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「甲状腺がんが転移しやすい場所」はご存知ですか?症状・原因も解説!【医師監修】

 更新日:2024/01/30
甲状腺がん 移転

甲状腺のがんの転移しやすい場所はどこなのかご存じでしょうか。
本記事では甲状腺がんの転移について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・甲状腺がんの症状と原因
  • ・甲状腺がんの転移
  • ・甲状腺がんの転移しやすい場所

甲状腺がんの転移について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

甲状腺がんとは?

甲状腺がんは、首の前に位置し、蝶のような形状をした甲状腺で発生します。甲状腺とは、ホルモンを分泌して体の代謝や成長を調節する重要な役割があります。甲状腺がんは、日本ではまれながんの一つですが、近年、甲状腺がんの発症率は増加しているとの報告があります。甲状腺がんの診断は、身体検査、血液検査、超音波検査、細胞診などで行われます。甲状腺がんの治療には、外科手術や放射線治療などが含まれます。そして抗がん剤治療などがあります。甲状腺がんの予後は、早期に発見されれば良好ですが、甲状腺がんが転移すると、病状が悪化する可能性があります。

甲状腺がんの症状

甲状腺がんの症状は、以下のようなものがあります。

  • ・しこりができる:甲状腺がんは、腫瘍が形成されると、それが原因となって甲状腺がんが発生することがあります。腫瘍は、首の前にある甲状腺の部分にしこりとして触れられます。しこりは、痛みを伴わないことが多いとされています。
  • ・声が出しにくい:甲状腺がんは、甲状腺の周りにある神経や気管を圧迫することがあります。その結果、声がかすれたり、変わったり、低くなる可能性があります。
  • ・のどの圧迫感:甲状腺がんは、腫瘍が大きくなり、周囲の神経や気管を圧迫する可能性があります。その結果、のどに違和感や圧迫感があったり、食べ物が詰まったり、呼吸が苦しくなったりすることがあります。
  • ・咳が出る:甲状腺がんは、甲状腺の周りにある気管や気管支を刺激することがあります。その結果、咳が出たり、血痰が出たりすることがあります。
  • ・首のリンパ節が腫れ硬くなる:甲状腺がんは、場合によっては首のリンパ節に広がる可能性がある疾患です。その場合、首のリンパ節が腫れたり、硬質化したりする可能性があります。

甲状腺がんの症状は、個人差やがんの進行度によって異なります。また、甲状腺がんの症状は、他の疾患でも見られることがあります。甲状腺がんの疑いがある場合は、早めに医師に相談してください。  

甲状腺がんの原因

甲状腺がんの原因は、以下のようなものがあります。

  • ・放射線:甲状腺は、放射線に対して非常に敏感な臓器です。放射線によって、甲状腺の細胞が傷つき、変化することがあります。これが、甲状腺がんの発生につながる可能性があります。放射線の例としては、原子力事故や医療検査などがあります。
  • ・遺伝:甲状腺がんは、家族に甲状腺がんの罹患者さんがいる場合、発生しやすいといわれています。メドゥラリー型甲状腺がんは、遺伝的な要素が強いことが特徴的です。この甲状腺がんは、遺伝子の異常が原因で起こります。
  • ・性差:甲状腺がんは、女性に多く見られるがんです。女性は男性の約3倍の割合で甲状腺がんになるといわれています。性差の原因は、女性ホルモンや妊娠などが関係していると考えられています。
  • ・ヨウ素:甲状腺は、ヨウ素という物質を必要としています。ヨウ素は、甲状腺ホルモンを形成するための重要です。しかし、ヨウ素の摂取量が過剰だったり、不足だったりすると、甲状腺がんの発生に関連性があると考えられます。

甲状腺がんの原因は、まだ完全には解明されていません。甲状腺がんを予防するためには、放射線を避ける、定期的な検診を受ける、バランスの良い食事をとるなどのことが大切です。

甲状腺がんの転移

甲状腺がんの転移を理解するためには、リンパ節転移と遠隔転移の二つの観点から考えることが重要です。以下では、それぞれについて詳しく解説します。

リンパ節転移

甲状腺がんにおけるリンパ節転移は、がんが甲状腺からリンパ管を経由して近くのリンパ節に広がる現象です。通常、がんが進行すると最初に近隣のリンパ節に広がり、がん細胞が増殖します。腫瘍が拡大すると、ステージの数が大きくなり、リンパ節転移の存在が確認され、手術が適用可能な範囲であれば、リンパ節の除去ができます。
しかしながら、拡大したリンパ節転移がんは、手術による除去が困難な状況も存在します。そのような状況では、放射線療法や抗がん剤治療が選択されることがありますが、これらの治療は全身の正常な組織にも影響を与える可能性があります。

遠隔転移

甲状腺がんにおける遠隔転移は、がん細胞が甲状腺以外の部位に広がる現象を指します。がん細胞は、原発巣から血管やリンパ管を通って別の臓器や器官に移動し、その場所で増加します。この転移は一般的に、血液の流れが盛んな場所やリンパの流れが集中する場所に影響を与えます。肺、肝臓、脳、骨などは、がん細胞が特に集中して転移するとされる部位です。
遠隔転移はがんの進行段階が進むにつれて生じることが一般的で、遠隔転移が確認されると、がんの治療や管理が複雑化します。肺や肝臓などの部位での遠隔転移は、特にその臓器の機能に影響を及ぼす可能性があるため、治療法を決定する際には慎重な検討が必要です。
現在の医療では、遠隔転移を含む甲状腺がんの進行を抑制するための複数の治療法が利用されています。抗がん剤や放射線療法は、がん細胞の増殖を抑えるためや、遠隔転移したがん細胞を減少させるために用いられます。これらの治療法は、がんの進行を抑制する一方で、患者さんの全身的な健康状態にも配慮しながら選択されます。

がん細胞の発生と転移

甲状腺がんにおけるがん細胞の発生と転移は、がんの進行と治療の重要な側面です。がん細胞が原発巣から離れ、リンパ節や他の臓器に広がり、腫瘍を形成する現象を転移と呼びます。原発巣から離れた場所で増殖する腫瘍は、がん細胞が甲状腺から他の部位に拡散する、いわゆる「転移」が起こることがあります。これを完全に取り除くことは困難です。
転移はがんによる死亡の主要な原因とされています。これによりがんが見つかることもありますが、その際にはがん細胞の形や性質などから原発巣が推定されます。
リンパ管と血流は、主要な転移ルートとして認識されています。リンパ行性転移は、がん細胞がリンパ管を通って近くのリンパ節に広がり、その地点から次々と遠いリンパ節へと拡大します。血行性転移は、血管を介して全身の臓器に転移する過程であり、がん細胞の特性によって臓器への転移傾向が異なります。
また、播種性転移は、特定の隙間にある臓器に転移性腫瘍を形成するパターンです。これに加えて、がん細胞が原発巣から周辺の組織や臓器へ広がる現象を浸潤といいます。臓器に直接広がるプロセスであり、転移のステップとなります。

甲状腺がんの組織型別に見る、転移しやすい場所

甲状腺がんは、他の部位に広がることがありますが、その場所は、甲状腺がんの組織型によって異なります。以下では、甲状腺がんの組織型別に、転移しやすい場所について紹介します。

乳頭がん

甲状腺がんの中で一般的なタイプは乳頭がんで、全体の約90%を占めています。このタイプのがんは、一般にはゆっくりした進行を見せることが多いとされています。乳頭がんはしばしばリンパ節への転移が観察される傾向がありますが、そのほとんどは穏やかな進行を辿ります。
ほとんどの乳頭がんは、穏やかな進行と関連して生命への深刻な影響は稀です。しかし、ごくわずかな症例では再発を繰り返すことや、悪性度の高い未分化がんに進展することがあります。これらの変化が見られるケースは稀ですが、重要な検査や追加の治療が必要な場合があります。
乳頭がんは、そのほかの甲状腺がんよりも予後が良好で、患者さんの治療や経過においては、ほとんどが穏やかな進行をたどることが多いとされています。

濾胞がん

甲状腺がんの中で稀ながらも重要なタイプのひとつである濾胞がんです。このがんは、甲状腺の構成をなす濾胞細胞から発生する悪性腫瘍で、全体の約5%を占めます。組織を顕微鏡で観察すると、濾胞がんは分泌腺様の形状を持つがん細胞が集まり、その名前が付けられました。
濾胞がんは一般的に進行が緩やかでおとなしい性質を持ち、乳頭がんとは異なり、首のリンパ節への転移は少ない傾向にあります。まれに肺や骨に転移することが報告されていますが、一般的に生命予後は良好です。10年生存率は90%以上であり、患者さんの生存率は高いとされています。

髄様がん

甲状腺髄様がんは全体の約1%を占めるまれながんで、甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞とは異なるカルシトニンを分泌する傍濾胞細胞ががん化する病態です。このタイプのがんは、ほかの一般的な甲状腺がんである乳頭がんや濾胞がんとは性質が大きく異なります。
甲状腺髄様がんの原因はほとんどの場合不明ですが、約1/3は遺伝性によるものとされます。遺伝性の場合、「常染色体顕性(優性)遺伝」と呼ばれ、家族内での遺伝リスクが高まることがあります。この遺伝性を持つ家族では、遺伝子検査が推奨され、同じがんの発症リスクが高まる可能性があります。
さらに、遺伝性の場合には、甲状腺髄様がんの他に血圧が異常に高くなる副腎の腫瘍である褐色細胞腫や、副甲状腺の機能が異常で血中カルシウムが高くなる副甲状腺機能亢進症といった病態が同時に発症することがあります。これらの病態を包括して多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)と呼びます。身体の異常を伴う場合、遺伝的要因がより深刻で、患者さんとその家族の健康への配慮が必要です。

未分化がん

甲状腺がんのタイプには、分化がんと未分化がんの2つの主要な分類があります。乳頭がんや濾胞がんのような分化がんは、その性質が穏やかであり、一般に予後が良好ながんの一種です。一方、未分化がんは悪性度が非常に高く、その性質から最も悪性ながんの一つとされています。
「分化」とは、基本的に細胞の成熟の過程を指し、細胞は分裂数を増やすだけでなく、その分化によって特定の組織や臓器の機能を持つようになります。甲状腺細胞も、甲状腺の役割を果たすためには分化が不可欠です。一方、未分化がんは、細胞が未熟な状態であり、通常の細胞よりも成熟していないと言えます。
分化がんは通常、穏やかな進行を辿り、数年間変わらないことがありますが、突然未分化がんに変化することがあります。未分化がんは、乳頭がんや濾胞がんの性質が変化して発展するため、通常は急速な悪性化を示すと考えられます。
甲状腺がんにおける進行段階の考え方では、高分化の腺がん(分化がん)は低分化がんへ進行し、さらに未分化がんへ変化する可能性があるとされています。この過程は時間をかけて進行する場合があり、未分化がんは悪性度が高く、治療が困難なケースも多いため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。

「甲状腺がんの転移」についてよくある質問

ここまで甲状腺がんの転移の症状を紹介しました。ここでは「甲状腺がんの転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

甲状腺がんが転移しやすい場所はどこですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

甲状腺がんが転移しやすい場所とは、甲状腺がんが他の部位に広がる可能性が高い場所のことです。甲状腺がんが転移しやすい場所は、以下のようになります。
・リンパ節:甲状腺がんは、甲状腺の周りにあるリンパ節に転移することが多いとされています。リンパ節は、体の免疫システムの一部で、がん細胞を排除しようとします。しかし、がん細胞が増えすぎると、リンパ節が腫れたり、硬くなったりします。
・肺:甲状腺がんは、遠隔転移の場合、最も多く転移するのが肺です。肺に転移すると、呼吸困難や咳などの症状が出ることがあります。肺転移は、放射性ヨウ素治療や抗がん剤治療などで治療できます。
・骨:甲状腺がんは、遠隔転移の場合、骨に転移することもあります。骨に転移すると、骨痛や骨折などの症状が出ることがあります。骨転移は、放射線治療や骨吸収阻害剤などで治療できます。
・肝臓:甲状腺がんは、遠隔転移の場合、肝臓に転移することもあります。肝臓に転移すると、肝機能障害や黄疸などの症状が出ることがあります。肝臓転移は、抗がん剤治療や分子標的治療などで治療できます。

甲状腺がんになりやすい人はどんな人ですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

甲状腺がんは年間におおよそ1万8,800人が診断される病気で、女性に多く見られます。女性では男性の約2.8倍にあたる人々がこの疾患に罹患しています。このがんは70代に発生する場合が多いですが、20代から30代の若い世代でも発症することが稀ではありません。
放射線被ばくは甲状腺がんの原因の一つと考えられています。若い頃の被ばく経験がリスクを高める可能性があるほか、体重増加や食習慣、ヨウ素の過剰摂取などもリスク要因とされています。さらに、甲状腺がんの特定の種類においては、遺伝子の変異が原因となることもあります。

編集部まとめ

ここまで甲状腺がんの転移についてお伝えしてきました。甲状腺がんの転移の要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・甲状腺がんの症状には、首にしこり、声のかすれ、のどの圧迫感、咳、首のリンパ節の腫れが含まれる。原因は放射線、遺伝、性差、ヨウ素の過不足などが考えられる。
  • ・甲状腺がんの転移はリンパ節と遠隔転移の2つの形態で起こります。リンパ節転移は近くのリンパ節へ広がり、遠隔転移は血液を介して他の臓器に拡がる。
  • ・乳頭がんは主にリンパ節に転移し、濾胞がんは少なく、髄様がんは肺や骨に転移することがある。未分化がんは高い悪性度で、リンパ節や遠隔臓器への転移がより一般的である。

「甲状腺がん」と関連する病気

「甲状腺がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

甲状腺がんと同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。

「甲状腺がん」と関連する症状

「甲状腺がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 甲状腺にしこりができる
  • 声のかすれ
  • のどの圧迫感
  • 首のリンパ節が腫れる

これらの症状が当てはまる場合には、甲状腺がんなどの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師