「フラッシュバック」とは?対処法・症状・何科を受診するべきか解説!
更新日:2023/08/17
過去に起こった辛い記憶を思い出して嫌な気持ちになる…普通に生活していてもよくあります。これもフラッシュバックです。
しかし、外傷体験に関連した記憶が生々しく思い出され、精神や肉体に不調がでてしまうようなフラッシュバックは別物となっています。
過去に恐ろしかったり辛かったりしたことを思い出してしまうのは、本当に辛いものです。
今回はフラッシュバックの治療・対処法・改善策についてお話していきます。フラッシュバックに悩まされている方は、ぜひ参考にしてみてください。
監修医師:
稲川 優多(医師)
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自治医科大学勤務。医学博士、公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。
フラッシュバックの症状とは?
フラッシュバックとはどのような症状なのでしょうか?
- フラッシュバックは過去に起こった記憶が意識せずに思い出されてしまい、それがまるで現実に起こっているかのように感じる状態をいいます。
- 過去に経験した恐怖や外傷体験を、当時と同じ精神状態で再体験するような感覚を感じる方も多いです。視覚や音などがフラッシュバックの起因となるケースもあります。
- 元の記憶よりも鮮明に思い出されるケースも多く、フラッシュバックが起こると、感情のコントロールが難しくなるなど心身的に弊害がでることも少なくありません。
フラッシュバックとPTSDは違うのでしょうか?
- PTSD =心的外傷後ストレス障害は、死に直面するほどの危険や恐怖を体験した記憶が、当時に戻ったように感じるほど何度も思い出されてしまう病気です。悪夢をみる・不安や緊張が高まるなどの症状があります。
- フラッシュバックはPTSDにおける症状のひとつです。記憶を思い出すだけではなく、その中で実際に体験しているような感覚に陥ります。逆に辛い体験部分を思い出すことを避ける・思い出せなくなるのもPTSDの症状です。
フラッシュバックが起こる原因を教えてください。
- フラッシュバックは、自分で対処できないほど衝撃的な恐怖体験が大きなストレスとなって起こります。
- 大地震や洪水などの災害・DV・虐待などを経験した方がフラッシュバックの症状に悩まされる例は、少なくありません。
- もちろん、何がきっかけでフラッシュバックが起こっているかは人によって違います。同じ体験をしても、フラッシュバックが起きない方・重度のPTSDに悩まされる方などさまざまです。フラッシュバックの症状が起こる要因も人によって違います。
- 幼少期の虐待などトラウマとなる体験が長い期間繰り返されていたケースなどは、症状がより重度で慢性化しやすいです。
フラッシュバックを起こしやすいのは性格なども影響しますか?
- フラッシュバックは過去に起きた恐怖や心の傷が原因で起こるPTSDの症状でもあります。人によって感じ方が違うため、何が原因でフラッシュバックが起こるかは十人十色です。そのため誰もがフラッシュバックを起こす可能性があるといえます。
- 普段、前向きでも、その人にとって怖い・辛い経験をした場合はフラッシュバックに悩まされる可能性があるのです。特に下記のような体験をした方はフラッシュバックを含むPTSDを発症するケースが多くあります。
- 過去に精神疾患を抱えていた
- 虐待や被災体験などのトラウマを持っている
- 過去に起きたストレス・トラウマを自分一人で抱え込んでしまうような方も、PTSDの症状を起こしやすいです。
フラッシュバックの対処法や検査方法について
急にフラッシュバックを起こすようになった場合はどう対処したら良いですか?
- トラウマを体験した場合、誰もがフラッシュバックを起こす可能性があります。多くの方は自然に回復していくため、軽度のものであれば、数週間は様子をみてください。
- フラッシュバックが急に起こった際に、自分でできる対処法は少し休憩をとる・別のことに意識を向けるようにする方法があります。トラウマになっている出来事・気持ちを人に聞いてもらい共感を得るようにするのも良い方法です。
- ただし、症状が重い・長期間回復しない・繰り返す場合は、自分だけで対処をするのは難しい可能性があります。
フラッシュバックが悪化した場合は何科を受診したら良いですか?
- フラッシュバックの症状が重い・何ヶ月もたつのに改善されない・何度も繰り返す・悪化したなどの場合は、専門の機関で診断を受け適切な治療を行いましょう。
- フラッシュバックが改善されない場合は、PTSDである可能性が高いです。
- フラッシュバックの治療をお考えの場合は、精神科や心療内科を受診してください。
受診する際に注意することや準備しておくこと等あれば教えてください。
- 精神科や心療内科では患者さんの症状把握と正確な診断をするために、しっかり問診をします。緊張してうまく話せない方もいますが、話せる範囲で大丈夫です。ありのままの状態で受診をしましょう。
- 話せるなら、フラッシュバックのきっかけ・発症後の変化などを話してください。あらかじめ医師に伝えたいことがある場合は、前もってメモを取っておくとスムーズです。
- 病状が悪化しすぎると、自分でも正確な判断ができなくなり、治療も難しくなります。フラッシュバックだけでなく、心身に不調を感じたらまずは受診をしてみてください。
検査などはありますか?
- 精神疾患は血液検査やレントゲンなどの映像での確定診断はできないため、患者さんの心理状態などから診断されるのです。フラッシュバックで医療機関を受診した際は、まずは医師が問診を行います。フラッシュバックを起こすきっかけとなる体験や悩んでいる症状などを聞き取ることが目的です。
- フラッシュバック以外に症状がないかも確認します。PTSDの診断には主に国際的な精神障害の診断基準DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5)版が使われますが、同時にICD-10を使用するケースも多いです。質問紙検査IES-Rを使った検査が行われるケースもあります。
フラッシュバックの治療方法や改善策
フラッシュバックの治療方法はあるのですか?
- フラッシュバックは症状を起こしている精神疾患に対処をしなければいけません。そのため治療方法はさまざまです。医師の診察やカウンセリングでフラッシュバックを起こしてしまうきっかけを明らかにします。
- PTSDの改善には、トラウマにさらされる状態から、日常の安全を確保する環境調整が必要です。PTSDの治療で代表的なものは、認知行動療法です。専門的なトレーニングを受けた医師や心理療法士のもとで、トラウマと向き合うことで記憶と恐怖の関係を切り離していくことで、症状が緩和されていく持続エクスポージャー療法は認知行動療法でも効果が高いとされています。
- 眼球を動かすことでトラウマの記憶の処理を促すEMDRという治療も効果が高いです。また、患者さんの状態によっては抗うつ薬などの薬物を使った治療も行います。
フラッシュバックを起こさないための改善策を教えてください。
- フラッシュバックが起きないようにするためには、リラックスできる状態を作るように普段から意識をしておくことが大切です。
- また、フラッシュバックが起きやすい状況を理解しておきましょう。状況を理解しておくことで、フラッシュバックへの対処もしやすくなります。トラウマとなる内容を考えない時間を増やしてみても良いです。
- ただ、忘れようとすればするほど辛くなる方もいます。この場合は浮かんできたトラウマを無理に押し込むのではなく、自分の気持ちを書きだす・信頼できる方に思いをきいてもらうなど表に吐き出してみましょう。トラウマを考える暇もないほど趣味を満喫したり運動をしたりするのもおすすめです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
- 思い出したくないのに過去に体験した恐怖が、鮮明に思い出されてしまうフラッシュバック。
- 精神的なトラウマが原因で起こる症状ですが、精神的に弱いから起こっているわけではありません。
- フラッシュバックは誰もが経験する可能性のある症状です。PTSDの症状にもあるなど、うつや不安障害など他の精神疾患が同時に起こっているケースも少なくありません。適切な治療を受けることで症状改善の希望が持てます。
- フラッシュバックが辛い方は、自分だけで抱え込まずに、精神科や心療内科を受診してみてください。家族など周りの理解を得ておくことも重要です。
編集部まとめ
自然災害や事件・事故などのトラウマが原因で起こるフラッシュバックは、悪化すると日常生活に支障をきたす可能性があります。
精神科や心療内科への通院に抵抗感のある方もいますが、精神疾患への専門的な知識や治療を考えてくれるためひとりで抱え込むより改善の可能性が高いです。
フラッシュバックの症状が重い方・1ヶ月以上繰り返しフラッシュバックが起こる方は、早めに専門医を受診して適切に対処をしていきましょう。
参考文献