「尿毒症」とは?症状・原因・治療法も解説!【医師監修】
更新日:2023/08/17
尿毒症とは、尿によって体内の老廃物や毒素を排出できず、そのまま体内に蓄積してしまう病気です。
腎機能の低下により引き起こす可能性があり、誰しも発症のリスクがあります。そのため、発症の原因や放置するリスクなど、正しい知識を押さえておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、尿毒症とはどのような病気なのかをご紹介します。原因や放置するリスク・治療方法なども併せてご紹介するので参考にしてください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
尿毒症はどんな病気?
尿毒症はどんな病気なのか教えてください。
- 尿毒症とは、腎不全の末期症状として起こる可能性が高い病気です。
- 通常、腎臓の機能が正常であれば、体内の老廃物や毒素は尿に溶けて排出されることとなります。しかし、腎臓に障害が起きると十分な機能が果たされなくなります。
- その状態が進行すると末期腎不全というものとなり、尿に老廃物などが正常に溶けて排出されなくなってしまうため、尿毒症という病気を発症してしまうのです。
発症した場合はどのような症状がみられますか?
- 尿毒症は、体外へ老廃物・毒素を排出できないことにより全身にさまざまな症状を引き起こします。代表的なものとしては、次のような症状が挙げられます。
- 倦怠感
- 全身のむくみ
- 息苦しさ
- 食欲の低下
- 吐き気
- けいれん
- 貧血
- 不整脈
- まず初期症状としては、軽度な体調不良です。倦怠感・疲れやすさを自覚するようになり、体調の異変を感じるでしょう。
- 他にも全身に現れる異常としては、むくみや息苦しさなどが現れます。そして、食欲の低下・吐き気・下痢・皮膚のかゆみ・出血・視力障害などあらゆる場所で初期症状が出始めるでしょう。
- 徐々に進行してくると脳にも異常が出始め、思考力が低下したり情緒が不安定になったりすることもあります。不眠や頭痛などを引き起こす可能性もあります。
- 中枢神経への影響が大きくなるとけいれんを引き起こす可能性も高いです。血液にも影響が出るため、貧血も起こります。
- 貧血が起こり始めると、関連性の高い動悸や運動時の疲れなども発生する恐れがあるでしょう。また、進行していくと電解質異常の併発が起こります。
- これによって、不整脈も発症します。その他の心肺機能に関わる症状としては、呼吸困難・咳・尿毒症性肺と呼ばれる肺に水がたまる病気を発症する可能性も高いです。
- 骨の代謝が悪化してもろくなったり、皮膚が黒ずんだりする症状も現れる可能性があります。進行度合いによって、全身に症状が生じるため、注意が必要です。
尿毒症は何が原因で発症するのですか?
- この病気は、腎不全の末期症状として発症する可能性の高い病気です。そして、腎不全は腎臓に何らかの障害が発生して、機能が低下するために起きます。
- 腎機能が低下する原因としては、次のようなものが挙げられます。
- 脱水
- 薬剤
- 急性糸球体腎炎
- 尿管結石
- 前立腺肥大症
- 糖尿病
- 高血圧
- これらさまざまな症状・病気によって腎機能の低下は発生するのです。
- 特に、高齢になると糖尿病や高血圧などのリスクは高まり、慢性腎臓病などを引き起こす可能性が高いため注意が必要です。
- これらの病気を放置しているため、腎機能の低下を招き、腎不全の末期になると尿毒症を引き起こすメカニズムとなります。
尿毒症になりやすい体質などはありますか?
- 糖尿病や高血圧を引き起こしている方が、腎機能の低下を起こしやすくなり尿毒症を起こしやすくなるため、これらの病気を患っている方は尿毒症になりやすいといえるでしょう。
- しかし、腎不全によっておこる病気であるため、一概になりやすい方というのは分類が難しいといわれています。
- 年齢や性別で尿毒症になりやすい方を分けるのは非常に困難です。
尿毒症を放置するリスクを教えてください。
- 尿毒症の恐ろしさは、放置しておくと最悪命に関わることがある点です。
- 腎機能の低下は、放置しておくとさまざまな症状を発生させるリスクがあります。
- 中でも尿毒症の放置は、腎不全だけでなく、心不全・昏睡状態などを引き起こす可能性があるのです。いずれも命に係わる病気なので、大変注意が必要です。
尿毒症の検査・治療方法について
尿毒症の診断ではどんな検査を行うのでしょうか?
- 尿毒症の診断・検査は、まず血液検査によって行います。血液検査によって測定する項目は次のようなものです。
- クレアチニン
- 尿素窒素
- 血清カリウム
- 血中重炭酸イオン
- 赤血球数
- ヘモグロビン
- ヘマトクリット
- 尿毒症を発症していると、これらの項目の数値が増減するなど異常を示します。
- 中でも、貧血などを起こしていると赤血球・ヘモグロビン・ヘマトクリットの値が低下する場合もあるため、すぐに尿毒症と診断できるでしょう。
- 診断可能な診療科目としては、内科・泌尿器科・腎臓内科・循環器科などで受診できます。
尿毒症の治療方法が知りたいです。
- 主な治療方法は、次のようなものが挙げられます。
- 薬・食事療法
- 透析治療
- 腎移植
- 原因によって治療方法が異なり、主な原因が慢性腎臓病によるものであれば、薬と食事療法を併用した腎機能を保つための治療です。そして、並行して透析治療や移植などの治療も実施します。
- 透析治療には、血液透析と腹膜透析があり、症状に合わせてどちらを行うかを決めます。
- 血液透析とは、老廃物を含む血液を出し、特殊な装置を通して老廃物や水分を取り除いて血液をきれいにする治療方法です。
- きれいにした血液は、装置を通して再び体に戻します。一般的には、1週間に3~4回実施しなければなりません。
- 一方、腹膜透析は腹部にカテーテルを挿入して、透析液を入れた腹膜を通して血液を綺麗にする治療方法です。この方法は1日1回就寝中に行います。
- しかし、透析治療には合併症を引き起こす可能性があります。そのため、どのような治療方法を選択するかは、情報をしっかりと把握したうえで選ぶ必要があるでしょう。
- 腎移植は、ドナーから提供を受けた腎臓を移植して、健康な状態にする治療方法です。
- この方法であれば、腎臓機能自体が回復するため、症状が大きく改善する可能性が高いです。しかし、ドナーが見つかるかといった大きな問題があるため、簡単な治療方法ではありません。
治療で完治できる病気ですか?
- 尿毒症は、原因によって治り方も異なります。また、原因となる病気の進行度によっても異なるでしょう。先述したような慢性腎不全であれば、完治することは困難です。
- 薬によってある程度は調整可能ですが、腎機能がすでに正常ではないため非常に難しいでしょう。
- 急性のものや感染症が原因である尿毒症の場合は、治療経過が良ければ十分回復する可能性は高いです。
尿毒症の治療中の注意点や予防方法
尿毒症の治療中に気をつけることはありますか
- 尿毒症は腎不全が悪化したことで起こる症状であるため、治療中に腎臓に対して注意すべきポイントがあります。
- 具体的な方法としては、心疾患に注意しながらの厳しい食事管理・生活習慣改善・薬物治療です。
- 中でも、高血圧には注意しましょう。腎臓は血圧調整にも大きくかかわっているためです。
再発しないためには何をするのが良いですか?
- 尿毒症は、一度改善したとしても再発する可能性があります。そのため、再発をしないためにもすべきことがあります。
- 例えば、塩分・たんぱく質の管理などが代表的です。腎臓病を患った方は、特にこれらの栄養の制限がかかるケースが多いですが、身体の機能維持のためにはある程度必要な栄養です。
- そのため、きちんと管理して、摂取する必要があります。しかし、患者の状態や尿毒症の度合いによって再発防止策は異なります。
- 許される塩分摂取量など全く異なるため、定期的な検査を受けて適宜自分の健康状態を把握して対策を講じることが、最も再発防止に繋がるでしょう。
尿毒症の予防方法を教えてください。
- 尿毒症の最も効果的な予防方法は、腎臓病にかからないこと・進行させないことです。腎機能が合併症として現れる病気は次のようなものがあります。
- 糖尿病
- 高血圧
- 痛風
- 妊娠高血圧症候群
- これらの状態によって腎機能の低下が起きると腎不全を発症し、そのまま悪化すると慢性腎不全となり尿毒症を引き起こすリスクが上がります。
- そのため、まずはこれらの状態にならないことが必要です。そのためには、食生活の改善と適切な運動が重要です。
- そして、すでにこれらの病気にかかってしまっているようであれば、より一層腎機能低下を起こさないための食事管理や生活習慣の改善を図ることが、予防に繋がるといえるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 尿毒症は、腎機能の低下によって引き起こされる恐ろしい病気です。特に、腎不全などの病気の末期症状として現れるため、尿毒症が現れた際には非常に重い状態といえます。
- これ以上の悪化をさせないためにも、対策やリスクなどの正しい情報を身につけておきましょう。
- また、まだ尿毒症にかかっていない方でも、すでに糖尿病などの腎機能低下を起こす可能性がある病気を患っているのであれば、生活習慣などの改善を行い予防を行えるようにしておきましょう。
編集部まとめ
尿毒症は、体外へ毒素を排出できなくなってしまう恐ろしい病気です。そのまま放置しておくと、最悪の場合命に関わる重大な病気です。
また、治療を行うことになっても、透析治療となると1日に何度も時間をかけて行う必要があります。生活を大きく変えることにもなるため、大変な治療です。
病気にかからないようにすることはもちろん、かかったとしても悪化させることがないように正しい知識を身につけて、対応できるようにしておきましょう。
参考文献