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「低血糖症」とは?症状・原因・治療についても解説【医師が監修】

 更新日:2023/04/03
「低血糖症」とは?症状・原因・治療についても解説【医師が監修】

低血糖症とは、体の異常や外的要因により血糖値が必要量以下になっている状態で、代謝が不十分になることにより、様々な異常が発生します。代謝とは、ヒトの細胞内で糖分(グルコース)を利用して生命活動に必要なエネルギーを作り出す活動ですので、低血糖症になると生命活動に必要なエネルギーが不足します。

低血糖症について、症状、検査・診断、治療法を解説します。

濵﨑 秀崇

監修医師
濵﨑 秀崇(医師)

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東京大学理学部卒業、広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院、国府台病院勤務を経て、2017年4月より「濵﨑クリニック」に勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本体力医学会評議員。

低血糖症とは

低血糖症とは、どんな病気ですか?

人の体は、血糖値が70g/dL以下になると血糖値を上げるように働き、50mg/dL未満になると脳などの中枢神経がエネルギー(糖)不足状態になり ます。一般に血糖値が70mg/dL未満の状態が低血糖症ですが、血糖値が70mg/dL以上あっても低血糖症状があれば低血糖症であると言えます。

特に脳は代謝の材料に糖分しか使えないため、低血糖の影響を最も受けやすく、血糖値が50mg/dL未満になると、意識障害やけいれん、冷や汗、動悸、手足の震えなどの症状が発生します。

低血糖は極度の栄養不足で発生する場合もありますが、発生頻度が最も高いのは、糖尿病患者が血糖降下剤やインスリンによって低血糖を起こす場合です。低血糖は放置したままでは重大な後遺症が発生する危険な状態ですが、糖分の投与により早期に回復 しますので、低血糖症に対する正しい知識と処置方法を理解しましょう。

また、血糖値が70mg/dL以下ではなくても治療などにより血糖値が急激に大きく低下したり、血糖値が70mg/dLより低くなっても低血糖症状が出なかったり、ということもあるため注意が必要です。

低血糖は、症状が起きた時にきちんと対処することで回復しますので、低血糖を恐れて自分の判断で薬の量を調整したり中止したりせず、必ず主治医に相談してください。

低血糖症の症状

低血糖症の症状

低血糖症の症状はどのようなものですか?

血糖値が70mg/dL以下になると体は血糖値を上げようとして交感神経が活発になり、アドレナリンをはじめとするホルモンが大量に分泌されることで、吐き気、気分不快、不機嫌、発汗動悸、ふるえなどの症状が現れます。

さらに血糖値が50mg/dL程度まで下がると中枢神経症状が現れ、視覚異常、意識障害、けいれんなどが起こることもあり、重症例では死に至る場合もあります。ただし、普段から低血糖がよく起こる方や低血糖症状の自覚が少ない方では、汗をかくなどの交感神経症状が現れず、無自覚性低血糖になる場合 があります。

無自覚性低血糖とは、無自覚な状態で血糖値が60mg/dL程度まで低下している場合や、血糖値が50mg/dLより低くなり突然中枢神経症状が出る場合などを言い、昏睡など意識の無い重症低血糖症という危険な状態になってしまうことがあります。

これは非常に深刻な状態で死に至る場合があり、出来る限り速やかな対応が必要です。

低血糖症の原因

低血糖症の原因はどのようなものですか?

低血糖症の原因は、大きく分けて3つあり、栄養摂取不足(食事の量や炭水化物の不足、薬を使用後の食事時間の遅れ、運動量や運動時間が多い時の運動中、運動後、空腹での運動、飲酒、入浴)、血糖降下薬による有害事象(インスリン注射や飲み薬の量が多い)、内分泌系の異常や肝臓の異常です。
その他、一部の抗不整脈薬やキノロン系の抗菌薬でも低血糖症が起こる場合があります。

栄養摂取不足

栄養摂取不足とはどのようなものですか?

摂食障害、消化管の吸収障害、アルコール中毒などが原因で食事の摂取量が不十分な場合、栄養が不足し血糖値が低くなり、低血糖症 を起こします。

血糖降下薬による有害事象

血糖降下薬による有害事象とはどのようなものですか?

糖尿病の治療薬は血糖値を下げる作用があるため、薬の効き方や食事のとり方の影響で過剰な血糖値の低下が起きることがあります。また、インスリンによる治療によっても過度な血糖値の低下が起きることがあります。

内分泌系の異常や肝臓の異常

内分泌系の異常や肝臓の異常とはどのようなものですか?

体に備わっている血糖値を維持する仕組みは、膵臓から分泌されるインスリンによって血糖値を下げ、血糖値が70mg/dL以下になると膵臓、下垂体、副腎などから分泌されるホルモンが主に肝臓に蓄えられているグリコーゲン(グルコースという糖が多量に繋がった物質)を分解し血糖値を上げています。

この仕組みに異常が生じると、低血糖が発生します。例えばインスリンを作っている膵臓の細胞が腫瘍化するインスリノーマにより、インスリンの分泌が過剰になり低血糖が発生するのです。肝硬変などにより肝臓の細胞の働きが異常になると、血糖値を上げるホルモンが分泌されても肝臓の反応が低下し血糖値が上がらず低血糖を起こします。

低血糖症の検査・診断

低血糖症の検査と診断はどのようにしますか?

低血糖の症状が現れた場合は、内科を受診しましょう。まず血液検査を行い、血糖値が70mg/dL以下か、70mg/dL以上でも血糖値が通常時より急激かつ大幅に低下していないかを確認し、応急処置で糖分を取らせるか、点滴で糖分を静脈内に投与し低血糖を解消します。

低血糖の原因を調べる検査として、24時間尿を溜める尿検査で体内で作られるインスリンの一部であるCペプチドの量を測定します。血液検査で血清インスリン、Cペプチド量の測定と一般的な肝機能、腎機能の確認、画像検査で膵臓の病変の有無の確認、重度の肝硬変の確認を行います。

その他、72時間の絶食試験や糖分摂取後の血糖値の変化を観るブドウ糖負荷試験(OGTT)もあります。

糖尿病治療薬には、低血糖を起こす可能性が高いものとそうでないものがありますので、ご自身の薬がどちらのタイプなのか確認しておきましょう。

低血糖症の治療

低血糖症の治療

低血糖症の治療はどのようなものですか?

低血糖の治療は、低血糖状態を解消するため、 ブドウ糖10gかブドウ糖を含むジュース など糖度の高い飲料を飲ませるか、点滴で高濃度のグルコースを投与するなどの応急処置をします。この時アルコール中毒や妊娠中の場合には、ビタミンB1欠乏症を併発している場合があるため、ビタミンB1を同時に投与することもあります。

低血糖状態を解消後に低血糖の原因を調べ、その原因に対する治療を行います。

栄養不足による低血糖の場合は、生活習慣の見直しについて家族も含め指導します。血糖降下薬が原因の場合は、主治医への報告を行い処方薬の変更を依頼します。特にSU薬という糖尿病治療薬は低血糖を起こすことが多いため、低血糖を起こしにくい薬剤への変更を行います。

また、インスリノーマなどの膵臓腫瘍が原因の場合は、手術により腫瘍を摘出します。

重症低血糖症では、本人の意識がはっきりせずブドウ糖を飲み込むのが難しいです。無理にブドウ糖を飲ませると誤嚥や窒息を起こす危険がありますので、ブドウ糖や砂糖を水に溶かして唇と歯肉の間に塗り、救急で医療機関へ運びます。

意識がはっきりしない状態になった低血糖症は、応急処置で一時的に血糖値が改善してもその後再び血糖値が低下し同じ状態になる可能性が高いため、医療機関での診察が必要です。

低血糖発症時にブドウ糖を口から摂取できない場合など本人が対応できない状態では、家族や周りの方が注射薬や点鼻薬のグルカゴン製剤を使用し血糖値を上げる対応をする場合がありますが、適応や使用方法については医療機関への問い合わせと指導が必要です。

低血糖が発生した後に、その原因を確認し解決することが今後の低血糖の予防をするために重要ですので、主治医や医療スタッフへ相談しましょう。

低血糖は予防が大切です。過去の低血糖の経験を基に、低血糖になりやすい状況を知り低血糖にならない工夫を心掛けましょう。食事療法や薬の量などについて主治医と相談する必要があります。

運動時に低血糖になりやすい方は空腹時の運動は控えて、長時間や負荷の大きい運動前・運動中に血糖値を測るようにしてください。特に1型糖尿病の方、インスリンやSU薬を使用されている方は、補食を心掛けましょう。

糖尿病の方で車などの運転をされる方は、運転中に低血糖になり事故に繋がるケースがありますので、車内にブドウ糖やブドウ糖を多く含む食品を常備しましょう。また、無自覚性低血糖症でご自身で血糖値をコントロール出来ない方は運転をすることは避けなければいけません。

運転中に低血糖の状態を感じたらハザードランプを点滅し、早急に車を路肩に停車しブドウ糖を含む食品を摂取します。運転を再開するのは、症状が改善してからにしましょう。低血糖を起こしやすい方は、糖分を含む食品を摂ってから運転するようにしてください。

緊急の場合に備え糖尿病患者であることを示す、糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)を財布などに入れて持ち歩くことをおすすめします。

編集部まとめ

自分自身の低血糖発症の経験から、どの様な場合に低血糖になりやすいかを知り、低血糖にならない工夫 をしましょう。また、主治医と食事療法や薬の量について定期的に相談する様に心掛けることも大切です。

この記事の監修医師