるでしょう。でも最後は、ご自分が納得して自分の命に責任を持って決めてほしいと思います。担当医には聞きたいことを聞いて、説明に納得し、信頼があるのなら、その治療に身を委ねるという決断はもちろん有りです。しかし、誰かに気兼ねしたり、何かの意見に引っ張られたり、自分の命に対する大切な決断を、自分でし損ねることがないようにしていただきたいと思います。
編集部まとめ
「いつもの自分と違うことに気付くという感覚が大切です」と、何度も取材の中で語ってくださいました。また、自分の命に対する決断に対する熱い思いを受け取りました。自分の体の異変は自分が一番感じることができます。この記事を読んでいる方に伝えたい思い、「いつもと違う違和感があれば、まずは病院に行きませんか?」。山中さんの取材から早期発見への啓蒙につながるメッセージをいただきました。