「プリン体の多い食べ物」はご存知ですか?過剰摂取すると現れる病気・症状も解説!
プリン体の多い食べ物とは?Medical DOC監修医がプリン体の多い食べ物・過剰摂取すると現れる症状・プリン体の排出方法などを解説します。
監修管理栄養士:
武井 香七(管理栄養士)
保有免許・資格
管理栄養士資格
目次 -INDEX-
「プリン体」とは?
プリン体とは、プリン環という化学構造を持つ物質の総称です。細胞中の核酸の主成分で、ほとんどの食品に含まれています。特に、レバーや魚卵など細胞数の多い食品・細胞分裂の盛んな組織を含む食品には含有量が多い物質です。プリン体は肝臓で代謝され、尿酸となって尿や便から排泄されます。尿酸が過剰に産生されたり、尿酸を排泄する機能が低下したりして、血液中の尿酸が異常に増えると高尿酸血症を起こします。
プリン体の一日の摂取量
私たちが通常の家庭食から摂取しているプリン体は、1日200mg程度とされています。プリン体は食物からの摂取のみならず、体内で生合成されている物質です。食事からの摂取がないからといって、体内に存在しないわけではありません。高尿酸血症で治療を要する患者さんには、プリン体の多い食品の摂取を控え、1日のプリン体の摂取が400mgを超えないように指導します。
プリン体を過剰摂取すると現れる病気・症状
高尿酸血症
血液中の尿酸が7.0mg/dl以上になると、高尿酸血症と診断されます。尿酸値が高いだけでは、自覚症状はありません。高尿酸血症が持続すると、結晶となった尿酸が体の組織へ沈着します。痛風関節炎・尿路結石・腎臓障害の原因になるだけではなく、肥満や高血圧、糖 ・脂質代謝異常などを合併する患者さんが少なくないという特徴があります。また、高尿酸血症の患者さんは脳血管障害や心血管障害を発症するリスクが高くなるとの報告があり、注意が必要です。血液中の尿酸値が高く精密検査が必要な場合は内科を受診しましょう。
痛風関節炎
痛風関節炎は、結晶となった尿酸が関節に沈着して炎症を起こした状態です。足の親指の付け根の関節や足首に起こりやすく、激痛が生じます。耐えがたい痛みを伴う痛風発作と呼ばれる症状です。たいていの場合、1週間から10日で痛風発作は治まり、症状がなくなります。しかし、1年以内に再発するケースが多く、再発を繰り返すうちに発作を起こす間隔が短くなっていく特徴があります。痛風発作がおこったときの応急処置は、以下のとおりです。
机の上に足を上げて患部を高い位置に保つ
患部を冷やす
発作の起こった関節を安静にする
医師から痛風発作用に処方された薬を服用する
応急処置をしながら、できるだけ早く内科や整形外科で受診してください。
腎臓障害
高尿酸血症や痛風が進行すると、痛風腎と呼ばれる腎臓障害を引き起こすことがあります。尿中に排泄される尿酸が増え、腎臓の深部で結晶化することが腎臓障害の原因です。蛋白尿や血尿、腎機能低下などの症状がみられます。
尿路結石症
尿中に排泄される尿酸が増え、腎臓から尿道までの尿路に結石が生じた状態です。結石がつまって尿の流れが悪くなると、片側の背中に激しい痛みが起こります。高尿酸血症の進行による尿路結石の予防は、尿中の尿酸量を低下させ、結石ができないように尿量を増加させることです。高尿酸血症の患者さんの尿は酸性に傾きやすく、尿をアルカリ化する治療を行うケースもあります。
プリン体の多い食品
レバー
食品100gあたりのプリン体含有量が200mg以上の食品は、高プリン食と位置づけられています。なかでも、鶏レバーの100gあたりのプリン体含有量は312mgです。豚レバーは284mg、牛レバーは219mgとなっています。
白子
イサキ白子のプリン体含有量は、100gあたり305mgです。白子とは魚類の精巣で、古くからタラやサケなどの白子を味噌汁や鍋に入れて食する習慣がありました。小鉢料理一皿分・味噌汁一杯分に使われる白子は、約50gです。
魚の干物
水分量が減っている乾物や魚の干物は、100gあたりで計算するとプリン体含有量が多くなります。マイワシ干物のプリン体含有量は100gあたり305mg、マアジ干物は100gあたり245mgです。1尾85g〜70gのマイワシの丸干しには、プリン体が260mg〜213mg程度含まれていると考えられます。
あんこう肝酒蒸し
あんこうは、身だけでなく胃袋・卵巣・肝など、ほとんどの部位を食べることができる魚です。産卵期に肥大するあんこうの肝の味を楽しみにしている方もいらっしゃるでしょう。あんこう肝酒蒸しには、100gあたり399mgのプリン体が含まれます。生の肝のプリン体含有量は100gあたり104mg、白身のプリン体含有量は100gあたり70mgです。
カツオ
カツオには100gあたり211mgのプリン体が含まれます。カツオのたたきは、高知県を中心に全国的に親しまれているメニューです。生節を使った小鉢料理やたたき一人前に使われるカツオは、70〜80g程度が一般的です。100gあたりのプリン体含有量が150mg以下の魚類のなかでも、プリン体が多い食品として意識しておきましょう。
プリン体の排出方法
水分を摂取する
尿中の尿酸の濃度を低下させ、尿酸を排出するには1日2,000mL以上の尿量を確保する水分摂取が有用です。ただし、アルコール類や糖分を多く含む飲料を水の代わりとして飲まないように注意してください。肝臓や腎臓、心臓の疾患などで水分摂取制限のある患者さんは、主治医に摂取量を相談しましょう。プリン体の有無に関わらず、アルコールを肝臓で代謝する過程で、血液中の尿酸値が上昇します。低プリン体ビールだから大丈夫だ、というものではありません。すべての種類のアルコール類を適切な飲酒量にとどめておくことが重要です。
乳製品を摂取する
牛乳をはじめとする乳製品に含まれるカゼインとラクトフェリンには、尿酸の排泄を増やす作用があるとの報告があります。厚生労働省の食事バランスガイドによると、牛乳の適切な摂取量は1日コップ1杯200ml程度が目安です。たんぱく質の摂取制限がある腎臓疾患の患者さんは、主治医に摂取量を相談してください。乳製品が尿酸の排泄を増やすメカニズムは、はっきりとはしておらず、今後も研究や検討が必要とされています。
ビタミンCを摂取する
乳製品と同じく、メカニズムがはっきりとはしていないものの、ビタミンCにも尿酸の排出を促す作用があるとされています。ビタミンC摂取量が多いと尿酸値が低値を示す、ビタミンC摂取量が痛風の発症リスクと関連しているなどの報告が複数あります。ビタミンCは、柑橘類や緑葉野菜、いも類に多く含まれる栄養素です。
アルカリ性食品を摂取する
酸性に傾きやすい高尿酸血症の患者さんの尿をアルカリ化する食品は、ヒジキやわかめなどの海藻類とほうれんそうです。尿のアルカリ化は尿酸結石を予防するとともに、尿酸の排泄を促す効果もあります。野菜のほとんどは、アルカリ性食品です。野菜類や大豆製品、きのこ類はプリン体含有量が少ない食品でもあるため、積極的な摂取が望まれます。
「プリン体の多い食べ物」についてよくある質問
ここまでプリン体の多い食べ物などを紹介しました。ここでは「プリン体の多い食べ物」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
プリン体が一番多い食品を教えてください。
武井 香七 医師
日本痛風・核酸代謝学会が作成した高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、食品をプリン体含有量に応じて分類しています。高プリン食のなかでもプリン体含有量が豊富な食品は、以下のとおりです。
鶏レバー(100gあたり312mg)
豚レバー(284mg)
イサキの白子(305mg)
あんこう肝(399mg)
マイワシ干物(305mg)
プリン体の大部分は、細胞に含まれる核酸に由来するものです。精巣である白子、内臓であるレバーにはプリン体が多く含まれます。
プリン体が多い野菜について教えてください。
武井 香七 医師
野菜類で100gあたりのプリン体含有量が50mg以上のものを、プリンリッチ野菜と呼びます。プリンリッチ野菜の多くは、細胞分裂が盛んな花芽を食する野菜や成長段階にある野菜です。プリン体が多い野菜は、以下のとおりです。
ブロッコリースプラウト
ほうれん草の芽
パセリ
アスパラガスの穂先
カリフラワー
ブロッコリー
しかし、プリンリッチ野菜のプリン体含有量は、肉類や魚類の半分以下にすぎません。したがって、プリンリッチ野菜の摂取は高尿酸血症のリスクとは関連がないと報告されています。
編集部まとめ
ほとんどの食品に含まれているプリン体を過剰に摂取しないためには、プリン体の多い食べ物を意識しつつ、野菜・果物・豆類などをバランスのよく摂取する食習慣が大切です。
食べすぎやアルコール類の飲みすぎは、高尿酸血症をはじめとした生活習慣病につながり、脳血管障害や心疾患を発症するリスクが高くなります。
尿酸が高い状態を放置すると、痛風関節炎や尿路結石、腎臓障害などを起こすおそれもあります。健康診断で血液中の尿酸値が高いと指摘された場合は、自覚症状がなくても内科への受診を検討しましょう。
「プリン体」と関連する病気
「プリン体」と関連する病気は10個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 高血圧
- 心血管障害
脳神経科の病気
腎臓内科の病気
- 腎臓障害
泌尿器科の病気
プリン体の代謝産物は尿酸です。血液中の尿酸が高い高尿酸血症は、生活習慣病に関与し、心血管障害や脳血管障害のリスクを高めるとされています。
「プリン体」と関連する症状
「プリン体」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 肥満
- 関節が痛い
- 片側の背中が痛い
- 片側の腰が痛い
- 尿の回数が多い
- 排尿後も尿が出きっていないように感じる
- 排尿時に尿道や膀胱周辺が痛い
高尿酸血症の患者さんには、肥満を合併している方が少なくありません。また、尿路結石が生じると背中や腰の痛みを感じたり、排尿に関する症状がみられたりします。