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「心因性発熱」とは?症状・原因・治療法について解説【医師が監修】

 更新日:2023/04/03
「心因性発熱」とは?症状・原因・治療法について解説【医師が監修】

心因性発熱(しんいんせいはつねつ)では、風邪やそのほかの病気の兆候がないにもかかわらず体温の上昇がみられます。そのきっかけとなるのは「人に会う」「極度に緊張する」といった心理的ストレスや、仕事や介護の疲労などによる慢性的ストレスです。

今回はストレスが原因で生じる心因性発熱の特徴や原因、治療法などを詳しく解説していきます。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

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心因性発熱とは

心因性発熱はどのような病気ですか?

心因性発熱はストレスによって体温の上昇がみられる心身症の1つで、「機能性高体温症」とも呼ばれています。風邪などで生じる発熱とは異なり「発熱以外の症状がみられない」「病院で検査をしてもどこも悪くない」「痛み止めが効かない」などが特徴です。なお、心因性発熱には心理的ストレスにより一時的に高熱が出るケースと、慢性的なストレスが続く状況下で微熱が持続するケースの2つのタイプがあります。

一般的な発熱との違い

一般的な発熱と心因性発熱は、どのような点で異なりますか?

風邪などの感染症や炎症による発熱では、「炎症性サイトカイン」や「プロスタグランジン」など体内で放出された物質を介して体温の上昇が起こります。これは体温を上げることで免疫の働きを活発にし、細菌やウイルスから体を守る防御反応の1つです。しかし心因性発熱の場合は、炎症性サイトカインやプロスタグランジンを介さずに体温の上昇が起こります。そのため、心因性発熱の多くは通常の発熱でみられるような体のだるさや眠気、関節痛など発熱以外の症状を伴いません。さらに、解熱剤を服用しても熱が下がらないのも特徴の1つです。

心因性発熱の症状

心因性発熱では。どのような症状があらわれますか?

心因性発熱には心理的ストレスで一時的に高熱が出る「急性型」と、慢性的なストレスで微熱が数カ月ほど続く「慢性型」の2つのタイプがあります。
それぞれで症状のあらわれ方が異なりますが、通常の発熱にあるような眠気やだるさ、食欲不振、筋肉痛、関節痛などの症状に乏しい点はどちらも同じです。また、いずれのタイプも解熱剤の服用による症状の改善(熱が下がる)はみられません。

急性型心因性発熱の症状

急性型心因性発熱の症状には、どのような特徴がありますか?

急性型心因性発熱では、試験前日や手術前日、歯科の受診前などの心理的ストレスが原因で急激な体温上昇(〜41℃)が起こります。ただ発熱の時間は短く、多くは24時間以内に平熱に戻るのが特徴です。急性型心因性発熱は、主に子どもや若い人に多くみられます。

慢性型心因性発熱の症状

慢性型心因性発熱の症状には、どのような特徴がありますか?

慢性型心因性発熱の症状の特徴は、仕事や介護などによる慢性的なストレスが続く状況下で、37〜38℃程度の微熱が数カ月以上続く点です。ストレスから解放されても平熱に戻らないケースが多く、さらに発熱していることを本人が気づかないケースもあります。慢性型心因性発熱は、主に成人に多くみられます。

解熱剤の効果

心因性発熱は、市販の解熱剤で熱を下げることはできますか?

解熱剤には、炎症性サイトカインやプロスタグランジンの産生による体温の上昇や炎症を抑える効果があります。しかし、心因性発熱の体温上昇にはこれらの物質が関与しないため、解熱剤を服用しても熱が下がりません

心因性発熱の原因

心因性発熱の原因

心因性発熱の原因には、どのようなものがありますか?

心因性発熱を発症する直接的な原因は、心理的ストレスおよび慢性的ストレスです。心理的ストレスについてはその要因が明確であることも多く、具体的なものに登校や試験、手術当日、嫌な人との面会や口論などが挙げられます。一方の慢性的ストレスでは、いじめや両親の不仲、仕事や介護の疲れなどによる心身の消耗が多く、さらに抑うつ状態や予期不安などを伴うケースもあります。

なぜ、ストレスで体温が上昇するのですか?

心因性発熱については、まだその詳しいメカニズムが明らかになっていません。ただ、人間の体には外部から攻撃を受けた際に、体温を上昇させて身を守る仕組みがもともと備わっています。この仕組みが心因性発熱につながる要因の1つと考えられています。

心因性発熱の受診科目

心因性発熱の疑いがある場合、どの診療科を受診したらよいですか?

発熱を伴う病気は数多く存在するため、まずは最寄りの内科を受診し、発熱を有する病気にかかっていないか詳しく調べてもらうことが大切です。そのうえで、症状から心因性発熱が疑われる場合は「心療内科」や「精神科」を受診しましょう。

心因性発熱の検査

心因性発熱ではどのような検査を行いますか?

心因性発熱でははじめに、血液検査やCT検査、レントゲン検査などを実施し、発熱を生じる他の病気との鑑別を行います。さらに心因性発熱の積極的な診断としては、「解熱剤が無効であること」や「ストレス状況の存在とそれによる体温の上昇が認められること」を確認します。

心因性発熱の治療

心因性発熱の治療

心因性発熱では、どのような治療を行いますか?

心因性発熱は、以下の治療を行いながら症状の改善を目指します。
  • 生活指導
  • 薬物療法
  • 自立訓練法
  • 心理療法

生活指導

生活指導では、具体的にどのような内容を指導していきますか?

「生活リズムを整える」「十分な休息をとる」など基本的な生活習慣の改善のほか、発熱時の活動の仕方や休息の目安などを指導します。

薬物療法

心因性発熱の薬物療法では、どのような薬物を使用しますか?

心因性発熱の薬物療法では、不安やストレスを和らげたり、交感神経の働きを抑えたりする薬物を用いて症状の改善を図ります。その具体的な薬物に、抗うつ剤、セロトニン受容体拮抗薬、自律神経調整薬などがあります。

自立訓練法

自立訓練法では、具体的にどのようなことを行いますか?

心因性発熱の自立訓練法では、呼吸法などを用いながら自律神経のバランスを整えるトレーニングを行います。このトレーニングには、心身の疲労回復やイライラした気持ちを落ち着かせる効果、肉体的・精神的な苦痛を和らげる効果などが期待できます。

心理療法

心理療法では、具体的にどのようなことを行いますか?

心理療法では、「日常のストレスを減らす」あるいは「ストレスに耐えうる状態に心身を回復させる」ことを目的に、カウンセリング認知行動療法などを行います。これらの治療は、公認心理師や臨床心理士のもとで実施されます。

心因性発熱の性差、年齢差など

心因性発熱の発症には性差や年齢差がありますか?

心因性発熱はあらゆる年代に発症する病気ですが、一過性の高熱がでる急性型は小児や思春期の年代に、微熱が続く慢性型は成人に多くみられます。性差を示すデータは、今のところありません。

編集部まとめ

心因性発熱はストレスによって体温の上昇が生じる心身症の1つです。心理的ストレスにより一時的に高体温になる「急性型」と、慢性的ストレスが続く状況下で平熱よりも少し高い微熱が続く「慢性型」の2つのタイプがあります。

急性型は発熱時間が短く、24時間以内に平熱に戻ることが多い一方、慢性型は微熱が数カ月続き、ストレスから解放されても症状が続くケースもみられます。ただ、いずれのタイプも発熱以外の症状に乏しく、さらに解熱剤を服用しても熱が下がらないのが特徴です。

発熱を伴うほかの病気がなく、症状から心因性発熱が疑われる場合は、心療内科または精神科を受診しましょう。

この記事の監修医師