「仰向け」「うつ伏せ」「横向き」どの姿勢で寝ると健康的?医師が徹底解説!

「仰向け」「うつ伏せ」「横向き」どの姿勢で寝ると健康的?メディカルドック監修医がそれぞれのメリットやデメリットなどを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「仰向け」のメリット

仰向けで寝ると、身体に均等な力がかかって背中や腰に負担がかかりにくくなります。また、顔が上に向いているため上から力がかからず、美容面でもメリットが期待できる姿勢です。
脊椎にかかる負担が少なくなる
仰向けの姿勢では、背骨の自然なカーブを保ちやすくなり、負担が軽減されます。仰向けの姿勢は体重が背中全体に均等に分散され、背中の特定の部位に圧力が集中するのを防げるためです。
脊椎が理想的な位置になるようにサポートされ、腰痛や首の痛みを予防する効果が期待できるでしょう。
顔や肌が圧迫されない
仰向けで寝ると、顔が枕や寝具に直接触れる時間が短く、力がかかりにくくなります。うつ伏せや横向きで寝ると、皮膚が圧迫されて力がかかり、しわの発生などにつながることが報告されています。
また、顔のむくみを防ぐ可能性があり、美容面のメリットもあるのです。
乳幼児突然死症候群の予防
仰向けの姿勢で寝かせることは、乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防法として推奨されています。うつ伏せに寝ると顔面がベッドに埋もれやすく、窒息による酸素不足や吐き出した二酸化炭素を吸い込んで蓄積が起きやすくなり、SIDSの発生率が上昇すると考えられているためです。
「仰向け」のデメリット

仰向けでは、呼吸器に関連する症状や胃酸の逆流などのリスクが高くなることが知られています。妊娠後期の女性にも向いていません。
睡眠時無呼吸症候群やいびきのリスクが高まる
仰向けで寝ると、閉塞性睡眠時無呼吸症候群やいびきのリスクが高くなることが分かっています。これは、舌や軟口蓋が重力で喉の奥にずれて気道が狭くなってしまうためです。
特に肥満傾向の方や扁桃腺が大きい方は、仰向けで寝ることによって呼吸障害が悪化しやすくなります。
逆流性食道炎の症状を悪化させる可能性がある
仰向けで寝ると、胃酸が食道に逆流しやすくなり、逆流性食道炎の症状を悪化させる可能性があります。
仰向けの姿勢では重力が胃酸の逆流を防ぐ働きをせず、食道への刺激が増加するためです。
特に、就寝前に食事をする習慣がある方や、もともと逆流性食道炎の症状がある方は注意しましょう。
妊娠後期の女性には適さない
妊娠20週以降の中期から後期にかけて、仰向けで寝ると拡大した子宮が下大静脈を圧迫し、母体への血流が減少する可能性が指摘されています。
血流が減少するとめまい、吐き気、血圧低下などの症状が現れることがあり、胎児への酸素供給にも影響を及ぼす可能性があるため避けましょう。
妊娠後期の女性は左側臥位(左向きで寝ること)のシムス体位が推奨されています。
「うつ伏せ」のメリット

うつ伏せには、気道が確保されやすくなる、お腹が圧迫されて自律神経や血流に変化が現れる、といったメリットがあります。
気道が確保されやすい
うつ伏せで寝ると、気道が物理的に開きやすくなります。舌や軟口蓋が重力で前方に落ち、気道の閉塞が起こりにくくなるためです。
軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群の方に対し、うつ伏せ寝の効果を調べた研究があります。その結果、睡眠中の血液中の酸素濃度が増加し、睡眠時無呼吸症候群の症状を軽減する可能性が示されました。ただし、全ての方に推奨されるわけではありません。
腸の蠕動運動を刺激する可能性
65歳以上を対象とした研究では、うつ伏せで寝ると、腹部への適度な圧力が自律神経の反射や血流の変化を起こし、腸の蠕動運動を刺激して消化を促進する効果があることが示唆されています。
ただし、これらは限定的な条件下での観察結果であり、高齢者にうつ伏せ寝を積極的に推奨する根拠は十分ではありません。また、高齢者では呼吸機能の低下や胃酸逆流のリスクが高まる可能性があるため、長時間の睡眠姿勢としては注意が必要です。
また、食後すぐにうつ伏せになると逆に胃酸の逆流を引き起こす可能性があるため、食事との時間間隔には注意が必要です。
生後1ヵ月以内の早産児の呼吸を安定させる
早産で生まれ、生後1ヵ月に満たない赤ちゃんは、呼吸状態を安定させるためにうつ伏せで寝かせる・授乳することを推奨される場合があります。しかし、一般的には、乳幼児突然死症候群の予防のために仰向けで寝かせることが推奨されています。
医療スタッフから特別に指示があった場合のみ、行うようにしましょう。
「うつ伏せ」のデメリット

うつ伏せでは、首や背中にかかる負担が大きくなるのに加え、呼吸がしにくくなることが指摘されています。
首や頸椎への負担が大きい
うつ伏せで寝ると、首や頸椎に負担がかかります。うつ伏せの姿勢は呼吸をするために顔を横に向けなければならず、頸椎が長時間ねじれた状態になるためです。
この姿勢が頸椎の自然なカーブを損ない、頸椎症や頸部痛の原因となることが指摘されています。また、長期的にうつ伏せ寝を続けて頸を痛めると、頸椎椎間板ヘルニアや神経根症のリスクが高まる可能性があります。
顔面や顎関節が圧迫される
うつ伏せで寝ると、顔面が枕に長時間押し付けられるため、顔の骨格や顎関節に不自然な圧力がかかります。顔に力がかかることで、うつ伏せ寝が顎関節症の原因の1つになる可能性が指摘されているのです。また、顔への圧迫によって皮膚のシワやたるみが形成されやすくなる、といった美容面でのデメリットもあります。
呼吸が制限される
うつ伏せで寝ると、自分の体の重さで胸郭(肋骨、胸骨、胸椎)が圧迫され、深い呼吸が制限される可能性があります。
特に肥満傾向のある方や高齢者では呼吸機能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
「横向き」のメリット

横向きで寝ると、気道が確保されやすく呼吸が安定しやすいと言われています。また、腕や手の痺れも少なく胃液も逆流しにくいなど、さまざまなメリットがある姿勢です。
睡眠時無呼吸症候群やいびきの改善
横向きで寝ると、睡眠時無呼吸症候群やいびきの改善に効果があります。
実際に閉塞性睡眠時無呼吸症候群が改善することが示されました。
仰向けで寝ると無呼吸になりやすく、横向きに寝ると無呼吸が軽減または消失することがあると知られており、体位性睡眠時無呼吸と呼ばれています。
神経への圧迫が少ない
横向きで寝ると腕や手への圧迫を避けられ、睡眠中にかかる神経への負担が少なくなります。寝て起きたら腕が痺れていた、という経験はないでしょうか。横向きやうつ伏せで寝る習慣がある人は、人間工学では神経の圧迫によるしびれや痛みが起こる可能性も示されています。
逆流性食道炎の症状軽減
横向きに寝ることで、胃の解剖学的構造により胃酸の逆流が起こりにくくなり、逆流性食道炎の症状が緩和されることが報告されています。
どちらかというと、右側よりも左側を下にした場合に症状が軽減されます。相対的に食道が胃よりも上になるため、胃の内容物が食道に逆流する可能性が低くなるためです。
妊娠中の血流改善
左側を下にした横向きで寝る姿勢は、妊娠中の方に推奨される姿勢です。「シムス体位」と呼ばれることもあります。
左側臥位によって子宮から下大静脈への圧迫が軽減され、母体と胎児への血流が改善されるためです。
脳の老廃物排出(グリンファティックシステム)が促進される可能性あり
横向きで寝ると、グリンファティックシステム(脳の老廃物排出システム)が効率的に働くことが示されている研究もあります。グリンファティックシステムとは、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβなどの老廃物を脳から除去するシステムのことです。
横向きで寝ることで脳脊髄液から老廃物を除去する効率が良くなった場合、認知症予防にもつながる可能性が期待されています。ただし、ヒトでの明確な結論はまだ十分ではないため、今後のさらなる研究が望まれるところです。
「横向き」のデメリット

一方、横向きで寝るデメリットも存在します。特に、特定の方向を向いて寝る癖がある方は注意しましょう。
肩の痛みが起きやすい
横向きで寝ると肩の痛みが起こりやすい点が挙げられます。
これは、体重が肩に集中して圧迫を強め、痛みを悪化させる悪循環を生むためです。一般的に、肩に負担がかかる姿勢を続けると炎症や関節痛が起きやすくなります。
体のバランスが悪くなる
一方向のみの横向きを続けると、体の左右バランスが崩れ、骨盤や椎間板に負担をかける可能性があります。
偏った向きの横向きで寝る姿勢は、筋骨格系が左右非対称性になることが示されています。
マットレスやまくらなどの寝具も利用して、身体にかかる力を分散させましょう。
顔の片側への圧迫によるシワやたるみが起きやすい
うつ伏せ寝と同じく、横向きで寝ると、片側の顔面が枕に長時間押し付けられるため、顔の骨格や顎関節に不自然な圧力が[YS1] かかって顎関節症の原因の1つになる可能性が指摘されています。
また、顔への圧迫によって皮膚のシワやたるみが形成されやすくなる、といった美容面でのデメリットもあります。
医学的に「仰向け」「うつ伏せ」「横向き」どの姿勢で寝ると健康的?

寝る時の最適な姿勢は、1人1人異なります。
睡眠時無呼吸症候群やいびき、逆流性食道炎などの症状がある方は、左側を下にした横向きの姿勢で寝ると良いでしょう。最近は、認知症予防にも良い影響があるのではないかと言われている姿勢です。
仰向けは脊椎への負担が少なく、神経圧迫や顔への圧迫が少ない姿勢です。腰や肩の痛みが生じにくいほか、美容面を気にかけたい方には適しています。
ただし、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクがある方は避けたほうがいいでしょう。
うつ伏せは、基本的に推奨されない場合が多いでしょう。しかし、重度のいびきがある場合などの特別な条件があれば、気道を確保するために有効な場合があります。
ただし、首や顎への負担が大きいことには変わりません。長期的には避けるべき姿勢です。
このように、条件に合わせた理想的な姿勢はあるものの、よく眠れる姿勢には個人差があります。さらに、身体は寝ている間も無意識に動いてしまうものです。
自分に合った姿勢を見つけ、枕やマットレスなど寝具も利用してよい姿勢で寝られるように心がけましょう。
「仰向け・うつ伏せ・横向き」についてよくある質問

ここまで仰向け・うつ伏せ・横向きについて紹介しました。ここでは「仰向け・うつ伏せ・横向き」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
横向きの場合、右向きと左向きどちらの方が健康的なのでしょうか?
木村 香菜(医師)
状況によって人それぞれ異なります。ご自身の状態に合わせた向きで寝ることをおすすめします。横向きに寝る場合、左向きが健康に関わるメリットが多いとされています。
左側を下にして寝ると胃酸の逆流を防ぎ、逆流性食道炎の症状を軽減できます。
さらに、左向きで寝ると脳の老廃物を排出する機能が最も効率的に働くことが判明していて、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの除去にも効果的です。妊婦さんにも、血流改善のため左向き寝(シムス体位)が推奨されています。
一方、右向きで寝ると消化を促進する効果があります。食べ過ぎた後に横になるなら右向きがおすすめです。ただし、左向きに比べて胃酸が逆流しやすくなるため、胸やけがある方は避けた方がよいでしょう。
まとめ
仰向け・うつ伏せ・横向き、それぞれの姿勢で寝る場合のメリットやデメリットを紹介しました。人によって身体の状態が異なるため「ベストな向きはこれ!」と決めるのは難しいでしょう。また、寝ている間に無意識に身体が動くため、常に一定の向きを保つのは難しいかもしれません。
本記事でご自身の体の状態に向いている姿勢を知り、寝具なども利用して向いている姿勢をとるように心がけてみてください。
「仰向け・うつ伏せ・横向き」と関連する病気
「仰向け・うつ伏せ・横向き」と関連する病気は12個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
消化器系の病気
- 逆流性食道炎
- 機能性ディスペプシア
- 胃もたれ
小児科の病気
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)
寝る時の姿勢は、身体にさまざまな影響を与えます。
「仰向け・うつ伏せ・横向き」と関連する症状
「仰向け・うつ伏せ・横向き」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- いびき
- 睡眠時の無呼吸
- 首や背中、肩の痛み
- 手足の痺れ
- 胸やけ
思い当たる症状があれば、寝る時にどんな姿勢をとっているか思い出してみてください。寝る時の姿勢が原因の1つになっている可能性があります。
参考文献
- 立位・座位・仰臥位における腰椎・骨盤矢状面アライメント
- Relationship Between Sleep Posture and Low Back Pain: A Systematic Review
- Sleep Wrinkles: Facial Aging and Facial Distortion During Sleep
- SIDS Sudden Infant and Early Childhood Death: Chapter 10 Risk Factors and Theories
- Positional obstructive sleep apnea and cardiovascular outcomes
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
- Associations Between Sleep Position and Nocturnal Gastroesophageal Reflux
- 日本消化器病学会 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2021(改訂第 3 版)
- Aortocaval Compression Syndrome
- Effect of prone positioning in mild to moderate obstructive sleep apnea syndrome
- Relativity of postural change into prone position and effect of bowel intestinal peristalsis activation for elderly people
- Prone versus supine sleep position: a review of the physiological studies in SIDS research
- Examining relationships between sleep posture, waking spinal symptoms and quality of sleep
- 日本整形外科学会 一般の方へ 頚椎椎間板ヘルニア
- ペインクリニック治療指針改訂第6版
- Are temporomandibular disorders associated with habitual sleeping body posture or nasal septal deviation?
- The effect of the prone position on pulmonary mechanics is frame-dependent
- 体位の違いが咳嗽・呼吸機能に与える影響
- Positional therapy for obstructive sleep apnoea
- Lateral sleeping position reduces severity of central sleep apnea / Cheyne-Stokes respiration
- Preferences in Sleep Position Correlate With Nighttime Paresthesias in Healthy People Without Carpal Tunnel Syndrome
- Left lateral decubitus sleeping position is associated with improved gastroesophageal reflux disease symptoms
- Maternal sleep position: what do we know where do we go?
- The Sleeping Brain: Harnessing the Power of the Glymphatic System through Lifestyle Choices
- Association between the side of unilateral shoulder pain and preferred sleeping position
- Spine alignment in men during lateral sleep position: experimental study and modeling
