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「多臓器不全(MOF)」になると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「多臓器不全(MOF)」になると現れる初期症状はご存知ですか?医師が監修!

多臓器不全(MOF)は事故や怪我などによる外傷・感染症・悪性腫瘍などが原因で、身体の主要な複数の臓器の機能が保てなくなった状態のことをいいます。

発症の部位や程度にもよりますが、治療に緊急性を要する場合が多い症候群です。

しかし発症の原因はさまざまで、具体的な兆候を早期に発見することが大切です。

そこで本記事では多臓器不全(MOF)とはどのような病気なのか、発生の原因・症状・治療の際注意すべき点を紹介します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

多臓器不全(MOF)の特徴

オペ室

多臓器不全(MOF)はどんな病気ですか?

多臓器不全とは、肝臓・腎臓・脳など生きていくために欠かせない複数の臓器の動き・働きが極めて低下した状態を意味します。
症状が発症した場合、早期発見が鍵となりますが治療が遅れてしまうと生命の危険に陥る危険性があります。そのため、適切な診断を受診し迅速な判断にもとづいて治療を受けることが重要となるでしょう。

多臓器不全(MOF)が起こる原因は何ですか?

多臓器不全を発症する原因では、感染症の中でも重症にみられる敗血症・火傷・外傷が重症化した場合や大量に出血した場合発症します。また、癌など悪性腫瘍により免疫の低下や臓器の機能維持が困難に陥る場合もあるでしょう。人間の体内では、何らかの原因で炎症作用が生じた場合、反応が強くなりすぎないよう適度にセーブするシステムが作動します。
しかし先ほどの原因を挙げた状態では、体内の調整バランスが崩れ炎症を促進、または炎症を抑えるといったセーブが機能しない状態に陥ることになる可能性が高いでしょう。このように体内の調整が効かない状態が続いた結果、肺・腎臓・肝臓・脳など複数の臓器に機能障害を引き起こし、多臓器不全を発症します。1つの臓器に致命的な機能不全が起こることにより、ほかの臓器にも機能不全が起こってきます。
具体的には、血流が悪くなることや酸素の供給が不十分なことで起こるケースが多いでしょう。例えば腎不全の場合、水分が排出されず体内に水分が溜まることで肺に水が溜まり、呼吸不全になることがあります。それにより酸素が取り込みにくくなることでほかの臓器に酸素が行き届かなくなり、多臓器不全にいたる可能性があるのです。

多臓器不全(MOF)にはどんな初期症状がありますか?

多臓器不全の初期症状では、複数の臓器が機能停止・障害を引き起こすため身体の各部位にさまざまな症状を発症します。例えば肺に症状が出た場合、呼吸器に影響を及ぼすため息苦しい状態となり、呼吸不全を発症する原因となるでしょう。
また、多呼吸や肩呼吸など呼吸困難の兆候も現れます。腎臓に発症し機能不全を起こした場合、身体の不要物から尿を作り出すことや排泄ができなくなることで機能障害・全身のむくみの原因となる可能性が高いでしょう。
他には肝臓の機能が低下した場合、わずかながら出血しやすくなることや、止血が困難になることがあります。

命に関わる病気だと聞きましたが。

多数の症状の中でも、敗血症を伴う多機能不全はそれぞれの治療を同時に行う必要があるため、治療が難しく死亡率が高くなります。このため早期発見・治療が大切です。敗血症とは、何らかの原因で血液中に細菌が侵入し増殖、菌が身体全体にまわり感染症を引き起こしている状態を呼びます。敗血症の症状は以下の内容です。

  • 高熱が出る・悪寒の症状・血圧が著しく低下する・意識が混濁した状態・呼吸困難に陥る
  • また、敗血症の原因では、

  • 大量に出血した状態(手術後など)・免疫、抵抗力が低下している時・癌、糖尿病で免疫力が落ちている時

このように免疫力が低下した際や出血時などに大腸菌など身近な菌が侵入し、発症する場合が多いことが分かっています。また、大腸菌は普段免疫力がある状態では発症しない菌でもあります。他には、複数の臓器が機能不全を起こすことで裂傷などの血が止まりにくい症状が出ることがありますのでご注意ください。
これは「播種性血管内凝固症候群」と呼ばれ、クモ膜下出血や脳内出血の原因となり脳の機能不全となることもあります。

多臓器不全(MOF)になりやすい年代はありますか?

多臓器不全は子供から大人まで発症する可能性のある症候群です。外傷・熱傷・重度の感染症などさまざまな原因があるため、発症する年代も開きがあります。悪性腫瘍が原因の場合、中高年〜高齢者の割合が多い傾向にあります。
一方、外傷・熱傷・重症化による感染症が原因の場合は子供の事例も出てきています。このため多臓器不全を引き起こす原因はさまざまで、なりやすい年代もさまざまといえるでしょう。
ただし、多臓器不全の進行や広がりは臓器の予備力(酸素や血流の低下に対して臓器がどれだけ耐えられるか)によっても変わってきます。臓器の予備力は年齢を重ねるごとに下がっていくため、やはり高齢者の方が多臓器不全が起こりやすいといえます。

多臓器不全(MOF)の診断と治療方法

検査室

できるだけ早期に治療を受けるべきだと聞きました。

多臓器不全では、肺・肝臓・脳など身体の主要な臓器の働きや機能が著しく低下した状態になります。多機能不全を引き起こす要因はさまざまですが、兆候が現れた際迅速な治療が必要となるでしょう。
また、治療が遅れた場合生命の危険が高くなります。このため適切な医師の診察と併せ、早急かつ集合的(複数の治療を同時に行うなど)な治療を受けることが大切です。

どんな病院で治療を受ければよいですか?

多臓器不全では、症状が出た身体の各臓器の治療が必要な症候群です。主な治療方法は、呼吸が難しい場合酸素マスクや人工呼吸器を使用し、腎臓の機能不全では症状により人工透析の治療法を導入することになるでしょう。肝臓の機能障害の場合輸血の投与や各種肝庇護療法の治療を行います。
また、多臓器不全発症の原因となる病気の治療も同時に行うことが大切です。感染症であれば抗生物質を早急に投与する他、火傷による裂傷では輸液や皮膚の治療(植皮など)を早急に行う必要があります。主な症状別の治療の一例をご紹介します。

  • 呼吸不全…人工呼吸器による呼吸の管理、人工肺の手術及びポンプによる体外の循環回路治療(ECMO)
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)…血液を固めない抗凝固療法、血液の凝固の要因を補う補充療法
  • 感染症…抗菌薬の処方、免疫グロブリン療法など

また、高血糖が原因の場合インスリン点滴を定期的投与し血糖値を下げる治療を行います。

どんな検査を行いますか?

多臓器不全の検査では。身体の各臓器の機能について検査を行います。具体的にはレントゲン・胸部CTなどによる画像検査・血液検査・尿検査により各臓器機能を詳しく調べます。また、多臓器不全を発症する原因となる病気についても検査を実施するのです。
例えば敗血症であれば原因となる病原体を調べる際、血液の培養検査を行います。検査の結果多臓器不全だということが分かっても、何が原因で多臓器不全になっているのか分からないケースもあるでしょう。そのような場合には、原因を調べるための検査が行われることもあります。

長期の入院が必要になるでしょうか?

症状により異なりますが、比較的入院のうえ長期の治療が必要な事例が多い症候群です。また、例えば細菌感染症に対しては抗菌治療、腎臓では透析など身体の各部位に合わせた治療を同時に行うことになります。
このため症状や状態によっては致死的な状態に陥ることも起こりうるでしょう。

多臓器不全(MOF)治療時の注意点

検査中

障害が残りやすいと聞きました。

各臓器に対する治療を行い、症状の経過を観察し改善に向かう事例もありますが、後遺症など障害が残る可能性があります。脳では麻痺などの後遺症が残る場合や、心筋梗塞であれば心不全により運動範囲が狭まるなど臓器による後遺症が異なる点も注意が必要です。

どれくらいの確率で治療が成功しますか?

多臓器不全の重症と併せ原因となる病気の治療、経過により異なりますが、死亡率は30〜80%と非常に高い確率となります。また、急死の原因となる場合もあり、早急な治療と早期発見が非常に重要といえるでしょう。

多臓器不全(MOF)の予防にはどんなことがありますか?

多臓器不全の要因防止では、原因となる病気や怪我を防ぐことが大切です。突発的な外傷・熱傷については注意をするなど、ある程度未然に防ぐこともできます。
一方感染症については、日頃の食生活や睡眠を摂り免疫力・抵抗力をつけておく必要があります。膵炎・肝炎の予防では食事での脂質の制限・禁酒などが効果的です。まずは日々の健康・体調管理を心掛けるようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

多臓器不全は、程度や症状により治療方法も異なるため臓器ごとの治療を同時に行う必要があります。
とくに血液の循環と免疫に関する治療については緊急性を要する場合も多いため、身体に異常を感じた場合は速やかに医師の診療を受けるよう心掛けましょう。

編集部まとめ

触診
今回は、多臓器不全(MOF)とはどのような病気なのか、発生の原因・症状・治療の際注意すべき点を紹介しました。

身体の主要な臓器の働きが低下する多機能不全は、原因となる怪我や病気の治療も含めた集中かつ緊急性を要する症候群であることを解説しました。

息苦しさや眩暈・身体の不調を感じた際は、精密検査を受け早期発見に繋がるよう受診をお勧めします。

この記事の監修医師