「鉄欠乏性貧血」とは?症状・原因についても解説!
更新日:2023/03/27

鉄分が不足することで様々な症状が引き起こされる「鉄欠乏性貧血」をご存じでしょうか。若い女性がなる病気と考えている方も多いと思いますが、必ずしもそうではありません。消化管腫瘍などの病気が原因で、鉄欠乏性貧血になる場合もあります。 今回は、鉄欠乏性貧血の概要や症状、原因、治療法などを詳しく紹介します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
鉄欠乏性貧血とは
鉄欠乏性貧血とはどのような病気でしょうか?
鉄欠乏性貧血は、貧血の中でも、最も頻度の高い貧血の1つです。
国民健康・栄養調査により、20〜40歳代女性の40%以上が、鉄欠乏性貧血と推定されます。
鉄欠乏性貧血は、身体の中の鉄分が不足することで、血液の成分の1つである赤血球の中にあるヘモグロビンが作られなくなり生じます。
女性特有の月経や妊娠・出産以外にも、消化管腫瘍などが原因で鉄欠乏性貧血となる場合もあるため、男性も鉄欠乏性貧血になる可能性があるのです。
ヘモグロビンとは、どのような役割をしているのでしょうか?
ヘモグロビンは、鉄とたんぱく質でできており、酸素と結びついて身体中に酸素を運ぶ役割をしています。
鉄分が不足し、ヘモグロビンが減ると、身体中に酸素を運ぶ力が弱くなってしまうのです。鉄欠乏性貧血は、身体中に酸素が運びづらくなった状態を意味します。
鉄欠乏性貧血の症状とは
鉄欠乏性の症状とは、どのようなものなのでしょうか?
健診などで鉄欠乏性貧血が判明したとしても、必ずしも自覚症状があるわけではありません。
自覚症状がある方の場合、動悸や息切れなど、他の病気でも生じるような症状が出る場合が多くあるのです。その一方で、鉄欠乏性貧血の特徴的な症状もあります。
身体的な症状
鉄欠乏性貧血になると、どのような症状が身体に出るのでしょうか?
鉄欠乏性貧血に出やすい症状として一般的なものが、動悸や息切れです。
しかし、動悸や息切れは他の病気でも生じるため、鉄欠乏性貧血であると、本人が気づくことが難しいという現状があります。
他の症状として、まぶたの裏側(粘膜眼瞼結膜)が白くなったり、顔全体が青白くなったりすることが挙げられます。また、顔色だけではなく、具体的な症状として、舌炎や口内炎になることもあるのです。
鉄欠乏性貧血に特徴的な症状
鉄欠乏性貧血に特徴的な症状はあるのでしょうか?
鉄欠乏性貧血に特徴的な症状として、爪が薄くなりもろくなる「匙上爪(スプーンネイル)」というものがあります。
また、異食症といって、氷などを好んで食べるケースもあるのも特徴の1つです。
鉄欠乏性貧血の原因とは
鉄欠乏性貧血の原因は何なのでしょうか?
鉄欠乏性貧血の原因として、大きく分けて3つあります。
- 鉄の需要の増加
- 鉄の供給の低下
- 鉄の喪失
鉄の需要の増加
鉄の需要が増加するのはどのような時でしょうか?
女性が妊娠している時、お腹の中にいる子どもに栄養を与えるために、母親である女性は鉄分を多く必要とします。出産後も母親が子どもに授乳している時に、母乳から母親の鉄分を与えるのです。そのため、妊婦や授乳中の女性は鉄分の需要が高まります。
また、思春期の女子が急激に成長する際、身長や体重だけではなく、血液の量も増えるため、血液を作るために鉄の需要が多くなるのです。
鉄の需要の増加と鉄欠乏性貧血は関係しているのでしょうか?
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鉄の需要が増加すると、身体の中の鉄分がこれまで以上に必要となり、これまで足りていた鉄が不足し、鉄欠乏性貧血になります。
鉄の供給の低下
鉄の供給が低下するのはどのような時でしょうか?
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鉄の供給の低下は、食事から摂取する鉄分が減ることで生じます。具体的には、食生活の乱れにより、鉄分の少ない食事が多い場合などです。
また、食生活の乱れだけではなく、規則正しい食生活をしていても、鉄の供給の低下が生じることがあります。それは胃を切除している場合です。胃を切除すると、胃酸の分泌が減少するため、鉄の吸収能力が低下してしまうのです。
鉄の供給が低下すると、なぜ鉄欠乏性貧血になるのでしょうか?
血液の成分であるヘモグロビンの材料は鉄のため、鉄の供給が少なくなると、材料となる鉄が不足し鉄欠乏性貧血になります。
鉄の喪失
鉄の喪失とは、どのような時に起きるのでしょうか?
出血が生じると、鉄の喪失が生じます。出血は月経だけではなく、消化器潰瘍や悪性腫瘍などの病気による消化管の出血でも生じるのです。
鉄の喪失が起こると、どうして鉄欠乏性貧血になるのでしょうか?
月経や病気による出血などにより鉄が失われると、血液の成分であるヘモグロビンが作られなくなるため、鉄欠乏性貧血になってしまいます。
鉄欠乏性貧血の受診科目
鉄欠乏性貧血のような症状がある場合、何科を受診したらいいでしょうか?
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鉄欠乏性貧血は、血液検査で分かるため、身近な内科を受診するのが良いでしょう。
ただし、普段から経血量が多い方や妊娠されている方、授乳中の方は鉄欠乏性貧血の原因を調べるためにも、産婦人科の受診をおすすめします。
また、過去に胃の切除をしたことがある方は、その病気でかかった医師に相談するのも良いでしょう。
鉄欠乏性貧血の診断・検査
鉄欠乏性貧血は、どのような検査でわかりますか?
採血を行うことで、鉄欠乏性貧血が診断されます。
具体的な項目として、ヘモグロビン値、血清鉄、血清フェリチン値、不飽和鉄結合能を調べることで、総合的に判断されます。
鉄欠乏性貧血の原因を調べることも重要
鉄欠乏性貧血の検査の際、原因についても調べますか?
鉄欠乏性貧血の原因の1つに出血があると述べましたが、出血の原因として命に関わる悪性腫瘍による消化管出血などが影に隠れている場合があるため、原因についても詳しく調べます。
原因を調べるために、どのような検査が行われますか?
女性で婦人科疾患が疑わしい場合には、婦人科にて内診や経膣超音波検査を行います。
婦人科疾患以外が疑われる場合には、消化器(胃や大腸など)の疾患がないか、便潜血検査や胃カメラ、大腸カメラを行うことが多いでしょう。
鉄欠乏性貧血の治療
鉄欠乏性貧血の治療はどのようなものでしょうか?
まず鉄欠乏性貧血の原因をしっかりと精査し、その原因を治療するのが最優先です。
次に、ヘモグロビンの材料となる不足した鉄分を補うために、鉄剤の飲み薬による治療を行います。
しかし、飲み薬による副作用がある場合は、点滴による鉄剤の投与を行う場合もあるでしょう。薬だけではなく、鉄分の多い食事(レバーやほうれん草)などをとり、鉄不足を補うことも大切です。
治療で貧血は正常化してもすぐ薬を中止してしまうと貯蔵鉄であるフェリチンがないため(貯金がない)、すぐにまた鉄が不足し、貧血となってしまいます。
最低6か月程度の内服が必要です。
鉄欠乏性貧血の性差・年齢差
鉄欠乏性貧血に性差や年齢差はあるものでしょうか?
20歳〜40歳代の女性に多い傾向にあり、70歳以上の男性と女性に多いといわれています。
性差・年齢差がある理由
なぜ、女性の方が多いのでしょうか?
鉄欠乏性貧血は、月経や妊娠、授乳などが原因になることが多いため、20歳〜40歳代の女性に多い傾向にあります。
なぜ、70歳以上の男性・女性にも多い傾向があるのでしょうか?
高齢になればなるほど悪性腫瘍ができやすく、悪性腫瘍による消化管出血などの影響で、鉄欠乏性貧血になるためと考えられます。
編集部まとめ
鉄欠乏性貧血は、血液の成分である赤血球の中にあるヘモグロビンが作られなくなることで生じます。その原因として、月経や妊娠・授乳など女性特有のものから、消化管出血など男性にも生じる原因のものがあります。他の病気でもみられる症状も多いため、少しでも気になる症状がある場合には、医療機関を受診しましょう。参考文献




