「エーラスダンロス症候群」とは?症状・原因・検査方法についても解説!
更新日:2023/04/03
皮膚や血管、関節などが脆くなってしまうエーラスダンロス症候群と呼ばれる病気をご存じでしょうか。日本でも、難病指定されており、脱臼や皮膚の脆さなどの症状以外にも、命に関わる合併症を引き起こすこともあるため、症状に応じた治療が必要です。
今回はエーラスダンロス症候群とはどのような病気か、症状や原因、治療法などを解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
エーラスダンロス症候群とは?
エーラスダンロス症候群とはどのような病気ですか?
エーラスダンロス症候群(EDS)は、皮膚や血管、関節など全身の結合組織であるコラーゲンが脆くなる遺伝性の病気です。
皮膚や関節が異常に伸びる・曲がる、切れやすい、出血しやすい、血管や皮膚が脆くなるなどの症状が挙げられます。症状の内容や程度は病型によって異なり、同じ病型でも症状の現れ方には個人差があります。
原因と症状から、主に6つの病型に分類されており、すべての病型を合わせると発症頻度は1/5,000人の割合です。遺伝性の病気のため、根本的な治療法はなく、基本的には対症療法で対応します。
日本では、難治性の病気として難病指定されています。
皮膚や関節が異常に伸びる・曲がる、切れやすい、出血しやすい、血管や皮膚が脆くなるなどの症状が挙げられます。症状の内容や程度は病型によって異なり、同じ病型でも症状の現れ方には個人差があります。
原因と症状から、主に6つの病型に分類されており、すべての病型を合わせると発症頻度は1/5,000人の割合です。遺伝性の病気のため、根本的な治療法はなく、基本的には対症療法で対応します。
日本では、難治性の病気として難病指定されています。
エーラスダンロス症候群の病型
エーラスダンロス症候群の病型を教えてください。
エーラスダンロス症候群は症状や原因から以下の6つの病型に分類されています。
- 古典型
- 関節可動亢進型
- 血管型
- 後側彎(こうそくわん)型
- 多発性関節弛緩(しかん)型
- 皮膚弛緩型
国際分類・命名法では、上記の6つの病型を含め、13の病型「D4ST1欠損に基づくEDS(DDEDS)」に分類されており、より細かく分けられました。エーラスダンロス症候群は日々研究が進んでおり、新しい病型が発見されています。
病型と遺伝の関係
エーラスダンロス症候群と子どもへの遺伝について教えてください。
6分類の病型では、古典型、関節可動亢進型、血管型、多発性関節弛緩型などは、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)となり、患者の子どもに1/2の確率で遺伝することが分かっています。
後側彎型と新しく分類された病型「D4ST1欠損に基づくEDS(DDEDS)」などは、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)となり、患者の子どもに1/4の確率で遺伝します。
後側彎型と新しく分類された病型「D4ST1欠損に基づくEDS(DDEDS)」などは、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)となり、患者の子どもに1/4の確率で遺伝します。
エーラスダンロス症候群の症状
エーラスダンロス症候群はどのような症状が現れますか?
エーラスダンロス症候群は、これまでにさまざまな病型が発見されています。そのため、病型によって、それぞれ少しずつ異なった症状が現れるのが特徴です。ここでは特にほかの病型とは異なる特徴的な症状が現れる4つの病型の症状を解説します。
古典型の症状
古典型ではどのような症状が現れますか?
古典型では、皮膚が脆くなるのが特徴です。皮膚が簡単に裂けやすく、その後に萎縮性の瘢痕(はんこん)と呼ばれる傷跡ができることがあります。また、関節が異常に柔らかくなったり、脱臼しやすくなったりするのも古典型の特徴です。
そのほかにも、内出血しやすくなる、あるいは心臓弁の逸脱・逆流、上行大動脈拡張などの心臓の障害も現れることがあります。
そのほかにも、内出血しやすくなる、あるいは心臓弁の逸脱・逆流、上行大動脈拡張などの心臓の障害も現れることがあります。
関節可動亢進型の症状
関節可動亢進型ではどのような症状が現れますか?
関節可動亢進型では、関節の脱臼や亜脱臼が起こります。
慢性難治性疼痛のような原因が分からない慢性的な痛みのほかにも、便秘や下痢を繰り返す機能性腸疾患、立ちくらみや動悸、めまいなどの自律神経異常など、さまざまな症状が見られるのも関節可動亢進型の特徴です。
慢性難治性疼痛のような原因が分からない慢性的な痛みのほかにも、便秘や下痢を繰り返す機能性腸疾患、立ちくらみや動悸、めまいなどの自律神経異常など、さまざまな症状が見られるのも関節可動亢進型の特徴です。
血管型の症状
血管型ではどのような症状が現れますか?
血管型では、動脈解離や動脈瘤、動脈破裂、頸動脈海綿静脈洞ろうなどの動脈病変が起こるのが特徴です。そのほかにも、腸管破裂や子宮破裂などの臓器破裂、気胸など、時に命に関わる合併症が起こる場合があります。
また、血管が脆くなっているため内出血しやすく、皮膚が薄く皮下静脈が透けて見えるなどの特徴も見られます。
また、血管が脆くなっているため内出血しやすく、皮膚が薄く皮下静脈が透けて見えるなどの特徴も見られます。
筋拘縮型の症状
筋拘縮型ではどのような症状が現れますか?
筋拘縮型では、出生直後に多発関節拘縮と呼ばれる関節の可動制限が見られることや、顔の特徴が現れます。
結合組織(コラーゲン)が徐々に脆くなっていくために、古典型のように、皮膚の異常な伸び・脆さ、関節の過伸展・脱臼、巨大皮下血腫、足や脊椎の変形などの症状が起こります。
結合組織(コラーゲン)が徐々に脆くなっていくために、古典型のように、皮膚の異常な伸び・脆さ、関節の過伸展・脱臼、巨大皮下血腫、足や脊椎の変形などの症状が起こります。
エーラスダンロス症候群の原因
エーラスダンロス症候群の原因は何ですか?
エーラスダンロス症候群は、結合組織のコラーゲンの構造遺伝子やプロコラーゲンからの成熟に関わる酵素の遺伝子変異が原因で起こることが分かっています。
6分類の病型では、以下のコラーゲン遺伝子の変異が原因です。
6分類の病型では、以下のコラーゲン遺伝子の変異が原因です。
- 古典型:V型コラーゲンの遺伝子変異
- 血管型:III型コラーゲンの遺伝子変異
- 後側彎型:コラーゲン修飾酵素リジルヒドロキシラーゼの遺伝子変異
- 多発性関節弛緩型:I型コラーゲンの遺伝子変異
- 皮膚弛緩型:プロコラーゲンI N-プロテイナーゼの遺伝子変異
関節可動亢進型は原因遺伝子が見つかっていません。それぞれの遺伝子変異がどのように合併症を引き起こすのかはまだ分かっていないのが現状です。
エーラスダンロス症候群の受診科目
気になる症状があるときは何科を受診すればいいですか?
気になる症状があるときは、まずは症状に応じた診療科を受診しましょう。
皮膚症状があれば皮膚科、脱臼などの関節症状があれば整形外科のように症状に応じた科を受診します。病型によっては小児科や産婦人科での診察時や出生時に気づくこともあります。
エーラスダンロス症候群の疑いがあれば、詳しい検査のために遺伝子診断などに対応している専門科目を受診します。
皮膚症状があれば皮膚科、脱臼などの関節症状があれば整形外科のように症状に応じた科を受診します。病型によっては小児科や産婦人科での診察時や出生時に気づくこともあります。
エーラスダンロス症候群の疑いがあれば、詳しい検査のために遺伝子診断などに対応している専門科目を受診します。
エーラスダンロス症候群の検査方法
エーラスダンロス症候群ではどのような検査を行いますか?
エーラスダンロス症候群では、まずは症状に応じて触診や視診を行います。血管に関する疾患が疑われる場合には、CT検査や血液検査などより詳しい検査を行い、病態を確認します。
エーラスダンロス症候群の疑いがあれば、生化学検査や遺伝子検査など、確定診断のための検査を行います。
エーラスダンロス症候群の疑いがあれば、生化学検査や遺伝子検査など、確定診断のための検査を行います。
エーラスダンロス症候群の性差・年齢差
エーラスダンロス症候群には性差や年齢差はありますか?
エーラスダンロス症候群は、地域や性別は関係なく発生する可能性がある病気です。遺伝子異常のため、日本でも難病指定となっています。
エーラスダンロス症候群の治療方法
エーラスダンロス症候群はどのような治療を行うのですか?
エーラスダンロス症候群は遺伝子異常であるため根本的な治療法は確立されていません。そのため、対症療法が中心です。
皮膚症状では裂傷部分の縫合を行ったり、関節への痛みには鎮痛薬を使用したりします。
関節の症状の場合は、運動を控えたり、補助装具を使用したり、リハビリを行ったりすることもあります。
動脈解離や動脈瘤などの血管の症状がある場合は、人工血管置換術などの手術を行うこともあります。
そのほかにも、各診療科の定期健診が重要で、病型によっては血管の破裂防止策、あるいは便秘対策などを行います。
皮膚症状では裂傷部分の縫合を行ったり、関節への痛みには鎮痛薬を使用したりします。
関節の症状の場合は、運動を控えたり、補助装具を使用したり、リハビリを行ったりすることもあります。
動脈解離や動脈瘤などの血管の症状がある場合は、人工血管置換術などの手術を行うこともあります。
そのほかにも、各診療科の定期健診が重要で、病型によっては血管の破裂防止策、あるいは便秘対策などを行います。
編集部まとめ
エーラスダンロス症候群は皮膚や血管、関節などが脆くなってしまう遺伝子異常が原因で起こる病気です。日本でも難病指定されており、脱臼や皮膚の脆さなどの症状以外にも、命に関わる合併症を引き起こすこともあるため、症状に応じた治療が必要です。
エーラスダンロス症候群は、対症療法が基本となるため、気になる症状があればまずは症状に応じた診療科を受診することが大切です。症状が繰り返したり、良くならなかったりする場合は、より詳しい検査を受けるために専門科を受診しましょう。
参考文献