「低用量ピルの飲み方」はご存知ですか?医師が監修!
ピルと聞くと避妊薬をイメージする方も多いですが、低用量ピルの使用目的はそれだけではありません。
低用量ピルは種類によって効果や目的はかわりますが、避妊以外に生理のコントロールやマイナートラブルなどさまざまな症状改善も期待できるお薬です。
今回は、低用量ピルの飲み方・種類・注意点について解説をしていきます。低用量ピルを使いたい方は、正しい知識を身につけたうえで使用しましょう。
監修医師:
前田 裕斗(医師)
目次 -INDEX-
低用量ピルを飲む目的
ピルはもともと1960年代にアメリカで作られた経口避妊薬です。女性の避妊薬として世界中で服用されています。低用量ピルも避妊が目的のひとつではありますが、避妊以外にもさまざまな目的で使用できるお薬です。むしろ、避妊以外の目的で処方されるケースが多くあります。低用量ピルを使用する目的は下記のとおりです。
- 避妊
- 月経のコントロール
- PMSの軽減
- ニキビの改善
- 子宮内膜症の治療
月経のコントロールは、旅行などに月経が重ならないようにコントロールします。また月経痛・PMS・月経不順の治療に使われます。ニキビなどの改善や子宮内膜症の治療など、女性特有のお悩みに使用されるケースが多いです。生理痛が重い方や量が多すぎる方などは、低用量ピルを使った治療を行なうことで生理中も快適に過ごせます。ピルには中用量ピルとアフターピルがありますが、低用量ピルは女性ホルモンの量を避妊効果を得られる最低限まで減らしているため、比較的副作用が出にくいです。卵巣がんや子宮体がんのリスクを減らす効果も期待できます。
低用量ピルの基本的な飲み方
低用量ピルは、基本的に1日1錠毎日一定の時間に服用します。体内のホルモンを一定の量にするためには毎日同じ時間に服用することが大切です。
習慣づくまでは少し大変ですが、飲み忘れないように服用を続けることが低用量ピルの効果を得るためのポイントになります。朝起きた後や夜寝る前など習慣づけやすい時間に飲むのもおすすめです。アラームをセットしておくなど、上手に工夫をして服用を続けていきましょう。低用量ピルを飲み始めるタイミングや服用サイクルについて解説していきます。
飲み始めるタイミング
低用量ピルを飲み始めるタイミングは2通りです。
- Day1スタート
- Sundayスタート
Day1スタートは月経が始まったその日に服用を開始します。Sundayスタートは月経が始まった後の最初の日曜日から服用を始める方法です。避妊を目的にしている場合はDay1スタートで、月経5日目までに飲み始めれば、避妊の効果を保つことができます。Sundayスタートの場合は、月経が始まった後の最初の日曜日から服用を始めてください。日曜日に月経が始まった場合は、当日から飲み始めます。避妊目的で使用する方はDay1スタートの場合もSundayスタートの場合も、7日間連続で飲むまでは別の方法でしっかり避妊をすることが大切です。
飲むサイクル
低用量ピルを飲むサイクルは、28日間で1クールとします。1日目~21日目まで服用した後、7日間お薬をお休みする期間があります。低用量ピルの服用をお休みする期間と合わせて28日のサイクルで低用量ピルを服用しましょう。休薬期間7日を過ぎた翌日、29日目をまた新しい1日としてスタートするのです。1つのシートに28日分のピルが入っています。1サイクルで1シート飲み切るようにしてください。その後このサイクルを繰り返していきます。お薬を休んでいる期間に月経のような出血はありますが、異常ではありません。出血の有無に関わらず、お休みの期間が終わったら1日目をスタートしてください。
低用量ピルの飲み方の違い
低用量ピルには2つのタイプがあります。
- 21錠タイプ
- 28錠タイプ
それぞれ1シートに入っている薬の数が違いますが、基本的な飲み方・サイクルは変わりません。ただ、お薬をお休みする期間の過ごし方に違いがあるのです。それぞれのタイプの飲み方について解説していきます。
1シート21錠タイプ
21錠タイプの低用量ピルは1シートに21錠の薬が入っているため、1日1錠順番通りに服用を続けてください。21錠すべてを飲み終わったら、7日間お薬をお休みします。7日間の休薬期間が過ぎたら次のシートにうつり、また1錠目から服用を再開するのです。休薬期間を終えた後、服用の再開日を忘れないように注意をしましょう。服用を再開する日を忘れないために、カレンダーに書き込んだりスマホのスケジュール機能を使ったりするのがおすすめです。
1シート28錠タイプ
28錠タイプのシートには女性ホルモンが含まれた実薬が21錠入っています。加えて女性ホルモンが含まれていない偽薬(プラセボ錠)が含まれています。21錠タイプと同様に1日1錠、番号順に実薬を21日間服用し、21錠を飲み終わったら7日間プラセボ錠を飲んでください。7日間プラセボ錠を飲み終わったら翌日から、次のシートの実薬を飲み始めます。21錠タイプはお薬を服用しない期間が7日間ありますが、28錠タイプは偽薬を飲み続けるため休薬期間がありません。休薬期間がないため、服用再開日を忘れにくいです。ピルの服用に慣れていない方は、28錠タイプが服用習慣を維持しやすいといえます。
目的別の低用量ピルの種類
低用量ピルはさまざまな女性の悩みに効果がみられるお薬です。低用量ピルには種類があり、治療や目的にあったものを選ぶ必要があります。低用量ピルは開発の過程で新しい薬が開発されてきました。第一世代・第二世代・第三世代・第四世代と分類されており、それぞれの世代で効用やホルモンの違いがあります。ピルを使用する目的に特化した世代のピルを選ぶことになるのです。たとえば、生理周期のコントロールが目的の方は、第三世代のマーベロンがおすすめです。避妊が目的の方は、第二世代のトリキュラー・ラベルフィーユや第三世代のマーベロンが適しています。ニキビの改善には、第三世代のマーベロンかファボワールがよいです。マーベロンは連続して服用することができるピルのため、月経を長い期間止めることもできます。ピルを使いたい場合は、医師に相談をして低用量ピルを使う目的別に適したものを処方してもらってください。
低用量ピルを飲むときの注意点
低用量ピルは中用量ピルやアフターピルに比べて副作用も少なく、避妊や月経のコントロールなどの効果が期待できます。しかし、副作用をまったく起こさないわけではありません。人によっては、低用量ピルの服用で副作用に悩まされる方もいます。低用量ピルの副作用は下記のとおりです。
- 血栓症
- 吐き気
- 頭痛
- 乳房の痛み
- 不正出血
吐き気や頭痛は低用量ピルを服用して日が浅い方に起きやすい副作用になります。薬に身体が慣れてくると副作用も落ち着いてくるはずです。ただ、副作用の現れ方は個人差があるため、人によっては症状に耐えられない方もいます。どうしても薬が合わない場合は、医師に相談をしてください。頭痛や不正出血はよくある副作用のため、重度でない場合は様子をみても問題はありません。しかし、血栓症は場合によっては命にかかわるため注意が必要になります。下記のような症状がある場合は血栓症を起こしている可能性が高いため、早めに受診をしてください。
- 激しい頭痛や腹痛
- ふくらはぎの痛みやむくみ
- 舌がもつれる
- 急に目が見えにくくなった
低用量ピルを服用している間は、かならず定期的に病院で診察を受けることが大切です。血栓症の予兆を見逃さないようにしましょう。また、ピルを服用中の喫煙は血栓症のリスクを高めます。特に35歳以上の方で1日の喫煙量が15本以上ある方はピルの服用ができません。低用量ピルを服用したい方は、禁煙をおすすめします。
低用量ピルの飲み方に関するよくあるQ&A
初めて低用量ピルを服用する方は、疑問や心配なこともあるでしょう。低用量ピルの飲み方に関するご質問の中から、多いものをQ&A方式でお答えしていきます。ぜひ参考にしてください。
低用量ピルを飲む順番は決まっていますか?
低用量ピルのシートには服用する順番が番号で書かれており、その順番通りに服用するようになっています。薬の色がわけられており、同じ色の実薬に含まれている成分も量も同じです。同じ色の実薬ならどこから飲んでも同じため、順番を間違えても問題はありません。順番を間違えても予定通り21日間服用を続けてください。28錠タイプの場合は、偽薬が入っているため休薬期間用の薬と間違えないように気をつけましょう。
飲み忘れるとどうなりますか?
最後の服用から24時間以上48時間未満であれば飲み忘れに気が付いたときにすぐに服用をすれば大丈夫です。残りのピルは予定通りに飲んでください。ただ、飲み忘れに気が付いたときに2日以上過ぎている場合は、何週目かによって対応が違います。飲み忘れから2日経った場合は医師に相談をして指示をもらいましょう。28錠タイプのプラセボ錠は薬の成分が含まれていない偽薬のため、休薬期間の7日間で飲み忘れても問題ありません。飲み忘れた分は廃棄して通常通り休薬期間の7日を過ごしてください。飲み忘れを防ぐためには、ピルを飲む時間・タイミングを習慣づけることがポイントです。自分なりにわかりやすい方法で、服用の管理をしてみてください。
>誤って多く飲んでしまったのですが…
低用量ピルを間違えて1日に2錠飲んでしまった場合でも、翌日の服用は通常通り行なってください。シートのピルを飲み終えたら、そこから7日間お休みします。7日間の休薬期間が過ぎたら、そのまま翌日から服用を再開しましょう。飲みすぎた場合でも避妊効果に問題はありません。低用量ピルを重複して服用してしまった場合でも、翌日に薬をお休みすることはしないでください。1日飲まないと飲み忘れと同じ状態になってしまいます。1日の服用が重複した場合は、過剰摂取となり副作用が強くでることがあるため注意をしてください。薬の飲みすぎを防ぐには、メモなどで管理をしておくと間違えにくいです。
編集部まとめ
低用量ピルは正しい飲み方をすることで効果が期待できる薬です。服用方法を間違えると効果が得られない可能性があるため、きちんと守りましょう。
低用量ピルを使いたい場合は、目的に合ったものを選ぶ必要があります。必ず医師の診察を受けて飲み方の指導をしてもらうようにしてください。
ピルを服用している間は、定期的に医師の診察を受けることも大切です。
とくに飲み忘れて2日経ってしまった場合や副作用など、問題があった場合は自己判断で服用を中断せず早めに医師に相談をして指示を仰ぐようにしましょう。
参考文献