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骨粗鬆症の治療方法は?骨粗鬆症の原因や治療薬・薬の副作用・予防する方法も詳しく解説します

 公開日:2023/12/14
骨粗鬆症

骨密度の低下により、骨が脆くなり骨折しやすくなる骨粗鬆症。適切な治療をして、少しでも早く元気な体を取り戻したいという方もいることでしょう。

骨粗鬆症の治療方法は、運動療法・食事療法・薬物療法の3つが挙げられます。すぐに治るものではなく、長期的な治療が必要です。

そこでこの記事では、骨粗鬆症の治療方法や原因・治療薬・薬の副作用・予防する方法について解説します。医師の診断に従い適切な治療を受けるようにしましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

骨粗鬆症とは

痛がる中高年の女性
骨粗鬆症とは、骨がスカスカになり骨折しやすくなる病気です。現在、日本では1,000万人以上の患者がいるといわれ、高齢化とともに増加しています。
骨は、1度作られたらそのまま維持するのではありません。新たに作られる「骨形成」と溶かして壊される「骨吸収」を繰り返し、常に「骨形成サイクル」が回っています。
このサイクルのバランスが崩れて、うまく骨を形成できない状態が骨粗鬆症です。発症したとしても痛みは感じませんが、軽く転倒するだけで骨折してしまいます。
骨折するとはじめて痛みが発生するため、その時点で発症に気づくケースが多いです。骨折する前に、骨の量や骨密度を調べておくと良いでしょう。
圧倒的に女性が発症することが多く、主な原因は加齢と閉経です。閉経による女性ホルモンの減少や老化が深く関係しているといわれています。

骨粗鬆症の原因

膝が痛い高齢者の女性
骨粗鬆症の原因は、加齢や閉経による骨密度の低下です。骨を形成するために必要な栄養素が足りなくなり、骨が脆くなってしまいます
骨密度は20歳ごろにピークを迎え、40代半ばまでは維持することが可能です。しかし、50歳に近づくにつれて低下するといわれています。
ここでは「骨密度の低下」や、それに深く関係する「閉経」・「喫煙」について見ていきましょう。

骨密度の低下

レントゲン 大腿骨骨折
骨粗鬆症は、骨密度の低下が原因で発症します。加齢による内蔵機能の低下によりカルシウムを吸収する力が弱くなってしまうことが原因です。
カルシウムを効率良く吸収できなくなると、骨の形成よりも破壊が上回り丈夫な骨が作れません。また、加齢による骨芽細胞機能の異常や筋肉量の低下も骨密度が低下する原因です。
骨密度は幼少期から20歳程度までに、十分な運動と栄養により上限なく高めることができます。
その一方で、骨密度を高められる20歳ごろまでに無理なダイエットや偏食・運動不足が重なると、将来必要な骨密度を維持しにくくなるでしょう。
そもそもの骨密度が低くなってしまうため、加齢による影響を受けやすくなります。

閉経

骨粗鬆症は、閉経も原因のひとつになるといわれています。エストロゲンの減少により、破骨細胞の活性化を抑えられなくなるからです
女性の体内では、生理が始まると卵巣からエストロゲンが分泌されます。エストロゲンは女性の成長に影響するホルモンです。
また、骨の形成では破骨細胞の働きを抑制する機能があります。このエストロゲンの減少により、骨の形成よりも破壊が上回り骨密度の低下につながるという仕組みです。
骨粗鬆症は男性でも発症する病気ですが、圧倒的に閉経後の女性の割合が増えています。

喫煙

喫煙も骨粗鬆症の原因のひとつです。ニコチンは全身の血流を悪くするため、内臓の働きが抑制されカルシウムの吸収を妨げてしまいます
さらに、破骨細胞の活性化を抑制するエストロゲンの働きを邪魔するため、喫煙の有無が骨粗鬆症の発症に大きく影響するでしょう。
また、ニコチンは血管を細くしてしまうため、体内に送る血液量が減少してしまいます。骨折した患部に思うように血液を送れなくなり、なかなか治りません。
骨折の治療に時間がかかると、合併症のリスクも高くなります。喫煙は大切な骨にも影響が出るため、注意しましょう。

骨粗鬆症の治療方法

手すりで体操する高齢女性
骨粗鬆症の治療方法は「運動療法」・「食事療法」・「薬物療法」の3つが挙げられます。治療の主な目的は、骨密度の低下を抑え骨折を防ぐことです。
治療方法の中心は薬物療法ですが、実際には運動療法と食事療法を並行して行います。骨折している場合は骨折の治療と同時に薬物療法を取り入れることが多いです。
薬で骨密度の低下を抑えつつ効果的な運動やバランスの良い食事を摂取して、生活習慣を改善するのが大切といえるでしょう。

運動療法

骨粗鬆症の治療には、運動療法が効果的といえます。骨は負荷がかかると強くなる性質があるためです。
骨密度の上昇だけではなく筋力やバランス感覚を向上させることで、骨折の主な原因となる転倒を防ぐことにつながります
元気な人であれば、ジョギングやジャンプなど骨に負荷がかかる運動が望ましいです。しかし、骨粗鬆症の患者さんの場合はより安全な運動を行いましょう。
安全に行える運動は次の3つです。

  • ダイナミックフラミンゴ療法
  • ヒールレイズ
  • スクワット

「ダイナミックフラミンゴ療法」とは、フラミンゴのように片足を上げる運動です。足を綺麗に高く上げようとせずに、床につかない程度に上げれば問題ありません。
転倒する恐れがあるため、手すりや机など安全を確保できるものにつかまって行いましょう。右足・左足ともに1分間ずつ行い、1日3セット行うのが理想といえます。
「ヒールレイズ」とは、かかとを上げてつま先立ちする運動です。両足を肩幅程度に広げて、ゆっくりと上下運動を行います。
高く上げる必要はないため、自分ができる範囲で行ってください。1度に20回を、1日2〜3セットを目標にしましょう。
「スクワット」とは、膝を曲げてゆっくりと腰を下ろす運動です。早くやればいいというものではなく、5秒程度かけてゆっくりと5〜6回行いましょう。
膝がつま先よりも前に出てしまうと、効果が薄れてしまうため注意が必要です。また、腰を下ろす際に転倒するリスクがあります。手すりや机などにつかまって行ってください。

食事療法

鮭の和食・朝食・Japanese
骨粗鬆症の治療方法として、食事療法も効果が期待できます。カルシウムが不足することで起こる病気のため、不足している栄養素を摂取することが大切です。
しかし、ただカルシウムを摂取すればいいというわけではありません。栄養バランスの良い食事を意識し、ビタミンD・ビタミンKも必要な量を摂取しましょう
ビタミンDはカルシウムの吸収を促進する働きがあります。また、ビタミンKは骨形成を促進し、骨吸収を抑制する作用が特徴です。
一方で、アルコールやカフェインは尿を出す働きを強めるため、過剰に摂取すると尿と一緒にカルシウムが排出されやすくなります。

薬物療法

骨粗鬆症の治療は薬物療法が中心です。患者さんの症状や病気の進行具合によって、さまざまな薬が開発されています。
骨粗鬆症の薬は「骨吸収を抑制する薬」・「骨の形成を促進する薬」・「そのほか(カルシウム製剤)」の3種類です。
骨吸収を抑制する薬は、破骨細胞の活性化を抑えて骨吸収を緩やかにします。骨吸収が緩やかになると、自然と骨形成が追いつき骨密度が高くなるでしょう。
骨の形成を促進する薬は、新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させて骨の強度を高める働きがあります。
カルシウム製剤は、サプリメントのようにカルシウムをそのまま薬として摂取するためのものです。骨粗鬆症の患者さんは1日に1,000mgのカルシウムが必要とされています。

骨粗鬆症の治療薬

錠剤を手の平にのせた高齢女性の手元
骨粗鬆症の主な治療薬は「ビスホスホネート」・「デノスマブ」・「副甲状腺ホルモン薬」・「活性型ビタミンD3薬」の4つが挙げられます。
それぞれの作用や特徴などを確認してみましょう。

ビスホスホネート

ビスホスホネートは、骨吸収を抑えて骨密度を増加させる働きがあります。体内に吸収されると、破骨細胞のアポトーシスを誘導して骨吸収の邪魔をするのが特徴です。
飲み薬と注射薬に分けられ、薬のタイプによって飲む間隔や注射する間隔が異なります。用法・用量については担当医の指示に従い、きちんと守りましょう。

デノスマブ

デノスマブは、骨吸収を抑制する注射薬です。破骨細胞の形成や活性化に関係するタンパク質に作用します
投薬頻度は6ヶ月に1回と継続しやすいのが特徴です。副作用として「低Ca血症」になる可能性があるため、ビタミンDやカルシウム製剤を併用する必要があります。

副甲状腺ホルモン薬

副甲状腺ホルモン薬は、新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させる注射薬です。本来、副甲状腺ホルモンは骨吸収を促進し血液中のカルシウム濃度を上げる働きがあります。
言い換えると、骨粗鬆症の治療には向かない成分です。しかし、断続的に投与して一時的に副甲状腺ホルモンの濃度を高めると、骨芽細胞が活性化します
この性質を活かすことで、骨形成を促進させるのが特徴です。骨密度の低下が著しく骨折の危険性が高い患者さんや、すでに骨折している患者さんに投与されます。

活性型ビタミンD3薬

活性型ビタミンD3薬は、骨形成サイクルに欠かせないカルシウムやリンの吸収を促進する飲み薬です。
骨形成と骨吸収のバランスを調整する働きもあるため、結果的に骨密度を増加させます。また、背骨の骨折リスクを減らす効果も認められている治療薬です。

骨粗鬆症の薬の副作用

血液検査の結果と処方薬のイメージ素材
骨粗鬆症治療薬の副作用は「吐き気・嘔吐」・「食欲不振」・「胃痛」・「下痢」・「便秘」が挙げられます。
消化器系の症状を抑えるには用法・用量をきちんと守り、横になったまま飲んだり飲食物と一緒に飲んだりするのはやめましょう。
また、ごく稀に重大な副作用を引き起こす可能性があります。「乳がん」・「急性腎不全」・「間質性腎炎」・「顎骨壊死」などです。
骨粗鬆症の治療薬には、女性ホルモンやビスホスホネートのような服用方法に注意する必要がある薬も含まれます。
1回に飲む量や飲み続ける期間など、医師の指示に従い必ず守るようにしましょう。

骨粗鬆症を予防する方法

朝食を食べる日本人女性(いただきます)
骨粗鬆症を予防する方法は「適度な運動」や「バランスの良い食事」の2つが挙げられます。
骨は負荷をかけることで丈夫になる特性があるため、適度な運動は必須です。また、カルシウムやビタミンDなど骨をつくる上で必要な栄養素は欠かせません。
ビタミンDは紫外線を浴びることで体内で合成される成分のため、日光浴をしながら適度な運動をするのもおすすめです。

適度に運動する

骨粗鬆症の予防には、適度に運動するのがおすすめです。骨は物理的な刺激が加わると、微量の電流が伝わり強度が増すといわれています。
物理的な負荷が大きければ大きいほど骨密度が高くなるため、骨粗鬆症予防のために運動する場合はウォーキングやジョギングなどの重力がかかる運動を取り入れましょう。
運動することで筋肉が鍛えられ身のこなしがよくなるため、骨折の原因となる転倒も防ぐことが可能です。
ただし、骨に負荷をかけたほうが強くなるからといって無理な運動をすると、怪我の原因となります。
毎日継続することが大切なため、自分が楽しめる運動を選択しましょう。

バランスの良い食事を心がける

骨粗鬆症の予防には、バランスの良い食事を心がけることが大切です。カルシウムは乳製品や大豆製品・小魚・緑黄色野菜・海藻などに含まれています。
また、バランスの良い食事を心がけることで、肥満のような生活習慣病の予防にも繋がり、効果的な運動も積極的に取り組めるようになるでしょう。
骨粗鬆症を予防するにはカルシウムだけではなく、ビタミンDやビタミンKも必要です。健康的な体づくりのためにも、毎日の食生活が重要になります。

骨粗鬆症の治療は根気よく続けよう

ストレッチをするシニアとトレーナーの女性
骨粗鬆症の治療は、根気強く続けるようにしましょう。すぐに効果が現れるものではなく、時間がかかるケースが多いからです。
実際にある製薬株式会社の調査によると、処方されて1年後の継続率が約50%になっているというデータもあります。
ほとんどの薬が1〜2年程度の長期的な継続が必要なものばかりなため「痛みが消えた」といって勝手に治療をやめては意味がありません
医師の診断に従い、適切に治療を進めるようにしましょう。

編集部まとめ

運動のあと一休みする女性
骨粗鬆症の治療方法や原因・治療薬・薬の副作用・予防する方法について解説しました。

骨粗鬆症は加齢や閉経によって骨密度が低下することで発症します。治療の方法は、運動療法・食事療法・薬物療法の3つです。

基本的な治療は薬物療法ですが、同時に運動療法や食事療法を取り入れるのが一般的となっています。

この記事の監修医師