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「疲労骨折」とは?症状・治療法・治療期間も併せて解説!【医師監修】

 更新日:2023/08/21
「疲労骨折」とは?症状・治療法・治療期間も併せて解説!【医師監修】

人生100年時代といわれている現代、病気はもちろんですがなるべく大きなけがもしないように過ごしたいところです。

特に骨折やひびなどの骨のけがは後遺症が残る場合もあるためスポーツ時などには注意が必要です。

しかし、骨折のリスクはスポーツなどの外的刺激以外にも潜んでいることをご存じでしょうか?

実は骨折には疲労骨折という外的刺激以外による原因で起こるものもあるのです。今回はそんな疲労骨折について紹介していきます。

疲労骨折しやすい人の特徴や、治療方法や治療中の過ごし方についても紹介していくのでぜひ健康な体づくりの参考にしてみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

疲労骨折とは?

包帯を巻いた足

疲労骨折について教えてください。

  • 疲労骨折とは同じ箇所に繰り返し小さな負担がかかることで起こる骨折のことです。鉄に小さな石を落としたとしてもへこむことはありませんが、何回も同じ位置に落とせば例え落としたのが小さな石であったとしてもいつかへこみができます。それと同じで、骨もいくら頑丈であるとはいえ同じ場所に何回も力を加えればひびが入り、最悪折れてしまいます。疲労骨折は特徴的に重症度が気づかれにくいため、知らないうちに悪化してしまう恐ろしいけがなのです。

通常の骨折に違いはありますか?

  • 通常の骨折の場合、事故などによって腕や足などに強い衝撃を受けることで骨が衝撃に耐えられず折れます。激痛が走り、その痛みは大人でも悲鳴をあげるほどです。見た目も皮膚の変色や腫れがみられるため、速やかに病院へ運ばれるケースがほとんどです。しかし、疲労骨折の場合には徐々に骨に負担がかかることで少しずつひびが入っていき折れます。
  • 通常の骨折のような強い痛みはなく、見た目も少し腫れる程度であるため重症化に気づかず痛みが続くため医療機関を受診したところ実は骨折だったというケースも珍しくありません。
  • 捻挫や打撲との区別がつきにくいですが、ぶつけた覚えのない部分が痛む症状などがあれば速やかに整形外科など医療機関で検査を受けましょう。

疲労骨折の原因は何ですか?

  • 前述したように疲労骨折の原因は小さな負荷の積み重ねです。ではどのような状況が「小さな負荷の積み重ね」を生むのかというと、多いのがスポーツです。
  • 疲労骨折は慢性的なスポーツ障害ともいわれ、トレーニングなどによるジャンプやランニングによってかかる負荷が積み重なることで起こります。また、疲労骨折の要因には筋肉量などの本人の体のつくりによるものとオーバートレーニングなどの環境によるものとがあります。
  • こうした要因から身を守るためにも自分の現在の技術やコンディションに合ったトレーニング選びなどの適切な判断が必要です。

疲労骨折にみられる症状を教えてください。

  • 疲労骨折の大きな特徴としては目立たないことです。痛みも鈍く、大きく腫れあがることもまれであるために軽視されやすく、重症化するケースもあります。

疲労骨折しやすい人の特徴はありますか?

  • 疲労骨折は筋肉や骨が未発達な成長期に多くみられる骨折です。特に骨粗鬆症や摂食障害の女性に起こりやすいといわれています。前述でスポーツ時に起こりやすいとしましたが、スポーツ以外にも疲労骨折の原因となる要素はいくつかあります。それが以下の3つです。
  • 喫煙
  • 栄養不足
  • 慢性的な疲労
  • 喫煙は骨粗鬆症のリスク因子ともいわれています。骨が弱くなってしまうことも疲労骨折の原因となるのです。また、スポーツをしていなくとも体を酷使していると溜まった疲労によって骨折になることもあります。こうした事態を防ぐためにも生活習慣に気をつけ、休息はきちんと取るようにしましょう。

疲労骨折の検査と治療

男性医師

疲労骨折の検査内容を教えてください。

  • 疲労骨折の検査にはレントゲン検査が主です。しかし、レントゲン検査を行う前に目立った外傷がないかを確認します。外傷がなく、慢性的な痛みを伴うようであれば疲労骨折として検査を進めます。

疲労骨折はどんな治療をしますか?

  • 疲労骨折の治療としては以下の3つが挙げられます。
  • 保存療法
  • 超音波骨折治療
  • 体外衝撃波療法
  • まず保存療法から解説していきます。保存療法は理学療法士による適切なリハビリテーションを行うことで緩やかに治療していく方法です。焦らずゆっくりと治していきたいという人に適しています。
  • 超音波骨折治療は超音波を患部に流すことで細胞が活性化され、自然治癒力が高まることによって治りが早くなる治療方法です。スポーツ選手などのようにより早い治癒を望む人に適しています。
  • 体外衝撃波療法は衝撃波を与えることで痛みを取り除く治療方法です。超音波骨折治療のように短期間での治療を望む人に適しています。

完治までにはどのくらいかかるのでしょうか?

  • 疲労骨折の完治までの期間は状態や治療方法などによってまちまちです。2ヶ月で治ることもあれば半年以上かかってしまうケースもあります。早期発見からの治療であれば早く治ることもあるため、体に痛みを感じたら見て見ぬふりをせず、医療機関を受診しましょう。

疲労骨折の治療中・完治後の過ごし方や予防方法

手に包帯を巻かれる男性

疲労骨折の治療中の過ごし方を教えてください。

  • 疲労骨折の治療中はスポーツなどの運動は当然中止です。行っても患部に負荷のかからない筋トレなどを行ってください。
  • 医師から運動の許可がおりた後も入念なウォーミングアップを行い、やわらかい地面での軽い運動から始めます。その後、活動時と休息時共に痛みを感じなくなったら競技への復帰となりますが、ここまでにかかる期間は平均的に2ヶ月程度です。
  • 疲労骨折になってしまったときに大切なことは完全に治して再発防止に努めることです。こうすることで慢性化を防げます。

完治した後にリハビリは必要ですか?

  • 再発防止のためにもリハビリは必要です。理学療法士の指導の下、徐々に体を動かしていくことで適切な運動量やトレーニングも知ることができます。日常生活指導などもしてもらうことで疲労骨折の再発防止に結び付くのです。

疲労骨折を予防する方法を知りたいです。

  • 疲労骨折の予防の方法としては骨に負担のかからないトレーニングや適切な栄養素の摂取が挙げられます。運動前には必ず適度なストレッチを行い、食事には丈夫な骨を作り出す栄養素を取り入れましょう。丈夫な骨づくりにおすすめな栄養素としては以下の3つが挙げられます。
  • たんぱく質
  • カルシウム
  • マグネシウム
  • 肉や魚、大豆製品などに多く含まれるたんぱく質はコラーゲンを含み、カルシウムと合わさることで丈夫な骨を作ってくれます。過剰摂取に気をつけ、サプリメントなども併用することでより効率的に摂取することができるのです。丈夫な骨づくりの栄養素として広く知られているカルシウムは牛乳やヨーグルトなどの乳製品から吸収されやすいため、おすすめの成分です。さらにそのカルシウムの半分量のマグネシウムを摂取することで体内の栄養バランスが丁度良くなるといわれています。このようにトレーニング方法だけではなく、日々の食事も配慮することでより疲労骨折の予防になります。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • 通常の骨折に比べて痛みも弱く、見た目も分かりにくいため医療機関の受診を後回しにしてしまう人も少なくない疲労骨折ですが、放置すればするほどにダメージは蓄積されて治療期間も長引きます。早期発見によって治療期間も最小限にとどめることもできるため、慢性的な痛みに気づいたらすぐに医療機関を受診しましょう。また、疲労骨折の治療は完全に痛みがなくなるまで続けて完治後もトレーニングや食事、生活習慣に気をつけて再発防止に努めましょう。

編集部まとめ

ジャンプする女性

今回は疲労骨折について紹介してきました。骨折とつくものの、骨折という名がつくものの、通常の骨折とは違って放置されることも少なくないが故に重症化するケースも珍しくありません。

重症化すればするほど治療期間は長くなります。疲労骨折に限らず、体に異常を感じたら速やかに医療機関を受診しましょう。

疲労骨折の要因はスポーツだけではなく、喫煙習慣や日々の食生活などを含む生活習慣も関わってきます。この機会に、生活習慣や食事内容を一度見直してみると良いかもしれません。

この記事の監修医師