「亜鉛が不足すると現れる症状」はご存知ですか?不足しやすい人の特徴も解説!

亜鉛が不足すると現れる症状とは?Medical DOC監修医が亜鉛が不足すると現れる症状・一日の摂取量・効果・不足する原因とその解消法などを解説します。

監修管理栄養士:
佐藤 直美(管理栄養士)
2015年管理栄養士免許取得。
目次 -INDEX-
「亜鉛」とは?

亜鉛とは、体内で合成できない必須微量ミネラルで、人が健康を維持するために必要な栄養素です。亜鉛は全身の細胞内に存在し、免疫システムが侵入してきた細菌やウイルスを防御するのに役立ちます。タンパク質およびDNA、つまり全ての細胞の中にある遺伝物質を合成するためにも必要です。妊娠中、乳児期および小児期の体は、十分に成長・発達するために亜鉛を必要とします。亜鉛は創傷治癒にも有用で、適切な味覚や臭覚にも重要です。
亜鉛の一日の摂取量

厚生労働省「日本食事摂取基準(2025年版)」亜鉛の摂取基準
(推奨量)
男性:18~29歳 9.0mg
30~64歳 9.5mg
65~74歳 9.0mg
75歳以上 9.0mg
女性:18~29歳 7.5mg
30~64歳 8.0mg
65~74歳 7.5mg
75歳以上 7.0mg
妊婦(付加量):+2mg
授乳婦(付加量):+3mg
亜鉛の効果

亜鉛は、300種以上の酵素に関わっていることが知られ、その効果は全身に及びます。
味覚を正常に保つ
舌の上皮細胞には亜鉛が豊富に存在しています。
特に多いのが味を感じる部分である舌表面の「味蕾(みらい)」と呼ばれる部分で、この中には味覚センサーのような役割をもつ「味細胞」があります。
味細胞はとても短いサイクルで生まれ変わっており、この再生に必須とされている成分が亜鉛です。
亜鉛が十分に存在していなければ、味細胞の生まれ変わりが追いつかず、味覚も不安定になってしまうと考えられます。
味覚の異常は亜鉛の不足だけが原因ではありませんが、正常な味覚を維持するには、亜鉛を十分に摂取することも重要であるといえるでしょう。
皮膚や粘膜の健康を保つ
亜鉛は皮膚などの構成成分であるタンパク質の合成にも関わっています。
亜鉛は皮膚や毛髪に存在している成分でもあるため、亜鉛を十分に摂取することで皮膚の炎症やかゆみなどのトラブル、脱毛などの症状を回避できると考えられています。
また、細胞の再生にも関わっているため、傷の治りを早めることにも役立つとされています。
一方、胃や腸など消化管粘膜の健康を保つ作用もあることから、亜鉛が不足すると食欲低下や下痢を引き起こすことが知られています。
体の成長・発育を助ける
亜鉛は子供の成長にも深く関わっています。
成長ホルモンの分泌に関わる栄養素であるため、身長を伸ばすなど子供の成長を促すことに役立つと考えられています。
生殖機能を維持する
亜鉛は特に男性の生殖機能に影響を与えています。
性腺(精巣)の発達や機能に関与しているため、亜鉛が不足すると男性ホルモンの合成や分泌が低下したり男性不妊の原因になったりすることがあります。
免疫機能を維持する
私たちには体内に侵入した病原菌やウイルスなど(抗原)を攻撃したり排除したりするシステム、いわゆる免疫機能が備わっています。
この免疫機能のためにはたらくのが「免疫細胞」と呼ばれる細胞です。
免疫機能を担っている細胞には多くの種類がありますが、亜鉛は免疫細胞のうち「ヘルパーT細胞」の機能に関与しているとされています。
亜鉛が不足すると現れる症状

味覚障害
亜鉛不足は味覚障害を引き起こすことがあります。具体的には、味を感じにくくなったり、味がわからなくなったり、甘味や旨味が正しく感じられなくなる場合があります。また、何を食べても不味いと感じたり、異なる味に感じることもあります。 味覚障害は耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。特に嗅覚性味覚障害(匂いがわからなくて味がわからない)も考慮する必要があります。
爪・皮膚の異常
皮膚炎やかゆみなどの皮膚トラブルや、爪に横線が出るなど爪の異常が起きやすくなります。また、髪にハリ・コシがなくなったり脱毛症の原因になったりします。
爪の症状を専門に診察するのは皮膚科です。症状が悪化した場合、皮膚科を受診するとよいでしょう。
成長障害
子供が亜鉛不足になると、低身長など成長障害の原因になります。
症状が悪化した場合、成長障害(低身長症など)は、小児科や内分泌内科を受診しましょう。
生殖機能障害(男性の場合)
男性では勃起不全や精子の減少、性欲の減退などの症状があらわれ、男性不妊症の原因になります。
・症状が悪化した場合、泌尿器科や内科、精神科、産婦人科(女性の場合)、男性専門のクリニック(男性の場合)を受診しましょう。
免疫力の低下
ウイルスや細菌に感染しやすくなり、肺炎などの感染症にかかるリスクが高まります。
症状が悪化した場合、内科や耳鼻咽喉科、呼吸器内科などを受診しましょう。
亜鉛が不足すると舌にどんな症状が現れる?

舌のピリピリとした痛み(舌痛症)
舌や口腔内の燃えるような痛みや耐えられない痛みや舌尖の軽い痛みや舌背、舌側面など諸処のびりびり、ヒリヒリする痛み、熱いもの、辛いものなどが滲みるなどとの訴えがあります。また、口の中が乾燥している感覚が常にあることもあります。
すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方としては、亜鉛のサプリメントで補ったり、こまめに水分補給したり、ゆっくりする時間を持ち、睡眠時間をしっかりととりましょう。
・症状が悪化した場合は、内科・歯科口腔外科・耳鼻咽喉科を受診しましょう。
舌の表面が荒れる
舌の縁に腫瘤ができ、徐々に大きくなっていきます。また、口の中が乾燥して舌が痛むようになったりすることもあります。
すぐにできる処置としては、軟膏の塗布に加えて、保護のためにマウスピースの装着を行う場合があります。
症状が悪化した場合は、内科・歯科口腔外科・耳鼻咽喉科を受診しましょう。
舌の滑らかさの欠如
舌の乳頭(つぶつぶした細かい突起)が失われ、表面がツルツルになり、赤くなっています。
すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方としては、刺激のある食べ物を避けたり、ビタミンの摂取、口内軟膏を塗るとよいでしょう。
症状が悪化した場合、内科・歯科口腔外科・耳鼻咽喉科を受診しましょう。
亜鉛が不足する原因

摂取不足
亜鉛は肉類や魚類に多く含まれています。動物性たんぱく質を日常的にあまり食べない人は、亜鉛不足が起きる可能性が高くなります。
ダイエット等で食事量が少なく栄養が十分に摂れていなかったり、偏食を続けたりすると、亜鉛不足になりやすいといえます。
高齢者では、年齢を重ねることで食が細くなる方が多くなります。その結果、亜鉛摂取量が減ってしまいます。
吸収不全
食べ物の成分の中には、腸からの亜鉛の吸収を妨げるものがあります。1日に必要な亜鉛を摂っていても、吸収を妨げる食品の摂取量が多いと亜鉛が十分に吸収されず亜鉛不足になるおそれがあります。
病気が原因で亜鉛の吸収が悪くなる可能性があります。
肝臓病(慢性肝炎、肝硬変など)、炎症性の腸の病気、腸を手術で切除した場合に、腸からの吸収がうまくいかず亜鉛不足になる可能性があります。
・抗生物質などの一部の薬には、亜鉛と結合する性質があります。結合した亜鉛は消化管から吸収することができないため、身体のなかで亜鉛不足を引き起こす可能性があります。
需要増大
・妊婦・授乳婦では赤ちゃんへ亜鉛の受け渡しがあり、一般女性より多くの亜鉛を摂取することが求められていますが、実際には摂取量が不足しています。
・激しいスポーツでは、筋肉などで亜鉛の必要量が特に多くなります。その結果、亜鉛が不足しやすくなります。
排泄増加
・人は毎日、利用できなかった亜鉛を主に糞便として身体の外に排泄しています。病気が原因で亜鉛を身体の外に排泄する量が増える場合があります。肝臓病(慢性肝炎、肝硬変等)、糖尿病、腎臓病がある人は、尿からの亜鉛排泄量が増える事が知られています。人工透析を受けている人は、透析液から亜鉛の排泄が増えてしまいます。
・関節リウマチ、パーキンソン病、痛風、糖尿病、不眠症、うつ病、てんかん等の治療に使われる薬の中に、亜鉛の排泄を増やしてしまうものがあります。これらの薬を長期間内服していることで、亜鉛不足になる可能性があります。
・激しいスポーツをする競技者では、汗や尿からの亜鉛排泄量が増えるため、日常生活に比べて、亜鉛不足になりやすいといわれています。
病気療養中
・病気の治療中には、食事ではなく点滴などの静脈注射で栄養や水分をとることがあります。長期に点滴から栄養を補充するのであれば、亜鉛などの食事から摂ることができるミネラルが不足することがあります。
亜鉛が不足しやすい人の特徴

妊婦・授乳婦
・妊婦・授乳婦では赤ちゃんへ亜鉛の受け渡しがあり、一般女性より多くの亜鉛を摂取することが求められていますが、実際には摂取量が不足しています。
高齢者
・高齢者では、年齢を重ねることで食が細くなる方が多くなります。その結果、亜鉛摂取量が減ってしまいます。
特定の薬を長期服用している方
・関節リウマチ、パーキンソン病、痛風、糖尿病、不眠症、うつ病、てんかん等の治療に使われる薬の中に、亜鉛の排泄を増やしてしまうものがあります。これらの薬を長期間内服していることで、亜鉛不足になる可能性があります。
亜鉛を多く含む食品

牡蠣
・大粒の牡蠣1つで1日の必要量を軽くクリアすることができます。(14.0mg/100gあたり)
亜鉛の吸収を助けるビタミンCやクエン酸をレモンなどの柑橘類の汁や果物、味噌などと一緒に摂ると効果的です。
豚レバー
・100gあたり6.9mgの亜鉛が含まれています。
牛肉
・肩ロースに5.6mg、リブロースに3.9mg、ひき肉に5.2mgの亜鉛が含まれています。
亜鉛不足を解消する方法

亜鉛を多く含む食品の摂取
亜鉛は、牡蠣、豚レバー、牛赤身肉、小麦胚芽、油揚げ、カシューナッツ、卵、するめなどに多く含まれています。
亜鉛と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
・動物性たんぱく質、亜鉛の吸収を助けるビタミンCやクエン酸をレモンなどの柑橘類の汁や果物,味噌と一緒に摂ると効果的です。
亜鉛の効果を高める摂取タイミング
・摂取する時間帯:朝と夜とでは、夜の方が亜鉛を吸収しやすいとされています。夕食後に摂取すると、寝ている間に成分が体に吸収されやすくなります。
・摂取を避ける時間帯:空腹時を避けることが推奨されます。
また、フィチン酸を多く含む食品(玄米、全粒粉、小麦ふすまなど)やポリフェノールを多く含む食品(コーヒー、緑茶など)と一緒に摂取すると亜鉛の吸収が阻害されるため、時間をずらして摂取するようにしましょう。
「亜鉛が不足すると現れる症状」についてよくある質問

ここまで亜鉛が不足すると現れる症状を紹介しました。ここでは「亜鉛が不足すると現れる症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
亜鉛が不足したら何を食べたらいいのでしょうか?
佐藤 直美
牡蠣、豚レバー、牛赤身肉、小麦胚芽、油揚げ、カシューナッツ、卵、するめなどです。偏食やダイエットを避け、一汁三菜のような食事を摂るとよいでしょう。
爪で亜鉛不足を判断するには、どんなところをチェックすればいいのでしょうか?
佐藤 直美
爪が欠けやすくもろくないか、爪に横線が入っていないか、爪の周囲が炎症しやすいか、爪が縦に割れてないか、爪に白い部分ができてないかをチェックするとよいでしょう。
編集部まとめ
亜鉛は人体にとって重要な微量ミネラルの1つです。体内での必要量は少量ですが、300種以上の酵素に関わっており、非常に重要な役割を果たしています。全身の健康維持に欠かせない成分ですが、自分の体では合成できないため、食事などから摂取する必要があります。
亜鉛不足には、亜鉛を多く含む食品と、動物性たんぱく質やクエン酸(ビタミンC)、味噌などと一緒に摂取すると効果を高められるので、食べ合わせも意識しながら食事をするとよいでしょう。
「亜鉛」と関連する病気
「亜鉛」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
- 更年期障害の症状悪化
- 生理不順
- 月経異常
- 無排卵月経
- 子宮内膜症
「亜鉛」と関連する症状
「亜鉛」と関連している、似ている症状は15個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。




