「低用量ピルは太る」って本当?ウソ?太らなようにする方法も解説!
生理痛や月経随伴症状など、女性の身体に関する悩みは多いです。それらの悩みは、継続して服用する「低用量ピル」によって症状改善が可能になりました。
しかし、低用量ピルには「太る」という説もあります。本当に低容量ピルを服用すると太るのでしょうか?なぜ太るといわれているのでしょうか?
今回は、低用量ピルがなぜ太るといわれているのか、太らないようにするにはどうしたら良いのかを解説します。
体重増加の症状が出にくいとされているピルについても紹介しているので、低容量ピルの服用を考える際の参考にしてください。
監修医師:
前田 裕斗(医師)
目次 -INDEX-
低用量ピルとは
低用量ピルとは、日常的に服用するホルモン剤です。月経・排卵の周期をコントロールし、避妊効果や月経随伴症状の改善が期待されています。ピルと聞くと避妊薬というイメージがあるかもしれません。アフターピルや事前に飲むピルなど、避妊効果を見越して飲む薬というイメージが一般的です。それに対して低用量ピルは日常的に服用することが前提の薬です。日常的に服用することで、月経周期と排卵をコントロールし、避妊を目的としています。
低用量ピルは普通のピルと比べて含有するホルモンの量が少ないため、ピルを服用した際の副作用が出にくいのが特徴です。
また、月経周期・排卵をコントロールするため、避妊効果の他にいくつかの副効用がみられています。
- 月経痛・PMSなどの月経随伴症状の改善
- 子宮体がん・卵巣がんなどの予防効果
このことから、婦人科では低用量ピルの処方が進められています。一方で、服用開始したての頃には以下のような副作用が出る場合があります。
- 吐き気・眠気
- 不正出血
- むくみ
これらの症状は、1ヶ月~3ヶ月ほど服用継続していると現れなくなります。なぜこれらの症状が出てしまうかというと、服用開始直後は薬によってホルモンバランスが変わってしまうからです。身体にまだホルモンバランスが適応しておらず、結果として月経困難症に似た症状が現れます。3ヶ月ほど経つと身体が適応し、症状が現れなくなります。
低用量ピルを飲むとなぜ太る?
女性の悩みに役立つ低用量ピルですが「太りやすくなる」といわれています。これは低用量ピルの副次効果とホルモンが原因と考えられています。
食欲増進効果があるって本当?
まず、低用量ピルに「食欲増進効果がある」という噂ですが、厳密にいうと低用量ピル自体に食欲増進効果はありません。考えられる理由としては、低用量ピルを服用開始時に月経困難症を患っていた場合、食欲不振に陥っていたという理由です。低用量ピルを服用することにより月経困難症の症状が緩和されると、服用前よりも食欲が増えます。結果として食欲増進効果が出た、ということです。低用量ピルの種類によっては副作用として食欲減退がみられる場合もあるため、服用する種類と体質の相性もあります。そのため、一概に食欲増進効果があるとは言えません。
ピルに含まれるホルモンが原因
「太りやすくなる」ということは、つまり低容量ピルに含まれているホルモンが原因ということです。どのホルモンが太りやすくなる要因を作るのでしょうか?太りやすくなる原因としてよく挙げられるホルモンが「プロゲステロン」という黄体ホルモンです。通常の女性の身体では、排卵後~月経の期間(黄体期)にプロゲステロンの分泌が盛んになります。プロゲステロンが盛んに分泌されると、食欲がコントロールしにくくなったり、身体に水分がたまりやすくなったりという症状が出ます。低容量ピルにもプロゲステロンが含まれているため、人によっては体重が増加する可能性があるのです。
むくみやすくなる
太る原因は食べ過ぎや食欲増進だけではありません。身体に水分がたまることでむくみが発生することでも痩せにくい=太る傾向があります。女性ホルモンのプロゲステロンが増えると、身体が水分を溜め込みやすくなります。何故かというと、身体を防護しようという働きがあるためです。そのため、低容量ピルを服用しているとむくみやすくなるという説も出るようになりました。ただし、低用量ピルは種類によって含まれる成分が変わります。もしむくみがひどくなったりした場合は、担当医と相談して服用する薬を変えていくことも考えましょう。
服用中に太らないようにする方法
では、低容量ピルを服用中に太らないようにするにはどうしたら良いのでしょうか?対策法を解説します。
食べ過ぎに注意する
低用量ピルを服用すると、食欲が服用前よりも増える場合があります。そのため、食欲があるからと食べていると代謝以上に食べてしまい、結果として太ってしまいます。低用量ピル服用前と後では、必要な食事量は変わりません。そのため、自分の身体に合った量の食事を心がけましょう。食事のカロリー計算をして、自分に必要なカロリーはどれくらいなのかを確認するのも対策になります。女性のホルモンバランスは食欲の増減を左右するということを頭に入れておくと、食欲が増えた場合でも「今はそういう時期なんだ」と思えるのでセーブできます。
適度な運動をする
むくみが出る場合は、適度な運動を心がけましょう。難しい場合はストレッチなどで身体をほぐすのも効果的です。元々むくみは身体の中に過剰な水分が溜まることで発生します。適度な運動をして代謝を活性させると、血流が促進され余計な水分も流れやすくなります。食欲増進したと思う場合も適度な運動が効果的です。ただし、服用初期のだるさなどの症状が出ている場合は、無理をしない程度で構いません。あくまで自分の身体や体調に合う範囲で運動をしたり身体をほぐしたりしてください。湯船に浸かって身体を温めるのも効果的です。また、低用量ピルの副作用でむくみが出る場合は着圧ソックスなどの着用を避けるようにしましょう。血流がかえって悪くなり、むくみが取れにくくなる可能性があります。
ピルの種類を変える
どうしてもむくみなどの症状がひどい場合は、ピルの種類を変えることを検討しましょう。低用量ピルには様々な種類があります。どれも含有成分が違い、働きかけるホルモンの動きも違います。どの低用量ピルが合うかは個人差があるので、もし合わないなと思ったら遠慮せずに担当医に相談してください。
太りにくい低用量ピルの種類
低用量ピルを飲んで太るのが怖い場合、太りにくいといわれている低用量ピルを服用するのがおすすめです。ここでは、比較的太りにくいとされている低用量ピルについてご紹介します。
エストロゲン含有量が少ないピルを選ぶ
まず、太りにくい低用量ピルの特徴として「エストロゲンの含有量が少ない」ことが挙げられます。元々、ピルの中でも低用量ピルはエストロゲンが少ないです。しかし、さらにエストロゲンの含有量が少ない「超低用量ピル」というものもあります。超低用量ピルは、低用量ピルよりもさらに副作用が出にくいピルです。また、避妊効果はありません。中でもエストロゲン含有量が少ないのが「ルナベルULD」です。月経困難症改善目的で服用されています。副作用が出にくいとはいえ、服用初期の副作用が出る可能性はありますが、低用量ピルやその他のピルよりも症状が軽いため、低用量ピルで副作用が強かった方にも処方されます。
太りにくいといわれる低用量ピルでも効果は同じ
エストロゲン含有量が少ない超低用量ピルは、月経困難症などの月経随伴症状に対して効果があります。そのため、副作用が怖い方や低用量ピルが合わなかった方に処方されます。ただし、避妊効果はないため避妊目的での服用はできません。
低用量ピルで太るに関するよくあるQ&A
ここでは、低容量ピルを服用すると太ると懸念される方からよく寄せられる質問についてお答えします。太るのではないかと考えている方は参考にしてください。
低用量ピルを飲み続けていると痩せにくくなりますか?
必ず痩せにくくなるわけではありません。あくまで低用量ピルとの相性は個人差があります。食欲不振が改善されたことによる相対的な食欲増加で太ってしまったり、服用初期の副作用でむくんでしまうことはあります。しかし、これらの副作用は数ヶ月で解消されるため、まずは飲み続けてみましょう。月経周期が安定し、月経随伴症状が改善傾向にあれば自然と食欲増進やむくみも収まるはずです。それでも解消されず、気になる方は担当医にご相談ください。ピルの種類を変更してもらえます。
どの程度体重が増えますか?
低用量ピルの服用によって体重が増えた方には個人差があります。見た目でわかるほど増えたという方から、多少の増加までまばらです。見た目でわかるほど増えるのはむくみの症状がひどい場合なので、体重自体は増えても1~2キロほどです。服用した方の発生頻度としては0.1~5%未満の方が体重増加の症状が見られています。つまり、ほとんどの方は体重増加の副作用が発生しません。
低用量ピルで痩せることもあると聞いたのですが
副次効果で痩せる場合もあります。これはPMSの症状が出ている方によくある症例です。PMSは多数の症状がみられますが、その中には食欲が過度に増加するという症状があります。また、特有のストレス症状によって暴飲暴食してしまう方もいます。低用量ピルの服用により、これらの症状が緩和されるのです。結果として食欲が収まり痩せるというケースもあります。つまり、低用量ピル自体の効果によって痩せるわけではなく、あくまでホルモンバランスが平常に戻ったことによって食欲が収まり結果として痩せたということです。また、PMSや月経随伴症状によって元々むくみなどが発生していた場合、これらの症状が軽減されたことによる体重減少が起きる可能性もあります。いずれにせよ、決して低用量ピルの服用自体に痩せる効果があるというわけではないということには注意しましょう。
編集部まとめ
月経随伴症状の改善や避妊を目的として服用される低用量ピルには、太るという噂があります。しかし、この噂はあくまで副作用的なものです。
実際に体重増加を感じる方は0.1~5%未満と、全体から見るとかなり少ないといえます。あまり警戒しすぎないほうが良いでしょう。
もしむくみや食欲増進などの症状が出た場合は、食べる量に気をつけ、適度な運動を心がけましょう。適切な生活習慣は、月経随伴症状の早期改善にも繋がります。
むくみや食欲増進などの副作用は服用初期のものです。もし3ヶ月以上経ってもこの症状が出る場合は、担当医と相談してピルの種類を変えることを検討してください。