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「褥瘡 (じょくそう)」の治療法・予防法はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2023/08/28
「褥瘡 (じょくそう)」の治療法・予防法はご存知ですか?【医師監修】

一般的には「床ずれ」として知られる褥瘡は、寝たきりの人に発生する症状です。

正しく予防していないと数時間で発症する場合もあり、重症化すると命の危険に発展することもあるでしょう。寝たきりの人を介護する人は、とくに褥瘡について知っておく必要があります。

本記事では、褥瘡がどのような原因で発生するのかご紹介するほか、治療・予防方法についても詳しく解説します。

褥瘡についての知識を身に付けて、介護にお役立てください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

褥瘡 (じょくそう)の原因や症状

ベッド

褥瘡とはどのような病気ですか?

褥瘡とは、一般的には「床ずれ」として知られ、皮膚が壊死して障害を起こした状態です。体の一部が圧迫されるために血流が悪くなって発生します。褥瘡はほとんどの場合、寝たきりの人に起こりますが、認知症や体の麻痺がある人に発症するケースもあります。
多くの場合は、皮膚が赤くなったり、ただれたりする程度です。重症になると、筋肉や骨に及んだり、命を脅かしたりするケースもあるでしょう。

褥瘡の発生原因を教えてください。

褥瘡の発生原因は、皮膚の同じ部位を圧迫する状態が続くことです。圧迫される部位の血流が悪くなると、血液によって運ばれる栄養・酸素が皮膚に届かなくなります。その結果、皮膚が壊死して、褥瘡の症状が発生するケースがあるでしょう。
通常の健康な人の場合、無意識のうちに寝返りを打ったり、姿勢を変えたりして同じ部位に力がかからないようにしています。ところが、病気などにより寝たきりになって自分で体位を変えられない人は、同じ部位に圧力がかかってしまい褥瘡になります。

褥瘡が発生しやすい部位はどこですか?

褥瘡が発生しやすいのは、体から骨が突き出ている部位です。そのような部位は体重によって強く圧迫されるため、褥瘡が発生しやすくなります。具体的には次のような部位で褥瘡は発生しやすいです。

  • 後頭部(頭の後ろ)
  • 仙骨部(お尻と腰の間)
  • 肩甲骨(背中)
  • 座骨部(お尻)
  • 大転子部(足と腰の付け根)
  • 踵骨部(かかと)
  • その他(耳・くるぶし・ひざなど)

寝ているとき・起きているときの体の向きや姿勢により褥瘡ができやすい部分は変わってきます。褥瘡ができやすい部位が分かっていれば予防もしやすくなります。しっかり把握して予防に役立ててください。

症状について教えてください。

褥瘡の初期症状としては、肌の赤み(発赤)があります。発赤は一時的な場合と、持続する場合があります。発赤が出ている部分を3秒間指で押してみて、押した部分が白く変化すれば一時的なものです。一時的な場合は問題ありませんが、持続的なものは褥瘡に発展します。
さらに症状が進行すると、水ぶくれが発生するでしょう。そして皮膚が破れてただれるようになり、ただれた個所から液がにじみ出たり、うみが出て潰瘍になったりします。最終的には傷口が深くなったり、広がったりして骨が見えるようになる場合もあるでしょう。
そうした部位から細菌が入って感染症を合併すると、最悪のケースでは死に至る場合もあります。そのため、予防や早期の治療が大切です。とくに最初の段階の発赤を見つけたら、注意して観察するようにしましょう。

褥瘡ができやすいのはどのような人ですか?

褥瘡ができやすいのは次のような人です。

  • 健康や栄養状態が悪い人
  • 皮膚が薄く弱い人
  • やせて骨が出ている人
  • 長期間寝たきりの人
  • オムツを使用している人

とくに高齢者の場合、皮膚の弾力性が低下しているため、圧迫やずれなどの刺激に弱い状態になっています。また、褥瘡は血液内の栄養や酸素が皮膚に行き渡らずに発生するため、栄養が不足している人もなりやすいでしょう。
ほかにも、失禁などにより皮膚がふやけた状態になっていると、摩擦が起きやすくなり褥瘡につながるケースもあります。また、抗がん剤やステロイドなど薬の副作用により免疫力が低下している人なども注意が必要です。

褥瘡 (じょくそう)の受診や治療

医師

褥瘡ができたら何科を受診すればよいですか?

もし褥瘡の可能性がある場合、内科や皮膚科を受診しましょう。褥瘡の症状が重い場合は皮膚の深い部分まで損傷し、専門的な傷の管理が必要になるケースも多いです。
そのため、形成外科を受診するのがおすすめです。かかりつけの医師や訪問看護師がいる場合は、最初に相談してみることもできるでしょう。

治療法を教えてください。

治療方法は、褥瘡が軽症の場合と重症の場合で異なります。軽症の場合は皮膚を洗浄し軟膏を塗り、皮膚の再生を促します。2、3時間おきに何度か体位を変えて、患部に圧力がかからないように注意しましょう。重症で組織が壊死している場合は、外科的手術で壊死した部分を除去する処置が行われます。
また、褥瘡の部位がうんでいるなど感染が考えられるケースでは、抗生剤投与も行われるでしょう。その後、患部を清潔にし皮膚の再生をケアします。もし、ケアしても回復が期待できない場合は、体のほかの部位の皮膚を移植する手術を行うケースもあります。

褥瘡 (じょくそう)の予防やセルフケア

介護

褥瘡を予防する方法を教えてください。

褥瘡のできやすい部位を意識して、体の同じ部分に長時間圧力がかからないようにしましょう。定期的に体の向きや姿勢を変えるようにします。エアマットレスやクッションのような体圧分散用具を使用して骨への圧力を軽減するのもおすすめです。エアマットレスやウォーターマットレスは介護保険でレンタル可能ですので、医師・看護師・ケアマネージャーなどに相談してみましょう。
また、皮膚が乾燥していると傷付きやすくなるため、保湿クリームやローションなどを使用して皮膚を潤った状態に保ちましょう。寝たきりなどで尿・便・汗などが皮膚に付着した状態が続くと、皮膚にとって刺激になります。丁寧に拭き取って体の清潔を維持するようにしましょう。
ほかには、毎日の観察を欠かさないようにし、皮膚が赤くなっている部分はないかを確認するのも重要です。異常を感じた場合はすぐにかかりつけ医や訪問看護師に相談しましょう。

自宅でできるセルフケアを教えてください。

褥瘡にならないようにするためのセルフケアとしては、栄養状態を改善できるでしょう。栄養が足りていないと褥瘡になりやすいからです。また、褥瘡になった場合でも回復が遅くなります。
できるだけ食べやすい食事を用意したり、お口の清潔を保つようにしたりして、食事量を増やすようにしましょう。食事量を増やすのが難しい場合は栄養補助食品などを活用する方法もあります。飲み込んだり、食べられなかったりする人の場合は食事の形態を変えてみてもよいでしょう。
ほかには、血行を良くするために体を拭く際にマッサージを行うのもよい方法です。ただし、骨が突出している部分のマッサージは逆効果になる場合があるため、避けるようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

褥瘡は介護をする人の温かいケアにより予防できます。本記事でご紹介した予防方法やセルフケアを参考に予防策をとることをおすすめします。また、異常がないか毎日観察するのも重要です。褥瘡が発生しそうな状況を早めに発見すれば適切な予防策を講じられるでしょう。
また、異変がある場合はすぐに医師や訪問看護師などに相談するのも重症化を防ぐうえで欠かせません。褥瘡予防は大切だと分かっていても、介護する側にとっては大きな負担になる場合もあります。訪問介護や入所施設などのサービスを活用して、少しでも負担を軽減するようにしましょう。

編集部まとめ

介護士
本記事では、褥瘡 (じょくそう)の発生原因・治療・予防について解説してきました。

褥瘡は、とくに寝たきりの人が体の同じ部位に圧力がかかることによって血流が滞って発生する症状です。皮膚が赤くなったり、ただれたりする場合があります。

また、重症になると筋肉や骨まで達し、感染症によって命に危険が及ぶ場合もあります。そのため、予防が重要になる病気です。

体位を定期的に変えて同じ部位に圧力がかからないようにしたり、体を清潔な状態に保ったりすることが重要です。異変がある場合はすぐに診察を受けましょう。

この記事の監修医師