「イヤーワーム(言葉やメロディが頭から離れない現象)」はなぜ起きる?【医師解説】

イヤーワームとは?メディカルドック監修医がイヤーワームを引き起こす原因・ひどくなる原因・なりやすい人の特徴・なりやすい曲・ADHDとの関連性や対処法などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
イヤーワーム(ディラン効果)とは?

イヤーワームとは、ある音楽やメロディーの一部分が、本人の意思とは関係なく頭の中で何度も思い浮かぶ状態のことをいいます。日常生活の中でふとした瞬間に思い出し、意識していないにもかかわらず同じフレーズが流れ続ける経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
この現象は英語では「Earworm」と呼ばれ、心理学や認知科学の分野でも広く知られています。ボブ・ディランの曲で起こりやすいという説から「ディラン効果」と表現されることもありますが、正式な医学用語ではなく、学問的に定義された概念ではありません。
イヤーワームは多くの場合、健康な人にも起こるごく一般的な心の働きの一つとみられています。
イヤーワームを引き起こす原因

イヤーワームは偶然起こるように感じられますが、背景には脳の記憶や注意の仕組みが関係しています。ここでは考えられている主な原因を解説します。
記憶や脳の情報処理の仕組み
イヤーワームの背景には、脳の記憶や情報処理の仕組みの関与が示唆されています。音楽は言葉と同様に記憶に残りやすく、特に短いフレーズや繰り返しの多いメロディーは、脳内で自動的に再生されやすい特徴があります。
感情や状況との結びつき
感情が動いた場面と結びついて聴いた音楽は、後から想起されやすいとみられます。似た状況や感情の変化が引き金となり、イヤーワームが表面化するケースがみられます。
注意が分散している状態
作業の切れ目や何も考えていない時間帯など、注意が散漫になっている状態では、イヤーワームが生じやすいとみられています。集中力がやや低下している状態では、外部からの刺激が少なくなり、脳内の記憶が表に出やすくなるためです。
イヤーワームがひどくなってくる原因

イヤーワームは一過性であれば大きな問題になりにくいです。しかし、繰り返し起こったり長く続いたりする場合には以下のような原因の関与が示唆されます。
ストレスや疲労の影響
イヤーワームが長引いたり、頻繁に起こったりする背景には、ストレスや心身の疲労の関与が示唆されています。
睡眠不足や生活リズムの乱れ
睡眠不足や不規則な生活が続くと、脳の回復や整理の機能が十分に働かなくなります。その結果、日中に取り込んだ情報が整理されにくくなり、イヤーワームの発生に影響するとみられます。
気にしすぎることによる悪循環
「止めたいのに止まらない」と意識しすぎるほど、脳がその情報に注目してしまい、結果としてイヤーワームが長引くことがあります。
イヤーワームになりやすい人の特徴

イヤーワームは誰にでも起こりますが、体質や性格、生活習慣によって起こりやすさには差があります。
音楽に親しむ機会が多い人
日常的に音楽を聴く習慣がある人や、演奏・歌唱などに親しんでいる人は、音楽の記憶が豊富なためイヤーワームを経験しやすくなります。
真面目で考え込みやすい性格
一つのことを深く考えがちな人や、集中力が高い人は、頭の中で同じ情報を反復しやすい場合があります。
ストレスを感じやすい生活習慣
日常的に忙しく、精神的な余裕が少ないと、イヤーワームの症状が出やすくなるとみられています。
イヤーワームになりやすい曲の特徴

ここでは、イヤーワームを引き起こしやすいとされる曲の特徴について解説します。
テンポが早い曲
テンポが比較的速い楽曲では、イヤーワームが生じやすいことが指摘されています。テンポの早い音楽はリズムが明確で、身体の動きや感情と結びつきやすいため、脳内で自然と再生されやすくなります。
また、一定のテンポで繰り返されるフレーズは記憶に残りやすく、意識していない場面でも思い出されやすいとみられます。
メロディーは一般的で覚えやすい
複雑すぎず、親しみやすいメロディーが使われていることもイヤーワームの要因となります。音域が過度に広くなく、同じフレーズが繰り返される構成の曲は、脳に取り込まれやすく、記憶に残りやすい特徴があります。
このような「覚えやすさ」は、必ずしも質の低い音楽という意味ではなく、むしろ多くの人に受け入れられやすい特徴ともいえます。
予想外の音程が入っている
一方で、曲の中にわずかな意外性が含まれていることも、イヤーワームを引き起こす要因の一つとされています。全体としては親しみやすいメロディーでありながら、部分的に予想外の音程やリズムの変化があると、脳がその部分を強く記憶しやすくなります。
この「予想と違う部分」が、曲の一部分だけが繰り返し頭に浮かぶ原因なりえます。
イヤーワームとADHDに関連性はあるの?

イヤーワームが頻繁に起こることで、「発達障害や精神疾患と関係があるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。ここでは、ADHDやその他の疾患との関連性について、現時点での考え方を整理します。
ADHD(注意欠如・多動症)とイヤーワームの関係については、現時点では明確な医学的関連性は示されていません。
一方で、強迫性障害(OCD)の方では、「頭の中で音楽が繰り返し流れ続ける」「意図せず同じメロディーが止まらない」といった症状が、強迫観念の一つとして現れることがあると報告されています。このような状態は「stuck song syndrome(音楽強迫)」と呼ばれることもあり、一般的なイヤーワームとは区別されます。
重要なのは、イヤーワームがあるからといって、ADHDやOCDなどの病気があると決めつける必要はないという点です。多くの場合、イヤーワームは健康な人にも起こる一時的な現象です。ただし、音楽の反復が強い苦痛を伴い、日常生活に支障をきたす場合には、心療内科や精神科での相談が勧められます。
イヤーワームの対処法

多くの場合、イヤーワームは自然におさまりますが、気になるときにはいくつか試せる対処法があります。
別の刺激に意識を向ける
イヤーワームが気になるときは、別の作業や刺激に意識を向けることが有効な場合があります。軽い運動や会話、読書などで注意を分散させることで、自然に収まるケースもあります。
曲を最後まで聴く
途中までしか聴いていない曲が頭に残っている場合は、あえて最後まで聴いてみることで、脳の中の「未完了感」が解消されるかもしれません。
生活リズムを整える
脳の疲労を軽減するため、十分な睡眠を確保し、規則正しい生活を心がけることも大切です。
リラックスを意識する
ストレスが強いときには、深呼吸や軽いストレッチなどで心身を落ち着かせることが役立ちます。無理に止めようとせず、「そのうち消える」と受け流す姿勢も重要です。
日常生活に支障がある場合は相談を
イヤーワームが強く、睡眠や仕事に支障をきたす場合には、心療内科や精神科で相談することも一つの選択肢です。
「イヤーワーム」についてよくある質問

ここまでイヤーワームについて紹介しました。ここでは「イヤーワーム」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
イヤーワームは病気なのでしょうか?
木村 香菜(医師)
イヤーワーム自体は多くの場合、病気ではありません。健康な人にも起こる一般的な現象であり、自然に消えることがほとんどです。ただし、強い苦痛を伴う場合には専門家に相談すると安心です。
ストレスが溜まっているとイヤーワームを発症しやすいのでしょうか?
木村 香菜(医師)
ストレスが直接の原因とは限りませんが、ストレスや疲労が強い状態ではイヤーワームが起こりやすくなる場合があります。心身のケアが大切です。
まとめ
イヤーワームは、誰にでも起こりうる身近な心の現象です。多くの場合は一時的なもので、過度に心配する必要はありません。
生活リズムを整え、ストレスを溜め込まないことが予防や対処につながると考えられます。気になる症状が長く続く場合には、無理をせず、心療内科や精神科の専門医に相談することも検討しましょう。
「イヤーワーム」と関連する病気
「イヤーワーム」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
精神・神経系の病気
- 強迫性障害(OCD)
- 不安障害
- うつ病
- 注意欠如・多動症(ADHD)
イヤーワームがあるからといって、これらの病気があると判断されるわけではありません。日常生活への支障が大きい場合に、専門的な評価が検討されます。
「イヤーワーム」と関連する症状
「イヤーワーム」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 集中力が続かない
- 頭が休まらない感覚
- 考えが止まらない
これらの症状では、脳内の情報整理がうまく進まず、同じ思考やイメージが反復される感覚が強まる場合があります。その結果として、音楽のフレーズが意識に残りやすくなることがあります。
参考文献
- Euser AM, Oosterhoff M, van Balkom I. Stuck song syndrome: musical obsessions - when to look for OCD. Br J Gen Pract. 2016
- Song Stuck In Head A Sign of ADHD? Let’s Get the Facts Straight! - The Minds Journal
- ADHD(注意欠如・多動症) | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
- 音楽幻聴(楽音性耳鳴)に関する臨床的検討. Audiology Japan. 2019
- Psychologists identify key characteristics of earworms-American Psychological Association




