「血圧」がどれくらい高くなると「大動脈解離」を発症しやすくなる?医師が解説!

大動脈解離と血圧の関係性とは?Medical DOC監修医がどれくらい血圧が高いと発症しやすくなるのか・低くても発症することはあるのか・予防法などを解説します。

監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
「大動脈解離」とは?
大動脈解離は、心臓から全身に血液を運ぶ体内で最も太い血管である大動脈の壁が裂けてしまう病気です。大動脈の壁は、内側の膜、真ん中の膜、外側の膜の3層構造になっています。何らかの原因で真ん中の層が、血管が走る方向に沿って裂けることで、本来の血液の通り道(真腔)とは別に、新しくできた通り道(偽腔)に血液が流れ込みます。
これにより、大動脈の中に二つの通り道ができてしまう状態になります。
この病気は突然、胸や背中に引き裂かれるような激しい痛みとともに起こることが多く、突然死の原因となることもある危険な病気です。
血圧がどれくらい高くなると大動脈解離を発症しやすくなる?
大動脈解離を発症した患者さんのうち、およそ8割が高血圧(血圧が高い状態)を合併していることが知られています。
特に危険性が高いとされる血圧の目安として以下のようなものがあります。
• 解離を発症した患者さんの約半数は、発症前に上の血圧(収縮期血圧)が180 mmHg以上を記録していました。
• 血圧が異常に高くなること(多くは180/120 mmHg以上)は、脳や心臓などの重要な臓器に急性の障害を引き起こす「高血圧緊急症」という、命に関わる状態の一つであり、急性大動脈解離もこれに該当します。
血管の健康を保つためには、普段から血圧を厳しく管理し(血圧130/80 mmHg未満を目標に)、血管への強い圧力を避けることが重要です。
血圧が高くなると大動脈解離を発症しやすくなる原因
高血圧は、大動脈解離を引き起こす要因として非常に重要です。主に以下の2つの段階で血管に負担をかけます。
血管の壁を弱らせる
長期間にわたり血圧が高い状態が続くと、血管の壁、特に真ん中の層(中膜)の組織が徐々に傷つき、弱くなっていきます
強い力で壁を裂く
弱くなった血管の壁に対し、高血圧によって「血行力学的な負荷」、つまり血液の流れが血管の壁を押しつけたり擦ったりする強い力(ずり応力や衝撃力)が繰り返し加わります。血圧が高いほど、この力が強くなり、血管の壁はその強い圧力に耐えきれず、大動脈の走行に沿って裂けてしまうのです。
血圧が低くても大動脈解離を発症することはある?
大動脈解離の根本的な原因は、血液を全身に送る最も太い血管(大動脈)の壁、特に真ん中の層の組織が弱くなることです。
通常、血圧が高いと血管の壁にかかる強い力(ストレス)が増すため、解離はより起こりやすくなりますが、血管の壁自体がすでに弱くなっている場合は、たとえ血圧が正常な範囲にあっても、その圧力に耐えきれずに裂けてしまうことがあります。
血管の壁が弱くなる背景には、高血圧や、生まれつきの体質(マルファン症候群などの遺伝性結合織疾患)、動脈硬化、加齢などの様々な要因が関係していると考えられています。
実際に、上の血圧が120~130 mmHg、下の血圧が80~90 mmHgという正常に近い血圧の状態で解離を発症した事例も報告されています。
大動脈解離を予防するには血圧の数値をどれくらいに保つべきか?
大動脈解離は、心臓から全身へ血液を送る最も太い血管(大動脈)の壁に、血圧による強い圧力がかかることで発症しやすくなります。このため、発症を防ぐには、血管への負担を最小限にする「厳格な血圧管理」が極めて重要です。
大動脈解離の予防策として、血圧は上の血圧(収縮期血圧)を130mmHg未満、下の血圧(拡張期血圧)を80mmHg未満に保つことが目標とされています。
この目標を達成し、血管の健康を守るためには、次のような取り組みも大切です。
• 日々の血圧測定:家庭で血圧を測り、自分の血圧の傾向や変動を把握する。
• 危険因子の管理:血圧だけでなく、喫煙、高脂血症(脂質異常症)、糖尿病といった、動脈硬化を進める他の危険因子も避ける。
• 生活習慣の改善:塩分を控える(1日6g未満)、適度な運動をする、禁煙するなどの生活習慣の改善を続ける。
大動脈解離の予防法
大動脈解離の予防において最も重要なことは、血管にかかる強い圧力(血圧)を下げて、大動脈の壁への負担を最小限に抑える「厳格な血圧管理」を行うことです。
具体的な血圧の目標は、上の血圧(収縮期血圧)を130mmHg未満、下の血圧(拡張期血圧)を80mmHg未満に保つことが望ましいとされています。
この血圧目標を達成し、再発や発症を防ぐためには、血圧を上げたり血管を傷つけたりする生活習慣上の危険因子を避けることが重要です。
日常生活では、特に次の点に注意を払いましょう。
禁煙する
喫煙は大動脈の壁の拡大や破裂の危険性を高める最も重要な要因です。受動喫煙も避けるべきです。
塩分を控える
食事の塩分摂取量を1日6g未満に抑えることが大切です。
血圧を急激に上げない
重量挙げのように息をこらえて力む動作(等張性運動)や、過度に力む排便(便秘)を避ける。熱いお湯(40度程度が推奨)への入浴や、急激な温度変化(寒い場所への移動など)を避ける。
他の病気の管理
高脂血症(脂質異常症)や糖尿病など、動脈硬化を進める他の病気の管理も重要です。
ストレス管理
十分な睡眠と休養をとり、ストレスを溜めないようにしましょう。
「大動脈解離と血圧」についてよくある質問
ここまで大動脈解離と血圧について紹介しました。ここでは「大動脈解離と血圧」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大動脈解離発症後は血圧の数値はどのように変化しますか?
小鷹 悠二 医師
大動脈解離では発症直後は心臓から血管にかかる圧力が非常に高くなるため、多くの場合で血圧が急激に上昇します。
特に、発症時には上の血圧(収縮期血圧)が180 mmHg以上になることもあり、これが血管の壁に大きな負担をかけます。
しかし、解離によって以下のような重篤な合併症を伴うと、状況は一変します。
• 大動脈の破裂:心臓の周りに出血が起こり、心臓が圧迫される(心タンポナーデ)。
• 心筋虚血:心臓に血液を送る血管の血流が障害される。
これらの場合、心臓のポンプ機能が低下し、血圧が急激に低下してショック状態に陥ることがあります。
発症後の血圧は、高くても低くても命に関わる極めて危険な状態です。そのため、緊急治療では、心臓への負担を減らし、さらなる解離の進行や破裂を防ぐために、薬を使って血圧を上の血圧で100〜120 mmHg程度にまで迅速にコントロールすることが最も重要とされます
大動脈解離による血圧の左右差はどれくらいで保った方がいいのでしょうか?
小鷹 悠二 医師
上の血圧(収縮期血圧)で10mmHg以上の大きな差がある場合は、異常なサインです。この大きな左右差は、腕へ血液を送る血管(鎖骨下動脈など)が動脈硬化などで狭くなっている、または大動脈解離などの特殊な病気が原因となっている可能性があるため、詳しい検査が必要です。
そのため、大動脈解離後の方で10mmHg以上の血圧の左右差が残っている場合には注意が必要なため、主治医によく相談する必要があります。
編集部まとめ
大動脈解離は、突然死の原因となることもある非常に危険な疾患です。
その予防、再発を防ぐためには血圧の管理が非常に重要ですので、内服薬などの降圧治療の継続、日常生活の改善などを意識する必要があります。
「大動脈解離」と関連する病気
「大動脈解離」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大動脈解離の発症を防ぐためには、上記のような生活習慣病を予防したり適切に管理することがことが重要です。
「大動脈解離」と関連する症状
「大動脈解離」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸痛
- 背中の痛み
- 失神
- 突然死
これまでに経験したことのないような上記の症状を認めた場合には大動脈解離の可能性が考えられます。早急に医療機関を受診しましょう。




