「ビタミンB12が不足すると現れる症状」はご存知ですか?ビタミンB12が多い食品も解説!

ビタミンB12が不足すると現れる症状とは?Medical DOC監修医がビタミンB12が不足すると現れる症状・一日の摂取量・効果・不足する原因とその解消法などを解説します。

監修管理栄養士:
大隅 加奈子(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「ビタミンB12」とは?
ビタミンB12は、コバルトを含む化合物で「赤いビタミン」とも呼ばれる、水溶性ビタミンの1つです。補酵素として脂質やたんぱく質の代謝など、多くの生体反応に関与し、造血作用や神経・脳の機能を正常に保つ役割を果たすなど、健康を維持するうえで欠かせない栄養素です。
ビタミンB12の吸収には、胃の壁細胞から分泌される内因子と呼ばれるたんぱく質が必要です。体内では腸肝循環を介して再利用され、主に肝臓に貯蔵されるため、一般的には欠乏しにくい栄養素とされています。しかし、胃や腸の疾患がある方や、食事制限を行っている方などは欠乏のリスクが高まるため、サプリメントや栄養強化食品を利用して補うことが推奨されます。
ビタミンB12の一日の摂取量
日本人の食事摂取基準2025年版では、12歳以上の男性・女性ともに目安量は4.0μg/日、妊婦・授乳婦も同じ設定がされています。
ビタミンB12は、吸収量が調節されているため過剰に摂取しても尿中に排泄されます。サプリメントや筋肉注射などを利用した場合でも健康障害の報告はないため耐容上限量は設定されていません。
ビタミンB12の効果
貧血の予防・改善
葉酸と協力し血液中のヘモグロビンの合成に関わり、正常な赤血球を作っています。
造血作用があるため、貧血の予防や改善に効果があります。
神経細胞の修復・改善
神経細胞の機能を正常に保つ働きがあり、末梢神経のダメージの修復を促進する作用があります。
手足のしびれや痛み、肩こりや腰痛、眼精疲労、筋力低下、認知症などの改善に効果があります。
脳機能の正常化
中枢神経への活性化効果があり、脳が正常に機能するために重要な働きをしているといわれています。
記憶力や集中力を高める効果や、睡眠障害や時差ぼけ、睡眠相遅延症候群にも効果があると考えられています。
動脈硬化の予防・改善
ホモシステインの血中濃度が高まると動脈硬化を促進させる原因になると考えられています。
葉酸、B6、B12はホモシステインの血中濃度を下げる効果が期待でき、動脈硬化予防に寄与する可能性があります。
白髪の予防・抑制
メラノサイトの機能維持に関与する可能性があり、白髪予防に寄与することが期待されていますが、科学的根拠は限定的です。
ビタミンB12が不足すると現れる症状
貧血症状
ビタミンB12が不足すると、正常な赤血球が作られなくなり、貧血症状を引き起こします。具体的な症状として、息切れ、動悸、めまい、顔色が蒼白になる、筋力低下、疲労感、吐き気などが挙げられます。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
その場にしゃがむなど低めの姿勢をとる、目を閉じて安静にする、足を頭より15~30㎝高くした体制をとるようにしましょう。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
内科へ受診しましょう。
神経症状
ビタミンB12が不足すると、末梢神経にダメージが起こり全身に症状が現れます。
手足のしびれやピリピリ感、感覚消失、錯乱、肩こりや腰痛、筋力低下、歩行困難、眼精疲労、思考力の低下などの症状が起こります。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
蒸しタオルなどで温め血行を良くしたり、長時間の同じ姿勢を避け、軽いストレッチを行うとよいでしょう。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
しびれは神経内科、手足の痛みや腰痛は整形外科、眼精疲労は眼科へ相談しましょう。
消化器系の症状
暴飲暴食、ピロリ菌感染、自己免疫性胃炎などで胃の粘膜に炎症が起こります。高齢に伴いリスクが高くなりやすくなります。
萎縮性胃炎、胃酸減少、ハンター舌炎、味覚障害、舌の痛みなどの症状があらわれます。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
暴飲暴食や偏った食事、刺激物の摂取などを控え、バランスのよい食事を心がけましょう。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
胃症状は消化器内科、味覚障害・舌の症状は耳鼻咽喉科または歯科口腔外科へ受診しましょう。
精神症状
ビタミンB12が不足すると自律神経のバランスが崩れ心身にさまざまな不調が現れます。
思考力の低下、ふさぎ込み、性格変化、抑うつ、錯乱、易怒性、不安やイライラなどの症状が現れます。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
十分な睡眠と休息をとり、バランスのとれた食事をとりましょう。アルコールやカフェインの摂取を控えることも大事です。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
精神科や心療内科に相談しましょう。
脳血管症状
全身に指令を送る脳や脊髄などの中枢神経に炎症やダメージを受けると全身にさまざまな症状があらわれます。
手足の麻痺、しびれ、呂律が回らない、顔のゆがみ、めまい、吐き気や嘔吐、激しい頭痛などが起こることがあります。
・すぐにできる処置、症状の落ち着かせ方はあるか
倒れた場合は安全な場所に移動させ気道確保などの処置を。また衣服を緩め横向きに寝かせます。半身に麻痺がある場合は麻痺のある側を上にしてください。
・症状が悪化した場合、どんな病院・科に行くべきか、受診時の注意点
迷わず救急車を呼び救急病院、脳神経外科、脳神経内科へ受診しましょう。
ビタミンB12が不足する原因
食事からの吸収不全
ビタミンB12は胃の壁細胞から分泌される内因子と結合し小腸に運ばれて吸収されます。
胃や小腸の疾患・外科的切除後や高齢者などで胃酸が十分に分泌されない場合はビタミンB12の吸収が低下し不足する原因となることもあります。
食事からの摂取不足
ビタミンB12は動物性食品が主な供給源になります。
食欲不振や消化機能低下している高齢者、歯の咬合や食事制限がある方、菜食主義者などは動物性食品の摂取不足により不足する原因となります。
肝臓での貯蔵不足
体内のビタミンB12は肝臓に十分な量が蓄えられています。摂取しなくなった場合でも3〜5年間は必要量を維持することができます。
肝臓に疾患がある場合には貯蔵が妨げられ不足する原因になります。
薬剤による吸収阻害
ビタミンB12は薬剤と相互作用を起こし吸収阻害や体内での使用を妨げる可能性があります。
特定の薬剤の使用(制酸薬・糖尿病薬など)によりビタミンB12の吸収が阻害されます。
ビタミンB12が不足しやすい人の特徴
胃酸分泌量減少
日本人はもともと胃酸の分泌が少ないといわれています。ビタミンB12の吸収には胃の壁細胞から分泌される内因子が必要であり、分泌されない場合や少ない場合には吸収が低下し不足状態になることもあります。
ピロリ菌感染者や胃切除された方、また中高齢者や暴飲暴食される方は萎縮性胃炎などでさらに胃酸分泌量が減り不足しやすくなります。
小腸疾患における吸収不全
ビタミンB12は胃で分泌された内因子と結合して小腸(回腸)で吸収されます。
小腸粘膜損傷のセリアック病や回盲部に病変が多く外科的に切除されることの多いクローン病では、ビタミンB12の吸収率が低下し不足しやすくなります。
ヴィーガン・ベジタリアンなどの菜食主義者
ビタミンB12は動物性食品に多く含まれ、植物性食品(藻類や一部のきのこ類などを除く)にはほとんど含まれていません。
菜食主義者のヴィーガンやベジタリアン、極端に動物性食品を制限している場合などはビタミンB12の主な供給源である動物性食品を摂取しないため不足しやすくなります。
ビタミンB12を多く含む食品
しじみ・あさりなどの二枚貝
殻にツヤがあり大きくて模様や色がはっきりしているものを選びましょう。
100gあたり しじみ (生)68.0μg (水煮)82.0μg あさり (生)44.8μg (缶詰)64.0μg
貝類は生よりも水煮・缶詰の方が多く含まれ、料理にも手軽に取り入れやすいためおすすめです。
みそ汁やお吸物、チャウダー、あさりの酒蒸し、佃煮、炊き込み(深川めし)やパスタ、和え物などがあります。
水に溶けやすい性質のため、汁物やスープ、蒸し料理や電子レンジを使った調理法にすることでまるごと効率的に摂取できます。
牛レバー・鶏レバーなどの肝臓
ビタミンB12は牛のレバーから発見された栄養素です。鮮度がよくドリップが出ていないものを選びましょう。
100gあたり 牛レバー (生)53.0μg 鶏レバー (生)44.0μg 豚レバー (生)25.0μg
レバーの中でも牛レバーに多く含まれていますがやや臭みがありますので牛乳などで下処理をすると食べやすくなります。
炒め物は仕上げに水溶き片栗粉を回し入れることで汁の中に溶け出したビタミンB12を残すことなく摂取できます。またレバカツやレバーの唐揚げは苦手な方でも比較的食べやすい摂取方法です。鶏レバーは臭みも少なく、焼鳥にするとまるごと摂取できます。
いわのり・あまのりなどの藻類
黒紫色でツヤがあり香りの良いものを選びましょう。
100gあたり いわのり (素干し)69.4μg あまのり (味つけ)67.9μg (焼のり)56.7μg
のりはビタミンの宝庫で、A・B群・C・Eが多く、特にビタミンB12を大量に含んでいます。加工しても減少することはありません。また牛レバーと比較しても同程度かそれ以上のビタミンB12を含んでいるため、日本人にとって藻類は魚介類とともにビタミンB12のよい供給源となっています。
のりは加工されているため比較的どの料理にも取り入れやすいです。おむすびやのり巻き、お吸い物やお味噌汁、佃煮などでまるごと摂取できます。
ビタミンB12不足を解消する方法
ビタミンB12を多く含む食品の摂取
ビタミンB12は、しじみ・あさり、レバーやいわし・さんまなどに含まれ、藻類のイワノリやアマノリは動物性食品にも劣らない量が含まれています。また卵や牛乳・乳製品などは身近で日常的に摂れるよい供給源です。
植物性食品にはほとんど含まれていませんが、一部のきのこ類(なめこ・しめじ)などに含まれています。
魚介類では新鮮な鮎やさんま、いわしなど内臓をまるごと食べることによってビタミンB12をたっぷり摂取できます。またカツオ・サバなどの血合肉にも豊富で、鉄分も含まれているため貧血予防に効果的です。
ビタミンB12と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
加熱による損失を防ぐため高温短時間の調理がポイントです!また、材料を大きく切ったり、皮付きのまま調理することにより減少が抑えられます。
水に溶けやすいため、スープや煮込み料理などで摂取するのがおすすめです。
葉酸と一緒に摂取すると貧血の改善に効果的です。
クエン酸(ビタミンC)は代謝を上げ血流をスムーズにするため効果を高めます。
ビタミンのトリオ「B6・B12、葉酸」はホモシステインの血中濃度を下げる役割があるため動脈硬化の予防に効果的です。
・具体的な摂取方法
ビタミンB12を多く含むあさりの酒蒸しに葉酸を多く含む菜の花やブロッコリーを一緒に加えて蒸し、クエン酸が多いレモンなどをかけて食べましょう。
ビタミンB12と葉酸の含有量が多いレバーを素揚げにし、ビタミンCの多いパプリカやピーマンと一緒に炒め、クエン酸が多いレモンや酢の甘酢あんかけをかけて食べましょう。
ビタミンB12を含むサケをムニエルにし、葉酸の多いブロッコリーやアスパラガスをグリルして、ビタミンB12を含むゆで卵とクエン酸の多いレモンを添えて食べましょう。
※ビタミンB12は、熱には比較的安定していますが、光や空気によって酸化が進むため、肉や魚を保存する場合はきちんと密閉することが大事です。
ビタミンB12の効果を高める摂取タイミング
食品ごとに含有量や消化過程が異なり、同時に摂取する食品の影響を受けます。また、薬剤によっては吸収や体内での使用を妨げる可能性がありますので摂取するタイミングに注意が必要となります。
・摂取する時間帯
一度に吸収される量が調節されているため、一日3回の食事でバランスよく摂取することが大切です。サプリメントやビタミン剤を摂取する時は、食事中や食後直ぐをおすすめします。
・摂取を避ける時間帯
空腹時にサプリメント等を水だけで服用すると通過する時間が短く体内に吸収される量が少なくなってしまうため空腹時は避けましょう。
「ビタミンB12が不足すると現れる症状」についてよくある質問
ここまでビタミンB12が不足すると現れる症状を紹介しました。ここでは「ビタミンB12が不足すると現れる症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ビタミンB12が不足すると、どんな病気を発症しやすいですか?
大隅 加奈子
巨赤芽球性貧血や脊髄及び脳の白質障害、末梢神経障害、動脈硬化症、アルツハイマー病などを発症します。
ビタミンB12が不足すると体はどんなサインを発しますか?
大隅 加奈子
・巨赤芽球性貧血
動機や息切れ、疲れやすさ、ハンター舌炎、味覚障害、舌の痛みなど
・脊髄及び脳の白質障害
歩行時のふらつき、口のもつれ、物忘れ、動作緩慢など
・末梢神経障害
手足のしびれや痛み、筋力低下、感覚の違和感など
編集部まとめ
ビタミンB12は日常の食生活で欠乏することはありませんが、胃や小腸に疾患がある場合や菜食主義者は欠乏しやすいため注意が必要です。サプリメント、栄養強化食品、代替え食品などを上手に利用し積極的に摂ることを意識していきましょう。
特に思春期の女子や更年期の女性では健康志向やダイエットの影響により貧血につながり、ビタミンB12の摂取量は男性に比べて不足傾向にあります。毎日のバランスのよい食事で効率よく摂取しビタミンB12貯蔵量を増やしていきたいですね。
「ビタミンB12が不足すると現れる症状」と関連する病気
「ビタミンB12が不足すると現れる症状」と関連する病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 巨赤芽球性貧血(悪性貧血)
- 動脈硬化症
神経科の病気
- アルツハイマー病
- 脊髄及び脳の白質障害
脳神経・外科科の病気
- 脊髄及び脳の白質障害
- 脳卒中
耳鼻咽喉科の病気
- ハンター舌炎
- 難聴
歯科口腔外科の病気
- ハンター舌炎
小児科の病気
- メチルマロン酸尿症
「ビタミンB12が不足すると現れる症状」と関連する症状
「ビタミンB12が不足すると現れる症状」と関連している、似ている症状は25個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 動機
- 息切れ
- 疲労
- めまい蒼白
- 手足のしびれ
- 感覚消失
- 眼精疲労
- 歩行困難
- 筋力低下
- 胃酸分泌低下
- 胃粘膜の萎縮
- 慢性の下痢
- 舌炎
- 舌の痛み
- 手足の麻痺
- しびれ
- 呂律が回らない
- 顔のゆがみ
- 激しい頭痛
- 思考力の低下
- ふさぎ込み
- 性格変化
- 抑うつ
- 易怒性