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糖尿病治療で“お薬を卒業”するには初期段階が大切「最初にしっかりと治療しておくこと」

 更新日:2023/03/27
糖尿病治療で“お薬を卒業”するには初期段階が大切「最初にしっかりと治療しておくこと」

糖尿病には体質が関係していて、「一度、診断が付いたら関わり続けていく病気」の1つです。ということは、血糖値を下げる投薬療法から卒業できないのでしょうか? インスリンの自己注射を打ち続けている人の話もよく耳にするところです。事の真偽を、「国分寺内科クリニック」の木村先生に聞きました。

木村武史

監修医師
木村 武史(国分寺内科クリニック 院長)

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北海道大学医学部医学科卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科での診療経験を元に、2020年、東京都国分寺市に「国分寺内科クリニック」開院。糖尿病患者会「国分寺糖尿病友の会」を設立するなど、地域医療に尽くしている。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定専門医、日本糖尿病協会認定療養指導医。

かつてと異なり、「見えてきた」糖尿病

かつてと異なり、「見えてきた」糖尿病

編集部編集部

糖尿病の投薬治療は、一度始めるとやめることができないのでしょうか?

木村武史木村先生

早期に適切な治療を行えば、薬を中止できることも多いですね。糖尿病には「薬を使い始めたら、薬を一生やめることができない」というイメージを持たれていることも多く、治療の敷居を高くしているようです。実際は、早期に治療を開始した方が、「薬を卒業できる可能性」は高いです。逆に治療開始が遅れると、本当に薬をやめられなくなってしまうこともあります。

編集部編集部

一般には、間違ったイメージが定着していますよね?

木村武史木村先生

糖尿病の実態について、わかっていないことが多かったことも原因になっているかもしれません。例えば、「食事を食べる順番を工夫するだけでも、血糖値コントロールの改善が望める」ということもわかってきました。同じ食事内容でも、野菜、タンパク質、炭水化物の順で食べるのが効果的とされています。朝、お腹が減っている時に、甘いカフェラテなどを飲んでしまいがちですよね。

編集部編集部

糖尿病の薬そのものについてはどうでしょう、進歩していますか?

木村武史木村先生

お薬も進歩しています。例えば、「食欲を抑える糖尿病のお薬」などですね。体重が増えてしまった人は、胃のサイズも大きくなっていて、なかなか満腹感が得られないために食べすぎてしまう傾向にあるようです。このとき、精神論だけでダイエットしようとしても限界があって、リバウンドしてしまいかねません。そこを、お薬で上手に治療していくことも可能になってきました。

医者に言われたからではなく、自分に必要なことだから

医者に言われたからではなく、自分に必要なことだから

編集部編集部

患者の努力次第なので、将来の予測が難しいという話も聞きます?

木村武史木村先生

かつては、患者さん側の精神論に頼る部分があったことは事実だと思います。しかし現在は、治療方法の選択肢も増えてきました。そのため適切な治療を選択することで、患者さんに無理を強いることなく、血糖値コントロールを改善できることも多くなってきていると思います。

編集部編集部

薬をやめることができたとしても、糖尿病治療は続くのですよね?

木村武史木村先生

はい。糖尿病は一生、付き合っていく必要がある病気です。そのため、何十年という長い期間を精神論だけで乗り切ることは困難でしょう。良い生活習慣を、自然に無意識のうちに継続できる状態が理想です。100点満点の生活を目指して無理をして頑張っても、続かなければ意味がありません。まずは大切なポイントをしっかりとおさえていくことが重要だと思います。

編集部編集部

その点は、新型コロナウイルスに対する手指衛生などでも学んできました。

木村武史木村先生

新型コロナウイルス感染症は、発生当時、多くの人にとって「よくわからない病気」でした。しかし、新型コロナウイルス感染症に対しても、重要なポイントを理解し、対策を行っていくことで、感染拡大をある程度抑えることができると思います。糖尿病に関しても、重要なポイントを理解していただくことで、病気に向き合いやすくなり、治療成績も上向くことが期待できると考えます。

編集部編集部

ただし、医師によっては、最新情報のアップデートができていないと?

木村武史木村先生

そういうこともあり得ると思います。一般的に内科は、薬の処方や注射といった「医師の技量が見えにくい治療方法」で進めます。わかりやすく言うとしたら「将棋」にたとえられるでしょうか。駒の動かし方さえ知っていれば、誰でも将棋を指す(プレイする)ことは可能です。糖尿病も同様で、治療や検査を行うだけであれば、ほとんどの医師ができることです。問題は、実際に改善させられるかどうかなんですよね。少なくとも一度は、日本糖尿病学会の糖尿病専門医にご相談することをお勧めします。

やっかいな「糖毒性」を逆手に取ることも可能

やっかいな「糖毒性」を逆手に取ることも可能

編集部編集部

一方で、糖尿病の治療に苦労している人もいるはずです。

木村武史木村先生

はい。じつは、高血糖自体が高血糖悪化の原因になりえます。血糖値が高くなってくると、同じ生活や同じ治療をしていても、血糖値の上昇を加速させてしまうのです。これは「糖毒性」と呼ばれています。この性質は火事や借金に似ていると思っています。マッチの火でも燃え広がれば大火事になります。借金がかさむと、最後にはいくら頑張っても返済できなくなってきますよね。

編集部編集部

つまり、一線を越えると、後戻りが効かない?

木村武史木村先生

必ずしもそうではありません。幸いなことに、糖毒性は解除することが可能です。血糖値が正常に近づいてくると、食事療法や薬物療法の効きが良くなります。ですから、糖尿病治療は初期段階が大切です。最初にしっかりと治療しておくと、その後の血糖値コントロールがしやすいというわけですね。お薬から卒業できる可能性も高まります。

編集部編集部

糖尿病治療のイメージが変わってきました。

木村武史木村先生

進行具合に関連して補足すると、「正常」と「糖尿病」の間に「境界型糖尿病」というゾーンがあります。ただし、境界型でも合併症は進行してしまうと言われています。境界型糖尿病の段階であっても、しっかりと血糖値コントロールを改善させておくことが重要です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

木村武史木村先生

健康診断で糖尿病を疑われた場合には、一度は日本糖尿病学会の糖尿病専門医を受診することをお勧めします。喉の渇き、頻尿、体重減少などがあれば、糖尿病の症状である可能性がありますので、早めに調べてみましょう。糖尿病は早期に適切な治療をすることが重要です。

編集部まとめ

どうやら、「薬をのみ続けないといけない」の「いけない」という発想そのものが、間違っていたようです。今の糖尿病治療は、無意識な自然体でも続けられる内容を目指しているということでした。きっと、「押しつけられる」ことへの抵抗感が、治療機会を遠ざけていたのでしょう。今では、「糖毒性」を逆手に取る進め方により、“より楽な治療”へ切り替えられるとのこと。つまり、「やらされている治療」から「生活の中に溶け込んでいる治療」への転換が、可能になりつつあるということです。

医院情報

国分寺内科クリニック

国分寺内科クリニック
所在地 〒185-0012 東京都国分寺市本町2丁目2-1 cocobunji EAST 2F
アクセス JR中央線、西武国分寺線・多摩湖線国分寺駅北口から徒歩1分
診療科目 内分泌内科、内科、糖尿病内科

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