「デング熱」とは?症状・感染経路・治療法も解説!【医師監修】
更新日:2023/08/21
2014年、69年ぶりに日本でもデング熱の感染例が報告されました。近年日本国内での感染者はいませんでしたが、全世界でみると毎年1億人もの人が感染しています。
2020年にも再び感染例が報告されています。日本ではそこまで感染は広がっていませんが、いつまた流行するか分かりません。
万が一、感染しても慌てることがないようにどんな症状が出るのかなどをしっかりと確認しておきましょう。症状とあわせて治療法・予防方法も解説します。
監修医師:
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)
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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。
目次 -INDEX-
デング熱の感染経路と症状
デング熱はどのような病気なのでしょうか?
- デング熱は蚊によって感染する感染症です。熱帯・亜熱帯を中心に、世界100ヶ国以上で感染例が報告されています。デングウイルスと呼ばれるウイルスに感染することで発症します。
- デングウイルスを媒介する蚊は、ヤブカ属に属するネッタイシマカ・ヒトスジシマカです。とくにネッタイシマカによる感染が多いです。
- ネッタイシマカは沖縄県や小笠原諸島などで生息していましたが現在は日本にいません。飛行機などに紛れ込んで日本に入り、一時的に繫殖することはあります。
- 冒頭で日本での感染者はいないとお伝えしましたが、それは日本国内での場合です。流行している場所へ行って感染した方は毎年200名前後います。ヒトスジシマカは日本でもよく見られる蚊です。
蚊が感染経路となるのですね。
- 蚊がデング熱を発症した方を刺すと、デングウイルスは蚊へ移ります。その蚊が感染していない方を刺し、デングウイルスが移っていくのです。蚊の体の中に入ったウイルスは7~10日程かけて増えていきます。
- このように蚊を通して感染していくため、人から人への感染はありません。ただ蚊は人が多い場所を好む傾向があるため、都市部などの人が多い場所で起こりやすいです。
- 先ほどもお話ししましたが、ネッタイシマカは日本に生息していません。そのため、2014年に発生したデング熱はヒトスジシマカによるものではないかと考えられています。
- ヒトスジシマカは行動範囲が狭いですが、デングウイルスに感染した方がさまざまな場所に移動することで感染範囲は広がっていきます。
発症するとどのような症状がみられますか?
- 感染すると以下のような症状が出ることがあります。
- 発熱
- 頭痛
- 筋肉痛・関節痛
- 眼球後部の痛み
- この他にも全身に発疹が出る場合もあります。とくに多いのは、発熱・関節の痛みです。発疹は熱が下がり始めた頃に出てきます。
潜伏期間はありますか?
- 潜伏期間は一般的に4~7日程度です。しかし稀に2週間後に発症する場合もあります。
- 発症すると熱が出ますが、だいたい5~7日程度で下がるでしょう。
- 中には感染しても症状が出ない方も多いです。
デング熱の診断と治療方法
デング熱の診断について教えてください。
- インフルエンザと似たような症状が出るため、症状が出たときは注意が必要です。海外で蚊に刺されることがあり、帰国後インフルエンザのような症状が出た場合はできるだけ早くお近くの医療機関へ行きましょう。
- 病院ではまず海外へ行ったかどうかをもとに判断します。熱帯・亜熱帯などの流行している場所へ行ったことがあり、次のような症状が当てはまる方は検査を行います。
- 熱が出ている
- 白血球・血小板が減っている
- 検査内容については次の項目で詳しく解説します。
どのような検査を行うのでしょうか?
- 主に次の3つの検査が行われます。
- PCR検査
- NS1抗原検査
- IgM測定検査
- これらの検査を元に病原体がないかなどを調べます。
- NS1抗原・IgM測定は保険適用外となりますので注意してください。重症化し入院が必要になった場合は保険適応となります。
治療方法がないと聞きましたが…。
- デングウイルスに効果がある薬がないため、対症療法となります。
- 熱を下げるための薬にはさまざまなものがありますが、含まれている成分によっては重症化することもあります。そのため、解熱剤としてアセトアミノフェンが使われていることが多いです。
- 先ほどインフルエンザと似ているとお話ししましたが、インフルエンザや風邪と勘違いして市販の解熱剤を服用するととても危険です。まずはお近くの医療機関を受診するようにしましょう。
デング熱は死亡率が高いのでしょうか?
- 2016年に発表されたデング熱の感染例では残念ながら、お亡くなりになられています。そのニュースを覚えている方などはとくに気になるのではないでしょうか。
- しかし大人の方の死亡率はそこまで高くありません。致死率は1%未満とされ、重症化して入院が必要となった場合も致死率は2~5%となっています。重症化しているのに適切な治療を受けなかった場合、致死率は40~50%と大幅に上がってしまいます。
- 出血や胸・腹などに水が溜まるなどの症状が出た場合は死亡することもありますので、注意が必要です。15歳以下の子どもによく見られる症状ですので、気を付けましょう。「ただの風邪だろう」と軽く考えず、熱などの疑わしい症状が出たときは医療機関を受診することが大事です。
デング熱の予後と予防方法
デング熱は何日くらいで治りますか?
- 発症してから3~4日程経つと赤い発疹が出始め、約1週間で治ります。
- 先ほど出血などがある場合は死亡する可能性があるとお話しさせていただきましたが、発熱して2~7日後に症状が出ることがあります。そのため、熱が下がってもしばらくは様子を見た方が安心です。
- 回復し始めると疲労感やうつ状態が続くこともあります。しかしデング熱の場合、症状が治まるとすぐに回復していくという特徴もあります。ですので、回復が始まったらそこまで心配する必要はないでしょう。
後遺症はありますか?
- 熱・発疹などの症状が出るため、後遺症が心配になる方も多いでしょう。
- しかし安心してください。体内からデングウイルスがいなくなれば症状はおさまり、後遺症も残りません。
デング熱の予防方法を教えてください。
- 感染症はワクチンを打つことで予防することができる場合もあります。しかし残念ながら、デングウイルスに効果のあるワクチンはありません。
- そのため、予防方法としては蚊に刺されないようにすることが大事です。海外旅行などでデング熱が流行っている地域へ行かれる際はとくに注意しましょう。
- できるだけ、長袖・長ズボンを着るようにしてください。虫よけスプレーなどを使うのも有効です。
- 蚊を発生させないように対策を取るのもおすすめです。水たまりがあると蚊が発生しやすいので、家の周りに水たまりがないかをチェックしてみてください。植木鉢の受け皿・バケツなどは水が溜まりやすいので気を付けましょう。
- デング熱に感染した方も感染を広げないために、蚊に刺されないように対策をしっかりととってください。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 感染症と聞くと多くの方が不安になるでしょう。デング熱のように普段は耳にしない病名を聞くと、ことさら不安や恐怖を感じるのではないでしょうか。
- しかし重症化するリスクは低く、万が一重症化しても適切な処置を受ければ治ります。後遺症も残らないので、安心してください。
- ただ注意点として、免疫はできないということを忘れないでください。ウイルス系の病気は一度感染すると免疫ができると考える方はとても多いです。しかしデングウイルスは4種類あるため、免疫ができにくいのです。
- 同じウイルスなら症状は軽くてすみますが、種類が違うと重症化してしまう場合もあります。そのため、一度デング熱に感染したからといって油断しないでください。
編集部まとめ
デング熱についてみてきましたが、症状などをみるとインフルエンザととても似ていることが分かります。そのため、見落としてしまう可能性も高いです。
重症化するリスクは低いですが、それでもしっかりと検査してもらうことは大事です。
・流行している場所へ行った
・蚊に刺されてから症状が出た
これらに心当たりがある場合は迷わず、お近くの医療機関を医療機関を受診した方が良いでしょう。
デング熱の場合は赤い発疹も出るので、発疹の有無も見分けるポイントとなります。
参考文献