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「腎臓がんの手術方法」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

 更新日:2023/12/27
「腎臓がんの手術方法」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】

腎臓がんは、腎臓の細胞にできるがんのことで、腎がんとも呼ばれます。症状としては、背中に鈍い痛みが表れるようです。

腎臓がんは早期発見で治療した場合、5年生存率は90%以上で再発も少ない病気だといわれています。

腎臓がんの治療には早期発見・早期治療が何よりも大切です。この記事では、腎臓がんの手術方法からメリット・治療方法などについてご紹介します。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎臓がんとは?

腎臓がんとは、腎臓の腎実質細胞にできるがんのことで、50~70代の男性に多いことが特徴です。自覚症状としては、背中部分の鈍痛や腹部を触った時に硬いしこりのようなものがあったり、血尿が出たりすると腎臓がんの疑いがあります。
腎臓がんの原因は、肥満や喫煙・高血圧といわれており、人工透析をしている人も罹患率が高い傾向にあります。腎臓がんは、がんの中でも5年生存率・根治率の高い疾患です。早期発見・早期治療を始めれば生存率も上がりますので、少しでも身体に違和感を覚えたらすぐに病院を受診しましょう。

腎臓がんの手術方法

腎臓がんは、他のがんのように化学療法や放射線治療では効果が期待できないため、外科手術による治療が一般的です。手術方法は、がんができた部位や腫瘍の大きさ(ステージ)によって決まります。
副作用の強い放射線治療を行わないため、身体への負担は少ない治療法といわれています。

腎部分切除術

腎部分切除術は、腎臓の一部と腫瘍を切除する開腹手術です。腫瘍の大きさが7cm以下の場合に適用される手術方法で、近年ではロボットを使用して手術を行う病院もあります。医師が行う手術よりも正確な腫瘍切除手術が可能です。
腎部分切除術は、まず最初に腎臓の血液を一時的に阻血します。次に、腫瘍や周りの腎臓部分を切除後に縫合手術を行い、阻血解除するという流れで行われます。手術時間が長引くと腎機能の低下リスクが高くなるため、正確で迅速な手術を行う必要があります。

腎摘除術

腎摘除術は、腎臓をすべて切除する手術方法です。腫瘍ができる場所によっては、副腎も摘出しなければいけない場合もあります。
腫瘍の大きさが7cmを超える場合は、腎摘除術による手術を行います。また、腎摘除術には以下の2つがあります。

  • 開腹手術
  • 腹腔鏡手術

開腹手術は、胸部の真ん中をメスで着る「正中切開」といわれる方法で腎臓を摘出する方法のことです。腹腔鏡手術は、お腹に5mm~1cmほどの穴を何ヵ所か空けて腎臓静脈・動脈・尿管を切って腎臓摘出を行う手術方法です。
傷が小さいため、術後の回復は早いですが、手術時間が長くなるというデメリットがあります。

腎臓がんの手術方法ごとのメリット・デメリット

先ほど、腎臓がんの手術方法は腎部分切除術と腎摘除術の2種類あることをご紹介しました。ですが、それぞれの手術方法ごとにメリットとデメリットも存在します。
ここでは、腎臓がん手術にどのようなメリットやデメリットがあるのかをご紹介していきましょう。

残存する腎臓機能を温存し合併症にかかりにくい

腎部分切除術は、腎臓の一部のみを切除する手術になります。腎臓を温存し、腎臓機能もそのまま継続できる点が一番のメリットといえるでしょう。
さらに、ロボット支援下手術を行うと傷が小さくなり、腎臓の血流阻止時間が短いため合併症にかかるリスクを抑えられます。傷が小さいことで術後の回復が早く、手術の翌日から流動食をとることも可能です。

腫瘍が残りやすくがんの再発もしやすい

腎部分切除術は、腫瘍や周りの細胞の一部のみを切除する手術方法です。そのため、手術で腫瘍がきれいに取り切れないと、再発の可能性が高くなるというデメリットが挙げられます。
また、腫瘍が非常に小さかった場合にはMRIやCT検査でも見逃してしまうことがあるでしょう。さらに、良性腫瘍と見分けが付かずに医師が診断ミスをしてしまうリスクもあります。

病巣をすべて取り除ける

腎摘除術は、脂肪組織も含めて腎臓全体を取り除く手術方法です。腫瘍だけでなく、腎臓を切除するため、病巣を残すことなくすべて取り除ける点が腎摘除術の最大のメリットといえるでしょう。
また、腎動脈・静脈の阻血処置をしっかりと行えば、手術後の合併症も少ないことが報告されています。

傷が大きいため術後の回復が遅くなる

腎摘除術は、腹部を大きく切開する手術方法です。そのため、傷口がどうしても大きくなってしまい、術後の回復が遅れてしまう点がデメリットといえるでしょう。また、手術後には疼痛が長く続くこともあります。

腎臓がんの治療法

がんの治療方法といえば、放射線療法が一般的ですが、腎臓がんの治療法にはどのような方法があるのでしょうか?ここでは、腎臓がんの治療方法についてご紹介します。

がん細胞を死滅させる放射線療法

腎臓がんの治療方法の1つとして、がん細胞を死滅させる放射線療法が用いられることがあります。放射線療法は、他の臓器やリンパなどに転移が見られたり、腫瘍が大きくなっている場合に用いられます。
しかし、体外から放射線を当てる治療法のため、身体への負担があることがデメリットです。気分不快、食欲不振、下痢、倦怠感といった症状が出る場合もあります

分子標的薬を用いた薬物療法

分子標的薬を用いた薬物療法は、2000年代に使用されるようになった新しいがんの治療方法です。がん細胞の増殖や分裂を抑える役割があり、がん細胞の転移や増殖に関する分子だけをターゲットにしていることが特徴です。
この治療法は、がん細胞の分子のみをターゲットにしているため、従来の抗がん剤治療よりも心身への負担が少ないメリットがあります。ただし、体質によっては肺炎などの重篤な副作用が表れることがあるため注意が必要です。

サイトカイン療法や免疫チェックポイント阻害薬を使用する免疫療法

免疫チェックポイント阻害薬とは、自身の免疫細胞ががん細胞の攻撃を手助けする薬です。最近の臨床試験により、抗がん剤治療よりも効果が高いことが証明されています。
癌細胞にPD-L1と呼ばれるタンパク質を多数持つ患者さんに有効性が高いといわれています。免疫チェックポイント阻害薬が腎臓がんの治療に効果があると認められている一方でリスクもあることを理解しておかなければなりません。
患者さんによってはがんが進行する可能性もあります。さらに、甲状腺の機能低下や脳脊髄炎・大腸炎など重篤な免疫に関する疾患を併発する場合があることも理解しておきましょう。

MRIやCTを使う監視療法

監視療法とは、がんに対して手術や治療が不要と判断された場合に、MRIやCT検査を行って経過を観察する方法です。MRIは、筒形のドームの中に入り、身体に電波を当てることで画像を作成する検査です。
放射線被曝のリスクはありません。ただし、手術などで体内に金属が入っている人は検査が受けられるかどうか医師とよく相談してください。
CTは、ベッドに仰向けに寝てX線を身体の周囲に当てて断面図を画像化してがんの進行を検査する方法です。病院によっては、造影剤を使用して検査を行う場合もあります。CT検査も放射線被曝による身体への影響はほとんどないことが報告されています。

心身の辛さを和らげる緩和ケア

がん患者さんは、身体への負担だけでなく、死への恐怖心・将来への不安など精神的なダメージも大きいことはいうまでもありません。緩和ケアは心身の辛さを和らげる目的で行われる治療方法です。
緩和ケアは通院だけではなく、在宅療養や入院でも受けられます。通院や入院の場合は、専門的な知識を持っている医師・看護師、必要に応じて理学療法士・心理士から受けられます。
在宅療養の場合は、ケアマネージャーから治療を受けられます。緩和ケアはがんと診断された時から受けられますので、薬や手術の治療だけでなく、心の治療が必要な場合に有効です。

ロボット支援下腎部分切除術について

腎部分切除術には、肋骨下付近を大きく切開する「開腹手術」と、お腹に5mm~1cmほどの穴を何ヵ所か空けて手術を行う「腹腔鏡手術」の2種類があります。その他にも、ロボットにより正確で繊細な手術が行える「ロボット支援下腎部分切除術」もあります。
ロボット支援下腎部分切除術はダビンチとも呼ばれ、腫瘍の位置を正確にとらえ、腎臓の縫合もより早く行えるメリットがあります。
手術の傷口も小さいため、術後の回復が早い点もメリットといえるでしょう。ただし、ロボット支援下腎部分切除術には合併症のリスクもあることを覚えておきましょう。
手術中や術後に出血したり、まれに細菌による感染症を引き起こしたりすることが報告されています。さらに、腎臓からの尿漏れ、重篤な場合は肺血栓症を引き起こすこともあります。
このような合併症を引き起こした場合は、入院期間が長くなる可能性があることも理解しておいてください。

腎臓がんについてよくある質問についてよくある質問

ここまで腎臓がんの手術方法やメリット・治療法などを紹介しました。ここでは「腎臓がんの手術」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腎摘除術と腎部分切除ではどちらで手術を行なうと生存率は上がりますか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

最近の臨床研究の結果では、他の臓器への転移が見られなければ、腎摘除術でも腎部分切除でも5年生存率は95%と大差ないことが報告されています。腫瘍が小さければ生存率も高くなる傾向にあります。

腎臓がんは手術をしても再発しやすいのでしょうか?

村上 知彦医師村上 知彦(医師)

腫瘍が4cm以下の小さいものであれば再発の可能性は約1%程度であることが臨床研究の結果として報告されています。腎臓の中だけにできる小さな腫瘍であれば、術後の完治率は90%以上ともいわれています。ただし、腫瘍が7~8cm程度になると30~40%程度の患者さんに再発が認められるようです。腫瘍が大きければ大きいほど、再発しやすい特徴があります。

編集部まとめ

ここまで、腎臓がんの手術方法やメリット・治療法について解説してきました。

腎臓がんは病院での超音波検査や人間ドッグなどの検診で偶然見つかることが多いようです。自覚症状としては、腹部のしこりや血尿・背中の痛みなどがあります。

少しでも身体に違和感を覚えたら自己判断せず、早めに病院を受診してください。早期発見・早期治療が完治への近道です。

腎臓がんと関連する病気

「腎臓がん」と関連する病気は2つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

腫瘍が小さいうちは初期症状があまり見られないため、健康診断や定期検診は必ず受診するようにしましょう。

腎臓がんと関連する症状と関連する症状

「腎臓がん」と関連している症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

この症状の中でも、血尿・腰や背中の痛みを感じたらすぐに病院を受診してください。

この記事の監修医師