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「腹膜炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!

 更新日:2023/03/27
「腹膜炎」とは?症状・原因・治療法についても解説!

腹水がたまってくるだけでなく、ときには激しい痛みを伴い命に関わることもある腹膜炎をご存じでしょうか。比較的緩やかに進むものや、急激に悪化するものなど様々なので、違和感を覚えたら医療機関を受診することがのぞましい症状です。

今回は、腹膜炎の状態・症状や原因、受診科目などを紹介します。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

腹膜炎とは

腹膜炎とはどのような症状でしょうか?

腹膜炎とは、お腹の中の臓器の外側と、内側の壁、横隔膜、骨盤底などを覆っている膜、いわゆる腹膜に炎症が起こることをいいます。

症状の出方には違いがあり、急に症状が進行する「急性腹膜炎」と徐々に進行する「慢性腹膜炎」の二通りに分けられます。
腹膜炎は、臓器に生じた炎症が原因となることが多く、早期発見、そして早めの手術が必要なケースもある病気です。局部的にみられる炎症であれば、抗菌薬による治療をしていく場合もあります。

腹膜炎の症状は

腹膜炎の症状は具体的にどのようなものでしょうか?

急性腹膜炎と慢性腹膜炎で症状が異なります。激しい痛みで歩行が困難になるなどすぐにわかるものから、症状が現れないものまで原因によって様々です。

症状の出方として炎症が狭い範囲で限定していれば「限局性腹膜炎」といい、腹部全体に広がるものは「汎発性腹膜炎」といいます。範囲によって呼び方が変わります。

汚染が持続的でなければ炎症部分は局所にとどまることがあります。消化管・胆嚢に穴があいた場合や、虫垂炎、憩室炎などでは、周りの炎症性反応で広がらずに被覆されることもあり、その結果狭い範囲でとどまります。

ですが、内臓の炎症が全体に広がる汎発性腹膜炎であることが多いので、症状を軽く考えずに受診しましょう。

急性腹膜炎

急性腹膜炎にはどのような症状がありますか?

まず、突然痛みに襲われます。その後も腹痛が続いたり、徐々に痛みが広がってきたりします。人によっては、響くような痛みを感じたり、腹壁が板のように硬くなったり、さらには発熱や歩行困難をきたすこともあります。悪心、嘔吐、発熱、頻脈などがみられたら注意が必要です。

腹膜に穴があき内容物が腹腔内に広がっていくと、腹膜全体に炎症が起こります。その場合激烈な痛みが現れ、耐えられずにショックに陥ることもあります。急性腹膜炎の場合、無症状であることはないでしょう。

慢性腹膜炎

慢性腹膜炎にはどのような症状がありますか?

急性腹膜炎のように、いきなり強い痛みを感じることはなく、初期症状は軽度の腹部膨満からはじまります。ゆっくりと時間をかけて緩やかに進行するのが特徴です。あまり自覚症状がないのも慢性腹膜炎の特徴です。

ですが、だんだんと腹水がたまるのでお腹あたりが膨らんできます。
がんが腹膜へ広がり発生するがんの末期症状であるがん性腹膜炎の場合もあるので、食欲低下や吐き気などを併発しているなら、腹膜炎の症状が強く出ていなくても気をつけましょう。

腹膜炎の原因

腹膜炎の原因としてどのようなことが関係しているのでしょうか?

急性のものと慢性のもので原因は異なります。胃や十二指腸、小腸、大腸などの消化管の病気によって引き起こされるものは急性腹膜炎になります。慢性腹膜炎はがん細胞や結核が原因としてあげられます。

急性腹膜炎

急性腹膜炎の原因はなんでしょうか?

急性腹膜炎の場合、消化管疾患などが原因となることが多いようです。

胃・十二指腸など消化管に穴があくことによって腹腔内に細菌が感染し、炎症が起こることで発症します。胃穿孔、十二指腸潰瘍穿孔、大腸穿孔がそれにあたります。また、虫垂炎、胆嚢炎、急性膵炎,骨盤腹膜炎などが原因となり穿孔を起こすことでも急性腹膜炎は発症します。

慢性腹膜炎

慢性腹膜炎の原因はなんでしょうか?

結核やがん、肝硬変に合併する特発性細菌性腹膜炎などが原因で引き起こされます。慢性腹膜炎の場合は、根底に潜んでいる病気によって原因が異なります。

結核の場合、結核性腹膜炎となり、血液やリンパ管を介して感染します。がんが原因であれば、がん細胞が転移して炎症を起こしたところが腹膜炎を発症します。

また、開腹手術後に腸管が癒着した場合に起こる慢性腹膜炎もあります。様々な原因が潜んでいるので、見極めるために検査が必要です。

腹膜炎の受診科目

腹膜炎のような症状が現れたら何科を受診すればよいでしょうか?

様々な要因が考えられるものなので、できれば総合的に診てもらえる消化器外科がおすすめです。
我慢できないような激しい腹痛の場合はなるべく早めに受診するほうがよいでしょう。

腹膜炎はどんな検査を行う?

腹膜炎はどんな検査を行う?

腹膜炎はどのような検査を行いますか?

まずは問診をして状態をみていきます。そして、血液検査で白血球数やCRPの上昇を確認することが有効とされています。

腹部CT検査では、遊離ガスの有無や消化管穿孔の部位、臓器の炎症性変化、感染部位など多くのデータがとれるので、腹膜炎の診断には不可欠です。腹部超音波は、患者の負担が少なく簡単なので、より多くの情報を得るために併用される場合もあります。

腹膜炎の性差・年齢差など

腹膜炎には性差や年齢差などはあるのでしょうか?

年齢差は特にはありませんが、原因疾患がある人は何もない人と比べると発症しやすいでしょう。持病がある場合は発症したときに、まず原因として疑われる場合が多くなります。

また、女性では子宮から感染する骨盤腹膜炎もあるので注意が必要です。その場合、子宮頸管の炎症からはじまり、子宮内膜、卵管、そして骨盤内の腹膜に広がっていきます。

腹膜炎の治療法は

腹膜炎はどんな検査を行う?

腹膜炎と診断されたらどのように治療していくのでしょうか?

原則的に治療は早期診断と早期手術が重要になってきます。症状が進むと最悪の場合、死にいたることもあるからです。治療法は、手術で原因疾患に対するアプローチと汚染したお腹の中に対する処置がメインとなります。

発症から手術までの時間が長いほど死亡率は上昇するので、痛みがある、体調の変化があるなど気になる症状があればすぐに受診しましょう。

術前の全身管理

手術前の全身管理はどのようなものがありますか?

手術による失血があった場合を想定し輸血の準備をしておきます。術前には尿カテーテルで尿量確保も行います。さらに胃チューブを挿入し消化管内容物の排除、誤嚥による肺合併症の予防をする必要があります。酸素投与や抗菌剤の投与を行い、万全の体制で手術を迎えます。

手術

手術ではどのようなことをしますか?

虫垂炎穿孔が原因の腹膜炎であれば虫垂の切除、胃や十二指腸に穴があくことで腹膜炎になったのなら穿孔部閉鎖を行います。それが大腸であれば穴があいた部分を含めて大腸を切除する手術が行われます。大腸を切除した場合は、人工肛門の造設も同時に行います。

お腹の中の処置としては、汚染された消化液を十分な量の生理食塩水などで洗浄することが大切です。術後も腹腔ドレーンという管をつけて体外へ汚染液を排出します。

手術は感染対策をしっかりと行いながら進めます。

編集部まとめ

腹膜炎は急に痛みを感じるもの、徐々に進行し腹水がたまるものなど原因によって症状の出方にも違いがみられます。ですが、悪化していった場合、かなり大掛かりな手術が必要になるので、できるだけ早期発見、早期治療をすることが大切です。少しでも痛みや体調の変化を感じることがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師