「低用量ピルの仕組み」はご存知ですか?メリット・デメリットも解説!
「低用量ピルを服用してみたい」「避妊効果を得られる低用量ピルが気になる」とお考えの人は少なくないでしょう。
低用量ピルは、避妊効果だけではなく生理痛を和らげる効果もあり、女性の強い味方であるといえます。
低用量ピルを服用すると得られるメリットは多いですが、実際にどのような仕組みなのでしょうか。
服用するメリット・デメリット・服用時の注意点も詳しく解説します。低用量ピルについて正しい知識を取り入れ、より効果的に服用しましょう。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
低用量ピルの仕組みとは?
低用量ピルを服用すると体に変化がもたらされますが、どのような仕組みなのでしょうか。低用量ピルの仕組みは次の3つがあります。
- 排卵を抑制
- 頚管粘液の性状を変化
- 子宮と卵管の運動性を変化・着床受精の抑制
聞いたことがある言葉もあれば、初めて聞く言葉もあるかもしれません。それぞれの仕組みについてわかりやすく解説します。
排卵を抑制
低用量ピルには排卵を抑制する仕組みがあり、避妊効果を高めることができます。排卵とは、卵巣の中で育った卵胞を排出するために脳に「排卵しなさい」と命令を送り、卵巣から卵子が飛び出す様子です。
脳に送られた命令により排卵された卵子は、精子と出会い受精し妊娠するのです。「排卵しなさい」という命令は、黄体ホルモンの大量分泌によって行われています。
低用量ピルには黄体ホルモンと卵胞ホルモンが含まれており、排卵を抑制する効果があります。2つのホルモンをコントロールすることで、脳は「排卵しなさい」と命令しないのです。このことをネガティブフィードバックといいます。
排卵が起こらないと卵子も排出されないため、そもそも受精するための卵子がなく妊娠もできないという仕組みです。低用量ピルの服用により、排卵を抑制でき避妊効果を高められるでしょう。
頚管粘液の性状を変化
低用量ピルを服用することで頚管粘液(けいかんねんえき)の性状を変化させる仕組みがあり、高い避妊効果に期待ができます。頚管粘液とは子宮の入り口にある粘液で、無菌状態の子宮へ細菌が侵入しないように守る役割があります。
低用量ピルを服用していない状態では、排卵時期が近づいた時、頚管粘液が変化し精子が子宮内に入りやすくなるのです。以上の内容から頚管粘液には、細菌の侵入を防ぎ、排卵に合わせて精子が子宮内に入りやすくする役割があります。
ここまで低用量ピルを服用していない時の頚管粘液の性状について解説しましたが、低用量ピルを服用するとどのように頚管粘液が変化するのでしょうか。低用量ピルを服用すると、精子が子宮に入りにくい頚管粘液の性状に変化します。その性状は粘着性が高いことから、精子が子宮内に入りにくくなり、妊娠する可能性も低くなるでしょう。
このように、低用量ピルを服用すると頚管粘液の性状を変化させ、避妊効果を高める仕組みがあるのです。
子宮と卵管の運動性を変化・着床受精の抑制
低用量ピルには、子宮と卵管の運動性を変化させ、着床受精を抑制する仕組みがあります。低用量ピルを服用していない時は、女性の体は妊娠の準備をしています。その1つが子宮内膜を厚くする働きです。
受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くして妊娠に備え、妊娠が確認できなかった時には分厚くなった子宮内膜を剥がし月経として排出します。低用量ピルを服用すると、子宮内膜を一定の薄さに保てるため、受精卵が着床しにくい環境がつくられるのです。
また、子宮と合わせて卵管の運動性も変化し、卵子や精子の動きに影響がでて受精しにくくなります。以上の内容から、低用量ピルを服用すると子宮と卵管の運動性が変化して受精しにくくなり、仮に受精しても着床しにくくなるのです。
低用量ピルを服用するメリット
低用量ピルは高い避妊効果があることで知られていますが、服用するメリットは他にも合わせて4つ挙げられます。
- 避妊することが可能
- ホルモンバランスの改善
- 月経前の不調改善・生理不順の改善
- 卵巣・子宮がんのリスクを軽減
人によっては、ホルモンバランスの乱れにより気持ちが落ち込む人もいますし、月経前の不調を感じる人もいるでしょう。低用量ピルを服用すると、女性特有の悩みを改善でき、快適に過ごせるようになるのです。
それでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
避妊することが可能
低用量ピルを服用すると、避妊することが可能であるメリットが挙げられます。避妊具の避妊成功率を比較すると、コンドーム98%、子宮内避妊用具99.4%に対して低用量ピルは99.7%と高い効果が期待できるのです。
99.7%という避妊成功率は、低用量ピルを毎日同じ時間に1錠服用することで得られる効果であるため、服用を忘れないようにしなければなりません。仮に服用を忘れてしまった場合にも、91%の避妊成功率が期待できます。
また、低用量ピルの服用はホルモンが含まれたピルと、含まれていない偽薬を決められた通りに服用することで効果が得られます。毎日同じ時間に1錠を正しく服用出来ていれば、ホルモンが含まれていない偽薬の期間にも避妊効果が持続するでしょう。
服用忘れのタイミングによっては避妊効果が期待できない可能性もあるため、より高い避妊成功率を得られるように、低用量ピルを正しく服用しましょう。
ホルモンバランスの改善
低用量ピルを服用すると、ホルモンバランスの改善に繋がるというメリットが挙げられます。低用量ピルにはホルモンが含まれているため、服用することでホルモンバランスを整え、次のような良い影響をもたらします。
- 生理周期が整う
- 肌荒れ(にきび)が改善される
低用量ピルはホルモンが含まれているピルと、含まれていない偽薬を決まりを守って服用することで、月経をコントロールできます。ホルモンが含まれていない偽薬期間で月経が来るため、月経時期を予測し生理周期を整えることが可能なのです。
また、女性には嬉しい肌荒れの改善も見込めます。ホルモンバランスと体の繋がりは深く、改善するとさまざまな不調を整えることができるのです。
月経前の不調改善・生理不順の改善
月経前にPMS(月経前症候群)の症状がある人や、生理不順で月経を予測できない人もいるのではないでしょうか。低用量ピルを服用すると、月経前の不調や生理不順が改善できるメリットがあるのです。
PMSは肌荒れ・眠気・イライラ・気分の落ち込みなど、排卵から生理の間の女性ホルモンの分泌が一気に低下し引き起こされる症状です。低用量ピルを服用すると、ホルモンをコントロールできるため、月経前の不調やPMSを改善できます。
また、ホルモンバランスを整えて生理をコントロールできるため、予測できなかった生理不順にも対応が可能です。低用量ピルを服用すると、月経前の不調や生理不順などのお悩みも改善できるのです。
卵巣・子宮がんのリスクを軽減
低用量ピルを服用すると、卵巣・子宮がんのリスクを軽減できるというメリットが挙げられます。排卵が多い人より少ない人の方が卵巣がんにかかる可能性が低いため、低用量ピルを服用し排卵を抑制することで卵巣がんのリスクを軽減できます。
子宮がんの発症リスクはエストロゲンが増殖すると高まりますが、低用量ピルは増殖を抑制する働きがあり、長く服用するほどリスクを軽減できるのです。
低用量ピルのデメリット
ここまで低用量ピルのメリットを解説しましたが、薬にはデメリットもつきものです。低用量ピルのデメリットを5つ紹介します。
- 悪心・むかつき
- 胸のはり
- 頭痛ト
- 下痢
- 血栓症
血栓症を除く悪心から下痢までの症状は、低用量ピルの服用を始めて2〜3か月頃まで表れる副作用です。2〜3か月経過すると症状が落ち着くため、それまで服用を継続し様子を見る必要があります。2~3か月経過しても症状が改善されない場合は、低用量ピルを服用した医療機関で相談してみましょう。
また、血栓症は血管中の血液が固まってしまい、血液の流れを止めてしまう病気です。血栓に起因する症状として、激しい頭痛・胸痛・腹痛・下肢痛・舌のもつれなどが見られる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
低用量ピルは種類がさまざま
低用量ピルには種類がさまざまありますが、大まかに2つの種類に分類できます。
- 一相性のピル
- 三相性のピルト
いずれも低用量ピルには卵胞ホルモンと黄体ホルモンが含まれていますが、その割合によって一相性と三相性の2つに分類できるのです。
一相性のピルは全ての期間のホルモンの量が同じピルで、三相性のピルは生理周期に合わせて黄体ホルモンが増減されているピルです。三相性のピルは、より本来のホルモンバランスに近いため、不正出血も起こりにくいといわれています。
医療機関を受診し、どのピルが自分の悩みを改善できるのか相談してみましょう。
低用量ピルの服用で注意すべきこと
低用量ピルの服用で注意すべきことは、決められた飲み方を守って服用することです。これまでにも解説しましたが、低用量ピルは毎日同じ時間に1錠服用すると効果が得られます。
飲み忘れてしまうタイミングによっては避妊効果を得られず、場合によっては緊急避妊薬を要するのです。飲み忘れのタイミングと対処法は次の通りです。
- 1日飲み忘れ、次の服用時刻前に気付いたとき:気付いた時点で1錠服用する
- 1日飲み忘れ、次の日の服用時刻後に気付いたとき:昨日の分と合わせて2錠服用するト
- 2日以上連続して飲み忘れたとき:気付いた時点で飲み忘れた分の2錠を服用する
- 3日以上連続して飲み忘れたとき:服用を中止して次の月経の初日から新しいシートを服用する
決まった時間にアラームを設定して、服用を習慣化できるようにしましょう。また、低用量ピルを服用していて次のような症状が見られた場合は早めに医療機関を受診しましょう。
- 嘔吐、吐き気
- 激しい頭痛
- ふくらはぎの痛み
- 呼吸困難、血痰
- めまい、てんかん
- しびれ
- 手足の脱力
- 視力の異状
近年の低用量ピルは改良されており、副作用や血栓症などのデメリットも軽減されています。しかし、万が一にも上記のような症状が表れた場合は早めに医師の診断をあおぎましょう。
編集部まとめ
低用量ピルは、避妊効果・ホルモンバランスの改善・月経前の不調や生理不順の改善・卵巣がんや子宮がんのリスク軽減など多くのメリットがあります。
多くのメリットをもたらす低用量ピルにはホルモンが含まれていると解説しました。
低用量ピルに含まれるホルモンは、排卵の抑制・頚管粘液の変化・子宮と卵管の運動性の変化・着床受精の抑制など多くの良い影響を与えます。
低用量ピルの仕組みを知った上で服用すると、女性特有の悩みや毎月の生理の辛さも改善できるでしょう。
気分の落ち込みが改善され仕事が上手くいく、妊娠の心配なく過ごせるなど、生活上のあらゆる場面で良い影響をもたらしてくれます。
低用量ピルについて気になる人は、医療機関を受診し相談してみましょう。