【医師が監修】「クラッシュ症候群」とは?症状・原因・治療法も解説!
阪神淡路大震災をきっかけに、広く知られるようになった「クラッシュ症候群」。長い時間重量物に挟まれていたために、救助した数時間後にショック症状により死亡してしまう病気です。災害などの特殊な状況下で起こりやすいことで知られています。
今回は、クラッシュ症候群の特徴や症状、原因、治療方法、受診科目などを紹介します。
監修医師:
後藤 礼司(医師)
目次 -INDEX-
クラッシュ症候群とは
クラッシュ症候群とはどのような病気ですか?
倒壊した建物の瓦礫の下などから救出されたときは、意識ははっきりしていて軽傷にみえる場合もあります。しかし圧迫を解放して数時間後、急性腎障害や高カリウム血症などを発症して意識が薄れてしまうのです。
このときに適切な処置が行われないと、腎障害の進行や高カリウム血症による致死性不整脈を発症して死にいたることもあります。
クラッシュ症候群が知られるようになったきっかけを教えてください。
世界では、第二次世界大戦でドイツ軍がロンドンに空襲を行ったとき、瓦礫の下から救出された人々が発症したものが最初の報告といわれています。
このように、戦争や地震などの特殊な状況で発症することがほとんどで、阪神淡路大震災以前の国内ではあまり知られていませんでした。
クラッシュ症候群の症状
クラッシュ症候群はどのような症状が現れますか?
ショック・血圧低下
ショック・血圧低下とはどのような症状ですか?
一方で、意識やバイタルサインが正常な場合もあります。
損傷した四肢のひどい腫れ
損傷した四肢のひどい腫れとはどのような症状ですか?
四肢の運動・感覚神経障害
四肢の運動・感覚神経障害とはどのような症状ですか?
褐色尿(ポートワイン尿)
褐色尿(ポートワイン尿)とはどのような症状ですか?
クラッシュ症候群の原因
クラッシュ症候群の原因は何ですか?
圧迫から解放後、壊死した筋肉の細胞から大量のミオグロビン・カリウム・乳酸などが血流にのって全身に流れます。これらの濃度は通常の数倍から数百倍です。
高濃度のミオグロビンは腎臓の尿細管に障害を起こすことで、急性腎障害を引き起こします。高濃度のカリウムは高カリウム血症を起こして筋肉を痙攣させ、心室細動などの致死性不整脈を引き起こします。
そして高濃度の乳酸は、体内を酸性にする乳酸アシドーシスを引き起こし、酸素の働きを低下させてしまうのです。
また脚の局所では、ひどい腫れによってコンパートメント症候群を発症し、重い四肢機能障害が発生する可能性があります。
クラッシュ症候群の代表的な病気
クラッシュ症候群の代表的な病気を教えてください。
急性腎障害
急性腎障害とはどのような病気ですか?
クラッシュ症候群では壊死した筋肉の細胞から大量のミオグロビンが血流に漏出し、腎臓の尿細管に障害を起こすことで、急性腎障害を引き起こします。
心室細動
心室細動とはどのような病気ですか?
腎臓や肝臓、脳などの重要な臓器に血液が送れなくなり、いずれ心臓が完全に停止してしまうリスクがあるのです。
クラッシュ症候群では、高カリウム血症により心室細動が引き起こされる可能性があります。
コンパートメント症候群
コンパートメント症候群とはどのような病気ですか?
クラッシュ症候群では四肢がひどく腫れることで、コンパートメント症候群を発症する可能性があります。
クラッシュ症候群を防ぐために
災害や事故で建物の下敷きになったときはどのように対応すればいいですか?
クラッシュ症候群の検査
クラッシュ症候群ではどのような検査を行いますか?
クラッシュ症候群の治療方法
クラッシュ症候群ではどのような治療を行いますか?
大量の輸血により循環血漿量を維持して、急性腎障害の進行を止めます。また高くなったカリウム値を低下させるために、重炭酸水素ナトリウムを投与します。それでもコントロールできない場合は血液透析が必要です。
編集部まとめ
クラッシュ症候群は、臀部・腕・脚などを重量物で長時間圧迫され、解放されたあとに発症する病気です。
解放された時は意識がはっきりしていて軽傷に見える場合もありますが、数時間後に意識が薄れて死にいたる場合もあるので、注意が必要です。
四肢が長時間圧迫されて筋肉細胞が壊死した場合、解放されたあと、壊死した筋肉細胞から大量のミオグロビン・カリウム・乳酸などが血流にのって全身を巡ります。これによりさまざまな症状が現れますが、特に命に関わるのは急性腎障害や高カリウム血症による心室細動です。
災害や事故で建物の下敷きになった場合、連絡ができる人は速やかに119番しましょう。難しい場合は近くの人に助けを求めてください。速やかな救急搬送が重要です。
参考文献