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「解離性大動脈瘤」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

 更新日:2025/10/24
「解離性大動脈瘤」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

解離性大動脈瘤とは?Medical DOC監修医が解離性大動脈瘤の症状・原因・発症しやすい人の特徴・治療法・予防法などを解説します。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

「解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)」とは?

大動脈は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。そのため、内部から圧力がかかっても十分な強さがあります。しかし、何らかの原因で、内膜に裂け目ができ、中膜の中に血液が入り込んで大動脈が裂けることがあります。この状態が大動脈解離です。中膜に流れた血液は、新たな血液の流れを作り異常なスペースを作ります。これが原因で血管が膨張した状態を解離性大動脈瘤といいます。中膜の外側には外膜しかないため、さらに圧力がかかると破裂の危険があります。

「大動脈解離」と「解離性大動脈瘤」の違いとは?

「大動脈解離」とは、大動脈の内膜が裂けることによって血液が中膜に入りこむ状態をいいます。一方、「解離性大動脈瘤」は、解離によって流れ込んだ血液が貯まることで新たなスペースが形成され、血管が膨らんだ状態をいいます。そのため、解離性大動脈瘤は血管破裂の危険性があります。両者は密接に関連していますが、解離性大動脈瘤と大動脈解離との間にはこういった違いがあります。
解離性大動脈瘤は、大動脈解離の慢性期にみられる状態とされています。

解離性大動脈瘤の主な症状

解離性大動脈瘤は、大動脈解離のあとにゆっくりと瘤状に血管が広がる疾患のため、自覚症状がない場合が多いです。でも、以下に紹介する症状が出る場合もありますので、あてはまる場合は循環器内科を受診ください。

胸背部の鈍痛

胸背部に鈍い痛みが持続的にみられることがあります。これは、病変部の拡大によってできた瘤が脊椎や神経に圧力をかけているためです。

手足のしびれや冷感

瘤が大動脈の分枝部や末梢血管を圧迫すると、手足への血の流れが低下し、しびれや冷感が起きます。特に、下肢に起きると、歩行時の痛みや皮膚の色の変化などが出ることもあります。

呼吸困難

瘤が気管や気管支を圧迫すると空気の通り道が狭くなります。その結果、呼吸困難が起きることがあります。

解離性大動脈瘤の主な原因

解離性大動脈瘤は、大動脈解離の末期の状態ともいえます。そのため、大動脈解離の原因となるものがすなわち解離性大動脈瘤のリスクともなりえます。

高血圧

高血圧が長期間継続すると、血管の壁に負担がかかるため、内膜が傷つき固くなってきます。結果、血管のしなやかさが失われ、破れやすくなり、大動脈解離の原因となります。結果として、解離性大動脈瘤が起こりやすくなります。高血圧になっても、自覚症状が少ないため、病院受診をためらうケースが多いです。それを防ぐためには、自宅での血圧測定が重要です。血圧が高い場合は、内科や循環器科を受診しましょう。

動脈硬化

動脈硬化は、血管の内側の壁に脂質やカルシウムなどが沈着して硬くなり、弾力性が低下した状態です。
この動脈硬化性の病変が進行して潰瘍(えぐれ)を動脈に作ってしまったものを穿通性動脈硬化性潰瘍(PAU)と言います。このPAUがさらに悪化して、動脈が破綻してしまい、大動脈解離ならびに解離性大動脈瘤に及んでしまうというメカニズムが考えられています。
加齢性の変化や高血圧などによる慢性的な血管への圧力負担が原因となります。健康診断で高血圧を指摘された場合には、放置しないようにしてください。

遺伝

遺伝の関与により、生まれつき大動脈の壁が脆い場合、若年者でも大動脈解離の発症リスクが高まります。早期発見はなかなか難しいですが、家族内で同様な疾患に罹患している方がいる場合は注意しましょう。遺伝的要因を疑う場合は、循環器内科を受診しましょう。必要に応じて、遺伝子検査や画像診断(心エコーなど)を行い予防策が立てられます。

解離性大動脈瘤を発症しやすい人の特徴

解離性大動脈瘤を発症しやすい人は、高血圧を長期間放置している人や、年齢より動脈硬化が進行している人です。また、生まれつき血管が脆い特性をもつ人もリスクが高いです。この章では、特に重要とされる特徴を3つ取り上げて解説いたします。

高血圧

高血圧は、常に血管に強い圧力がかかるため、大動脈壁に負担がかかり発症リスクを高めます。急性大動脈瘤を発症した患者さんの約8割が高血圧を有していたことが知られています。

動脈硬化の進行

動脈硬化は、血管壁が硬くなり、血管のしなやかさが低下するため、解離が起こりやすくなります。特に、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病に罹患している方は、動脈硬化が早まります。

遺伝性疾患を持つ人

マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群など、生まれつき大動脈の壁がもろくなる病気を持つ人は若年者においても発症リスクが高まります。

解離性大動脈瘤の治療法

解離性大動脈瘤の治療は、病変の部位、進行度、症状の有無によって異なります。いかなる段階でも血圧を管理する内科的治療がとても重要です。瘤が大きく破裂の危険がある場合は、ステント治療や外科的手術が行われます。ここでは3つの代表的な治療をご紹介いたします。

降圧治療

血管の負担を軽減する降圧治療です。血圧が高いと血管に更なる負担がかかり、解離がさらに進行するからです。使用される薬には、血管を広げる薬や心臓の負荷を減らすものなどがあります。130/80mmHg以下を目標とします。

ステント治療

ステント治療は、カテーテルを用いて大動脈内に金属製の血管の裂けた部分を補強するために、金属製の網目状の筒(ステント)を留置し、裂けた内膜を覆う治療です。これにより、異常スペースへの血液の流れを遮断することができます。侵襲が比較的少ないため、高齢者にも適用されます。入院が必須で、循環器内科あるいは心臓血管外科の医師が治療にあたります。

人工血管置換術

人工血管置換術は、損傷した血管を切除し、代わりに人工血管を縫い付ける手術です。体への負担は大きい治療ですが、長期的な予後が期待できる治療です。入院が必須で、心臓血管外科の医師が治療にあたります。

解離性大動脈瘤の予防法

解離性大動脈瘤は命に関わる疾患でもあり、なにより予防が重要です。ここでは、日常生活における予防法について3つご紹介いたします。

血圧管理

予防には、血圧の管理が最も重要です。高血圧が続くと血管に常に負担がかかるため、発症のリスクが高まるからです。そのため、塩分を控えた食事や適度な運動を取り入れましょう。また、すでに高血圧治療を開始している患者さんは、医師の指示に従って継続的に降圧薬を正しく内服することが大切です。

禁煙

喫煙は血管を傷つけるため動脈硬化の進展が早まります。また、喫煙は一時的に血圧を上昇させるため、さらに血管への負担が高まります。禁煙により解離性大動脈瘤を含め血管疾患のリスクを抑えることができます。早めの禁煙をおすすめします。

ストレスの軽減

強いストレスを感じると、急激に血圧上昇を来します。過度なストレスや怒りを避け、リラックスする時間を意識的にとることが大切です。

「解離性大動脈瘤」についてよくある質問

ここまで解離性大動脈瘤について紹介しました。ここでは「解離性大動脈瘤」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

解離性大動脈瘤の生存率はどれくらいなのでしょうか?

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

病状の重症度によって異なるため一概に回答はできません。
大動脈瘤の大きさによって、1年以内に致死的な状況に陥る可能性がそれぞれ以下のように報告されています。
・直径60㎜以上:15.6%
・50–60㎜未満で6.5-11.8%
そのため、一般的には胸部の動脈瘤で最大短径55㎜以上、あるいは6ヶ月の間に5㎜以上、急速に拡大するような症例では外科的手術が考慮されます。

編集部まとめ

解離性大動脈瘤は迅速な対応が必要で命に関わる病気です。血圧やストレスなど日常生活に関わる要因が発症のリスクに関わります。一度、日常生活を見直すことをおすすめします。自分で改善しようとしても、うまくいかない場合は医療機関を受診しましょう。恐ろしい病気ですが、予防により発症のリスクを下げることができます。

「解離性大動脈瘤」と関連する病気

「解離性大動脈瘤」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

脳神経内科の病気

解離性大動脈瘤は、心タンポナーデや脳卒中などを合併する命に関わる疾患です。しかし、高血圧をはじめとする生活習慣病の予防や管理により発症リスクをさげることができます。

「解離性大動脈瘤」と関連する症状

「解離性大動脈瘤」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背部痛
  • 手足のしびれ
  • 手足の冷感
  • 呼吸困難
  • 嚥下困難

解離性大動脈瘤が発症すると、さまざまな症状が起こります。鑑別が難しいこともたびたびあります。上に挙げた症状が続く場合は、ためらわずに病院を受診しましょう。

この記事の監修医師