ほうれん草などに含まれる「葉酸が不足すると現れる症状」とは?管理栄養士が解説!
公開日:2025/11/24

葉酸が不足すると現れる症状とは?メディカルドック監修医が葉酸が不足すると現れる症状・一日の摂取量・効果・不足する原因とその解消法などを解説します。

監修管理栄養士:
前原 尚子(管理栄養士)
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病院で委託栄養士として給食管理業務や調理業務を担当。その後カフェで菓子製造に携わり製菓衛生師取得。保育園栄養士として従事しながら管理栄養士資格取得し現在15年目。母子栄養指導士(母子栄養協会)取得。
目次 -INDEX-
「葉酸」とは?

葉酸の一日の摂取量

葉酸の効果

細胞の生産と再生
生命を維持し、増殖し、子孫へと情報を伝える遺伝情報に関わる核酸という成分の合成に深く関与しています。核酸とは、細胞の核の中、細胞質やミトコンドリアにも存在しています。動脈硬化を予防
葉酸には、体内でアミノ酸が代謝される過程で生じるホモシステインという物質の濃度を低下させる働きがあります。ホモシステインが血中で増えると、血管の内壁を傷つけて動脈硬化の一因になると考えられています。葉酸を十分に摂取することでホモシステインの濃度を適正に保ち、結果として動脈硬化や心血管疾患のリスクを下げる可能性があるとされています。ただし、葉酸の摂取が動脈硬化を直接的に予防することを示す明確な因果関係は、現時点では確認されていません。貧血の予防
葉酸は、ビタミンB群の一つで、特に赤血球の生成において重要な役割を果たします。ビタミンB12と協力して血液を作る働きがあり、赤血球を生成するために必要不可欠で、不足すると未熟な赤血球が生成されることにより、巨赤芽球性貧血と呼ばれる症状を引き起こす可能性があります。胎児の成長や妊娠維持
胎児の神経管は妊娠4週ごろ、妊娠が判明する前の段階で形成されます。この時期に母体に十分な葉酸があることで、神経管閉鎖障害の発症リスクが大きく減少することが分かっており、葉酸の摂取は「妊娠前から始めること」が推奨されています。粘膜の健康保持
葉酸は、細胞分裂や再生を助ける働きがあるため、細胞の入れ替わりが活発な口腔や消化管などの粘膜の健康維持に重要な役割を果たします。葉酸が不足すると、粘膜の再生が滞り、口内炎や舌炎、食欲不振、下痢などの症状が現れることがあります。重度の不足が続くと、粘膜の修復が遅れることで胃や腸の不調を引き起こすこともあります。葉酸が不足すると現れる症状

巨赤芽球性貧血(大球性正色素性貧血)
葉酸は赤血球の成熟に欠かせない栄養素です。不足すると赤血球が正常に分裂・成長できず、通常よりも大きく未熟な「巨赤芽球」が増えることで、貧血が起こります。これを巨赤芽球性貧血と呼びます。主な症状には、めまい、息切れ、動悸、顔色の悪さ、倦怠感などがあり、進行すると立ちくらみや集中力の低下が見られることもあります。粘膜の異常(口内炎・舌炎・消化器症状)
葉酸は細胞の再生を助ける働きがあるため、粘膜の健康維持に深く関わっています。不足すると、口内炎や舌の赤み・痛み、舌炎、食欲不振、下痢などの症状が現れやすくなります。粘膜の再生が遅れることで炎症が長引くこともあります。胎児の神経管閉鎖障害
妊娠初期に母体の葉酸が不足していると、胎児の神経管(脳や脊髄のもとになる器官)の形成がうまく進まず、無脳症や二分脊椎などの神経管閉鎖障害のリスクが高まることが知られています。妊娠を計画している、または妊娠初期の女性は、食事に加えてサプリメントなどからモノグルタミン酸型葉酸を1日400μg摂取することが推奨されています。高ホモシステイン血症と動脈硬化
葉酸は、アミノ酸代謝に関わり、血中のホモシステイン濃度を正常に保つ働きを担っています。葉酸が不足するとホモシステインが血中に蓄積し、血管の内壁を傷つけて動脈硬化の一因になると考えられています。高ホモシステイン血症は心筋梗塞や脳梗塞などのリスク因子の一つとされており、葉酸・ビタミンB6・B12をバランスよく摂ることが予防に役立ちます。アルコール摂取による葉酸吸収の低下
アルコールを多く摂取すると、体内での葉酸の吸収や利用が妨げられることが知られています。葉酸は主に小腸で吸収されますが、アルコールは小腸の粘膜を傷つけ、吸収機能を低下させてしまいます。その結果、食事から十分に葉酸を摂っていても、体内で有効に利用できず欠乏状態に陥ることがあります。さらに、アルコールは肝臓での葉酸の貯蔵量を減らし、尿中への排泄を増やすため、慢性的な飲酒習慣がある人では体内の葉酸が著しく不足することがあります。こうした状態が続くと、巨赤芽球性貧血や粘膜障害、倦怠感などの症状が現れるほか、妊娠中の場合は胎児の発育にも影響を及ぼすおそれがあります。葉酸が不足する原因

偏った食生活
現代の食生活において、野菜や豆類の摂取が少ない傾向にあります。葉酸は、緑黄色野菜や豆類に多く含まれており、意識して摂取しないと不足しやすくなります。調理・保存による損失
葉酸は熱や光に弱く、調理中に50%近く失われることがあるため、調理方法には注意が必要です。また、光を避け冷暗所で保存すると良いでしょう。ストレス・過労
強い精神的・身体的ストレスが続くと、体内でエネルギー代謝が活発になり、ビタミンB群をはじめとする栄養素の消耗が増加します。葉酸もその一つで、ストレスや過労の状態では代謝に使われる量が多くなり、不足しやすくなると考えられています。また、ストレスが続くと食欲の低下や食生活の乱れを招き、結果的に葉酸の摂取量が減ってしまうこともあります。アルコールの多飲
アルコールは葉酸の吸収を妨げ、尿中への排泄を増加させます。また、アルコールを多飲する方は食事が偏る傾向にあります。消化器系の吸収障害
葉酸は小腸で吸収されるため、消化器系の疾患や手術歴がある場合は吸収が妨げられるなど、不足しやすくなります。葉酸が不足しやすい人の特徴

ダイエット中や偏食傾向の人
白米や精製パン、加工度の高い食品の摂取が比較的多い人や、野菜や豆類の摂取が少ない、また、ダイエット中で食事の量が少ない場合などは、不足状態になりやすいです。妊娠前・妊娠初期の人
妊娠すると、胎児が成長するために盛んな細胞分裂が繰り返されます。この時期には、葉酸が大切な栄養素として十分な量が必要になりますが、悪阻などで食事が摂れなくなることがあります。特定の疾患で治療中の人
人工透析は治療の過程で多くの葉酸が失われたり、腸疾患による葉酸の吸収が低下すると言われています。また、関節リウマチや癌、てんかん薬など特定の薬が葉酸の吸収を妨げることがあります。葉酸を多く含む食品

枝豆
枝豆は、葉酸を多く含む食品のひとつで、100gあたり約260μgの葉酸が含まれています。豆類の中でも比較的食べやすく、食事やおつまみとして取り入れやすいのが特徴です。葉酸のほか、たんぱく質や食物繊維、鉄分なども豊富に含まれており、栄養バランスの良い食材です。調理の際は、長時間茹でると葉酸が水に溶け出してしまうため、短時間でさっと茹でるのがおすすめです。塩茹でした枝豆はそのまま食べても良いですし、サラダや炒め物に加えることで手軽に葉酸を補うことができます。鶏レバー・豚レバー
鶏レバーは下処理が必要ですが、調味料を入れて煮詰めていくだけで葉酸摂取の貴重な1品になります。また、豚レバーはニラやナスなどの野菜類と一緒に炒めることで吸収率もアップします。ほうれん草
サラダ用のほうれん草は、水でさっと洗ってそのまま食べたり、軽く下茹でしたほうれん草はたんぱく質源になるお肉やツナ缶、卵などと炒めることで、バランスの良い1品になります。葉酸不足を解消する方法

葉酸を多く含む食品の摂取
焼き海苔や鶏レバー、豚レバーや牛レバー、煎茶、枝豆、ブロッコリー、モロヘイヤ、ほうれん草など緑黄色野菜やいちごやアボカドなどの果物類に含まれています。葉酸と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
たんぱく質を多く含む卵やヨーグルト、ビタミンCの多いピーマンなどと一緒に摂取することで、吸収率を上げ葉酸を効果的に摂取できます。水に溶けやすく熱に弱いため、さっと洗い炒めることで損失を少量に抑えたり、海苔を巻いておにぎりにするなど、意識して取り入れると良いでしょう。たんぱく質源としての食材である肉や魚、卵などと一緒に摂取することで、より効果的に貧血を予防します。また、ビタミンCを多く含む野菜や果物を取り入れることで吸収を促進します。葉酸の効果を高める摂取タイミング
葉酸は水溶性ビタミンのため、体内に長く蓄積されず、こまめに摂取することが大切です。食事から摂る場合は、特定の時間にこだわる必要はありませんが、毎日の食事の中で継続的に取り入れることが効果的です。サプリメントを利用する場合は、胃への刺激を抑え、不快感や吐き気を防ぐために、食後の摂取が適しています。 また、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインを同時に多く摂ると、葉酸の吸収がやや低下する可能性があるため、サプリメントの摂取とは時間をずらすのが望ましいでしょう。サプリメントは毎日同じ時間に摂ることで習慣化しやすく、摂り忘れを防ぐことにもつながります。「葉酸が不足すると現れる症状」についてよくある質問

ここまで葉酸が不足すると現れる症状を紹介しました。ここでは「葉酸が不足すると現れる症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
葉酸サプリを飲み続けるとどうなりますか?
前原 尚子
サプリメント等に含まれる葉酸については、大量(1,000〜10,000μg)に摂取すると、かゆみ、呼吸障害などの葉酸過敏症を起こすことがあると言われています。サプリメントのパッケージには1日当たりの摂取目安量が書かれていますので、その目安量を守っていれば摂りすぎを防ぎ適切な摂取量を保つことができます。
まとめ
妊娠を計画している方や妊娠初期の方は、葉酸の不足が胎児に大きく影響を与えます。妊娠前からの十分な摂取が推奨されていますので、食事から葉酸を摂取するようにしながら、サプリメントを取り入れると良いでしょう。葉酸は細胞の生成や免疫力に深く関与している栄養素です。不足した状態が続くと慢性化し、生活に支障をきたしてしまいます。日頃から、バランスの良い食事を取り入れ、ストレスを発散しながら、健康的な生活を送るように心がけたいですね。「葉酸」と関連する病気
「葉酸」と関連する病気は2個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する病気
- 巨赤芽球性貧血
- 神経管閉鎖障害




