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「食道がん」発症リスクを高める“栄養素”が研究で示唆… ビタミンB12との関連性が浮上

 更新日:2025/06/20

大阪大学の研究員らは、ビタミンB12、ビタミンB6、葉酸、メチオニンといった栄養素の食事摂取量と食道がんの発症リスクとの関連性について検討しました。その結果、「特にビタミンB12とメチオニンの摂取量が多いと、非飲酒者において食道がんリスクが有意に高まる可能性がある」と報告されています。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

大阪大学の研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

大阪大学の研究員らは、日本人8万7053人を対象に、ビタミンB12、ビタミンB6、葉酸、メチオニンの食事摂取量と食道がんリスクとの関連を検討しました。調査期間は1995年から2013年または2015年までで、食品摂取頻度質問票をもとに栄養素の摂取量を評価し、Cox回帰分析によってリスクを算出しました。

その結果、追跡期間中に427人が食道がんを発症し、ビタミンB12の摂取量が最も多い群は、最も少ない群と比較してリスクが1.75倍に上昇していました。さらに、アルコールの摂取状況で層別化した解析では、非飲酒者においてビタミンB12およびメチオニンの摂取量が多いと、食道がんのリスクがさらに高くなる傾向が確認されました。一方で、飲酒者ではこの関連はみられず、またビタミンB6や葉酸については有意な関連が認められませんでした。

食道がんのリスク要因とは?

食道がんのリスク要因について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

食道がんの主なリスク要因には、喫煙と飲酒があります。特に日本人に多いとされる扁平上皮がんは、これらの習慣と深い関わりがあります。飲酒によって体内に生じるアセトアルデヒドは発がん性物質であり、遺伝的にこの物質の代謝が苦手な人は、より高いリスクを抱えています。また、喫煙と飲酒の両方の習慣がある人では、相乗的に危険性が高まることが知られています。さらに、栄養状態が悪い場合や果物・野菜の摂取が少ない食生活も、ビタミン不足を通じて発症リスクに影響を与えると考えられています。

食道がんのリスクを減らすためにも、生活習慣を見直し、禁煙・節酒を心がけ、バランスのよい食事を意識して過ごしましょう。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

大阪大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

ビタミンB12やメチオニンは、DNAの合成およびメチル化に関与する栄養素であり、以前より細胞実験でもビタミンB12によるDNAメチル化の異常が食道扁平上皮がんの発生に関与する可能性が示唆されていました。ただし、体内への吸収や血中濃度には個人差があり、サプリメント摂取などの要因も影響するため、今後さらなる検討が必要です。いずれにしても、必要以上に摂りすぎずバランスの良い食生活を意識することが、この大変興味深い研究結果から受け止められる最も重要なメッセージであると考えます。

編集部まとめ

大阪大学の研究によって、「ビタミンB12とメチオニンの摂取量が多い非飲酒者の食道がんリスクは高まる可能性がある」と判明しました。食道がんは喫煙や飲酒が大きな要因とされていますが、栄養の摂り方も影響することが明らかになってきています。栄養バランスを意識しつつ、自分の生活習慣や体質をふまえた健康管理を心がけましょう。

この記事の監修医師