「原発不明癌」とは?症状・原因・治療法についても解説!
更新日:2023/03/27
がんと診断されたとき、十分な検査をしたにも関わらず、がんが最初に発生した場所が不明ながんを「原発不明癌」と言います。がん全体の数%の割合で起こりますが、医療技術の進歩により原発巣を特定できるようになってきました。
今回は、原発不明癌とはどのような病気か、症状や原因、受診科目などを解説します。
監修医師:
前田 正彦(医療法人海陽会まえだクリニック 院長)
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医療法人海陽会まえだクリニック 院長
平成4年鹿児島大学医学部卒業
平成4年鹿児島大学医学部卒業
原発不明癌とは
原発不明癌とはどのような病気ですか?
原発不明癌とは、転移がんから見つかるがんで、原因となる臓器(原発巣)が何処にあるのか不明ながんです。
通常、がんには必ず一番初めに発生した臓器が存在します。しかし原発不明癌は、見つかった病巣自体は、精密検査で転移がんと判明しているものの、精密検査を行っても原発巣がはっきりしません。これは、転移先のがんの方が、原発巣よりも大きくなって発見されたためです。
すでに転移が分かっている進行性のがんのため、予後は比較的悪く、原発巣を特定するための検査に時間がかかるため、患者さんの負担も大きくなります。
通常、がんには必ず一番初めに発生した臓器が存在します。しかし原発不明癌は、見つかった病巣自体は、精密検査で転移がんと判明しているものの、精密検査を行っても原発巣がはっきりしません。これは、転移先のがんの方が、原発巣よりも大きくなって発見されたためです。
すでに転移が分かっている進行性のがんのため、予後は比較的悪く、原発巣を特定するための検査に時間がかかるため、患者さんの負担も大きくなります。
原発不明癌の症状
原発不明癌はどのような症状が現れますか?
原発不明癌は、原発巣がどこにあるかによって特徴的な症状が出現します。しかし、原発巣が定まっていないことから、さまざまな経過をたどります。原発巣・転移先に関わらず、がんができた臓器の症状が起こるのが特徴です。
原発不明癌の症状には主に以下があります。
原発不明癌の症状には主に以下があります。
- リンパ節の腫れ
- 胸水、腹水
- 肺水腫、腹部腫瘍
- 骨の症状
- 脳の症状
- 全身の症状
リンパ節の腫れ
リンパ節の腫れとはどのような症状ですか?
がんの転移や血液のがんになると、リンパ節が腫れることがあります。リンパ節は、首の周りや太ももの付け根、脇の下などにあり、体の表面にあるため触れやすいのが特徴です。痛みはありません。
リンパ節とは、全身にある免疫器官のひとつで、リンパ液が通るリンパ管の中で「関所」のような役割をしています。リンパ管では細菌やウイルス、がん細胞がないかをチェックしています。
リンパ節とは、全身にある免疫器官のひとつで、リンパ液が通るリンパ管の中で「関所」のような役割をしています。リンパ管では細菌やウイルス、がん細胞がないかをチェックしています。
胸水・腹水
胸水と腹水はどのような症状ですか?
胸膜や腹膜に炎症が起こったりがんができたりすると、水が溜まってしまいます。これを胸水または腹水と呼びます。
胸に水がたまると、息苦しさを感じることがあり、お腹に水が溜まるとお腹が張ったように感じます。
胸に水がたまると、息苦しさを感じることがあり、お腹に水が溜まるとお腹が張ったように感じます。
肺腫瘍、腹部腫瘍
肺腫瘍、腹部腫瘍とはどのような症状ですか?
肺や腹部にがんができると、腫瘍と呼ばれるこぶのような塊ができます。
肺腫瘍ができると、咳や胸痛、声のかすれなどの症状が現れるのが特徴です。肝臓などにできる腫瘍の大きさや場所によっては、おなかの不快感や膨満感が現れたり、おなかのしこりに触れたりすることがあります。
また、特に症状がなくても、精密検査で肺や肝臓などの臓器に腫瘍が見つかる場合もあります。
肺腫瘍ができると、咳や胸痛、声のかすれなどの症状が現れるのが特徴です。肝臓などにできる腫瘍の大きさや場所によっては、おなかの不快感や膨満感が現れたり、おなかのしこりに触れたりすることがあります。
また、特に症状がなくても、精密検査で肺や肝臓などの臓器に腫瘍が見つかる場合もあります。
骨の症状
骨の症状とはどのような症状ですか?
がんになると、骨の痛みが起こることがあります。また、骨に転移したがんが、体の神経を圧迫することでしびれや麻痺が起こります。また、症状はなくても、X線検査で異常が見つかったり、骨折で見つかったりする場合があります。
脳の症状
脳の症状とはどのような症状ですか?
がんになると、頭痛や吐き気、けいれんなどの症状のほかに、手足の麻痺や呂律が回らないなどの脳の症状が起こることがあります。
全身の症状
全身の症状とはどのような症状ですか?
がんになると全身の炎症反応が起こるため、さまざまな症状が現れます。がんに起こる全身の症状で代表的なのは、原因不明の体重減少や倦怠感、食欲不振、発熱などです。
原発不明癌の原因
原発不明癌の原因はなんですか?
原発不明癌は、原発巣が転移先のがんより小さいため、検査では診断が難しかったり原発巣の特定までに時間がかかったりしてしまうことが原因です。
現在は画像診断技術や病理診断が進歩したことで、がん全体の数%に減っています。
現在は画像診断技術や病理診断が進歩したことで、がん全体の数%に減っています。
原発不明癌の受診科目
症状が長く続くときは何科を受診すればいいでしょうか?
急な体重減少や倦怠感、食欲不振、発熱などの症状があれば、まずは内科を受診しましょう。血液検査などでがんの疑いがあればより詳しい検査が必要です。がんが起こっている臓器を扱う診療科や、がんを専門に扱う診療科を受診します。
原発不明癌の検査
原発不明癌やがんの検査にはどのようなものがありますか?
原発不明癌の検査では、問診や視診、触診などの基本的な検査のほかに主に以下の検査を行うことがあります。
- X線検査
- CT検査
- MRI検査
- PET検査
- 超音波検査
- 腫瘍マーカー検査(血液検査)
これらの検査の結果から、転移先の部位の特定と原発巣の特定を行います。
原発不明癌の性差・年齢差
原発不明癌は性差・年齢差はありますか?
原発不明癌は性差や年齢差はありません。
原発不明癌が起こる割合は、すべてのがんの 1〜 5%程度です。厚生労働省が示す「全国がん登録 罹患数・率 報告」での原発不明癌の年間罹患数は約 7,000人と報告されています。
原発不明癌が起こる割合は、すべてのがんの 1〜 5%程度です。厚生労働省が示す「全国がん登録 罹患数・率 報告」での原発不明癌の年間罹患数は約 7,000人と報告されています。
原発不明癌の治療方法
原発不明癌の治療をする場合、どのような治療方法がありますか?
原発不明癌の患者さんは、複数の治療法を選択できます。がんの治療には、標準治療が基本ですが、原発不明癌では、臨床試験で検証中の治療を選択する場合もあります。臨床試験の目的は、既存の治療法を改良したり、新しい治療法の情報を得たりすることです。
臨床研究の結果、標準治療よりも治療経過が良好であることが明らかになれば、新しい治療法が標準治療として選択されるようになります。
ここでは、がん治療として幅広く選択されている標準治療を紹介します。原発不明癌の標準治療は外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法の4つです。
臨床研究の結果、標準治療よりも治療経過が良好であることが明らかになれば、新しい治療法が標準治療として選択されるようになります。
ここでは、がん治療として幅広く選択されている標準治療を紹介します。原発不明癌の標準治療は外科療法、放射線療法、化学療法、ホルモン療法の4つです。
外科療法
外科療法はどのような治療ですか?
外科療法(手術)は、原発不明癌でよく選択される治療法です。手術では、すでに確認されているすべてのがんを切除します。
原発不明癌は転移先のがんが先に見つかるため、ほかの部位にもがんが進行している可能性があります。そのため、患者さんによっては、残っているがん細胞を死滅させることを目的として、術後には化学療法や放射線療法を行う場合もあります。
原発不明癌は転移先のがんが先に見つかるため、ほかの部位にもがんが進行している可能性があります。そのため、患者さんによっては、残っているがん細胞を死滅させることを目的として、術後には化学療法や放射線療法を行う場合もあります。
放射線療法
放射線療法はどのような治療ですか?
放射線療法は、放射線を利用してがんの周辺を照射する治療法です。がん細胞の死滅や増殖を阻止することが目的で、外照射療法と内照射療法があります。
外照射療法は、X線治療を使用して体の外から病変にアプローチする方法です。内照射療法は、放射性物質をカテーテルなどの中に入れて、がん組織の内部や周辺に留置する方法です。
外照射療法は、X線治療を使用して体の外から病変にアプローチする方法です。内照射療法は、放射性物質をカテーテルなどの中に入れて、がん組織の内部や周辺に留置する方法です。
化学療法
化学療法はどのような治療ですか?
化学療法は、薬剤を使用してがん組織の増殖を阻止する治療法です。化学療法や経口投与や静脈内投与、筋肉注射を全身化学療法と呼びます。脳脊髄液内や臓器内、腹部などの体腔内に薬剤を直接注入する方法が局所化学療法です。
がんの種類や病態などを考慮して選択されます。
がんの種類や病態などを考慮して選択されます。
ホルモン療法
ホルモン療法はどのような治療ですか?
ホルモン療法は、特定のがんを増殖させているホルモンを体内から除去したり、ホルモンの働きを阻害したりして、がん細胞が増えるのを阻止する治療法です。
編集部まとめ
原発不明癌は、十分な検査をしたにも関わらず、がんが最初に発生した場所が分からないがんです。がん全体の数%の割合で起こります。症状は転移している部位によりさまざまですが、全身症状として、原因不明の体重減少や倦怠感、食欲不振、発熱などがあります。
倦怠感や食欲不振、発熱などの体調不良のほかに、原因不明の体重減少などの症状があれば、医療機関を受診しましょう。
参考文献